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あや乃古典教室「茜さす紫の杜」

三鷹市&武蔵野市で、大学受験専用の古文・漢文塾を開講しました。古文教師の視点から、季節のいろいろを綴ります。

想夫恋⑭

2014-01-07 00:49:22 | 想夫恋
元々の、そうした定型化したシチュエーションに、
小督には、以下が付け加わっています。
・嵯峨野の方の秋の空=秋
・名月=秋(中秋の名月)だからというのと、
   馬の名前(名月)とが掛けてあります。
・峰の嵐、松風
・お琴の音
・想夫恋

謡曲 小督 後、そのシチュエーションのもたらす情緒を、
よほど、日本人は好んだようです。
(まあ、我ら日本人好みではありますよね)

例えば、
明治以降の筝曲に「嵯峨の秋」というものがありますが、
その歌詞は、以下のようになっています。

筝曲「嵯峨の秋」
さらでだに 
ものの寂しき名に立てる 
嵯峨のあたりの秋の暮

月は隈なき柴の戸に 
忍びて漏らず琴の音は 峯の嵐か松風か

尋ねる人のすさびかや 
駒をとどめて聞く時は 

つま音しるき想夫恋 
つま音しるき想夫恋 

想夫恋⑬

2014-01-06 09:50:04 | 想夫恋
小督本文で、
「嶺の嵐か松風か それかあらぬか 
尋ねる人の琴の音か」とありますが、

おそらく、
松風=琴の音とが、
セットで和歌や古文に登場する、その始まりは、

藤原兼輔(紫式部の曽祖父)が、
夏の夜 
深養父(琴の名手だったらしい)が琴弾くを聞きて

・みじか夜の 更け行くままに 高砂の峰の松風吹くかとぞ聞く

・琴の音に 峰の松風かよふなり いずれのおより しらべそめけむ

と詠んだ和歌からではないか?と思います。
(更に、遡れるようならゴメンなさい)

まあ、そんなわけで、
「松林を吹き抜ける風の音(松風)の、
合間、合間に、途切れ途切れに、お琴の音が聞こえてくる」
という古文人の好んだ、
一つの定型化されたシチュエーションが、元々、ありました。

想夫恋⑫

2014-01-05 00:28:42 | 想夫恋
さらには、
小督(こごう)=想夫恋の関連性が、
決定的になったのは、

謡曲「小督(こごう)」の、
「駒(こま)の段」の影響に拠るところが、
大きいのではないかと思っています。
(昨日、掲載のあらすじは、
能楽の小督に拠るあらすじです)


=謡曲 小督「駒の段」=
牡鹿(おじか)鳴く この山里と眺めける
嵯峨野の方の秋の空 さこそ心も澄み渡る
片折戸(かたおりど)をしるべにて 
名月に鞭(むち)をあげて駒を早め急がん

賎(しず)が家居(いえい)の仮なれど 
もしやと思い此処彼処(ここかしこ)に
駒を駆け寄せ 駆け寄せて 控え控え 聞けども
琴弾く人は なかりけり

月にや あくがれ出で給うと 
法輪(ほうりん)に参れば
琴こそ 聞こえ来にけれ

嶺(みね)の嵐か松風(まつかぜ)か 
それかあらぬか 尋ねる人の琴の音か

楽(がく)は何とぞ聞きたれば 
夫(おっと)を想いて恋(こ)うるという名の 
想夫恋(そうふれん)なるぞ嬉しき

想夫恋⑪

2014-01-04 02:21:28 | 想夫恋
想夫恋が、
古文のみならず、古典の世界?に、大きく入り込んできて、

「夫(おっと)を想い、恋い慕う」という意味が付与され、
それ↑として、人口に膾炙して来るきっかけは、
平家物語の「小督(こごう)」からだろうと思います。

その他に、源平盛衰記にも、
小督の局に関し、同様の話が、載っています。

ーーーーーーーーーーーーーーー

小督あらすじ)
高倉院の寵愛を受けていた小督は、
中宮徳子の父・平清盛に疎まれ、密かに身を隠す。

院はこれをとても悲しみ、
源仲国に勅使を遣わして、小督を探すよう命じる。

小督は、嵯峨野の片折戸の宿に身を潜めているという情報だけが手がかり。
かって、笛の訳で小督の琴と合奏した仲国は、
こんな名月の夜に小督が琴を弾かないはずがないと、
琴の音をたよりに嵯峨野に馬を走らせる。

