第Ⅳ章 1階床組伏図、架構例

2020-10-21 11:50:32 | 同:土台・1階床組

10)床伏の検討:土台と大引の構成(規格寸法材で組むことを考える場合)

 原則として、先ず建物外周に土台をまわす礎石建て独立柱段違いになる部分も検討する。

 平面(間取り)を勘案しながら、平面を横断する主要な土台の位置を検討する。通常は、柱が立つ間仕切通りに設ける。⇒基礎位置との調整。

 外周部と主要土台を、どこから、どのように組むか検討する。

a)どこから組むか   敷地への資材搬入口、材料の仮置き場、建て方時のクレーン車の位置などを考慮して作業基点を決める。通常は、敷地の最奥のどちらかの隅を起点とする。

b)どのように組むか  使う継手・仕口を決め、規格材で割付けを行い、柱位置・土台の交叉箇所・大引位置を避け継手の位置を決める。その際、起点側が下木になることに注意。

 外周部の土台に、横断する土台を架ける。その際も、継手の位置を検討する。

 床仕上げ・床高に応じて、大引と根太の高さを検討し、大引をどの高さどの仕口で土台に架けるか検討する。大引高さは一定にし、床高は、根太の大引へのかかり、あるいは根太の丈で調整する方が施工上間違いが少ない。大引の間隔は、根太の材寸により決まるが、通常は3尺(909㎜)。床に厚い板(厚1寸:30㎜程度以上)を使うときは、直接大引に張ることができる。

 アンカーボルトの位置を検討する。⇒基礎伏図との調整が必要。

 

11)材の割り付け(規格材を使う場合)

材端部の傷みの部分(両端それぞれ約15~30㎜ 計30~60㎜程度)は使えない。

②継手または仕口の長さの分、両端で相手の材と重なる部分がある。したがって、

材の長さ≧{材端の傷み(約15~30㎜)+継手・仕口長さ  ~  継手・仕口長さ+材端の傷み(約15~30㎜)}

③柱の根ほぞと継手は最低100㎜離す。

一例 柱の仕上がり3寸8分(115㎜)・土台同寸

◇土台の継手を5寸鎌とした場合

◇土台の継手を4寸鎌とした場合

 

12)土台伏図、床組伏図の記入事項、留意点

縮尺は1/50以上。1/40程度が諸事項を記入しやすく、図面として読み取りやすい。

記入事項  土台、大引、根太などの材種、材寸、高さ関係の明示。  継手・仕口の仕様継手位置の明示(必要に応じ通り芯からの寸法を指示).柱の種類(通し柱管柱の指示)、材種材寸柱と土台の仕口アンカーボルトの位置(必要に応じ通り芯からの寸法を指示).材料の材種、材寸、長さ別の拾いを別記できれば、さらによい。

留意事項  1.基礎伏図との照合(アンカーボルト位置、継手・仕口位置)。2.アンカーボルト位置は、基礎伏図土台伏図双方に記す。3.材寸は、挽き割り寸法仕上がり寸法の別を明示。.必要に応じて、縮尺1/20程度の詳細図を併記。

設計図は、一枚の図面に、関連する情報を可能な限り記入することが必要。

必要事項が多数の図面に分散して描かれていると、一つの仕事のために、数多くの図面を照合しなければならない。また、分散して描かれた図面には、往々にして食い違いが多発する。

各伏図仕口・継手軸組構造仕様書」として一か所にまとめると全体の意図が伝わり易い。

 

3.架構を考える例1:内外大壁 土台伏図例1 

通し柱は2階部分の4隅。土台、大引は天端同面で組む。土台は、4m、3m、4/2m材を用いる。換気口を使用する。浴室腰部は基礎を立ち上げ、土台位置を高くする。

  

土台例2:同じ間取りで組み方を変えた例  外周の次に[五通り]を据える。

〇番付は3尺格子とする(柱の有無を問わない)。  

〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、一通りから据え付けを始めるものと仮定して計画。この案では、[い一]を据え付基点とする。①~⑩は土台を組む順番の一例。

〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。 土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。

〇[外周部]の次に[ろ・へ・ぬ通り]を組み、次に[五通り]を腰掛け蟻で掛けてゆく。横材と縦材を交互に組んでいるため「土台例2」よりも強い。

〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」([一]~[五]間)とする。

〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。

〇アンカーボルトは、継手・仕口の上木側に設けることを原則とする。この建物では、建物四隅と4m材の途中にもアンカーボルトを入る。

〇床下地板:構造用合板張り(筋交いを使用しない。)

