第Ⅶ章 各部の納め1:屋根 5.瓦葺き 再編集 

2023-06-05 11:36:10 | 同:屋根

                       PDF「第Ⅶ章 各部の納め1:屋根 5.瓦葺き 6.雨水の処理・雨樋」A4版10枚

Ⅶ 各部の納め1:屋根

5.瓦葺き

耐熱性耐久性耐火性に優れる。JIS規格がある(JIS A5208)。

粘土製(粘土瓦と通称)、セメント製(セメント瓦)、スレート製(厚型スレートスレート瓦)がある。

セメント瓦は、近年厚型スレートに移行しつつあり、厚型スレートの材料は、石綿入りから無石綿の補強成型セメント板に代ってきている。

粘土瓦セメント瓦厚型スレートは、メーカーにより形状が異なる。 

瓦葺きは、風などによる被害が全面に及ばないため、規格品ならば部分的な葺き替えで済む。

近年は、耐風耐震性能を向上させた防災瓦も施工されている。

 

標準的な桟瓦の形状・寸法・重量など   以下は最も利用例の多い型

 

注1 日本の瓦葺きには、本瓦葺(下図)と桟瓦葺きがある。

  

   当初は中国から移入された本瓦葺きは、谷をつくる平瓦と平瓦の継目に被せる丸瓦の2種類の瓦で構成された。

   江戸中期に、平瓦丸瓦を一体化した桟瓦が考案され、以後、施工の容易さから広く普及する。

   現在は桟瓦葺きが普通。寺院等では本瓦葺が使われている。

 

注2 “”は、当初はfrench(フランス式)のF。現在はflat:平ら:の意。メーカーにより多種多様な形がある。

注3 S型の“”は、spanish(スペイン式)の意。

   元来スペイン瓦(通称洋瓦)は、日本瓦の本瓦葺き同様、谷の下瓦と継目に被せる上瓦の2種類の瓦で構成される。

   現在は日本の桟瓦と同じく、両者を一体化したS型が主流。

                   

注4 一般に、瓦屋根は重量があり重心位置が高くなるので、地震に弱いと言われるが、それは、軸組を基礎に緊結した場合である。

   寺院等の古建築は、現在よりも数等重い瓦屋根だが、概して地震の被害は少ない。据え置きの基礎の場合、確実な軸組であれば、重量が重いほど安定する。

 


【軒先の仕様と垂木】

日本家屋構造(明治37年:1904年発行)の仕様では、

瓦屋根金属板葺き(当時はブリキ:鉄板にスズを被せたもの 又はトタン:鉄板に亜鉛を被せたものが主流)が掲載されている。

左図:通りから見上げる下屋化粧木舞天井として広小舞を用い、上屋は垂木に広小舞垂木鼻先には鼻隠しを打つのみとしている。

右図化粧垂木を用いている。(両図共に化粧軒先では、下が「」、上が「広小舞」の呼称になっている。)

 

「垂木・軒先まわり 納り例」破風板垂木表し広小舞+登り淀、(軒桁:垂木彫り)  

破風板は、一般的には際垂木の外側に同じ高さで鼻先を垂木先端より出して取付け、上に登り淀をまわす。

垂木を表す場合(軒天井を張らない)、垂木の先端を広小舞より出す納めがある。

この際には、垂木の先端(鼻先)が風雨にさらされるのを防ぐため木口に銅板を被せることがある。                          

 

〈垂木寸法 1,818/4:@450㎜(1尺5寸)の場合  細身の垂木にする場合は1,818/5:360㎜(1尺2寸)

 


2)焼成法の違いによる粘土瓦の分類・特徴 

 

以下では桟瓦葺きについて解説する。

3)桟瓦の規格と種類(日本工業規格JIS A 5208-1996年 粘土瓦)

桟瓦葺きの瓦には、基本葺き材の桟瓦と、軒先用の軒瓦、けらば用の袖瓦(そでがわら)(右、左がある)、棟用の熨瓦(のしがわら)鬼瓦などの役物瓦がある。

桟瓦の1枚の大きさには地域差があり、いくつかの型にまとめたのが以下のJIS規格。

注 「働き寸法」=瓦の全長、全幅から「重ね幅」を引いた寸法(外面に表れ、雨のあたる部分の寸法)

