愛称「トリキ」で知られる焼き鳥チェーン大手の鳥貴族(東証1部上場)が2014年の上場以来、初の赤字決算に転落するという。「全品均一価格」で“飛ぶ鳥を落とす勢い”で急成長してきたが、17年10月に「280円」から「298円」(いずれも税別)に値上げしたことが転機になった。【毎日新聞経済プレミア】
鳥貴族は3月8日、19年7月期決算の業績予想を下方修正した。年間売上高の予想を379億円から358億円に引き下げ、最終(当期)損益の予想を黒字約7億円から赤字約3億円に引き下げた。売上高が約20億円、利益は約10億円下がるというのだ。
「19年7月期決算」というのは、昨年8月から今年7月までの1年間の決算のこと。日本企業は「3月期決算」が多いが、決算期は企業側が決められる。そして上場企業は適宜、売上高や損益の予想を発表する。上ぶれ、下ぶれするときは修正して公表する。
◇ハイペースの出店が裏目
なぜ赤字決算に転落するのか。鳥貴族の説明は次の通りだ。鳥貴族は14年にジャスダックに上場した。認知度が高まり、好調な既存店売上高が続いた。そこで新規出店を加速させたが、人件費高騰などから「298円」への値上げに踏み切った。ところが、値上げを機に客数が減少し、収益力が落ちた。店舗網も過密になり、自社店舗同士の競合も発生した、というのである。
鳥貴族の14年7月期から18年7月期までの5年間の業績を振り返ってみよう。年間売上高は、146億円、186億円、245億円、293億円、339億円とかなりのハイペースで増えてきた。
店舗数は363店、414店、492店、567店、665店とこちらも相当な増え方だ。一方、最終利益の推移をみると、4億円、5億円、9億円、9億円、6億円だ。黒字決算が続いてきたが、すでに3年前にピークをつけていた。
鳥貴族は17年9月に、「うぬぼれチャレンジ1000」と名前を付けた、中期経営計画を公表した。4年間で国内1000店舗に増やし、その後も国内を2000店舗にし、海外にも進出するという内容だ。宣伝文句も「全店舗うぬぼれ中!」だった。
それから1年半がたち、店舗数は2月末で678店まで増えたが、赤字転落が確実になり、この中期経営計画を取り下げることにした。うぬぼれすぎてしまったというわけだ。
◇「うぬぼれ」から「創業の精神」へ
鳥貴族は、創業者の大倉忠司社長(59)が1985年、東大阪市に開業した焼き鳥店から始まった。会社帰りのサラリーマンでにぎわう焼き鳥店のイメージを一新し、女性客を呼び込むためにおしゃれな店名にしようと「鳥貴族」と名づけた。「お客様を貴族のようにもてなす」という思いも込めたという。
鳥貴族は今後、不採算店、自社競合店を閉店して店舗網を再編するとともに、社内チームをつくり「鳥貴族ブランド」を再構築する。「うぬぼれ」から「もてなしの精神」に立ち返ることができるのか。
最終更新:3/16(土) 9:30
毎日新聞
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鳥貴族は3月8日、19年7月期決算の業績予想を下方修正した。年間売上高の予想を379億円から358億円に引き下げ、最終(当期)損益の予想を黒字約7億円から赤字約3億円に引き下げた。売上高が約20億円、利益は約10億円下がるというのだ。
「19年7月期決算」というのは、昨年8月から今年7月までの1年間の決算のこと。日本企業は「3月期決算」が多いが、決算期は企業側が決められる。そして上場企業は適宜、売上高や損益の予想を発表する。上ぶれ、下ぶれするときは修正して公表する。
◇ハイペースの出店が裏目
なぜ赤字決算に転落するのか。鳥貴族の説明は次の通りだ。鳥貴族は14年にジャスダックに上場した。認知度が高まり、好調な既存店売上高が続いた。そこで新規出店を加速させたが、人件費高騰などから「298円」への値上げに踏み切った。ところが、値上げを機に客数が減少し、収益力が落ちた。店舗網も過密になり、自社店舗同士の競合も発生した、というのである。
鳥貴族の14年7月期から18年7月期までの5年間の業績を振り返ってみよう。年間売上高は、146億円、186億円、245億円、293億円、339億円とかなりのハイペースで増えてきた。
店舗数は363店、414店、492店、567店、665店とこちらも相当な増え方だ。一方、最終利益の推移をみると、4億円、5億円、9億円、9億円、6億円だ。黒字決算が続いてきたが、すでに3年前にピークをつけていた。
鳥貴族は17年9月に、「うぬぼれチャレンジ1000」と名前を付けた、中期経営計画を公表した。4年間で国内1000店舗に増やし、その後も国内を2000店舗にし、海外にも進出するという内容だ。宣伝文句も「全店舗うぬぼれ中!」だった。
それから1年半がたち、店舗数は2月末で678店まで増えたが、赤字転落が確実になり、この中期経営計画を取り下げることにした。うぬぼれすぎてしまったというわけだ。
◇「うぬぼれ」から「創業の精神」へ
鳥貴族は、創業者の大倉忠司社長(59)が1985年、東大阪市に開業した焼き鳥店から始まった。会社帰りのサラリーマンでにぎわう焼き鳥店のイメージを一新し、女性客を呼び込むためにおしゃれな店名にしようと「鳥貴族」と名づけた。「お客様を貴族のようにもてなす」という思いも込めたという。
鳥貴族は今後、不採算店、自社競合店を閉店して店舗網を再編するとともに、社内チームをつくり「鳥貴族ブランド」を再構築する。「うぬぼれ」から「もてなしの精神」に立ち返ることができるのか。
最終更新:3/16(土) 9:30
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