10)床伏の検討:土台と大引の構成(規格寸法材で組むことを考える場合)
① 原則として、先ず建物外周に土台をまわす。礎石建て独立柱、段違いになる部分も検討する。
② 平面(間取り)を勘案しながら、平面を横断する主要な土台の位置を検討する。通常は、柱が立つ間仕切通りに設ける。⇒基礎位置との調整。
③ 外周部と主要土台を、どこから、どのように組むか検討する。
a)どこから組むか 敷地への資材搬入口、材料の仮置き場、建て方時のクレーン車の位置などを考慮して作業基点を決める。通常は、敷地の最奥のどちらかの隅を起点とする。
b)どのように組むか 使う継手・仕口を決め、規格材で割付けを行い、柱位置・土台の交叉箇所・大引位置を避け、継手の位置を決める。その際、起点側が下木になることに注意。
④ 外周部の土台に、横断する土台を架ける。その際も、継手の位置を検討する。
床仕上げ・床高に応じて、大引と根太の高さを検討し、大引をどの高さ、どの仕口で土台に架けるか検討する。大引高さは一定にし、床高は、根太の大引へのかかり、あるいは根太の丈で調整する方が施工上間違いが少ない。大引の間隔は、根太の材寸により決まるが、通常は3尺(909㎜)。床に厚い板(厚1寸:30㎜程度以上)を使うときは、直接大引に張ることができる。
⑤ アンカーボルトの位置を検討する。⇒基礎伏図との調整が必要。
11)材の割り付け(規格材を使う場合)
①材端部の傷みの部分(両端それぞれ約15~30㎜ 計30~60㎜程度)は使えない。
②継手または仕口の長さの分、両端で相手の材と重なる部分がある。したがって、
材の長さ≧{材端の傷み(約15~30㎜)+継手・仕口長さ ~ 継手・仕口長さ+材端の傷み(約15~30㎜)}
③柱の根ほぞと継手は最低100㎜離す。
一例 柱の仕上がり3寸8分(115㎜)・土台同寸
◇土台の継手を5寸鎌とした場合
◇土台の継手を4寸鎌とした場合
12)土台伏図、床組伏図の記入事項、留意点
縮尺は1/50以上。1/40程度が諸事項を記入しやすく、図面として読み取りやすい。
記入事項 1.土台、大引、根太などの材種、材寸、高さ関係の明示。 2.継手・仕口の仕様、継手位置の明示(必要に応じ通り芯からの寸法を指示)。3.柱の種類(通し柱、管柱の指示)、材種、材寸、柱と土台の仕口。4.アンカーボルトの位置(必要に応じ通り芯からの寸法を指示)。5.材料の材種、材寸、長さ別の拾いを別記できれば、さらによい。
留意事項 1.基礎伏図との照合(アンカーボルト位置、継手・仕口位置)。2.アンカーボルト位置は、基礎伏図、土台伏図双方に記す。3.材寸は、挽き割り寸法、仕上がり寸法の別を明示。4.必要に応じて、縮尺1/20程度の詳細図を併記。
設計図は、一枚の図面に、関連する情報を可能な限り記入することが必要。
必要事項が多数の図面に分散して描かれていると、一つの仕事のために、数多くの図面を照合しなければならない。また、分散して描かれた図面には、往々にして食い違いが多発する。
各伏図の仕口・継手を「軸組構造仕様書」として一か所にまとめると全体の意図が伝わり易い。
3.架構を考える例1:内外大壁 土台伏図例1
通し柱は2階部分の4隅。土台、大引は天端同面で組む。土台は、4m、3m、4/2m材を用いる。換気口を使用する。浴室腰部は基礎を立ち上げ、土台位置を高くする。
土台例2:同じ間取りで組み方を変えた例 外周の次に[五通り]を据える。
〇番付は3尺格子とする(柱の有無を問わない)。
〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、一通りから据え付けを始めるものと仮定して計画。この案では、[い一]を据え付基点とする。①~⑩は土台を組む順番の一例。
〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。 土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。
〇[外周部]の次に[ろ・へ・ぬ通り]を組み、次に[五通り]を腰掛け蟻で掛けてゆく。横材と縦材を交互に組んでいるため「土台例2」よりも強い。
〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」([一]~[五]間)とする。
〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。
〇アンカーボルトは、継手・仕口の上木側に設けることを原則とする。この建物では、建物四隅と4m材の途中にもアンカーボルトを入る。
