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あや乃古典教室「茜さす紫の杜」

三鷹市&武蔵野市で、大学受験専用の古文・漢文塾を開講しました。古文教師の視点から、季節のいろいろを綴ります。

菖蒲(しょうぶ)⑫

2014-03-21 00:05:04 | 菖蒲
端午の節句では、葉菖蒲の他に、
植物としては、蓬(よもぎ)も活躍したようなんですが、

文献的に確認できる行事や風習としては

a)葉菖蒲を、家の軒に挿した
b)蓬(よもぎ)で作った人形(ひとがた)を、門の上に飾った
c)宮中で、競馬(くらべうま)を行った
d)薬玉を送った

などがあります。

なお、菖蒲湯が庶民レベルにまで普及したのは、
江戸時代以降のようです。

今のような型式の<お風呂>を考えると、
確かに、江戸時代ぐらいの普及かと思います。
(お風呂&菖蒲湯)

菖蒲(しょうぶ)⑪

2014-03-20 00:19:34 | 菖蒲
そんなわけで、
この「ガマの穂」シュッ!の、
サトイモ科の葉菖蒲ですが、

独特の芳香があり、それが邪気除けとされ、
端午の節句で用いられていたようです。

古文の時代には、
端午の節句にあたり、
いろいろと催し物があったようで、
記述が残っています。

現代では、廃れきったというより、
ちょっと考えられないような不思議な風習もあり、
なかなか興味深いものがあります。

例えば、清少納言は、枕草子で、
以下のように記しています。

枕草子)
節は、五月にしく月はなし。
菖蒲、蓬(よもぎ)などの香りあひたる、いみじうをかし。

菖蒲(しょうぶ)⑩

2014-03-18 23:17:18 | 菖蒲
まあそんなわけで、
端午の節句に使う菖蒲(しょうぶ)=
葉菖蒲なわけなんですが、

では、なぜ、
アヤメ科アヤメ属の菖蒲=
花菖蒲などとの混乱が見られるのか?
という話があろうかと思います。

これは、ただただ、
葉菖蒲の葉の有り様が、
アヤメ科アヤメ属の菖蒲(アヤメ)と、
よく似ていたから、

そのため、
葉菖蒲のことを、
昔は「アヤメ草」と詠んだりしたから
という理由で、
(↑更に混乱を助長しますがな。。。)

昔から、よく混同されていたようです。

実際、
葉菖蒲(はしょうぶ)で、検索を掛けると、
花菖蒲(はなしょうぶ)の写真を掲載しているサイトに、
多数行き当たりますが、
あれは、誤解に基づくものですし、
混乱を助長するものです。。。

実際の葉菖蒲(はしょうぶ)は、
サトイモ科の
「ガマの穂」シュッ!なので、
お間違いのないように。。。

菖蒲(しょうぶ)⑨

2014-03-17 23:26:31 | 菖蒲
では、
古文でいうところの菖蒲(しょうぶ)とは、
一体、何ぞや?という話ですが、

古文でいうところの菖蒲(しょうぶ)、
あるいは
端午の節句で使うところの菖蒲(しょうぶ)とは、
葉菖蒲(はしょうぶ)とも言い、
・湿地に生えるサトイモ科の植物で、
・ほとんど目立たない独特の花を株元近くに付け、
・一般的な花菖蒲とほぼ葉幅が同じで、
・独特の芳香がある

という、

今我々が思う菖蒲(あやめ、かきつばた)とは、
似ても似つかない、
アヤメ科アヤメ属とも別種の、
サトイモ科の植物です。

「ほとんど目立たない、独特の花を株元に付ける」というのは、
極めて遠慮した書き方だろうと私は思っていて、

私みたいに、口の悪い人間からすると、
「ガマの穂みたいな花?が、しゅっと出ている」という、
表現になってしまいます。

画像的には、
ここのまとめサイトが、一番きれいな写真でした。
「ガマの穂!」が、しゅっと出てるのを、確認して下さい!

