自衛隊を国防軍に5

自衛隊は軍隊であるか？　二つの見解をご紹介してみます。こうした相反する見解が出るのですから難しい。こんな議論よりやはり私は軍隊として規定すべきと考えます。

【自衛隊は軍隊である】
自衛隊が軍隊であるかどうかは、２つの観点から検討する必要があります。
第１に国際法上、軍としての交戦権が認められるために武装組織に求められる条件を満たしているかということです。
戦場において公然と武器を携行すること、識別可能な制服あるいはマークを着用していること等があります。この様な条件を満たしていないと、戦争状態下で捕虜となった時に構成員は軍人として当然保障される権利が認められず、犯罪者として処罰されるおそれが出てきます。自衛隊はこの点では、国際法上の交戦権のある武装組織と考えてよいと考えられます。

第２に軍法等国内法上必要な制度が担保されているかという問題があります。
軍法の欠落という点から、自衛隊は軍隊ではないと考えることには一理あると思いますが、一方で自国の軍隊を規定・規制する法律をどの様に定めるかは各国の主権の問題ですので、軍法の不在だけを理由に自衛隊は軍隊ではないと言い切るのは難しいと思います。
自衛隊の存在の根拠となるのは、防衛省設置法と自衛隊法です。憲法には明記されていません。したがって、国内法上、自衛隊が軍隊として必要な制度が国によって担保されているかどうかは、自衛隊法と防衛省設置法（関連する下位法及び規則を含む）の記述事項を詳細に検討すべきだと思います。

誤解なきように願いたいのは、戦車や戦闘機等を持っていることと軍隊であることはイコールではありません。戦車や戦闘機を全く保有せず、小銃しか持たない歩兵の集団であっても、国際法上の要件を満たせば軍隊になります。

【自衛隊は軍隊ではない】
自衛隊は軍隊ではありません。
確かに軍隊が保有している軍事用の兵器や装備品を保有し、それらを運用する人員を軍隊と同様で階級により区分し、組織編制も軍隊と同様に編成しています。
いわゆる見た目は軍隊と同じと言えます。

しかし、そうした外面的要素だけで軍隊と呼べるでしょうか。
自衛隊は軍隊としての重要な要素を保有していないと私は思います。それは軍法です。

何処の国の軍隊でも軍人は軍法により行動が規定され、軍法により処分されます。
不祥事となる事件や事故が発生した場合、軍人は軍法会議により処分が決定されるのです。
日本には軍法なるものが存在しません。
ですから軍法会議によって自衛官が裁かれることはありません。

自衛隊の組織には警務隊という組織があります。
警務隊は自衛隊の警察組織なのですが、最終的には検察に送検され一般人と同様に通常裁判により判決が下ります。
軍隊組織と言える組織は常に自己完結性が必要とされますが、組織内犯罪においても同様にその機能を保有しなければ、軍隊とは言えないのです。

例えれば、ある自衛隊の重要施設を警護していた自衛官が、不法に侵入してきた不審者に対して保有している武器を使い、銃殺、或いは怪我を負わせたとします。
現状の法整備であればその自衛官が行った行動の正当性は普通の法律の判断により行われます。
自衛官が武器を使用できるのは、正当防衛又は緊急避難として法的に認められる場合だけであり、それに該当しないと判断される場合、その自衛官は職務上必要な行動であったとしても処罰の対象になる可能性があるということです。
このような事態がおこるのは自衛隊が軍法を持たない、軍隊でないと言うひとつの要素であり弊害とも言えるかもしれません。

地元の防災組織として活動している消防団は、消防車や災害対処の装備を有していますが、消防署ではありませんよね。
消防団は地元有志によるボランティアで構成され、消防署員は公務員ですよね。
いくら装備が同じように有ったとしても、その立場はあくまでも法的な裏づけがあってこそだと思います。
ですから自衛隊は日本に対して直接又は間接的な侵略行為が行われた場合の国防災害対処組織であり、軍隊とは言えないと考えます。

外国から見れば当然自衛隊は軍隊と見るとは思いますよ。
特に日本の主権を脅かそうと行動する国にとっては邪魔な実力組織、いわゆる軍隊として認識するでしょうから。