内容(「BOOK」データベースより)
夢にも見るほど憧れて慕う良寛さまに差し上げようと、今日も日がな一日七彩の絹糸で手毬をかがる若き貞心尼。―17才の秋に医者に嫁いで5年、夫の急死で離縁され24才で出家した長岡藩士の娘、貞心が、70才の良寛にめぐり逢ったのは30才の時だった。行商のいなせな佐吉に恋慕をぶつけたくなる貞心のもうひとつの心の安らぎと、師弟の契りを結んだ最晩年の良寛との魂の交歓を描く。
【良寛と貞心尼の恋歌】を読んで、もう少しこのお二人のことを知りたくなって、こちらを読んでみました。
でもこれはノンフィクションではなく、あくまでも寂聴さんの実在した人物をモデルにした「小説」なんですよね。
そう思って読まなくてはいけないと思いました。
良寛さんと貞心さんの出会いから交流のおおまかな流れは多分事実に基づいているんでしょうが、貞心さんの旅商人への恋心みたいなあたりについては、鵜呑みにできないかな、と思いつつ。
ただ、100%フィクションとして読むにはあまりにも実在した二人の情報がありすぎるし、そこに少しのフィクションというのがどうも混乱させられる感じではありました。
でも70歳の良寛さんと30歳貞心さんが心を通わせた3年間について、貞心さんの心情をこまかく描かれていて、「恋歌」だけではわからない、貞心さんの生活や気持ちがリアルに感じられました。
そして商人佐吉の「人間、誰かに惚れると、群れの中にいるほど孤独が身にしみます」という言葉が胸にギュっと来ました。
最後、良寛さんの最期を看取る貞心さんのくだりは、涙なくしては読めませんでした。
これを読んで、もう一度【良寛と貞心尼の恋歌】をまた読み返したくなりました。