お借りして、謝辞に代えたいと思います。
http://www.kamoltd.co.jp/kakegawa/miwake.htm

菖蒲(しょうぶ)⑧

2014-03-16 23:03:40 | 菖蒲
上記の文章。
我々の頃は、高校が教えましたが、
今は、教えていない高校も多いようなので、
念のため、解説しておきますと。

旅行先で、

<かきつばた>の五文字を、
句の頭に置いて、歌を詠め↓

「かきつばたといふ五文字を、
句の上に据ゑて、旅の心をよめ」

と要求されます。

句の頭に据えろとは、
五七五七七の、和歌のそれぞれの句の文頭に、
か・き・つ・ば・たの文字を入れろということです。

この要求に応えて、

からころも   ⇒かきつばたの<か>
きつつなれにし ⇒かきつばたの<き>
つましあれば  ⇒かきつばたの<つ>
はるばるきぬる ⇒かきつばたの<は>
たびをしぞ思う ⇒かきつばたの<た>

と、歌を詠んだというお話です。

こうした和歌の技法を、折句と言います。

菖蒲(しょうぶ)⑦

2014-03-16 11:35:01 | 菖蒲
C)かきつばた 自体は、
昔からあった植物らしく、
在原業平を主人公とすると言われる、
伊勢物語にも出て来る<かきつばた>が、
古文的には、有名かと思います。

以下の文章、
「教科書で習った!」方も、多いのではないでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
伊勢物語 東下り)

原文=
むかし、男ありけり。
その男、身をえうなきものに思ひなして、
京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。
もとより友とする人、ひとりふたりして、いきけり。
道知れる人もなくて惑ひ行きけり。

三河の国、八橋といふ所にいたりぬ。

そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、
橋を八つ渡せるによりてなむ八橋といひける。

その沢のほとりの木の蔭に下り居て、餉(かれいひ)食ひけり。
その沢に、かきつばたいとおもしろく咲きたり。

それを見て、ある人のいはく、
「かきつばたといふ五文字を、句の上に据ゑて、旅の心をよめ」
といひければよめる。

からごろも 着つつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ

とよめりければ、
みな人、餉の上に涙落して、ほとひにけり。


菖蒲(しょうぶ)⑥

2014-03-16 11:34:35 | 菖蒲
A)菖蒲(あやめ)
B)花菖蒲
C)かきつばた

のいずれも、植物分類上は、
アヤメ科アヤメ属に属しており、近縁種です。

が、いずれも古文で言うところの、
ここで話題にしたい、
「端午の節句」で使う菖蒲(しょうぶ)、ではありません。

菖蒲(しょうぶ)⑤

2014-03-15 00:25:22 | 菖蒲
そもそも、「似たようなもの」で、
見分けが付きにくい、

A)菖蒲(あやめ)
B)花菖蒲
C)かきつばた

どう違うの?という話をしておきますと。

-----------------------------

A)菖蒲(あやめ)
・排水の良い草原に生える(乾地)
・花菖蒲ほど変化はないが、
最近では様々な改良品種が見られる。
花弁の弁元に網目状の模様がある 。
・ハナショウブに比べ細く、葉の主脈はほとんど目立たない

B)花菖蒲(はなしょうぶ)
・生育場所:湿原や、水分の多い草原に生える。
・園芸種は、花色や花形が変化に富むが、
花弁の元に、黄色い目型模様があるのが特徴。
・葉幅の広いものから細いものまでさまざまだが、
葉の主脈が葉の中央に表に一本、裏に二本、はっきりと突出する。

C)かきつばた
・湿原に生える(湿地)
・花菖蒲ほどの変化はないが、数多くの園芸品種がある。
花弁の弁元に白い目型模様があるのが特徴。
・一般的な花菖蒲よりやや幅広で、葉の主脈は目立たない
・かきつばたの色(青紫)を染み出させ布などに書き付けた、
つまり衣の染料に使われたことから
「書付花」と呼ばれていたのがなまったもの。

