ATARI MUSIC STUDIO

ピアノを中心に様々な曲を編曲・演奏します。ブログでは音楽関係のつぶやきを中心に書き込みします。
※記事の無断転載禁止

C.BECHSTEIN(ベヒシュタイン)のピアノ

2021年02月28日 | 日記

ヨーロッパを代表する世界の3大ピアノのひとつ、ベヒシュタインピアノについて、少しご紹介したいと思います。

画像の転載元はこちら→ ベヒシュタインジャパン公式サイト | BECHSTEIN JAPAN Official Site

世界的に有名なピアノなのですが、日本で見かけることは少なく、国内の演奏会で聴く機会も滅多にないと思います。
しかし、名だたる名器を生み出してきたスタインウェイやベーゼンドルファーにまったく引けを取らず、その繊細な響きは、今も多くのピアニストたちに支持されています。

創業者のカール・ベヒシュタイン(CARL BECHSTEIN)は、1826年ドイツ生まれ。
当時のピアノ造り最先端であったフランスのピアノ工場で修業してノウハウを学び、1853年、ベルリンにベヒシュタイン社を設立します。

当時のピアノは現代ピアノのような頑丈さがなく、大きな音、力強い響きを求めることは到底不可能でした。
その頃、ピアニスト・作曲家として活躍していたフランツ・リストは、ピアノの可能性をとことん追求し、「もっと頑丈なピアノ!もっと繊細なピアノ!もっとレスポンスのよいピアノ!」を常に求めていました。
この要求に応えた最初のピアノメーカーが、オーストリア・ウィーンでピアノを製造するベーゼンドルファーでした。
その耐久性の高さ、音の響きの良さに惚れ込んだリストは、その後ベーゼンドルファーのピアノを弾いて、数々の名演奏、名曲を生み出していきました。ベーゼンドルファーのピアノが一躍有名になったきっかけでもあります。

リストの一番弟子だった、ハンス・フォン・ビューローは、「ドイツにはまともなピアノがない」と常々嘆いていたそうで、それを聞いたベヒシュタインが、「よし!俺がいいピアノ作ったる!」(と言ったかどうかは不明ですがw)ということで、リストの力強い演奏にも耐えられる、頑丈なモダン・グランドピアノを作ろうとします。
ベヒシュタインのコンサートピアノは1856年に完成し、ハンス・フォン・ビューローがこの最先端コンサートピアノを演奏会で弾いて大成功を収めました。

ハンス・フォン・ビューローが、ベヒシュタインのピアノを大絶賛したことから、師匠のリストも次第にベヒシュタインピアノに惹かれていき、その後演奏会で時折ベヒシュタインピアノを弾くようになります。
ちなみに、ハンス・フォン・ビューロー(後のベルリンフィル常任指揮者)はベヒシュタインと親交がありました。お互いを親友と認めていたそうで、仲は良かったのでしょう。それ以降、ベヒシュタインピアノは有名になり、躍進します。

やがて第二次世界大戦になり、1945年にドイツが連合軍に負けて敗戦国となり、ベルリン工場も戦火にまみれて消失します。

その後ドイツは東西に分断、ベルリンの分割統治が始まります。

(当時のブランデンブルク門前のベルリンの壁)画像転載元はこちら→ ベルリンの壁 - Wikipedia

1963年にはアメリカのボールドウィン社がベヒシュタインを買収しますが、1986年にドイツの実業家カール・シュルツがベヒシュタインをドイツ人の手に戻します。

その後1989年にはベルリンの壁崩壊、翌年に東西ドイツの再統一、1993年にEU加盟など、まさに波瀾万丈の時代を経てベヒシュタインは今もドイツにあります。

フルトベングラー、ケンプ、バックハウスといった、ドイツ人の著名な音楽家たちがベヒシュタインピアノをこよなく愛用してきました。
1996年には、ついに上場を果たし、上場株式会社になりました。

詳しく知りたくなった方はぜひ、ベヒシュタインジャパン公式サイトを訪れてみてくださいね。
ベヒシュタインジャパン公式サイト | BECHSTEIN JAPAN Official Site

 

 

「ピアノ音楽は、ベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」
                 クロード・ドビュッシー

 


グランドピアノの鍵盤はスライドする?

2021年02月27日 | 日記

グランドピアノでは、踏むと鍵盤がスライドするペダルがあることをご存じでしょうか?

