Del Amanecer

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ダリとロルカの出逢い~「LITTLE ASHES」を鑑賞(DVD)

2012-07-15 23:48:44 | CINEMA~映画
2008年に制作されたインディーズ映画「LITTLE ASHES」は日本では未公開となってしまい、気になりつつも観られずにがっかりしていたのだけど、この春にWOWOWで放映されたらしく、ついに最近DVDが発売されるときいて、すぐにAmazonで購入した。
今をときめく(?)ベストセラー小説「トワイライト」シリーズの映画版でエドワードを演じるロバート・パティンソンが出演しているから、DVD化も果たされたのかな?
そうでなかったら、日本盤のDVDは発売されなかったかもしれない。

なんと届いた日にDVDプレイヤーが故障し(ただでさえSONYからリコールのかかっていた機種!)観ることができなかったこの映画、無事に修理も済んで昨夜鑑賞。
イギリスとスペインの合作ということでタイトルクレジットにはカタルーニャ州政府のマークなども登場する。(でも全編英語なんだよね・・。フェデリコが詩を詠む時はスペイン語だけどその上にダリ=パティンソンの英語がかぶって聞こえない・・。)

時は1922年。スペインには内戦の暗い影が落ち始めた頃。
マドリードのサン・フェルナンド美術アカデミーに風変わりな新入生がやって来る。
ルイス・ブニュエルに名前を聞かれた新入生は「サルバドール・ダリ」と答える。
自らを天才だと言うダリは、詩人のフェデリコ・ガルシア・ロルカと出会う。
共に非凡な才能を豊かに享受している彼らはほどなく意気投合して友情を育むこととなるのだが、サルバドールとフェデリコの間には友情を超えた感情が芽生えるようになり、ルイスはひとりパリに行ってしまう。

歴史上の人物が登場する以上、結末は誰もが知っている。
でもそこに至るまでにどんなドラマがあったのか。それは語り部である監督に託されるのだ。
ダリとロルカの道ならぬ愛に焦点を当てたので、その辺の描写は激しいけれど、全体としては淡々とした感じでドラマがすすんでいく。
映像は美しく、音楽も叙情的。だからこそダリの奇妙な言動が際立つのか・・。
トワイライトのロバート・パティンソンは、そんなエキセントリックなダリになりきって、その奇行ぶりを渾身の演技でみせてくれる。

私自身は、ダリの作品は最初受け付けなかったものの、だんだんにダリの繊細さや、その作品の色彩の吸い込まれるような青に、なぜか心惹かれるようになっていった。
そんなダリが描いた妹アナ・マリアの絵やロルカの詩やその存在にも・・・。
数年前にスペインを旅した時は、ダリの故郷フィゲラスやアトリエのあったカダケスにも訪れることが出来た。美しい漁村カダケスの風景は今も忘れない。
そんな風景が映画には出てくる。そして見覚えのある風景の中を若き日のダリやロルカが生きている姿を見て鳥肌がたってしまった。
映画は多くを語らないけれど、ロルカを愛しながら、兄を愛するロルカに胸を傷めるアナ・マリアの姿もさりげなく登場する。
歴史を変えることができない以上、ふたりにはやがて苦い結末が待っている。
言葉ではなく、映像でこんなふうに見せられるのはとてもインパクトがあって生々しい。

激しくてそして哀しい物語。
タイトルの「LITTLE ASHES」はカダケスで完成したダリの作品にロルカが贈った名前。
二人の最高に幸せな瞬間だったのかもしれない。

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「天才画家ダリ~愛と激情の青春」(DVD)
原題 :「LITTLE ASHES」
2008年 イギリス・スペイン合作(日本未公開)
鑑賞日: 2012年7月14日(土)


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