菖蒲(しょうぶ)④

2014-03-14 09:33:29 | 菖蒲
で、その菖蒲(しょうぶ)なんですが。

例えば、東京には、

・掘切菖蒲園(ほりきりしょうぶえん):葛飾区
http://www.hanazakura.jp/hanasyoubu/horikiri.html

・吹き上げ菖蒲公園(ふきあげしょうぶ公園):青梅市
https://www.city.ome.tokyo.jp/koen/shobu_koen.html

など、有名な菖蒲(しょうぶ)園が、複数あります。

皆さんが、
菖蒲(しょうぶ)と聞いて、
あるいは文字を目にして、
「ああ、あれか」と思われるのは、
ほぼ、間違いなく、
こうした菖蒲(しょうぶ)かと思いますが、

これはもう少し正確には、
「花菖蒲(はなしょうぶ)」と言いまして、
品種改良の結果、江戸時代に誕生した、
比較的新しい種類のお花で。

古文で言うところの、
つまりここ話題にしたい菖蒲(しょうぶ)ではないんです。

菖蒲(しょうぶ)③

2014-03-13 01:06:52 | 菖蒲
五節句それぞれを、
いわば代表するような、植物がありまして。

1月7日→七草
3月3日→桃
5月5日→菖蒲(しょうぶ)
7月7日→笹
9月9日→菊(特に、黄色い菊)

1月7日と、7月7日は、
この植物分類をするには、ちょっとキツイかな。。。とも思いますが、

まあ、五節句それぞれを、
代表するような植物があるのだと、思って下さいまし。

そして、今回の特集は、
5月5日端午の節句の、
代表的な植物である、
<菖蒲(しょうぶ)>に関する特集となります。
(長い前振りですが。。。。)

今でも、端午の節句が近づくと、
スーパーで
「菖蒲(しょうぶ)湯に入りましょう~」という宣伝文句の下、
「菖蒲(しょうぶ)の茎」を売っていたり、
(撤退しましたが、
三鷹の丸正は、季節になると菖蒲を売ってました)

銭湯に行くと、
「今日は、菖蒲湯です♪」と、
湯船に菖蒲(しょうぶ)が浮かんでいたりしますが、
その<菖蒲(しょうぶ)>です。

菖蒲(しょうぶ)②

2014-03-12 00:27:49 | 菖蒲
五節句とは、
古文的な名称で記せば、
具体的には、以下の通り。

1月7日の人日(じんじつ)。
3月3日の上巳(じょうじ)。
5月5日の端午(たんご)。
7月7日の七夕(たなばた)。
9月9日の重陽(ちょうよう)。

現代的に書けば、
そのうち、1月7日は、
七草粥を食べる風習として、今に伝わり。

3月3日は、
お雛様のお祭り、あるいは桃の節句として。

5月5日は、
子供の日として、あるいは男の子のいる家では、
鯉のぼりや、武者人形を飾ったりする日として。

7月7日は、変わらず七夕として、
おなじみかと思います。

気の毒なのが、重陽の節句。
風習として、ほぼ絶滅寸前ですが、
どうにか復活をもくろみたいと思っていますので、
いずれ、特集を組もうと思っています。
(なので、詳細はそのうち。。。
気になる方は、メール下さい)

菖蒲(しょうぶ)①

2014-03-10 23:52:44 | 菖蒲
狐特集は、この辺りで終わりにして、

少し気が早いですが、今日からは、
五節句の一つである端午の節句特集、
あるいは「菖蒲」特集とします。

古文的には、五節句と言いまして、
奇数月の、(基本的には)月と同じ数の奇数日に、
特別に季節のお祝いをします。
それが、年に5回あるので、
併せて、五節句と言います。

現代にも、かなりのものが引き継がれて、
複数の名称で親しまれています。

今回の特集は、
そのうちの1つ、端午の節句に纏わる、
古文的なあれこれを、
主に紹介する特集としたい思います。