グランドピアノには3本のペダルがあります。さて、どのペダルが鍵盤をスライドさせるペダルでしょうか?正解はのちほど!


一番右のペダルは「ダンパーペダル(Damper pedal)」です。とてもよく使われます。右足で踏むペダルです。


真ん中のペダルは「ソステヌートペダル(Sostenuto pedal)」です。同じく右足で踏むペダルです。
ダンパーペダルと同時に組み合わせて使う場合は、左足で踏むこともあります。

一番左のペダルは「ソフトペダル(Soft pedal)」です。このペダルは、踏むと鍵盤とアクションが全体的に2mmほど右にスライドするので、「シフトペダル」と呼ぶ人もいます。このペダルは左足で踏みます。

「一番左のペダル」が正解です!当たった方はいらっしゃいましたか?

メーカーによる機能差はないので、どのメーカーのグランドピアノでも、同様の効果が得られます。
アップライトピアノや電子ピアノの鍵盤はスライドしないので、グランドピアノ特有の動作ですね!

ここから、各ペダルの説明を少々させていただきます。
「ダンパーペダル」は、弦に触れているダンパーを上下させるペダルなので、そう呼ばれています。
ダンパーペダルを踏むと、弦をおさえていたすべてのダンパーが上昇し、弦から離れて、全弦フリーの状態になります。
一番右のペダルを踏んだ状態でピアノの鍵盤を叩くと、指を離しても弦の振動が収まるまで、音が鳴り響き続けることになります。
ペダルを離すと、全てのダンパーがおりて弦に接触し、弦の振動が抑えられて発音が止まります。

話が少し脱線しますが、ステージピアノやシンセサイザーのサスティーンペダルも、これと同様の効果を得る目的で使用されます。(私はサスティーンペダルも『ダンパーペダル』と呼んでしまいますが)

ちなみに、電子楽器に使うフットペダル(ダンパーペダルもどき)は、踏んだときに電気極性がONになるものとOFFになるものが存在し、ペダルの挙動が逆転してしまうものがあります。
電子楽器本体側で極性変更が可能な場合は、ON・OFF極性を切り替えてペダルを使います。(ペダル側に極性変更スイッチが備わっている場合もあります)

またハーフペダル(ちょっとだけペダルを踏んだ時の微妙な挙動)を再現できるペダルもあります。対応機種は、ある程度限られてしまいますが・・・

YAMAHA FC3A フットペダル(ハーフペダル対応)

 

話を元に戻します。真ん中のペダルは「ソステヌートペダル」です。滅多に使われません。
ダンパーを動かすペダルではあるのですが、押している鍵盤にのみ反応するので、「ダンパーペダル」とは、少し挙動が異なります。
「ソステヌートペダル」を踏んだ状態でピアノを弾いても、踏む前と後で何の変化も起きません。
一見何に使うかわからないペダルですが、例えば「ドミソ~」と鳴っている状態で「ソステヌートペダル」を踏むと、「ドミソ~」は手を離しても鳴り続けます。
「ドミソ~」が手を離しても鳴り響いている状態で他の鍵盤を叩いても、鍵盤から指を離すとすぐに音が消えてしまいます。
この不思議なダンパー操作を必要とするピアノ曲があまりないため、滅多に使われません。
このペダルがなくても、演奏上特に困ることはありませんが、残響や音の余韻をほどよくコントロールしたい場合などに、スッと一瞬踏むことがあります。
が、よほど使い慣れている人にしか、出番はほどんどないことでしょう。
ちなみに、アップライトピアノにも3本ペダルがありますが、真ん中のペダルは弱音器で、ソステヌートペダルではありません。

一番左のペダル「ソフトペダル」は、グランドピアノの場合、鍵盤アクションが全体的に右にスライドします。
グランドピアノの演奏に慣れていないと、ソフトペダルの扱いに若干面食らうことになります。

 

なぜ、鍵盤がスライドすると音が「ソフト」になるのか?

