春の歓送迎会シーズン。各地で居酒屋がにぎわうが、その代表格とも言える居酒屋チェーンに大きな地殻変動が起きている。若者のアルコール離れなどで酒類の消費量が減り続ける中、新興勢力が台頭。かつて、あちらこちらの駅前で見かけた有名チェーンが店舗を減らしているのだ。これから居酒屋業界はどうなるのか。半世紀以上にわたる業界の「栄枯盛衰」と今後について、外食ジャーナリストの中村芳平氏が解説する。
先細りの居酒屋市場
日本フードサービス協会の調べでは、「居酒屋・ビヤホール等」の売上高は、1992年度の1兆4649億円をピークに減少傾向にある。2017年度は前年比1.4%減の1兆94億円にとどまった。
筆者はこの種のデータを読み解き、以前から「居酒屋業界にM&A(企業の合併・買収)による再編が起こる」と予測していた。業界をリードしてきた総合型居酒屋の「旧御三家」とされる「養老乃瀧」「村さ来」「つぼ八」に加え、「新御三家」と呼ばれる「モンテローザ(白木屋などを運営)」「ワタミ」「コロワイド(手作り居酒屋 甘太郎などを運営)」がいずれも不振で、既存店の閉鎖や業態転換、リニューアルなどを余儀なくされる一方、「全品298円均一」をうたう「鳥貴族」などの新興勢力が急激に店舗数を増やし、御三家に取って代わる動きが活発化していたからだ。そして、この予測はズバリと当たった。
「居酒屋御三家」あの看板を最近見ないワケ
つぼ八(東京都台東区で)
「あのつぼ八が…」衝撃のM&A
昨年10月、居酒屋「旧御三家」の一角である「つぼ八」が、イオングループの酒類販売大手「やまや」と、その傘下の居酒屋チェーン「チムニー」に買収されることが明らかになった。やまや・チムニー連合は翌月、つぼ八の親会社の日鉄住金物産から、やまやが53.8%、チムニーが34%の株式をそれぞれ取得した。つぼ八の運営はチムニーが行うことになる。
やまやは酒類・輸入食品販売大手で、全国に330店舗(18年10月末現在)を持つ。チムニーを13年末に子会社化した。チムニーは海鮮居酒屋「はなの舞」「さかなや道場」など多業態で747店舗を全国で展開している。
一方、買収された「つぼ八」は居酒屋業界の代名詞とも言える老舗チェーンで、00年にはフランチャイズ(FC)を中心に全国に550店舗以上を展開した。しかし、その後はFC加盟店の脱退が続き、今回の買収の時点で241店舗まで減っていた。
つぼ八はかつて、養老乃瀧、村さ来とともに居酒屋チェーンの御三家を形成し、業界をけん引してきた。後述するが、その後に台頭する「新御三家」に大きな影響を与えたチェーンでもある。そのつぼ八が、やまや・チムニーグループの軍門に下ったことは、一つの時代の終わりを象徴する出来事だと言えるだろう。
次ページは:「御三家」躍進の時代
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最終更新:3/8(金) 16:22
読売新聞オンライン
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