関東では53A型、関西では64型が主体。 埼玉深谷・児玉、北関東(茨城、栃木、福島)は53A型、群馬藤岡は56型が主体という。

地瓦には規格と異なる寸法のものがあり、使用する場合には、事前に調査が必要である。

JISの型呼称は、1坪あたりに必要な桟瓦の平均枚数で示す。

53A型の場合

流れ方向の働き寸法全長から重ね寸法70㎜を引いた寸法きき足葺き足、有効長、働き長さ)と呼ぶ。

幅方向の働き寸法 :全幅から重ね寸法40㎜を引いた寸法きき幅(有効幅、働き幅)と呼ぶ。

 

2)桟瓦の葺き方と勾配

屋根下地は、基本的に他の葺き材の場合と同じで、針葉樹系の無垢板材(スギなど、相ジャクリ)12㎜以上または構造用合板(特類)12㎜以上野地板防水紙(アスファルトルーフィング940以上)を敷きつめる。

軒先広小舞けらば登りよどの形状は、瓦の形にあわせ、バチ型にする。

軒先では、瓦を据えるためによどまたは瓦座(かわらざ)を取付ける。瓦座の前面には軒先面戸(のきさきめんど)(金属製・樹脂製・漆喰・木製)を取付ける。

・葺き方には、土葺き(つちぶき)土居葺きどいぶきと呼ぶこともある)と引掛け葺きがある。

  土葺き:下地上に葺土(ふきつち)を敷き、瓦を貼り付ける。古代から行われている方法。風に強い。土を敷く分、屋根重量が重くなる。

        (土居葺:アスファルトルーフィング以前に使われた木をそいだ薄板を張りつめる工法。

             通称とんとん葺き。瓦の葺き土を受ける。 土居塗り(どいぬり):瓦下に土(荒木田土あらきだつちなど)を塗ること)

  引掛け葺き:下地に瓦桟を流し、瓦尻にある突起(つめ)に引掛け、瓦をで下地に留める方法。現在、主に行われる方法。土を敷かないため屋根重量は軽くなる。

        関西地方では、引掛け葺き土居塗りを併用する葺き方も行われている。風に強いという。

 

・軒先面戸スズメグチとも呼ばれる。瓦下にできる隙間を埋めるため、従来は漆喰が用いられていたが、近年は金属板プラスチック製品を瓦座等に釘打ちすることが多い。

    プラスチック面戸 断面と正面  

  本瓦葺葺きの場合の面戸板 日本建築辞彙より 

 

・瓦葺きの勾配:3寸5分(3.5/10)勾配以上とされるが、4寸勾配(4.0/10)以上が確実  勾配の決定にあたり、視覚的な効果も検討する必要がある。

軒の出側軒(そばのき)の出軒の出側軒の出は、半端がでないように、使用する瓦の寸法、割り付けを検討して決める。

 

瓦屋根の形状、名称と必要な瓦

 


5.瓦葺き  瓦の形状と寸法,納り,割付け  

2023-06-05 11:35:45 | 同:屋根

6)53型桟瓦の形状と寸法 参考 (各寸法はメーカー各社ごとに異なります。)

 

 

 

参考図書   日本の瓦 坪井利弘著(新建築社)

 

5)53型瓦葺きの屋根寸法の決め方と各部の納まり 参考 (寸法はメーカー各社ごとに異なります。)

  a.桟瓦のきき幅  b.桟瓦のきき足(葺き足)

 

  c.軒先の納め、けらばの納め

  

  e.壁との取り合い:登り上部  f.壁との取り合い:壁際 

  

  壁際では雨水が屋根勾配なりに排水されないので、雨押え包み板(水切り鉄板)だけでは雨水の浸透を防ぎきれない場合がある(内壁にしみをつくる)。

  そのため、捨て谷を設ける。 

 

  g.谷 

 

  h.棟(厚のし3段、素丸瓦納め)   i.棟(厚のし5段、素丸瓦納め)

 

  j.鬼瓦の据付位置     k.隅棟

                                               

 