どこからともなく聞こえてくるのは、
夫を想って恋い慕う「想夫恋」の曲。

紛れもなく小督の琴の音。
仲国は小督に会おうとするが、小督は頑として面会を拒む。

押し問答の末にようやく小督に対面した仲国は、
高倉院からの御書を渡し、院の嘆きを伝える。

帝の変わらぬ御心に感謝した小督は、
仲国の労をねぎらって酒宴を催し、
仲国は小督からの返事を受け取り、酒宴で舞を舞い、都へ帰る。

想夫恋⑩

2014-01-03 00:42:30 | 想夫恋
去年というか、既に一昨年!?は、
(2012年の年末の話です)
相府蓮の楽譜を買いに、
年末に、武蔵野楽器まで行ったぐらいで。

武蔵野楽器の方にも
「は?相府蓮?あれ、滅多に演奏しませんよね!?」
と、言われてしまいました。。。
(何で、そんなものが要るの?と言わんばかりで。。。)

え、だって。。。。
古文に出てくる想夫恋を、
雅楽の相府蓮だと仮定すると、
「何で、お琴だけ聴いて、曲が特定できるのか?」という
根本的な疑問に突き当たったんですもん。。。。

まあね。
去年の年末年始にかけては、
相府蓮がほしいだの、神楽譜がほしいだの、
武蔵野楽器も、困っただろうなと(苦笑)
お蔭さまで助かってます>武蔵野楽器

それはさておき、
枕草子の記述から、当時、既に、
「相府蓮」=「想夫恋」だったらしいことが伺えます。

想夫恋⑩

2014-01-02 00:49:09 | 想夫恋
物語だから!と言われそうですが、

現実の担保がないと、物語設定の小道具として成り立ちませんし、
ということは、当時の読者層が
「お琴だけを聴いて、想夫恋だとわかる」という舞台設定に、
納得しうる曲があったはずだろうと思うんですよね。。。

メール送るより先に、記事が先行してるんで、
公開質問状にしてしまいますが、
鈴木先生、どのみち、「想夫恋」と出た時点で、
御覧でしょう?どう思われます?

古文でいうところの「想夫恋」=
雅楽の「相府蓮」って前提、
冷静に考えると、無理があると思われませんか!?

であれば、
枕草子にも、
筝の琴、いとめでたし。しらべは想夫恋 とありますし。
筝曲、単独での想夫恋(古曲)が、
存在したのではなかろうか?と思うんですが。。。。

想夫恋⑨

2014-01-01 00:18:43 | 想夫恋
それとも、あまり演奏されることのない曲ですが、
雅楽には、現在も「相府蓮」という曲があります。

古文でいうところの、「想夫恋」という曲は、
雅楽の「相府蓮」のことなのでしょうか。

個人的には、どうも納得行きません。

古文でいうところの「想夫恋」とは、
雅楽の「相府蓮」のことであると、
誰もが無意識に仮定しているような気もしますが、

お琴だけを聴いて、それと曲が聞き分けられるほど、
「雅楽の相府蓮の、お琴のパートに特徴があるのか!?」と、
現実問題として、思うわけです。

楽譜を確認済みですが、とてもそうは思えないですし。

何を見ても、びみょう~に誰も突っ込んでませんが、
私は、納得行かな~い!

想夫恋⑧

2013-12-30 23:41:32 | 想夫恋
想夫恋という名前の、
お琴の曲が、昔はあったのでしょうか。
(You Tubeを漁りましたが、出てきません。
琴系に詳しい方からの情報提供を、望みます)

古くは、枕草子に

弾くものは琵琶。
調べは風香調。黄鐘調。蘇合の急。
鶯のさえずりという調べ。
筝の琴、いとめでたし。しらべは想夫恋

と記されています。

想夫恋⑦

2013-12-30 23:41:03 | 想夫恋
その他としては、

同じく、王儉が一時、失脚して後に、復活したのを、
当時の人が、蓮の花に例えて、曲を作ったからだ、
という説もあります。

つまり、曲成立の由来はともかくとして、
相府蓮という曲があり、

それが日本に入ってきて、
音が同じなので、
府=夫となり、蓮=恋 となり、
想夫恋と記されるようになったと。

想夫恋⑥

2013-12-30 00:31:34 | 想夫恋
そもそも「想夫恋」って、何?という話ですが。

元々は、中国の故事に由来し、
大臣の邸宅のことを指した別称で、
「相府蓮」あるいは「相府連」などと記しました。

それに関し、徒然草は、以下のように記しています。

徒然草214段)
想夫恋という楽は、女、男を恋ふる故の名にはあらず。
もとは相府蓮、文字のかよへるなり。
晋の王儉、大臣として、家に蓮を植えて愛せしときの楽なり。
これより大臣を、蓮府と言う。
廻忽(かいこつ)も、廻鶻(かいこつ)なり。
廻鶻国として、夷(えびす)の強(こは)き国あり。
その夷、漢に伏して、後に来たりて、
おのれが国の楽を奏せしなり。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

