春の魔法

　ここ二週間ぐらい窓のない場所に閉じこもっていた。

　もちろん行きと帰りは存在して、表に出なかったわけではないんだけど、『外』というものに触れた気がしなかった。

　今日久し振りに表を歩いた。

　電車に乗っての移動がメインだったけど、窓から見る風景にたまらなく『春』を感じた。

　所々に見える桜。窓越しでもわかる暖かな春の陽射し。

　歩いてみて実感する春そのもの。

　僕は『独り』には自信があるんだけど、『みんな』とか『一緒』という奴には劣等感を感じているから、独りでいるときにもたまに落ち込んだりするんだけど、今日は違った。

　この世の全てを受け入れられる。

　誰も彼もが愛おしく感じられる。

　明日もきっと良い日であると確信できる。

　歌の歌詞を借りるのならば、

『生きているのが　素晴らしすぎる』

　そんな気分になれた。

　きっと、

　春の魔法にかかったせいだと思う。