7)切妻屋根の瓦割付け例

53型桟瓦割付け(地割り)例(前項の寸法の瓦を用いた場合) 

建物 桁行4間半(27尺:8,181㎜)×梁行3間半(21尺:6,363㎜)

流れ方向割付け例      軒瓦1枚+桟瓦17枚

注 最上部の瓦桟位置を野地板棟から30㎜(1寸)とするとき、野地板棟から端部までは概略15㎜(5分)程度になる。

 

▼万十(饅頭)巴 軒先                

                                                                                      

▼けらば 右袖瓦(4寸5分勾配)

 

▼瓦伏図  上部:流れ計18枚、下部:流れ計19枚

切妻屋根平軒方向は、袖瓦を用いる場合の総長さは、{左袖瓦225㎜+桟瓦きき幅265㎜×枚数+右袖瓦305㎜}となる。

▼けらば割付け詳細

 

 

〈けらば風切丸:丸瓦又は紐丸瓦 を一筋葺いた場合〉 袖瓦の隣には片切桟瓦平瓦を用いる。

 


5.瓦葺き 入母屋(日本家屋構造) 

2023-06-05 11:35:12 | 同:屋根

9)入母屋造り

  [入母屋の妻壁の位置]     文中のG書体、改行及び図中の文字は編集によります。

 『入母屋の妻』      古寺建築入門 岩波書店刊より

 『古代の建物では入母屋の屋根のは側面の入側柱(いりがわばしら)通りの上に位置した。

  母屋(もや)(ひさし)の関係からすれば、入母屋の妻は当然入側柱(いりがわばしら)通りになるはずである。

  しかし野屋根(のやね)が発生して、(ひさし)部分の屋根が化粧垂木(けしょうたるき)野垂木(のだるき)の2種になってくると、

  化粧垂木の勾配を緩やかにして軒高を少しでも高め、逆に野垂木は勾配を強めて雨仕舞いを考慮することになる。                             

  ところで、妻側の庇の屋根の勾配が強まると、入母屋の妻も必然的に高まることになり、全体に屋根と妻の納まりが不釣合いになるので、

  中世以降には、入母屋の妻の位置を入側柱通りより外側に立てる例が多くなる。

  この場合はの長さも長くなり、の三角部分も大きくなる。また妻飾りも複雑になる。』 

入側柱上に妻壁がある例

  新薬師寺本堂  8世紀中頃 古寺建築入門 岩波書店より

 

 平面図・側面図・桁行断面図 日本建築史基礎資料集成四 仏堂Ⅰより

・外側に妻壁がある例

 喜多院 1640年頃 埼玉県川越市 桁行断面図・西立面図

   

 

 平面図 

日本建築史基礎資料集成十七 書院Ⅱ 中央公論美術出版より 

 


・簡素な入母屋屋根の瓦割付け                                         

妻面化粧小屋束位置の決め方  

 軸組図             

 参考図書 日本の瓦 坪井利弘著 新建築社刊

流れ方向梁行断面の枚数」の割付けを検討し、           軸組図

同時に「妻軒方向A」「平軒方向B」の軒の出が最終的に同じ長さになるように瓦枚数の検討を行う。

(瓦はきつく葺いた方がよく、若干の摺り合わせが必要になる場合が多い。瓦の隙間が広いと雨漏りや吹き上げの原因となり、

 小さ過ぎると瓦が割れたりするため、一般的に摺り合わせは2~3㎜程度。)

② また、「妻軒方向」の瓦割りAは、妻面の拝み巴の中心線と桟瓦の桟心(または谷心)がほぼ揃う割付け」を検討する。

③ 瓦の「桁行方向の割付:B」に従って、破風板奥の妻壁面の大きさを「妻面の流れ方向の瓦枚数:C」によって検討し、化粧小屋束の位置を決める。

   (上図の場合は、妻面の流れ方向の瓦を5枚としている。)

④ 破風板の位置は、平葺き方向の瓦との納りで決まるが、大棟より風切丸(かぜきりまる 袖瓦と桟瓦の継目に載せる丸瓦)や

  降り棟(くだり棟 大棟から流れに沿って熨斗・丸瓦を積み先端に鬼瓦を据える)を設ける場合もある。

 


