第Ⅴ章 2. 10)胴差と梁の仕口、胴差・梁と管柱の仕口
(1)胴差と梁が天端同面の場合
①胴突付(小胴突) 腰掛け蟻掛け
いずれも柱根ほぞ・頭ほぞは長ほぞ差し。普通に行われる方法。
柱ほぞは短ほぞ差しよりも、長ほぞ差しの方が適切である。込み栓を打てばさらに確実。
短ほぞ差しの場合は山型プレート、平金物などによる補強が必要。筋かいの取付く箇所では、ホールダウン金物を必要とする場合がある(告示第1460号)。
①胴突付 (又は小胴付) 腰掛け蟻掛け
図A 図Aは、胴差丈≧梁丈、天端同面の場合。
胴差下に管柱があるときは、胴突を梁丈いっぱいに設けることができる。下に管柱がないときは、胴突の丈を小さくして腰掛けの効果を確保する。
図B
図Bは、梁丈≧胴差、天端同面の場合。
下に管柱がなければ梁下端がこぼれ不可能。梁の胴突を管柱の木口にのせかける。大入れ蟻掛けで取付けるには、天端同面の場合は、胴差丈>梁丈でないと梁下端がこぼれる。
また、下に管柱がないときは、胴差への梁のかかりが1寸(約30㎜)程度必要。 必要な梁丈により胴差の丈を決める。梁は単純梁と見なされる。
いずれの仕口も、住宅金融支援機構仕様は、胴差と梁を羽子板ボルトで結ぶことを指定。
②大入れ蟻掛け
(2)胴差に梁をのせ掛ける場合 (梁天>胴差天)
①大入れ蟻掛け(解説図省略)
梁が胴差にかかる部分だけ大入れ蟻掛けとする。普通に行われているが、安定度が劣るため羽子板ボルト等により補強することが多い。
上階の管柱の取付けが難しい。梁は単純梁となる。
台輪を設けるか、梁を胴差外側まで伸ばし扇ほぞで立てる。これを解決する確実な方法が次の②である。
②胴突付蟻掛け+上階柱蟻落とし
胴差に胴突付蟻型を造り出し、1階管柱に架ける。梁端部には全面に胴突付蟻を刻み胴差に掛け、上階の管柱を蟻落としで落とし込み一体化させる。
根ほぞは長ほぞが適切。下階の管柱は、胴差に長ほぞ差し。下階に管柱がなくてもできる。
図は胴差に左右から梁が架かっているが、外周部など片側だけの場合も可能。見えがかりもよく、真壁仕様で用いられる仕口。
上下の管柱、胴差、梁が一体に組まれるため、梁端部は固定端に近くなる。上下の関係を逆にした納め方も可能である。
【管柱・梁・胴差】 写真のような例を見かけるが、この場合は、下図の納めが確実である。
【胴差と柱】 短ほぞ差し+補強金物
柱の頭・根ほぞが短ほぞの場合に多用される。筋交い使用時には、水平力による柱の引抜きがかかるので、山形プレートやかど金物が用いられる。
上下をつなぐ点では、短冊金物の方が優れる。
【胴差と梁 腰掛け蟻掛け】
梁天端が胴差天端より高く、胴差上で左右から梁がかかる場合は、上の部分は、胴差に乗せかけるだけで、下部を腰掛け蟻掛けとする。
曲げの力に対して、蟻の部分だけが抵抗する。乗せかける部分を胴差外側まで延し、扇ほぞで上階の管柱を立てる例もあるが、かみ合わせが弱く、薦められない。
【差鴨居】
この図では、建具付きの鴨居を雇い竿シャチ継ぎで柱に取り付ける例。隅の柱では小根ほぞ差し割り楔締めで取り付ける。
枠まわりなどの造作(仕上げ材)も力を負担する材として扱う方法である。上棟時に取り付けることになるので、上棟までの刻みの仕事は増えるが、造作の手間は減る。
伝統的なつくりでは、主要横架材間(土台~梁・桁間など)にこのような仕口による横材(差物)と貫(壁の部分)を組み込んで、
軸組を立体的に組み、架構全体の強度を上げている(今井町・高木家など)。ただし、この場合の貫は、現在の壁下地材としての「貫」ではない。
差鴨居や貫の使用は、木材の曲げに対する力を有効に使う方法で、骨組みの強度を格段に上げ、現在でも十分通用する。
【参考 柱仕上がり4.3寸の場合:差し鴨居の納め、胴差・梁管柱の納め】
スパンが2.5間を超える床梁(下階に管柱がない床梁)の場合の合成梁の一例。