 

この説明はとても難しいのですが、少しだけ大雑把に説明をします。

ピアノは、鍵盤を押すと、ハンマーが弦に当たって音が出る楽器です。
弦に当たっているハンマーの先端はフエルト素材でできていて、いつも弦に当たる部分が潰れて固くなります。


ハンマーが弦に当たる部分をよく見ると、弦に当たる部分が少し食い込んで、凹んでいるのがわかりますね。
「ソフトペダル」を踏むと、鍵盤とハンマーアクションが一緒に、右に2mmほどズレます。
すると、いつも弦に当たっていない部分のフエルト(つまり柔らかい部分)が弦に当たります。これで柔らかいフエルトが弦に当たってソフトな音が出る、というわけです。

1つの鍵盤に、弦が3本張ってあり、ハンマーがいつも3本の弦に対して当たっている場合は、スライドすることで2本の弦に当たるようになり、音量も若干下がります。

かなり大がかりな仕組みなのですが、この説明で伝わりましたでしょうか?(笑)コメントにご指摘や感想などをいただけますと、嬉しいです。

楽譜上に「una corda」または「u.c.」と書かれている場合は、書かれた場所から先、ソフトペダルを踏んで演奏します。「tre corde」または「t.c.」と書かれている場所でソフトペダルを離し、演奏します。

 


ピアノはいつ、どこで生まれた?

2021年02月26日 | 日記

西暦1700年、イタリアの当時フィレンツェのメディチ家に使えていた楽器製作家、「バルトロメオ・クリストフォリ・ディ・フランチェスコ」が作ったものが、最初のピアノと言われています。

ということは、ピアノの歴史は約300年、ということになりますね!それまでの鍵盤楽器といえば、チェンバロやクラビコードが主流でした。チェンバロがピアノの前身と言えるでしょう。チェンバロの歴史は古くて、13世紀頃発明された楽器です。(チェンバロの歴史 - Wikipedia

(贅沢な装飾が施されたニ段鍵盤チェンバロ)

チェンバロは、鍵盤の奥にツメ(プレクトラム)が付いていて、鍵盤を押すと、奥のツメが弦を「ぺん!」とはじくことで音が出る構造の楽器です。
弦は細く、たいした張力もない上、ツメで弦をはじくだけの構造なので、反響板やチェンバロ本体の共鳴効果があったとしても、出音の小さな楽器です。
鍵盤を速く叩こうが、ゆっくりと押そうが、ツメが弦を弾き飛ばす力はあまり変わらないので、音の強弱はつけられません。

また、今のピアノのようなサスティーンペダルもないので、足でサスティーン効果をつけたりすることもできません。
チェンバロは、鍵盤を押せば音が出る、鍵盤を離せば音が消える、ごくごく単純な仕組みで作られた楽器です。

(チェンバロの発音構造部)

画像転載元はこちら→ チェンバロ - Wikipedia

チェンバロ試聴はこちらの動画がお薦め→ 【DQ3 王宮のロンド】チェンバロ演奏 曲との相性が最高すぎた、、、 - YouTube

クリストフォリが作った最初のピアノは「小さい音から大きい音まで出せるチェンバロ(Clavicembalo col piano e forte)」と称され、この時の「ピアノ・エ・フォルテ」が略されて今の「ピアノ」という名前になったのだそうです。クリストフォリ自身は、発明した楽器に「アルピチェンバロ」と名付けたかったようですが・・・

「piano」はイタリア語だったんですね!「piano」のイタリア語本来の意味は「計画」「平面・水平」、3階、4階などの「階(フロア)」ですが、音楽用語で使う「piano」は、『小さい音』の意味に使われます。イタリア語の発音は「ぴあ~のぉ」で「あ」にイントネーションがあります。

クリストフォリが製作した、現存するピアノはニューヨーク・メトロポリタン美術館、ローマ・イタリア国立楽器博物館、ライプツィヒ大学楽器博物館にある3台のみです。いずれも1720年代のもので、いつか現物をこの目で見てみたいです。

(ローマ・イタリア国立楽器博物館所蔵)

画像の転載元はこちら→ バルトロメオ・クリストフォリ - Wikipedia

 

 

蛇足になりますが、チェンバロは鍵盤を押すと「ぺん!」と弦をはじく楽器ですが、鍵盤を離したときも「ぺしっ!」とプレクトラムが弦をはじきながら戻ってきます。(戻りのはじき音を抑えた改良型もあります)

鍵盤を離した時の「ぺしっ!」音を、リアルに再現している音源やシンセサイザーを見つけると「わかってるじゃん!やるなぁ~!」と感動して思わず「にやり」としてしまいます。


白鍵の幅、長さはメーカーによって異なる?

