atabichaのきまぐれ手帖

更新は不定期です。
本や映画の感想やお出かけの記録など。

【手毬】瀬戸内寂聴

2014年06月27日 | 




内容(「BOOK」データベースより)

夢にも見るほど憧れて慕う良寛さまに差し上げようと、今日も日がな一日七彩の絹糸で手毬をかがる若き貞心尼。―17才の秋に医者に嫁いで5年、夫の急死で離縁され24才で出家した長岡藩士の娘、貞心が、70才の良寛にめぐり逢ったのは30才の時だった。行商のいなせな佐吉に恋慕をぶつけたくなる貞心のもうひとつの心の安らぎと、師弟の契りを結んだ最晩年の良寛との魂の交歓を描く。


【良寛と貞心尼の恋歌】を読んで、もう少しこのお二人のことを知りたくなって、こちらを読んでみました。
でもこれはノンフィクションではなく、あくまでも寂聴さんの実在した人物をモデルにした「小説」なんですよね。
そう思って読まなくてはいけないと思いました。

良寛さんと貞心さんの出会いから交流のおおまかな流れは多分事実に基づいているんでしょうが、貞心さんの旅商人への恋心みたいなあたりについては、鵜呑みにできないかな、と思いつつ。

ただ、100%フィクションとして読むにはあまりにも実在した二人の情報がありすぎるし、そこに少しのフィクションというのがどうも混乱させられる感じではありました。

でも70歳の良寛さんと30歳貞心さんが心を通わせた3年間について、貞心さんの心情をこまかく描かれていて、「恋歌」だけではわからない、貞心さんの生活や気持ちがリアルに感じられました。

そして商人佐吉の「人間、誰かに惚れると、群れの中にいるほど孤独が身にしみます」という言葉が胸にギュっと来ました。

最後、良寛さんの最期を看取る貞心さんのくだりは、涙なくしては読めませんでした。

これを読んで、もう一度【良寛と貞心尼の恋歌】をまた読み返したくなりました。


【超高速!参勤交代】観て来ました!

2014年06月23日 | 映画・DVD


土曜日、久しぶりにオタマと二人で映画を観てきました。
作品は、【超高速!参勤交代】
オタマは大好きなへーせじゃんぷの知念クン目当て。
ワタシは主演の佐々木蔵之助目当て。(笑)

めずらしく2人の観たい映画が一致したので。
オタマと一緒に観るのって、「愛と誠」以来かな?ずいぶん前だわ~。

映画は、久しぶりに普通に笑って見られる楽しい映画でした。

見所はやっぱり、飛脚姿の知念クンのおしりでしょうか・・・(笑)

舞台挨拶でご本人も言ってましたしね。

佐々木蔵之助さんも、人の良いお殿様役ってピッタリでした。

西村雅彦さんも、怖かった!(笑)

深キョンはキュートだったし。

もう一度観たい!・・・とまではいかないけど(ごめんなさい)、でもかなり楽しく観られる映画でしたよ。

最後、上地クンも死んじゃったかと思ったらちゃんと生きててホッとしました。

【家鳴り】篠田節子

2014年06月13日 | 


内容(「BOOK」データベースより)

妻が際限なく太っていく―。失業中の健志を尻目に、趣味で始めた手芸が世間の注目を集め、人気アーティストとなった治美。夫婦の関係が微妙に変化するなか、ストレスとプレッシャーで弱った妻のために健志が作り始めた料理は、次第に手が込み、その量を増やして…(「家鳴り」)。些細な出来事をきっかけに、突如として膨れ上がる暴力と恐怖を描いたホラー短篇集。表題作を含む7篇を収録。


「突如として膨れ上がる暴力と恐怖を描いたホラー」今回は、まさにそんな感じの7篇でした。


【幻の穀物危機】
怖くて、おぞましくて、悲しくなるお話し。
まさか、と思うと同時に、ありえるかも、とも思ってしまう。
結局怖いのは極限に追い込まれた人間が一番怖いってことか。


【やどかり】
これもね、智恵が中学生ながらとんでもない女で、それに引っかかる哲史がバカなんだと言ってしまえないこともないけど。
そんな風にならざるを得なかった智恵の生い立ちが不憫。
でもやっぱりホラーなんですね。怖い怖い。


【操作手(マニュピレーター)】
前回の「純愛小説」の中の「鞍馬」もうそうだったけど、「痴呆症」とか「精神の病」と言われている人だって、四六時中自分を失っているわけじゃないんだと、読んでいて思った。
傍から見たら何もわかっていないように見えても、人間である以上、感情もあれば思考もする。
それが見えてこないから、怖い。
そしてこの話はロボットが意志を持って動き出すという恐怖も。
これが須磨子の見る幻影なのか、と思ったら・・・。


【春の便り】
これまた、痴呆と判断されている老女にまつわる話し。
ただ、これは本来知るはずのない外の情報を知っていたり、という事から、途中までは魂が体から離れて空中浮遊するとか、そういう話しなのかと思いました。
それがなんだかホラーになって行くんですね。やっぱり。
ホラーだから、正確な答えなんてないんだけど。
かなり不思議なお話しではあります。


