ゴールデンウィークは伊勢に行ってきました。
小学校時代の修学旅行に行きましたが、わずかの記憶しかありません。
まず最初に、夫婦岩に行きました。前日は台風のような天気だったようで、この日は雲ひとつない抜けるような晴天でした。

とても多くの観光客が来られておりました。風がとても強く、大きな波が打ちつけ波しぶきで濡れながらのお参りでした。
そして翌日は伊勢神宮に行ってきました。

新緑が非常にきれいで清々しい雰囲気でした。
ガイドの方に解説していただきながら回ったので、各々の建物のことや歴史など良く分かりました。
案内を聞きながら歩いていると、下の写真のような小さな石がありました。

ガイドの方によると、ここではもともとはこの小さな石をお祀りしていたようで、これが原初の姿だということです。
それが、後々、周囲に囲いを作ったり、屋根を作ったりして、長い年月をかけて今の神宮の形になっていったようです。
しばらく見ていましたが何の変哲もない普通の石でした。
ガイドの方に言われないとまず気付くことはないと思います。
昔の人がこのような小さな石を祀り、手を合わせて拝んでいたのだと思うと、現代の人にはない、あるいはなくしてしまったのかもしれない精神があったのかな、と考えさせられました。
それは、自然を敬い、畏れ、感謝する心でしょうか。
それとも、「山川草木悉皆成仏」という言葉が大乗仏教にありますが、それに近い感覚なのでしょうか?
先日、テレビを見てましたら哲学者の梅原猛先生が出ておられ「私は80歳を過ぎて初めて哲学者になったように思います。」とおっしゃっており、とても意外で驚いたのですが、そのお話の中で、「山川草木悉皆成仏、という大乗仏教の思想はとても日本人的であり、日本人のメンタリティーを表している。今のような文明や資本経済が過度に発達した時代に必要なのはその精神だ。」という意味の言葉がありました。
普段の忙しい日常生活では、そのようなことを考えたり感じたりすることがなかなか無いのが実情ではないでしょうか?
しかし、時々はちょっと立ち止まってそのようなことに思いを馳せることも重要ではないでしょうか?
参拝が終わって宇治橋を渡ろうとすると、その横手の草木が茂っている向こうにうっすらと建物が見えました。

聞けば、これはパナソニックの創業者である松下幸之助が私財を投じて寄贈した茶室とのこと。
ガイドの方によると総工費は、なんと数十億円!
しかも一度、原寸大のものを作ってみて、吟味し、推敲して、それから最終的な茶室を作ったということでした。
以前に読んだ本で松下さんが伊勢神宮の依頼で茶室を作ったのは知っており、一度見てみたいと思っておりました。
しかし、現場に行って見て、そのような話を聞くと、驚きを通り越して感動さえおぼえました。
こういうものを文化というのか、などと考えさせられました。
間違いなく松下さん渾身の仕事であったのはずです。
このように伊勢神宮を回ってきましたが、そこには一つとして浅薄なものはなく、人間の本来持っているはずである荘厳で偉大な精神が感じられました。
とてもいいリフレッシュになり、また改めてゆっくり行きたいと思います。
小学生の時は何も分からず行ったので、ほとんど記憶はなく感慨もないのですが、約30年ほど経って自分も変わったな、と実感しました。
その変化が進歩であって退歩ではないことを願いますが・・・・・・。
アートセンター歯科 院長 大西