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フランケンウィニー

2016-10-17 03:59:28 | エンタメ
BDで映画「フランケンウィニー」を観ました。とてもよかった。いや、まったく予期していなかった素晴らしい感動をいただきました。

白黒のストップモーション・アニメです。2012年に公開されたそうですから、もう4年も前の映画ですね。その当時でも既にフルCGのアニメは珍しくはなかったとは思いますが……。

ストップモーション・アニメというのはミニチュアの人形などを使って作るアニメです。人形劇とかではなくて、パラパラ漫画みたいにちょっとずつ動かして作るアニメね。「手作り」なんです。

一見するとピクサーなんかが作るCGアニメかと思ってしまうような映像ですが、CGではなくてほとんど実写です。

ツタヤの棚で見かけても白黒ということもあってなんとなく避けていました。テーマからして古典の「フランケンシュタイン」っぽいホラーがベースなんでしょ?という先入観もありました。白黒で気持ち悪いホラーなんか観たくないよ……って感じでした。

子供なんかはカラーそのものに魅力を感じるわけで、白黒ってだけで逃げ出してしまうでしょう。私もそういうところがあります。

でも何となく手にとって、暇つぶしに観てやろうというくらいの気持ちで借りてきたのです。

ところが実際に観てみたら想像もしていなかった感動がありました。不思議です。

ストーリーは元ネタのフランケンシュタイン同様で特に目新しいものではありません。途中のドタバタは面白かったですけどね。

白黒で、しかもカクカクしてぎこちなく不自然な(不気味さを醸し出してさえいる)動きなのに、なぜか映像にどんどん引き込まれていきます。美しい映像。かわいいキャラクターたち。なんでこんなに魅力的なんだろうと不思議でしかたありませんでした。

理屈はよくわかりませんが、その秘密はストップモーション・アニメにあったのかもしれません。

ミニチュアのセットや人形のすべてがこの世界に存在する実物で作られているのです。それらの物体に光を当てれば影ができます。そんな当たり前の自然現象に、人知(つまりCG)の及ばぬ神の領域すら感じてしまうのかもしれません。

あるいは手作りの温もりにほっと心安らぐような感覚でしょうか。この感覚はCGのアニメにはありません。

今やCGアニメの技術は飛躍的に向上して実写かと見まごうほどのクオリティに達していますが、CGの技術がどんなに進歩しても及ばぬ映像がそこにありました。

まさにCGには「とうてい越えられない壁」があるのです。

色を抜いて白黒にして手加減してやってもまだ追いつけない。
(白黒にしたのはただのレトロ趣味ではなく、意図的なものだということは何となくわかってきました。)

後世に残すべき芸術作品とも言える素晴らしい映画です。「鑑賞」という言葉はこのような映画にこそふさわしい言葉です。

これに比べたらCGアニメなんてプラスチックで量産された おもちゃ にすぎません。CGアニメの映画は決して鑑賞などと呼べるレベルの物ではなく、単に「視聴」しているだけです。いわば消耗品です。

フランケンウィニー」という作品はこの映画自体に命を感じることができる映像です。

皮肉なことに物語のテーマは死んだ動物たちの蘇生ですが、そうやって生き返らせた動物たちには命はありません。それでも、映像に命を吹き込んだ製作者の意図は計り知れません。

死者を生き返らせるなんて神への冒涜でもあります。道徳的には良くないことだというのは誰でも知っていることでしょう。そして、これはネタバレになりますが、ラストシーンでは死んだ人造犬が再び生き返ってしまいます。

ハッピーエンド風ではありますが、非道徳的でもあります。

死を受け入れるということはとても大切なことです。そういう体験に乏しい子供たちに観せるのは不適切な映画と言わざるを得ません。

最後には「死んだペットは生き返らない」という現実を思い知らされて終わるのが正しいと考えるのが大人の考え方です。映画を観終わったときには私もそう思いました。

死んだペットが成仏できずにあの世へ行けず、この世を苦しみながらさまよい続けることを意味しているわけですからね。こんな終わり方でよいわけがありません。

死者は成仏してこそ本来の「ハッピーエンド」と言えます。

でも、そうじゃないのかもしれないとも思うのです。「子供向けに作ったから」という安易な解釈はすべきではないでしょう。これはむしろ大人向けのメッセージなのです。

その答えは、私がこの映画を観て感じた感動の理由にあるのかもしれません。

きっと、人を感動させる「モノ造り」には本物の命が吹き込まれるのですよ。だから、この終わり方でよかったのです。

カラフルで美しいCGアニメに対するアンチテーゼでもあります。

常識的な考え方にとらわれてしまっている大人たちにこそ観て……いや、ぜひ鑑賞してほしい映画です。