現代語訳)
想夫恋という楽曲は、妻が夫を恋うことから付けられた名前ではない。
元々は、相府蓮と書いたのを、想夫恋と当て字しただけである。
その昔、晋の王儉が大臣であった頃、
自宅の庭に睡蓮を植えて愛で、作られた楽曲である。
このことから、大臣の邸を、蓮府(れんぷ)とも呼ぶようになった。

廻忽(かいこつ)という楽曲の元の呼び名も、
廻鶻(かいこつ)である。
これは、外蒙古に、廻鶻(かいこつ)国という、
蛮族の治める強大な国があった。
この国が、漢に帰順してきた時に、
廻鶻(かいこつ)国の楽曲である曲を演奏したので、
それが、廻忽(かいこつ)という曲として、
世に知られるようになった。

想夫恋⑤

2013-12-29 00:32:25 | 想夫恋
去年のセンター古文に付いた注です。

1 啓し給へば
「啓す」は、ここでは右衛門督に敬意を表すために使用している。

2 客人
右衛門督のこと。「殿」とも呼ばれている。

3 我が言葉
扇を渡すときの「小さき犬をこそ、賜ひぬべけれ」という言葉を指す。

4 右近
女君に仕える侍女。

5 楽を弾き替え給ひしも
女君が唐琴で弾く「太平楽」に合わせて右衛門督が笛を吹き鳴らしたあと、
右衛門督が吹く「想夫恋」(女性が男性を恋い慕うという楽曲)に、
女君が弾き合わせたことをいう。

想夫恋④

2013-12-29 00:31:03 | 想夫恋
去年のセンター本文です。
私のベタ打ち原稿が、見づらい場合は、
大学入試センターのHPから、
去年のセンターのPDF原稿をご参照ください。
http://www.dnc.ac.jp/modules/center_exam/content0562.html

「受験なんて、とうの昔に終わったのに!
こんな長文古文を、読めと!?」という声が聞こえそうですね。。。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

第3問
次の文章は「松陰中納言物語」の一節である。
東国に下った右衛門督は、下総守の家に滞在中、
浦風に乗って聞こえてきた琴の音を頼りに、
守の娘のもとを訪れ、一夜を過ごした。

以下の文章は、それに続くものである。

これを読んで、後の問い(問1~6)に応えよ。

つとめて、御文やらせ給はんも、せん方のおはしまさねば、
いと心もとなくて過ぐし給ひけるに、主人の参り給うて、
「昨日の浦風は、御身には染ませ給はぬにや、いと心もとなくて」と
啓し(注1)給へば、琴の音にやあるらんと思して、
「めづらしき色香にこそ候ひつれ。唐琴にや、ゆかしくこそ」と、
のたまはすれば、思はずながら、取り寄せつ、調べさせ給ひて、
「波の音に立ちまさりけるも、むべにこそあなれ」とて、
箱に入れさせ給ふとて、御文を緒に結びつけさせて、
「これ、ありつる方へ」とて、差し置かせ給へば、持て入りぬ。
女君は、琴を召しけるを、あやしと思して、
開けて見させ給へば、飽かざりし名残をあそばして

「A あひみての後こそ物はかなしけれ人目をつつむ心ならひに
今宵は、いととく人をしづめて」

とありけれども、いかにせんとも思ひわき給はず。
幼き弟君の「客人(注2)の方へ参らんに、扇を昨日、海へ落とし侍り。
賜はらむ」とのたまひにおはす。
何のよきことと思して、端に小さう書き給ひて、
「この絵は、おもしろう書きなしたれば、殿に見せさせ給へ。
さもあらば、小さき犬をこそ、賜ひぬべけれ」とうち笑ませ給へば、
よろこぼひて、母君の方へ参らせ給ひて、「扇をこそ、賜はりつれ」とて、
見せさせ給へば、歌を見つけ給うて、あやしきことに思す。
なほ、気色を見ばやと、後に立ちて屏風の隠れより覗き給へり。
「この扇の絵を見させ給へ。姉君の、かくこそ」とのたまへれば、
まことにいみじくこそ書きなしつれとて、見給へれば、

