こんにちは!月水クラス担当の大窪です。
さて、今回は「自然物と人工物の描き分け」についてお話したいと思います。
まず、私達の身の周りにある自然物と人工物はどんなものがあるでしょうか?
自然物… 果物、野菜、動植物など
人工物… 瓶や缶などの工業製品、日用品、建築物など
これらを知った上でモチーフを改めて見て見ると、自然物と人工物とが組み合わさっている事が多いと思います。
また、直接的に自然物がなくともその素材が部分的に使われていたり…なんていうこともしばしば。
美大受験生には普段から耳元で念仏のように唱えていますが、「茎が細く可憐な花」と「硬く重いガラスの花瓶」の描き方(タッチの長さや筆圧、色の発色や濃度など)が同じではお互いの良さが引き立ちません。
可憐な花が重苦しく描かれていては台無しです。
また、そのものを良く観察してモチーフそれぞれの特徴や構造を捉えるということが出来ると、そこから自分なりにアレンジしたり、色味を変化させたりする事が出来るようになります。
基本なくして応用なし!
こちらは、私が受験生の時に描いた静物画です。いやぁ…懐かしい気持ちと共にスランプで辛かった日々が思い出されますね…。
画材は、画用紙に透明水彩とアクリル絵の具を使用しています。
背景も現実的な色で描いてあるので、皆さんが静物画を描く時の参考にしやすいかもしれません。
壁にはシャツとドライフラワーが吊されており、手前にガラス器や箱などが置かれていました。
上の絵ですと、ドライフラワー、レモンが自然物。
箱、石膏球、ガラス器、シャツなどが人工物ですね。
人工物より自然物が好きだったのですが、ガラスに映る現象(ゆがみや光などの映り込みの事)をしっかりと描くとガラスそのものも強く表現出来るんだなぁと、実感出来た作品です。
透明で重みを感じるガラス、古びた壁、カサカサと乾燥したドライフラワー、柔らかいシャツなど、どれとどれが対比の質感なのか気付くだけでも描く意識が変わると思います。
さて2枚目も静物画ですが、背景は紙の色のままでいわゆる白バックです。
水草のホテイアオイがビーカーに入っていたのですが、そのガラス越しに見える根の密集具合と美しさに感動してこの位置から描いた事を覚えています。
この頃は、中間色(鮮やかではない色、ハーフートーンや少しくすんだ色など)が使えるようになってきた頃で、植物それぞれの葉の描き分けが楽しくて仕方なかったですね〜。
ここでは先ほどよりも人工物と自然物の差が分かりやすいと思います。
例えば、手前の黒いビニールポットとホテイアオイの根の色はどちらも明度は低く暗い色です。
ビニールポットはチューブから出した黒とグレーをしっかりと使っているのに対し、根の方はあまりチューブの黒は使わずに茶色系統に紺色などを混ぜて自然物の暗い色になるよう心がけました。
葉の緑も着色料の緑○号!のような毒々しい色にならないように混色しています。対してホーローの青いフチはチューブの青をそのまま濃く使い、塗装された青の印象を作っています。
その他にも、黄色いセロファンと王林の明るい黄緑など…各所に対比になるような要素があると思います。
もちろん、着彩に入る前の下描きの形どりの段階でも植物の茎が直立して土から生えていたら、中に針金でも入っているのか??と疑いたくなります。
また、ビーカーの円柱がふにゃふにゃと歪んでいたら検品作業をクリアした実験用品には到底見えないでしょう。
このように、デッサン・着彩どちらにおいてもこの描き分けが出来た方が、より絵に深みが増しますので是非意識して実践してみてくださいね!