小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

心霊YouTuber達のソフトなBL小説です。男の方もどうぞ。更新情報などはブログ1P目又はツイッター(X)にて🌹

44.華ちゃんの励まし

2024-10-31 22:58:00 | 小説

 次の日の朝は、礼霊ずの関係者5人がみんな揃っていたので 何だか嬉しかった。


 カイの手前、華ちゃんと1対1では絡まないようには気をつけたけど…


 カイの視線は感じていたけれど…


 遅い朝食を取りながら雑談をしていたのだが、


時計を気にしていた華ちゃんが突然みんなに、


「俺は、心霊動画のことはよくわからないいちファンだけど、礼霊ずのいいところは 、やっぱり、上品なイケメンが落ち着いて怪奇現象をレポートするところだと思うんだ… 」




小説「オミとカイ」43.痛々しいカイ

2024-10-25 23:00:00 | 小説

「華ちゃん ?」


「その...」


 カイの言いたいことが分かって切なくなった。

 まだそんなに俺と華ちゃんはあやしく見えるのか。


「大丈夫 。アルバムの制作期間だから、明日の朝には帰るみたいだし。今日だってカイの見張りを ダイキが頼んでくれただけだし。 何よりダイキがそばにいるから安心じゃん」


と俺はカイの手を握った。


 カイはほっとした表情を浮かべた。 痛々しい気がした。


 そこで俺たちは思い出した。


 今日撮影してきたラブホの写真のことだ。


「ちょっとでも充電できてればいいんだけど...」



 そう言いながら カイが電源ボタンを押してみると、スマホはちゃんと起動した。


「包帯の他に何かヤバそうなもの写ってる?」


「いや... 動画にも別に何も写ってない...バスルームも。音も入ってないし」


 オミも確認してみて、と言われてスマホを受け取り、俺も写真や動画に目をやったが、カイの言う通り何も入ってはいなかった。


 音も、声も。


「あとは パソコンで確認だな」


「そうだね...するとこのラブホは、オミはホラーアワードの撮影の候補地ではないと思う

? 」


「いや、あれだけ現象があったからもったいないな...」


 とは言うものの、 今日一日いろんなことがありすぎた。


 カイも疲れた顔をしている。俺ももうぐったりだ。


 情けないけど今日はもう終わり。

 ホテル撮影の許可申請も明日以降にする。


それではおやすみなさい...


小説「オミとカイ」42.キスは少年のように

2024-10-24 22:52:00 | 小説
「うん、 でもそれは現実世界の話。俺が言うのは両方の世界の話」  両方、と言うのはカイらしいなと思う。 なんかストイックでカッコいい。 「荷が重いライフワークではあるけどね」 「カイもそう思ってたんだね、ライフワークって。始めた時のような絶望とか消去法とかでやってるわけじゃないね」 「そうだね あの時は流行っているから YouTube でも始めるかって感じだったね」 「でも始めたら意外と大変だった。 でも好きだったんだよね。 きっと」

 そこまで話したところで、もう時間も遅いし寝ようか、と俺が言った時、カイは 泣きそうな顔で、


…あのう、チューは...?


そうだった。

俺はすまなさで一瞬 凍りつき、


ごめん、と...


カイの頭を引き寄せて、彼の頭に唇をつけた...


…今の俺にはこれが精一杯だった。

「…」

 唇が 離れると、 お互い何だか驚いて、照れてしまって、うつむいてしまった。


 しかし、その後も、カイにはつらそうに尋ねられたのだ。


「...華ちゃん...」



小説「オミとカイ」41.秘密の温度差

2024-10-23 22:48:00 | 小説
 ちょっと俺は困った。

 それは温度差を感じたから。


 バンドのことなのに、この時もカイと温度差を感じるのはどうしてだろう…


 それは 、俺がサポートとして、 セミプロとしてとはいえ、 プロの華ちゃんのステージに立ったからではないかと思う。


 しかし、カイはそんな気持ちには気づかなかったようで、


「いや 俺は 自己顕示欲だけの人間じゃないんだけどね。

まあ 自己実現したいやつだとは思うけど。

承認欲求だけで YouTube をやってるわけではないよ」


でも今は YouTube で満足してる ...


「難しいよね。 人の生き死にに行きたくて まあ 卑怯なのかもしれないけど自分は傷つくことがないからさ」


「あ、でも結構 傷ついてるじゃん。 俺たちも やらせ疑惑とかウワサの捏造とか 」


小説「オミとカイ」40.あの頃…

2024-10-22 22:19:00 | 小説

 カイの方は言いづらそうに、


「もう、解消されてることなんだよ


今はオミが〈礼霊ず〉を、異色のイケメン看板としてチャンネルを盛り上げてくれてさ。 本当に感謝してる」


「…それで 俺の嫌なところ 怒らないから教えて 」


 だんだん 俺は不安になってきた。

  そんなにまずいことなのだろうか 。

 俺たちのこれからの関係を壊してしまうかのような…


「じゃあ 絶対に俺のこと嫌いにならないって約束して… 」


「うん 」


と言う他はないだろう。

 俺はちょっと笑って


「あ 分かった どんなに重い内容でも教えてくれたらお礼に 俺からチューするよ 」


「え 、本当? 」



 はにかみながらのカイの笑顔は可愛らしかったが、


すぐに、しまった 罠にかかってしまったなんて言ってた。


「だからカイ、教えて…」


お互い ドキドキしている。


しかし、意を決したらしいカイは、


「その、ね 、ダイキに俺はオミのことを恨んでるって言ったんだ。


バンドの時、オミがボーカルを引き受けてくれていたら、俺たちはプロのミュージシャンになれていたんじゃないか って思いが今でも消えないって…」


「だから俺はずっとそばで お前の行く末を見届けたいとか、地獄の果てまでついていく、とか刺し違えても構わないとか。半分は本当で半分は嘘だよ」


「その半分半分っていう意味は何? 」


「やっぱり、恨んでる、の部分 かな 」


「無理しなくていいよ。俺は恨まないから 」



すると カイは笑い、


「他のバンドになくて、自分たちのバンドにあるものはルックスの良さとかオーラみたいなものと思っていたから、 演奏が若干下手でも曲がいまいちでも、なんか目立てれば変わっていける気がした。

オミは声が出たし 」


「まずはそこから、と思ったのに、 オミの家まで、行っでも頑なに ボーカルを引き受けないんだもん。 困ったよ 」