日本家屋構造 齋藤兵次郎著 明治39年発行】      G書体は編集によります。

  

隅棟 四篇取(へんど)り鬼板書方

鬼瓦鬼板おにいた)の正式なる割り方は破風の幅より定むるものとす、図は普通隅棟四篇取(へんどり)鬼板を示すものとす。・・・・・

・・・・棟積重(むねのつみかさ)ねに於(おい)何篇取(なんべんとり)とは、平(ひら)の屋根瓦上に、熨斗(のし)及び(かんむり)を重ねたる数にして、例へば四篇取りとは平屋根瓦上に、熨斗瓦三通(とおり)冠瓦一通を積み重ねたるものにして、三篇或(あるひ)は五篇取るも亦(また)(こ)れに準ず。

 

千鳥破風(ちどりはふ)玄関 (妻壁位置は柱通り)

・・・・屋根引渡(ひきわた)し勾配は七寸五分にして流れ全長の百分の三、中央にて「たるみ」を付(ふ)す、破風板の掛け方は三つ母屋納めとす。

三つ母屋納め   参考 日本の瓦 新建築社刊

 

(むく)り破風入母屋玄関 (妻壁位置は柱より外側)

・・・・破風板の巾(上(か)み六寸三分、下(し)も五寸二分)其(その)(むく)は腰巾の三分の一位(ぐらい)にして

上は野地の上場(うわば)より五寸下り(即(すなわち)みのこ)の高さを裏甲(うらごう)の上場として下方(しも)野棰(のだるき)の下場(したば)又は棰(たるき)の眞中(まんなか)を裏甲の上場と定め其(その)下場に破風板を仕掛(しか)く、而(しかし)てその上方(かみ)前面(まえづら)への傾きは其(その)厚さ丈(だ)けとして三つ半母屋納めとす・・・・(原文のまま掲載)

箕甲(みのごう)みのこ入母屋屋根切妻屋根で、平葺き部分破風(はふ)の間にできる曲面のこと瓦では掛瓦(かけかわら)二の平(にのひら)利根丸(とねまる)などを用いる。                                      

 

起り破風造り玄関 (切妻屋根)

・・・・破風板の巾(上(か)み七寸七分、下(し)も六寸四分) 同じく厚さは一寸八分とし 中央にて全長百分の二位(くらい)起り(むくり)を付く、・・・・・・屋根勾配は五寸五分にして、側軒(そばのき)の出は棰(たるき)一小間(ひとこま)を通例とすれども其(その)現場によりて二小間出(いだ)すも可なり。

 


瓦の章 参考図書 

日本の瓦 坪井利弘著(新建築社):葺き方の詳細が説明されている。  

木造住宅工事仕様書(住宅金融支援機構)、 おさまり詳細図集①(理工学社)、木造の詳細2・現代木造住宅のディテール(彰国社)、内外装材チェックリスト(彰国社)

各産地(例:愛知県、兵庫県)の瓦工業組合Webカタログ、設計資料


6.雨水の処理、雨樋   

2023-06-05 11:34:35 | 同:屋根

6.雨水の処理、雨樋

1)雨水処理の基本

近世まで通常は、雨や雪は自己の敷地内で処理していた地中浸透遊水地を設けるなど)。

敷地の狭隘化により、雨水を公共下水道などに排水することが市街地内で増えているが、下水道の負荷が大きくなり、地下水減少や都市内洪水の要因となっている。

可能なかぎり、自己敷地内で処理することが必要。

最近になり、特に都市内で、建物に降る雨水を貯留し、中水(水洗便所の洗浄水用、散水用等)として使う建物や、消火用水として利用する事例も増えてきている。

 