2021年02月25日 | 日記

ピアノの鍵盤は、どれも同じに見えますが、よくよく調べてみると、メーカーによって(また時代によって)ほんの少し、違いが見られます。
まず、現代のグランドピアノの白鍵幅ですが、どのメーカーも同じで、約22.5mm。白鍵と白鍵の間の隙間は、約1mmで製作されるようです。
白鍵は、間に黒鍵が挟まるため、形はまちまちですが、手前の広い部分の間隔はみな同じです。

(グランドピアノ鍵盤)

一番左の低いラ(A0)から、一番右の高いド(C8)までの88鍵幅は、

22.5mm(白鍵の幅)×52(白鍵の数)+55mm(白鍵同士の隙間合計+α)= 1,225mm

になります。オクターブの幅は165mmです。
これは、メーカーによって弾き心地が極端に変わらないよう、配慮された結果なのではないか?と勝手に想像しています。

「白鍵と白鍵の隙間が1mmって、空きすぎじゃない?」と感じる方もおられると思います。
確かに、隙間をなるべくなくし、白鍵の幅を広く取る鍵盤が製作されていた時期もあったようです。
しかし、現在では隙間1mm程度に落ち着いています。

両手で和音を力一杯に叩いたりたりすると、鍵盤は右や左に多少ズレて押される場合があります。
鍵盤が横にずれないようにする制御ピンもありますが、鍵盤同士の間隔が狭すぎると、白鍵同士がぶつかり合って、うまく和音が鳴らせなってしまうのではないか。あくまで私の推測です。

あまり根拠にはならないと思いますが、指の力のすごく強い男性ピアニストが、「展覧会の絵」の「キエフの大門」をコンサート・グランドピアノが前後に揺さぶられるほど、力一杯弾いているのを見たことがあります。

(ムソルグスキー作曲「展覧会の絵」は、ラベル編曲のオーケストラ版が有名ですが、もともとはピアノ曲です)

フルコン・スタインウェイが壊れるんじゃないかとハラハラしながら見ていました。ピアノの耐久実験テストに立ち会っているような心境です(笑)

現代ピアノは、あらゆるピアニストの演奏に対応できるよう、かなり頑丈に作られており、鍵盤同士の隙間にも余裕を持たせているのでしょう。

「展覧会の絵」のピアノ名演奏動画はこちらがお薦め→ ムソルグスキー/「展覧会の絵」 フレディ・ケンプ Mussorgsky/Pictures at an Exhibition Pf:Freddy Kempf - YouTube

ラベル編曲「展覧会の絵」ベルリンフィル・カラヤンのオーケストラ名演動画はこちら→ ムソルグスキー - 組曲「展覧会の絵」 - YouTube

 

次に白鍵の長さですが、これにはメーカーにより違いがあるようです。
実際の鍵盤の長さは、隠れて見えない部分の方が、演奏者から見えている部分よりも長く、鍵盤全体としては、40cm以上のかなり長い棒になります。

スタインウェイの鍵盤メカニズム

転載元はこちら→ The Touch - The History of Steinway Piano Action - Steinway & Sons
ここでは目に見えている部分、赤いフエルトから手前の端までの長さについて調べてみることにします。演奏者から見えている白鍵部分は、最低音の「ラ」から最高音「ド」まで同じ長さです。

ヤマハは、150mm、スタインウェイは、148mmで、国内ピアノの方が若干鍵盤が長いことがわかります。

手持ちのシンセサイザーRoland XP-50で実測したところ、135mmでした。だいぶ短い!グランドピアノ鍵盤より15mmも短かったんですね。

(Roland XP-50)

今まであまり気にしてきませんでしたが、こんなに短かったとは。(汗)

まぁオルガン鍵盤ですし、シンセですし、ピアノじゃないですし、古い機材ですし・・・細かいことはいいんです。


グランドピアノの鍵盤アクション

2021年02月24日 | 日記

ピアノの鍵盤を押してから、ハンマーが弦を叩くまでのメカニズムはとても複雑です。
この部分全体を総称して鍵盤の「アクション」と呼ぶことにします。

(スタインウェイ鍵盤のアクション)

画像転載元はこちら→ STEINWAY(スタインウェイ)の秘密 Vol.2 アクションの秘密 - 島村楽器公式ブログ (shimamura.co.jp)

アクション全体は真鍮フレームに金属ネジでしっかり固定されていますが、メンテナンス性を高めるために、白鍵・黒鍵を束ねる木組みフレームと、ハンマーアクションを組み込んだ真鍮フレームとは、分離させることができます。
鍵盤アクションには全体的に木やフエルトが使われますが、重要な可動部分(レペティション)に、実はバネが使われていることをご存じでしょうか?