 

架構を考える例2-A:内外大壁 

◇架構例2A:内外大壁

仕様  外壁:構造用合板下地 サイディング張り  木ずり又はラスカット下地 塗り壁  内壁:構造用石膏ボード下地 クロス張り 石膏ラスボード下地 塗り壁  床: 構造用合板下地  建具:外部 アルミ規格サッシ

架構 通し柱:建物四隅  土台と大引:天端を同じ高さ  胴差と床梁・小梁:天端を同じ高さ 軒桁と小屋梁:天端を同じ高さ

 

架構を考える例2-A:内外大壁 基礎伏図 

換気口を使用する。浴室は腰壁をコンクリート下地とし、土台の高さを上げる。

   

〇 布基礎は、主たる軸組(柱通り)位置と間仕切り位置に設ける。(階段・床の間などの箇所では、土台伏図を勘案し、小さな閉鎖部分ができないように計画する。)ベースを連続させ、立上り部の一部に、床下点検のための通路を設けている。

〇 換気口:150×300~450㎜@3000㎜程度

〇 アンカーボルト : M12またはM16  位置 : 土台が直行する部分で、柱芯から200m前後。 土台全体の構成と、土台の各材を基礎と結ぶために、柱の下部付近だけではなく、土台の仕口・継手の上木側にも入れる。この建物では、建物四隅(浴室除く)と4m材の途中にもアンカーボルトを入れる。

〇大引の計画に応じて、束石を記入する。束石の天端高さも記入(床下地面+100mm程度がよい)。

〇土間コンクリート部分を表示する。天端高さ、配筋要領も記入する⇒詳細図が必要。

〇その他、特別な部分(浴室まわりの立上がりなど)を特記する⇒詳細図が必要。

 

架構を考える例2-A:内外大壁 土台伏図 

通し柱は4隅。土台と大引は天端同面で組む。土台は、4m、3m、4/2m材を用いる。換気口を使用する。浴室腰部は基礎を立ち上げ、土台位置を高くする。

    

〇番付は3尺格子とする(柱の有無を問わない)。

〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、八通りから据付けをはじめるものと仮定して計画。 この案では、[い八]を据付基点としている。 ①~⑫は土台を組む順番の一例。

〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。 土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。

〇[外周部][ほ通り][四通り]を最初に組み、残りの土台は腰掛け蟻掛けで掛けてゆく。 [ほ通り][四通り]は、どちらを先に組んでもよい。この場合は[ほ通り]を先に組む。

〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」(ほ通り)とする。

〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。  

〇アンカーボルトは、継手・仕口の上木側に設けることを原則とする。この建物では、建物隅(浴室除く)と4m材の途中にもアンカーボルトを入れる。 

〇床下地板:構造用合板(筋交いを使用しない。)

 

架構を考える例2-B:内外真壁 土台伏図 

仕様  外壁:構造用合板下地 サイディング張り 木ずり又はラスカット下地 塗り壁  内壁:構造用石膏ボード下地 クロス張り 石膏ラスボード下地 塗り壁  床: 構造用合板下地  建具:外部 アルミ規格サッシ  

架構 通し柱:建物四隅 + 中央部  土台と大引:天端を同じ高さ  胴差と床梁・小梁:天端を同じ高さ  軒桁と小屋梁:天端を同じ高さ

通し柱は4隅と中央部。土台と大引は天端同面で組む。土台は表し、4m、3m、4/2m材を用いる。ネコ木を使用する。浴室まわりの土台も標準の高さにそろえる。

   

〇番付は3尺格子とする。 〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、八通りから据付けをはじめるものと仮定して計画。この案では、[い八]を据付基点としている。①~⑧は土台を組む順番の一例。

〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。

〇[外周部]を最初に組み、残りの土台は腰掛け蟻掛けで掛けてゆく。 [ほ通り][四通り]は、どちらを先に組んでもよい。この場合は[ほ通り]を先に組む。

〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」(ほ通り)とする。

〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。

〇ネコ木(栗120×300 厚30㎜)は、柱の下部、継手位置、土台1間間隔に入れ、アンカーボルトで止める。

〇床下地板:構造用合板(筋交いを使用しない。)

 

【足元まわりの歴史】に続きます。

この記事についてブログを書く
« 第Ⅳ章 建物の足元まわりの歴史 | トップ | 第Ⅳ章 土台の継手、土台と大... »

同:土台・1階床組」カテゴリの最新記事