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第Ⅴ章 胴差・梁・桁の継手、通し柱との仕口

2021-03-17 11:56:39 | 同:通し柱と2階床組

第Ⅴ章 2.8)胴差・梁・桁の継手

胴差・梁・桁曲げの力を受けるため、継手位置は、曲げモーメント、たわみが最大になるスパン中央部を避け、管柱から5寸~1尺(150~300㎜)程度持ち出した位置が適当。

力を伝達できる継手は追掛け大栓継ぎ金輪継ぎなどに限られる(その場合でも、建て方時は不安定なため、管柱から5寸~1尺5寸程度の位置で継ぐ)。

 ①追掛け大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)           

     

曲げのかかる材胴差・梁・桁・母屋)を継ぐときに使われる確実な継手。継いだ材は1本ものと同等になる(継手を経て応力が隣へ伝わる)。

上木下木からなり、下木を据えたあと、上木を落としてゆくと、引き勝手がついているため両材が密着する。次いで、肉厚の厚い方からを打つ(2本のは打つ向きがちがう)。

建て方の際、上から落とすだけでよく、また材軸方向の大きな移動も必要としない(多用される理由)。側面に継ぎ目線と大栓の頭が見える。管柱根ほぞ頭ほぞ長ほぞが適切。

継手長さは8寸(24㎝)以上、長い方が良い。手加工では、上木と下木のすり合わせを行うため、1日1~4箇所/人という。現在は加工機械が開発されている。                      

 

 ②金輪継ぎ(かなわつぎ)

     

曲げのかかる材胴差・梁・桁・母屋)を継ぐときに使われる確実な継手。柱の根継ぎ(腐食した柱の根元の修理)などにも用いられる。

継いだ材は1本ものと同等になる。継がれる2材A、の端部の加工は、まったく同型で、上木、下木の別がない。二方向の目違いの加工に手間がかかる。

A、2材を図1のように置くと、目違いの深さ分の隙間があく。両材を寄せて目違い部分をはめると中央部に隙間ができる。 

そこに上または下からを打ちこんでゆくと、目違い部がくいこみ、図2のようにA、2材が密着する。側面には、目違い付きの継目線が見える。                  

追掛け大栓継ぎとは異なり、側面から組み込むため、建て方前に、地上で継いでおく方が容易。建て方時に継ぐには、追掛け大栓継ぎが適している。

 

 ③腰掛け 竿シャチ継ぎ(目違い付

     

下木を据え、長い竿を造り出した上木を落とし、上面からシャチ栓を打つ。目違いは捩れ防止のために設ける。

シャチ栓の道を斜めに刻んであるため引き勝手を打つと材が引き寄せられ圧着する確実な継手。

材相互が密着して蟻継ぎ鎌継ぎよりも強度は出るが、応力を十分に伝えることはできず、

曲げモーメントは継手部分で0:継手箇所を支点とする単純梁になると見なした方が安全である。

 

④腰掛け鎌継ぎ(目違い付き)+補強金物 土台の継手参照

     

丁寧な仕事の場合は、引き勝手をつくり、上木を落とし込むと材が引き寄せられる。目違いは捩れ防止のために設ける。

蟻継ぎに比べると、曲げがかかっても継手がはずれにくい。

ただし、応力を十分に伝えることはできず、継手箇所を支点とする単純梁になると考えた方がよい。補強金物は、平金物が普通で、簡易な場合はかすがいが用いられる。

 

⑤腰掛け蟻継ぎ+補強金物  

     

材長の節減、手間の省力化のために、使われるようになる。応力を伝えることはできず、継手箇所を支点とする単純梁になると見なせる。

曲げがかかると鎌継ぎに比べ、継手がはずれやすい。

注 ④鎌継ぎ、⑤蟻継ぎ胴差・梁に用いられるようになるのは、耐荷重だけを重視する工法になってからである。

元来は、主に、土台母屋などに使われてきた継手である(丁寧な場合には、母屋にも追掛け大栓継ぎを用いている)。

 

9)通し柱と胴差・梁の仕口

(1)隅の「通し柱」の場合

①小根(こね)ほぞ差し 割り楔締め(わりくさびしめ)・小根ほぞ差し 込み栓打ち(こみせんうち)   共に胴突付(どうづきつき)又は小胴付

     

隅の通し柱胴差・梁を取付ける確実な仕口。 

割り楔締め(わりくさび) ほぞを柱に貫通させ先端にを打ちこむ。ほぞの先端が広がり抜けなくなる。

込み栓打ち(こみせんうち):ほぞを柱に貫通させ柱の側面から込み栓を打つ。によってほぞが抜けなくなる。

割り楔込み栓には堅木カシなど)が用いられる。

割り楔込み栓は、木材の弾力性・復元性を利用する方法で、確実に(きつめに)打ってあるか否かで強度に大きな差がでる。

柱内でほぞが交叉するため、ほぞを小根(こね)にする(上小根(うわっこね)下小根(したっこね)