【家鳴り】
これはねぇ。最初から違和感ありありで読みました。
一見、妻の方がおかしくなった事から始まりますけど、どう見ても夫の方も狂っているとしか思えない。
まともな感覚じゃないですよね。
ラーメンの時点ですでに。
結果は、然り。
「家鳴り」ってそういうことかと、タイトルに終盤になって納得。


【水球】
篠田節子はやっぱり女性目線の人物描写だなぁと思ってはいましたけど、このお話しはさすがに中沢が少し気の毒になってしまった。
たしかに不倫していた挙句に自分の都合で一方的に別れを告げたのは理子に対しても家族に対しても言い逃れはできないことなんだけど。
これでもかと押し寄せる不幸。
それでも中沢が生きていこうとする終わりにはちょっと救われた。
いや、それほど希望的な終わりではないんだけど。


【青らむ空のうつろのなかに】
これも、終わりは不思議で終わるけど、かなりせつないです。
母親に意味なく虐待された光が、ようやく見つけた心を許せる対象が、食肉として育てられた豚とは。
自身も酷い体験をしてきた稲垣も気の毒。光をなんとかしたいという思いはあっても、届かなかった。
結局、あの豚と光はどうなったのか。


このところ、じっくり本を読む余裕が時間的にも精神的にもなくて短編集が続きました。
そろそろ長編もまた読みないな〜と思いつつ。次は何を読もうかな。


【純愛小説】篠田節子

2014年06月11日 | 


内容(「BOOK」データベースより)

純愛小説で出世した女性編集者を待ち受ける罠と驚愕の結末、影のように慎ましく生きてきた女性が抱く最初で最後の狂おしい想い、息子の恋人に抱いてしまったときめき、年齢を超え理不尽なまでの磁力で惹かれあう男女…成熟したからこそ逃れがたい「恋」という名の愚行がときに苦く、ときに危険なほど甘やかに綴られる4篇の物語。直木賞作家、円熟の筆が冴える、ほんとうの大人のための“ロマンティック・ラヴ”。


個人的には、↑の内容紹介にあるような「ほんとうの大人のための“ロマンティック・ラヴ”」というのとは印象はちょっと違いましたね。
そんな甘やかなお話しではないです。4篇ともに。

【純愛小説】
これの感想は、多分男女でかなり違いがあるんじゃないかなと思いました。
単純に、男は家庭にもどったんだからいいじゃないか、という意見もたしかにあるんでしょうけど。
妻の気持ち、わかります。好き嫌いは別としてね。


【鞍馬】
これは、なんともやるせないお話し。
3姉妹それぞれの生き方、言い分もわからなくないし。
でも結果、やっぱりやるせない。そんな気持ちになりました。


【知恵熱】
これはね、わかりません。(笑)
ワタシは娘しかいないし、男兄弟もいなかったので。
息子を持つ母の気持ちとか、やっぱりわからない。
でもまぁ、事件もおこらないのでそれなりに平和に読めました。


【蜂蜜色の女神】
これもまた、よくわからない。
何がって、47歳の「希恵」の気持ちが。
短編なのでそれなりに制約もあってのことかもしれないけれど。
男や妻から見た外見的なことばかりで希恵自身の気持ちがちっとも書かれていない。
これは、わざと?


4篇とも、サクッと読めたけど、(あー面白かった)という感じではないかな。
それぞれ、見につまされたり考えさせられたり、という感じでした。
しかし篠田節子の人物描写は容赦ないですね。

【良寛と貞心尼の恋歌】新井 満

2014年06月06日 | 


前から読みたいと思っていた、新井満・自由訳/【良寛と貞心尼の恋歌】を読みました。

良寛と貞心尼の相聞歌集『はちすの露』54首を新井満さんが自由訳してまとめられた1冊。

電話もメールもない、車も電車もなく、移動手段は足、という時代。

40も歳の離れた二人にとって、心を通わせた3年間、その間に一緒に過ごせた時間はどれだけ濃いものだったんだろうかと。

実際に相手を目の前にして交わす言葉、歌にその喜びが詰まっています。

もうね、読んでいて本当に涙が出ました。

たまらない気持ちになりました。


霊山の 釈迦の御前に 契りてし ことな忘れそ 世は隔つとも(良寛)

霊山の 釈迦の御前に 契りてし ことは忘れじ 世は隔つとも(貞心尼)


このくだりには、もう泣かされました。
ただ言葉を交わし、歌を交わすだけのようでも、2人の心は間違いなく結ばれていたんだと。

新井満さんの自由訳がまた、すごくよかった。
良寛さんの言葉が、歌だけを読むよりもずっとずっと人間臭くて。

新井さんが自由訳について、

①原作詩のコンセプトは絶対厳守すること
②できる限りわかりやすい日本語で表現すること

の2点を自分自身に課したとありました。

これはもう、繰り返し読みたい1冊です。
愛読書として大事にします。