B かなしさも忍ばんことも思ほえず別れしままの心まどひに

今朝の琴の返しならむと思して、
「この扇は、我に賜ひなん。犬をこそ、参らすべかめれ。
今日にあまたありつれば、取り寄せてこそ、そのほどに」とて、
黄金にて造りし犬の香箱を賜はせて、「姉君に見せ給へかし」とのたまへれば、
持て入り給へるを、母君、いとどあやしと思して、
「我にも見せよかし」とて、取りて見給へるに、
さればよ、昨日の琴の音をしるべにこそし給ふらめと思せど、
気色を見えじと、もて隠し給へり。
姉君の方へおはして見せ給ひつれば、「我がものにせん」とて、
取らせ給ひて、「この犬をこそ」とのたまはすれば、
「我が言葉(注3)は違ふまじければ」とて、蓋を取りて見給ひければ、
内の方に、

C 別れつる今朝は心のまどふとも今宵と言ひしことを忘るな

惜しくは思せど、人もこそ見めとて、掻い消ち給へり。
母君は、忍びますらんも心苦しからむとて、右近(注4)を召して、
「今宵、殿の渡り給はんぞ。よくしつらひ給へ。
行く末、頼もしきことにてあるなれば」とのたまはすれば、さればよ、
今朝よりの御ありさまも、昨日の楽を弾き替え給ひしも(注5)、
心もとなかりつればとて、かくとも言はで、几帳かけ渡し、
隈々まで塵を払えば、
「蓬生の露を分くらむ人もなきを、さもせずともありなん」とのたまへれば、
「蓬の露は払はずとも、御胸の露は今宵晴れなんものを」とうち笑へば、
いと恥ずかしと思す。

想夫恋③

2013-12-29 00:29:57 | 想夫恋
どの入試問題でも、
「本文をよく読み、以下の問いに答えよ」と、
わざわざ<但し書き>してあります。
当たり前じゃないか!と思われるかもしれませんが、

私から見れば、
「本文をよく読み、以下の問いに答えよ」
という<但し書き>への認識が、皆さん、甘いです。。。。

注や、選択肢に至るまで、正解にたどり着くヒントです。

「書いてあること(注や、選択肢)」を、
フル活用して、
記述式なら、答えを作り、
選択式なら、正答にたどり着いてほしいと思います。

その良い例として、
去年のセンターに、ほんのわずか付けてあった注
「想夫恋」を解説してみよう、という意図の特集です。

応用は利く発想↓なので、
「注や、選択肢に至るまで、正解にたどり着くヒント」
参考にして下さいね!

想夫恋②

2013-12-28 10:16:45 | 想夫恋
想夫恋。
おそらく、
よっぽど「詰めて」受験勉強している学生さん
(高校3年生&浪人生)以外は、
「何じゃいな?それ?」っていう話かと思います。

高校&予備校関係でも、
「何で、わざわざ特集?」
首を傾げておいでの向きもあろうかと思います。

この想夫恋。
去年のセンターの注で、ほんの1行解説してありますが、
注に留まらないところで、
本文理解&選択への、大きな足掛かりになったのではないか?
と、私は考えています。

よもや2年続けて、
こんなもの!(想夫恋)から、
攻略出来るような本文&問題が出題されるとも思いませんが、

関連事項も含めて、
いつか、どこかで、
どなたかのお役に立てれば、幸いです。

ただし、「センターまでに完了」することは、目指していません。
1月末終了の、1ヶ月特集となるのではないかと思っています。

想夫恋①

2013-12-28 10:16:08 | 想夫恋
すさまじい勢いで完了させてしまった、
戦国鍋特集にお付き合い下さった皆様、
有難うございます。

世の中、どうなってんの?と思うような、
訪問者数&アクセス数を頂きました。
感謝しております。

そして、想夫恋で、
また(アクセス&訪問者数共)激減する。。。
というのも、覚悟の上です。

新たな検索で引っ掛けていらした皆様も、
初めまして。

まともな(?)古文ブログに戻ります。

基本、記事のUPは、1日に1回です。
ただし、検討材料の提示のため&
受験生が来てしまったので、強迫観念にかられ、、、、
一両日は、多めにUPします。

本当は、さわりの幾つかの記事をUPしていた
「古文と仏教」特集に入る予定でしたが、
あれもまともにやると、

「戦国鍋、再び」の記事数になってしまい、
この大学受験直前の時期に、
受験生が気の毒だなぁ~とも思い、

仏教特集の後半に、くっ付けるつもりだった、
「想夫恋」単独の特集としたいと思います。

鍋と同じく3週間で仏教特集、挙げたら?
という意見もあろうかと思いますが、

あの剣幕での記事UPを、更に3週間続けたら、
私が、倒れます。。。。