〇床下地板:構造用合板張り(筋交いを使用しない。)
架構を考える例2-A:内外大壁
◇架構例2A:内外大壁
仕様 外壁:構造用合板下地 サイディング張り 木ずり又はラスカット下地 塗り壁 内壁:構造用石膏ボード下地 クロス張り 石膏ラスボード下地 塗り壁 床: 構造用合板下地 建具:外部 アルミ規格サッシ
架構 通し柱:建物四隅 土台と大引:天端を同じ高さ 胴差と床梁・小梁:天端を同じ高さ 軒桁と小屋梁:天端を同じ高さ
架構を考える例2-A:内外大壁 基礎伏図
換気口を使用する。浴室は腰壁をコンクリート下地とし、土台の高さを上げる。
〇 布基礎は、主たる軸組(柱通り)位置と間仕切り位置に設ける。(階段・床の間などの箇所では、土台伏図を勘案し、小さな閉鎖部分ができないように計画する。)ベースを連続させ、立上り部の一部に、床下点検のための通路を設けている。
〇 換気口:150×300~450㎜@3000㎜程度
〇 アンカーボルト : M12またはM16 位置 : 土台が直行する部分で、柱芯から200m前後。 土台全体の構成と、土台の各材を基礎と結ぶために、柱の下部付近だけではなく、土台の仕口・継手の上木側にも入れる。この建物では、建物四隅(浴室除く)と4m材の途中にもアンカーボルトを入れる。
〇大引の計画に応じて、束石を記入する。束石の天端高さも記入(床下地面+100mm程度がよい)。
〇土間コンクリート部分を表示する。天端高さ、配筋要領も記入する⇒詳細図が必要。
〇その他、特別な部分(浴室まわりの立上がりなど)を特記する⇒詳細図が必要。
架構を考える例2-A:内外大壁 土台伏図
通し柱は4隅。土台と大引は天端同面で組む。土台は、4m、3m、4/2m材を用いる。換気口を使用する。浴室腰部は基礎を立ち上げ、土台位置を高くする。
〇番付は3尺格子とする(柱の有無を問わない)。
〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、八通りから据付けをはじめるものと仮定して計画。 この案では、[い八]を据付基点としている。 ①~⑫は土台を組む順番の一例。
〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。 土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。
〇[外周部][ほ通り][四通り]を最初に組み、残りの土台は腰掛け蟻掛けで掛けてゆく。 [ほ通り][四通り]は、どちらを先に組んでもよい。この場合は[ほ通り]を先に組む。
〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」(ほ通り)とする。
〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。
〇アンカーボルトは、継手・仕口の上木側に設けることを原則とする。この建物では、建物隅(浴室除く)と4m材の途中にもアンカーボルトを入れる。
〇床下地板:構造用合板(筋交いを使用しない。)
架構を考える例2-B:内外真壁 土台伏図
仕様 外壁:構造用合板下地 サイディング張り 木ずり又はラスカット下地 塗り壁 内壁:構造用石膏ボード下地 クロス張り 石膏ラスボード下地 塗り壁 床: 構造用合板下地 建具:外部 アルミ規格サッシ
架構 通し柱:建物四隅 + 中央部 土台と大引:天端を同じ高さ 胴差と床梁・小梁:天端を同じ高さ 軒桁と小屋梁:天端を同じ高さ
通し柱は4隅と中央部。土台と大引は天端同面で組む。土台は表し、4m、3m、4/2m材を用いる。ネコ木を使用する。浴室まわりの土台も標準の高さにそろえる。
〇番付は3尺格子とする。 〇資材搬入、クレーンの位置を勘案して、八通りから据付けをはじめるものと仮定して計画。この案では、[い八]を据付基点としている。①~⑧は土台を組む順番の一例。
〇隅土台は小根ほぞ差し割り楔締め、柱扇ほぞ+補強金物。土台の継手は4寸の腰掛け鎌継ぎ。
〇[外周部]を最初に組み、残りの土台は腰掛け蟻掛けで掛けてゆく。 [ほ通り][四通り]は、どちらを先に組んでもよい。この場合は[ほ通り]を先に組む。
〇この建物では、4m材の使用は最長で「腰掛け蟻掛け~2間~4寸(又は5寸)鎌継ぎ」(ほ通り)とする。
〇柱の根ほぞと継手の間は、最低100㎜あける。
〇ネコ木(栗120×300 厚30㎜)は、柱の下部、継手位置、土台1間間隔に入れ、アンカーボルトで止める。
〇床下地板:構造用合板(筋交いを使用しない。)
(【足元まわりの歴史】に続きます。)