2)建物の雨水集水の方法

(1)雨樋による方法 

日本の場合、当初は半割りの竹を使い、屋根全面には設けていない。→(2)雨落ち溝の項参照

現在普通に使われる雨樋には、硬質塩化ビニル製金属板製とがある。

    硬質塩化ビニル製  既製品として市販。各色あり。酸やアルカリに強く錆などが発生せず耐久性はあるが、剛性は弱く、温度変化により変形することがある。

    金属板製      ガルバリウム鋼板銅板カラー鋼板塗装ステンレス等がある。既製品もあるが、加工も可能。

              塵埃、落葉などの堆積で腐食しやすいので、板厚は屋根葺き材よりも厚くする。

注 樋の材料によらず、定期的な清掃など、点検が必要。

は、軒樋集水器あんこうじょうごなどと呼ぶ)、エルボ縦樋受け金物などからなる。 

軒樋縦樋ともに、丸型角型がある。 

    

丸型 メーカー共通規格

  

軒樋の勾配 :1/200以上

縦樋の箇所数:屋根面積と建設地の降雨量、雨の降り方による。

         注「平均1時間あたり」の雨量による算定式は、短時間に集中して降ることが多い地域では通用しない。

       住宅の屋根では、通常2~3間(約3.6~5.4m)に1箇所程度。

軒樋の取付け取付けの高さ 樋の水上で、葺き材の軒先下端に、できるだけ近づける。

       軒先からの出 軒先の先端部より樋半分以上が外側に出るように設ける。 

          注 多雪地域では、落雪を避けるため、高さをやや低く、出は内側に寄せる。

縦樋の取付け:雨水の流れの抵抗を少なくするため、できるかぎり曲りは避け直管。曲りの多いときは、断面積を増やす。

          注 雨水は縦樋の管壁に沿いらせん状に流下するため角型縦樋は流下に対しての抵抗が大きい。

            外観を重視して内樋にする例を見かけるが、木造建築では、避けた方が賢明である。

 

(2)雨落溝による方法

軒先下に雨受けの溝を設け、出入口まわりにだけ雨樋を付ける。溝には、小石、砂利を敷き、水はねを防ぐ。

激しい吹き降りでないかぎり、通常の降雨には、対応できる。受けた雨水は、地中浸透または遊水地に貯める。

雨落ちの例  大徳寺竜源院(りょうげんいん)本堂 1517年 日本建築史基礎資料集成十六 書院Ⅰ(中央公論美術出版)より

 

竜源院平面図・断面図・南側外観   図中の文字・着彩は編集によります。

近世までの建物では、出入り口まわりに半割りにした竹などの雨樋を設け(時代が下がれば銅版製)、他の部分は、雨落溝で処理するのが通例である。

雨落溝は、御影石などで造った溝に、玉砂利を敷き詰め、溝の底は地面のまま、直接雨水を地中に浸透させる。

玉砂利により、水はねを防ぐ。

床下地面をかならず外構部より5寸程度以上高くする。   

雨落ち設計例 平面図・断面図・外観

 

火山灰の堆積した傾斜地のため、排水が集中して土が流出しないように、有孔管で広範囲に分散浸透させている。

通常の地盤の場合は、例1のように、溝に底を設けずそのまま浸透させる。

 


投稿者より

2023-06-05 11:33:48 | 投稿者より

お寄り頂き、ありがとうございます。

ようやく「瓦」のPDFを掲載することができました。

 

十数年前に作ったテキストを再確認しながら編集作業をしているのですが、ミスが多くて時々めげます。

入母屋の割付け図では、妻方向の瓦(左切隅瓦)の寸法を間違えていて、

巴心でも桟心でも、摺り合わせ可能な寸法を超えてしまい、寸法の記入をあきらめました。

 


今回は、「日本家屋構造」の図をいくつか掲載しました。

日本家屋構造」は明治37年(1904年)に、東京高等学校助教授 齋藤兵次郎によって出版され、当時この本を手にしたのは、建築を学ぶ学生たちでした。

この「日本家屋構造」は故人下山眞司「建築をめぐる話」の中では、「章」を立てて解説されていますが、この掲載について

「歳の暮れに思う」と題して、2015年12月30日に掲載されている一文があります(下記の文章は投稿日以前のもので再掲載にあたるため、ブログ内で文字の色を変えていました。G書体もそのままです)。



ここしばらく、このブログに、「日本家屋」の「各部の名称」や「各部の構造」(「つくりかた」か?)を調べるために(?)寄られる方が大勢居られます。建築系の学校で宿題でも出されたのかな、などと訝っています。
そして、この「現象」を見るにつけ、「日本家屋構造・上巻」を紹介する際に、先ずはじめに書いておくべきことがあった、とあらためて思いましたので、遅まきながら、中巻を紹介するにあたって書いておくことにします。