どちらを上小根下小根にするかは任意。                                  

胴差側を下小根梁側上小根にすれば、梁天端高さ≧胴差天端高さの場合に対応できる。

図は割り楔締め胴差を込み栓打ちにしているが、その選択は任意(両方割り楔、または込み栓でも可)。 柱は最低でも4寸角以上必要。

 

小根ほぞ差し 鼻栓(はなせん)(端栓)打ち 目違い付突付どうづきつき又は小胴付

     

図のようにほぞの先端を柱の外に出し、柱面に沿いを打ち(鼻栓打ち)、ほぞを固定する確実な方法。

真壁仕様に用いられるが、ほぞが飛び出す分、材長がいる。米マツなどの割れやすい材には不向き。 鼻=端

 

①、②とも、胴差・梁はほぼ一体化し(胴差・梁端部はほぼ固定端となる)、半ばラーメン状になり、胴差・梁にかかった曲げに対して、も共に抵抗することになる

 

③傾木大入れ(かたぎおおいれ) 全短ほぞ差し+補強金物             

                         

 ④傾木大入れ 小根(こね)短ほぞ差し+補強金物               ⑤胴突付(小胴付)+補強金物  

   

在来工法(法令仕様の工法)」で見かける方法。 端部加工が短いため、材は長く使える。

傾木大入れ短ほぞだけでは柱から容易にはずれてしまうため、羽子板ボルト・アンカーボルト・箱金物等で補強する。

ボルト穴径とボルト径には、必ず差があり、がたつきを生じる。またボルトの取付けナットは、材の木痩せと曲げの力の繰り返しにより緩むことが多い。

補強金物を用いても、胴差・梁は柱に緊結されないから、胴差・梁は単純梁となる。

全短ほぞ差しの方が小根ほぞ差しより、ねじれに強い。

                                

    

(2)中間の通し柱の場合

二方~四方から胴差・梁が取付き、それぞれ二方差し(にほうざし)三方差し(さんぽうざし)四方差し(ほうざし)と呼ぶ。 

①竿(さお)シャチ継ぎ・雇い竿(やといさお)シャチ継ぎ(目違い付、胴突付どうづきつき又は小胴付

             三方差し 竿シャチ継ぎ 胴差と梁 同面 (梁は小根ほぞ差し割り楔締め 胴突き・目違い付

柱への胴差・梁の仕口であるが、柱を介して左右二方の材が継がれるので「・・・継ぎ」と呼ぶ。

中途の通し柱へ、胴差・梁を確実・堅固に取付けることができる。柱の刻みの関係で、柱は4寸角以上必要。四方差しの場合は、できれば4.5寸~5寸角。

胴差と梁に段差がある場合も使用可能。

一材に竿を造り出し、柱を介して反対側の材に差し込み、シャチ栓を打ち相互を固める。

シャチ栓を打つ道に、柱側に向け僅かな傾斜を付けてあるため引き勝手)、を打つと両側の材が引き寄せられ、柱と胴差・梁が密着する。カシなどの堅木。                    

胴差・梁の端部がほぼ固定端となり、半ばラーメン状の架構となる。

       四方差し 竿シャチ継ぎ 梁が胴差より高い場合

 

竿の部分を造るには長い材が必要になるため、竿の部分を別材で造る雇い竿シャチ継ぎがある。

     四方差し 雇い竿シャチ継ぎ 胴差と梁 同面

 

なお、図の三方差しの場合、胴差を取付ける前にを差し、割り楔の代わりに込み栓を打ち(胴差の胴突内に隠れるので隠し込み栓という)、

胴差も竿に対して側面から込み栓を打つ方法もある(この栓は外から見える)。効果はシャチ継ぎと同じ。

通常用いられる傾木大入れよりは手間がかかるが、この仕口を必要とする箇所は、通常、全軸組の中で限られており、軸組強度の点を考えれば、決して余計な手間ではない。

シャチ栓、込み栓、割り楔は、木材の弾力性・復元性を利用しているため、年月を経ても緩みが生じにくく、接合部自体も緩む可能性は小さい。                         

 

②傾木大入れ 全短ほぞ差し+補強金物 ③傾木大入れ 小根短ほぞ差し+補強金物 ④傾木大入れまたは短ほぞ差し+補強金物           

⑤胴突き(小胴付)+補強金物  注 補強金物:羽子板ボルト、短冊金物、かね折金物、箱金物 など       

②③④⑤は前項の図解参照。取付けた胴差・梁は単純梁と見なされる。

補強金物の場合、金物の取付けボルトや釘は、材の木痩せや繰り返しかかる外力によって緩みやすく、荷重の伝達の不具合、建物の揺れを起しやすい。

金物の緩みは隠れて見えないことが多いが、内装材のひび割れ、床・敷居の不陸などで現れることがある。

コーススレッドを使用すると、緩みは避けられるが、木部が割れる恐れがある。

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