このバネ(レペティションスプリング)は、ハンマーが弦に当たった後のアクションの戻りを、スムーズにする目的に使われています。
アクションの戻りが早くなれば、その分次の動作に移りやすく、連打やトリルがスムーズになるというわけですね。ベートーベンの時代に発明された技術だそうです。
古いピアノ(1960年代くらいまでのピアノ)は1鍵盤に対し、戻しバネが1カ所しかなく、高速連打ができないシュワンダーアクションと呼ばれるタイプもあるようです。

旧レペティションスプリング(シングル型)

画像の転載元はこちら→ #261-11S GPレペティションスプリング シングル/ GP Repetition spring,single株式会社 渡辺商店 (watanabemusical.com)

現代のグランドピアノには1鍵盤に対し、レペティションの2カ所にバネが働く構造です。このバネは常にレペディションの間隔を広げようとする方向に力が働きます。洗濯ばさみと一緒ですね!

新レペティションスプリング(ダブル型)

画像の転載元はこちら→ #261-11W GPレペティションスプリング ダブル/ GP Repetition spring,double株式会社 渡辺商店 (watanabemusical.com)

このダブルスプリングシステムは、高速連打を可能にし、1つの鍵盤を1秒間に最高14回まで叩くことが可能です。すごい反応スピードですね!

このレペティションスプリングと、アクション全体への力のかかり具合が、グランドピアノ独特の鍵盤タッチを生み出します。「ダブル・エスケープメント」と呼ばれる機構です。

(グランドピアノのアクション模型)

グランドピアノの鍵盤をゆっくりと下ろしていくと、アクションが鍵盤の動きに反応してハンマーもだんだん弦に近づいていきます。

鍵盤の下ろし始めは小さな力で反発します。5mmほど押し込んだところで反発力が徐々に上がり始めます。鍵盤がハンマーを押し上げようとする力と、重力の重みでハンマーが下がろうとする力がせめぎ合い、さらにレペティションスプリングの反発力が働いているためです。

さらに鍵盤を押し込むと、「スコン!」といきなり空振りしたかのように(または、釣り上げる前に、魚をバラしてしまった時のような)無抵抗状態(レット・オフ)になり、ハンマーが鍵盤からの突き上げ力から解放され、やがて地球の引力に引かれ、弦から離れて落ちていきます。

この、「スコン!」といきなり抵抗がなくなる瞬間に、最もレペティションスプリングの力が働きます。またアクションが初期位置に戻された反動で、押した鍵盤にも「コツン」と何かが当たったような感覚が指先にフィードバックしてきます。グランドピアノならではの、独特なフィーリングです。

ダブル・エスケープメント機構のメリットは、鍵盤が上がりきる前に、もう一度鍵盤を押しても2度目の音を鳴らすことができる点です。

これは、鍵盤を押して音が鳴った瞬間に、すでにアクションが元の状態に素早くリセットされることにより可能となります。ダブル・エスケープメントは、アクションが多少複雑な構造にはなりますが、高速連打やトリルがとてもスムーズで、美しいピアノの響きを醸し出せる仕組みだったのです。

ハンマーアクションの説明動画はこちらがお薦め→ Howard Piano Industries

Piano Regulation - Grand Piano Repetition Spring Adjustment - YouTube

最近の電子ピアノやステージピアノ、シンセサイザーなどにも、「エスケープメント機構」を搭載する鍵盤アクションが出てきました。とても素晴らしいことだと思います!

ただ、電子楽器の性能向上で、本物のグランドピアノがだんだん売れなくなっていくのは心配です。私ごときが心配して、どうなることでもありませんが。

(エスケープメント機構を備えるRoland PHA-50鍵盤)

しかし、家にグランドピアノを置きたくてもおけない、防音室など作れない、そもそも設置場所がない、高額すぎて買えない、などグランドピアノ購入設置条件が整わない私などにとっては、とってもありがたいお話であることに、違いはないのです。


黒鍵の形、長さはメーカーによって異なる?