それは、「日本家屋構造」を「教科書」として「日本の家屋・建築」について学ぼうとした人びと、つまり学生たちが生きていた社会が、どういう社会であったか、ということについてです。

一言でいえば、この「教科書」に取り上げられている各種の「事例」は、明治年間には、どの地域でも普通に見られる「事例」であった、つまり、

学生たちは、各部の「名称」や「構造」は知らなくても、そこに載っている「事例」の存在をよく知っていた、決して珍しいものではなかったのです。

さらに言えば、学生たちの身の回りには、江戸時代に建てられた家屋はもとより、それ以前に建てられた例も、数は少ないとはいえ、在ったはずです。

大げさに言えば、身の回りに古今の建物が、重層的に蓄積され、存在していたのです(それが、人の暮す「家並」「街並」の本来の姿なのです)。
    

では、今、この書のなかみに触れる若い方がたはどうでしょうか?

おそらく、そこに載っている各種の図面は、身の回りで見たことがない事例についての図がほとんどでしょう。
もちろん、どの地域に住まわれているかによって異なります。
しかし、少なくとも大都会では、身の回りには見かけることはなく、博物館か郷土資料館にでも行かなければ見ることもできないでしょう(それさえもかなわないかもしれません)。
つまり、身の回りで目にすることとは関係ないため、見ても実感が伴わないのです。

               ・・・・・・・・・・・・(投稿者 略)

しかし、幸いなことに、大都会を離れれば、あるいは、「都市化・近代化に遅れたとされる」地域に行けば、古今の断絶を感じないで済む地域がまだ多数残っています。

そういう地域に住まわれている方がたは、明治の若者と同じく、この書の内容に違和感を感じることはないはずです。
   

(投稿者 略)・・・・「日本家屋」の「各部の名称」や「各部の構造」を学びたいのであれば、先ず、そういう地域・場所へ出向き、実際の事例を観察するのが必須ではないか、とも考えます。

いったい、目の前の建物は、どうしてこのような「平面」になっているのか、「形」になっているのか、・・・・そして、いったいどのような手順でつくるのか、・・・・その場で観ながら考える。

「名称」を知るのは、それからでも遅くはないのではないでしょうか。

 


 

PDFをレイアウトしていると、自由に掲載できるスペースが取れることがあります。

今回は下の写真と平面図を掲載しました(PDFでは何故掲載したかを書くスペースがありませんでした)。

 

 [大型の町家の瓦屋根全景見下ろし 旧緒方家住宅] 大阪市大阪府 天保14年(1843年)    医師緒方洪庵の医院・住居(蘭学塾「適塾」) 

 写真・図は共に日本の民家6町家Ⅱ 学研より 図中の記号は編集によります。

 

  

このテキストの作成者である故人が、生前、町家(町屋)について(しみじみ)話していた言葉が印象に残っています。

町家は一朝一夕に出来たのではない。

町家はそこで日々暮らしている人たち(あるいは当主)がその家の普請について、機会あるごとに次はどこをどうしようかと考え続け、ある箇所に手をいれた後は次の普請を考え、さらに手をいれる。

そうやって、長い歳月をかけ普請を重ねて、今ある形・空間になっている のだと。

「旧緒方家住宅」の瓦屋根見下ろしの美しい姿や中庭を囲む豊かな空間・意匠には、まぎれもなく長い歳月が刻まれているように思います。

 

次は「壁」の章になります。

最初は何を見てもなかなか頭の中に入ってきません。

歴史、工法、法規、取りかかれそうな項目からランダムに取りかかり、行き詰まると他に行く。

次の作業をして数ヶ月経つと、前の項のことは忘れているので、「行き詰まり」から再出発をするのにもまた時間がかかる。

一向に進めなくてめげる時もありますが、楽しい時もあります。

 

季節の移ろいは早いですね。

災害が多くないよう願っています。

ご健勝をお祈り申し上げます。

                               投稿者 下山 悦子