ATARI MUSIC STUDIO

ピアノを中心に様々な曲を編曲・演奏します。ブログでは音楽関係のつぶやきを中心に書き込みします。
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グランドピアノの鍵盤アクション

2021年02月24日 | 日記

ピアノの鍵盤を押してから、ハンマーが弦を叩くまでのメカニズムはとても複雑です。
この部分全体を総称して鍵盤の「アクション」と呼ぶことにします。

(スタインウェイ鍵盤のアクション)

画像転載元はこちら→ STEINWAY(スタインウェイ)の秘密 Vol.2 アクションの秘密 - 島村楽器公式ブログ (shimamura.co.jp)

アクション全体は真鍮フレームに金属ネジでしっかり固定されていますが、メンテナンス性を高めるために、白鍵・黒鍵を束ねる木組みフレームと、ハンマーアクションを組み込んだ真鍮フレームとは、分離させることができます。
鍵盤アクションには全体的に木やフエルトが使われますが、重要な可動部分(レペティション)に、実はバネが使われていることをご存じでしょうか?

このバネ(レペティションスプリング)は、ハンマーが弦に当たった後のアクションの戻りを、スムーズにする目的に使われています。
アクションの戻りが早くなれば、その分次の動作に移りやすく、連打やトリルがスムーズになるというわけですね。ベートーベンの時代に発明された技術だそうです。
古いピアノ(1960年代くらいまでのピアノ)は1鍵盤に対し、戻しバネが1カ所しかなく、高速連打ができないシュワンダーアクションと呼ばれるタイプもあるようです。

旧レペティションスプリング(シングル型)

画像の転載元はこちら→ #261-11S GPレペティションスプリング シングル/ GP Repetition spring,single株式会社 渡辺商店 (watanabemusical.com)

現代のグランドピアノには1鍵盤に対し、レペティションの2カ所にバネが働く構造です。このバネは常にレペディションの間隔を広げようとする方向に力が働きます。洗濯ばさみと一緒ですね!

新レペティションスプリング(ダブル型)

画像の転載元はこちら→ #261-11W GPレペティションスプリング ダブル/ GP Repetition spring,double株式会社 渡辺商店 (watanabemusical.com)

このダブルスプリングシステムは、高速連打を可能にし、1つの鍵盤を1秒間に最高14回まで叩くことが可能です。すごい反応スピードですね!

このレペティションスプリングと、アクション全体への力のかかり具合が、グランドピアノ独特の鍵盤タッチを生み出します。「ダブル・エスケープメント」と呼ばれる機構です。

(グランドピアノのアクション模型)

グランドピアノの鍵盤をゆっくりと下ろしていくと、アクションが鍵盤の動きに反応してハンマーもだんだん弦に近づいていきます。

鍵盤の下ろし始めは小さな力で反発します。5mmほど押し込んだところで反発力が徐々に上がり始めます。鍵盤がハンマーを押し上げようとする力と、重力の重みでハンマーが下がろうとする力がせめぎ合い、さらにレペティションスプリングの反発力が働いているためです。

さらに鍵盤を押し込むと、「スコン!」といきなり空振りしたかのように(または、釣り上げる前に、魚をバラしてしまった時のような)無抵抗状態(レット・オフ)になり、ハンマーが鍵盤からの突き上げ力から解放され、やがて地球の引力に引かれ、弦から離れて落ちていきます。

この、「スコン!」といきなり抵抗がなくなる瞬間に、最もレペティションスプリングの力が働きます。またアクションが初期位置に戻された反動で、押した鍵盤にも「コツン」と何かが当たったような感覚が指先にフィードバックしてきます。グランドピアノならではの、独特なフィーリングです。

ダブル・エスケープメント機構のメリットは、鍵盤が上がりきる前に、もう一度鍵盤を押しても2度目の音を鳴らすことができる点です。

これは、鍵盤を押して音が鳴った瞬間に、すでにアクションが元の状態に素早くリセットされることにより可能となります。ダブル・エスケープメントは、アクションが多少複雑な構造にはなりますが、高速連打やトリルがとてもスムーズで、美しいピアノの響きを醸し出せる仕組みだったのです。

ハンマーアクションの説明動画はこちらがお薦め→ Howard Piano Industries

Piano Regulation - Grand Piano Repetition Spring Adjustment - YouTube

最近の電子ピアノやステージピアノ、シンセサイザーなどにも、「エスケープメント機構」を搭載する鍵盤アクションが出てきました。とても素晴らしいことだと思います!

ただ、電子楽器の性能向上で、本物のグランドピアノがだんだん売れなくなっていくのは心配です。私ごときが心配して、どうなることでもありませんが。

(エスケープメント機構を備えるRoland PHA-50鍵盤)

しかし、家にグランドピアノを置きたくてもおけない、防音室など作れない、そもそも設置場所がない、高額すぎて買えない、などグランドピアノ購入設置条件が整わない私などにとっては、とってもありがたいお話であることに、違いはないのです。


黒鍵の形、長さはメーカーによって異なる?

2021年02月24日 | 日記

ピアノの鍵盤は、どれも同じに見えて、よくよく調べてみると、ほんの少しずつ異なることがわかります。

例えば、スタインウェイ&サンズやベヒシュタインの黒鍵は、国内メーカー製グランドピアノの黒鍵より、若干細く見えます。

(スタインウェイの鍵盤)

画像転載元サイトはこちら→ 黒鍵の大きさって違うの?:スタインウェイ、中古ピアノなど色んなピアノのあるお店:So-netブログ (ss-blog.jp)

黒鍵の形状違いによる目の錯覚かな?と思っていろいろググって調べてみると、ヤマハの黒鍵打面幅は、約9.6mm、スタインウェイ&サンズの黒鍵打面幅は、約9.4mmという調査結果もあり、確かに実際細く作られているようです。

黒鍵は下に向かって太くなる台形で作られていますが、白鍵との隙間の広さによって受ける印象も異なります。また、スタインウェイの黒鍵は、角の面取りも他メーカーよりシャープに取られている印象があり、他メーカーの鍵盤より細く感じるのかもしれません。

黒鍵が細いから弾きにくい、ということは実際にはありません。身長が高く、指が太めの西洋人男性には、このほうが弾きやすいのかもしれません。また指が細い人にとっては、ヤマハやカワイの鍵盤の方が、案外弾きやすく感じるかもしれません。

実際ショパンが活躍していた時代のピアノは、現代のピアノ鍵盤より若干細く作られていて、オクターブまでの距離も今より3mmほど短かったそうです。音量は現代のピアノよりだいぶ小さかったようですが。

ちなみに、スタインウェイの黒鍵の長さは93mm、ヤマハ黒鍵の長さは95mmとのこと。

(ヤマハのグランドピアノ)