2021年02月24日 | 日記

ピアノの鍵盤は、どれも同じに見えて、よくよく調べてみると、ほんの少しずつ異なることがわかります。

例えば、スタインウェイ&サンズやベヒシュタインの黒鍵は、国内メーカー製グランドピアノの黒鍵より、若干細く見えます。

(スタインウェイの鍵盤)

画像転載元サイトはこちら→ 黒鍵の大きさって違うの?:スタインウェイ、中古ピアノなど色んなピアノのあるお店:So-netブログ (ss-blog.jp)

黒鍵の形状違いによる目の錯覚かな?と思っていろいろググって調べてみると、ヤマハの黒鍵打面幅は、約9.6mm、スタインウェイ&サンズの黒鍵打面幅は、約9.4mmという調査結果もあり、確かに実際細く作られているようです。

黒鍵は下に向かって太くなる台形で作られていますが、白鍵との隙間の広さによって受ける印象も異なります。また、スタインウェイの黒鍵は、角の面取りも他メーカーよりシャープに取られている印象があり、他メーカーの鍵盤より細く感じるのかもしれません。

黒鍵が細いから弾きにくい、ということは実際にはありません。身長が高く、指が太めの西洋人男性には、このほうが弾きやすいのかもしれません。また指が細い人にとっては、ヤマハやカワイの鍵盤の方が、案外弾きやすく感じるかもしれません。

実際ショパンが活躍していた時代のピアノは、現代のピアノ鍵盤より若干細く作られていて、オクターブまでの距離も今より3mmほど短かったそうです。音量は現代のピアノよりだいぶ小さかったようですが。

ちなみに、スタインウェイの黒鍵の長さは93mm、ヤマハ黒鍵の長さは95mmとのこと。

(ヤマハのグランドピアノ)


白鍵のドとファは同じ形?

2021年02月23日 | 日記

ピアノは比較的歴史の長い楽器です。今まで様々な国の文化、技術、アイデアが盛り込まれて、いまの鍵盤の形に落ち着いてきました。

ピアノよりも歴史の古いパイプオルガンの鍵盤は、元々は「白鍵」と言っている部分は黒檀で黒く、私たちが「黒鍵」と呼ぶ部分は、白木か象牙トップで白いです。つまりオルガンの場合、白鍵と黒鍵は、鍵盤の白黒が逆転しているんですね。モーツアルトが生きて活躍していた時代のピアノもそうでした。

(京都コンサートホールのパイプオルガン)

よく見ると、鍵盤の長さもピアノよりもだいぶ短いし、鍵盤の角も少し尖っていますね。

このようにあえて昔の伝統的な鍵盤で作られることもありますが、いまのピアノのようなタイプの鍵盤で作られているオルガンも、もちろんあります。

さて話は変わって、鍵盤の形って結構複雑にできているので、気になっていろいろ調べてみることにしました。

自宅にあるRoland XP-50(20年以上前のシンセサイザーですが)の場合、どうなっているか定規を当ててみると、ドレミファソラシまでの白鍵の幅は16.2cmでした。

別のサイトで見つけたグランドピアノ鍵盤の詳細なサイズ表です。

転載元サイトはこちら。(無断転載ごめんなさい!)

【細幅鍵盤4】ピアノ鍵盤設計と鍵盤サイズについて – 私は何から出来ているのか? (komoriss.com)

この表によると、ドとファの白鍵の形は同じのようで、実は1mm形が異なる部分があります。同様に、白鍵のミとシも、やはり形は似ていますが異なります。

(本物のグランドピアノ鍵盤)

また、ド#とレ#の黒鍵同士の幅は、ファ#とソ#の黒鍵同士の幅より1mm広く取られていることがわかります。

この表はドイツ、ベヒシュタイン社の鍵盤サイズとのことですが、どのメーカーもだいたいこのサイズで作られていると思います。

私が持っているRoland XP-50鍵盤は、グランドピアノの鍵盤に比べると、やや全体が細く作られていることがわかります。確かにこのほうが、オクターブに指が届きやすいですし、グリッサンドもやりやすい。

電子楽器の鍵盤は、どうやらグランドピアノ鍵盤とは少し、事情が異なるようです。


ピアノ鍵盤は、地面に対して水平?

2021年02月22日 | 日記

ピアノの白鍵は、ぱっと見が地面と水平に見えますが、本当に水平なのか気になったので、実際に手持ちの水平器で簡単な測定をしてみました。

自宅の電子ピアノですが、若干上向き加減ですね・・・水平じゃない。

電子ピアノだから?というわけでもなさそうですが。

黒鍵の傾きはさらに上向いていますね。

鍵盤を押し込んだところで、水平器を当ててみると、地面に対して水平になりました。

本物のピアノもそうなるのかすごく気になるところです。

あいにく生ピアノは持っていないので、今度グランドピアノを触る機会があったら、是非測定してみたいと思います。

もし、グランドピアノと水平器を両方お持ちの方いらっしゃいましたら、是非結果をコメント欄にご記入いただけますと嬉しいです!


ピアノ鍵盤の高さは、地面から何センチ?

2021年02月22日 | 日記

自宅の電子ピアノで測ってみたら、床から白鍵打面までの高さは、74cmでした。(インシュレータなし)

ほかのピアノは何センチなのか気になり、調べてみたら結構まちまちのようです。

グランドピアノの場合は、平均73cm程度で、ものによっては70cmだったり75cmだったり、また同じメーカーのピアノでも、製造された年代によって、高さが変わっていたり。

事務机や会議テーブルの高さは、だいたい70~72cmですから、机の高さより、鍵盤の高さは1cmほど高くなっているのが、一般的のようです。

また、鍵盤は1cmの可動域があるので、白鍵を押した時の打面の高さが、ちょうど机の高さになるように設計しているのかな?と考えてみたり。

ちなみに、ヤマハやスタインウェイのグランドピアノの場合、床から白鍵打面までの高さは、約73cmです。


川口SOGOにお出かけ

2021年02月21日 | 日記

来週で川口SOGOが閉店します。が、その前に川口市民としてちゃんと立ち寄っておこうと思いました。

いよいよお別れとなるとさみしいです。

桃源で3000円のスペシャルコース中華を食べました。

スパークリングカクテルとてもおいしかったです。

いままでありがとう!川口そごう。

閉店セールでタオルを1枚買って帰りました。


PHA-50鍵盤について

2021年02月20日 | 日記

Rolandのデジタルグランドピアノの最高峰「GP609」にも搭載されているPHA-50鍵盤は、木材と樹脂センターフレームのハイブリッド構造になっていて、高い演奏性と耐久性を両立した高性能鍵盤です。

(PHAは、プログレッシブ・ハンマー・アクションの略だそうです。)

Roland Fantom8にも搭載されている鍵盤です。

つまり、Fantom8の鍵盤は、Rolandの最高級デジタルグランドピアノと弾き心地が一緒!ということになりますね。

普通の電子ピアノよりも鍵盤が5mmほど長く作られていて、鍵盤の支点から端までの距離が長くなるため、鍵盤の奥側、深い位置で弾いた時の感覚にあきらかな差が感じられます。

内部のクッション材にも工夫がみられ、打鍵時、鍵盤リリース時の静寂性が増しているとのこと。


(Roland社 PHA-50鍵盤)

他の88鍵盤の電子楽器と比較していると、いろいろと迷いますが、どれが一番いいかではなく、どれが一番自分の求める好みにフィットするか、そういったベクトルで購入検討するのもありなのかな?と思います。


Roland Fantom8について

2021年02月20日 | 日記

新しい88鍵盤を購入しました。Roland社製のFantom8です。まだ自宅には届いていませんが、到着がいまから楽しみでしかたありません。(3月中には届くらしい)

このシンセサイザーは、鍵盤が全体的に木製鍵盤のような作りになっているのが特徴的で、黒鍵も見た目は黒檀調です。

白鍵を押すと、隣接する鍵盤サイドに白木が出現します。その見た目はまるで、本物のグランドピアノのよう。

試奏した感触も、他の電子ピアノや88鍵シンセサイザーとは一線を画す弾き心地になっています。

もちろん、本物のグランドピアノ鍵盤のタッチには及びませんが、それでも黒鍵を叩いたときの感触は今までとはちょっと異次元のさわり心地です。黒鍵の角が今までの製品よりややシャープになっているため、弾きやすい(掴みやすい?)のかなと感じます。正直びっくりしました。

角がシャープになった分、黒鍵の見た目が若干細く感じるところなどは、スタインウェイのフルコン(フル・コンサートピアノ)を連想させます。

黒鍵のさわり心地がツルっ!ペロッ!としたプラスチックの感触ではなく、フルコンの黒檀鍵盤のように、さらっとした感触なのは、とっても良い!です。最近の電子楽器の進歩ってすごい・・・