Del Amanecer

スペインとフラメンコ、ビセンテ・アミーゴと映画とフィギュアスケートについて

ハリーとシリウスの絆

2007-07-30 23:51:44 | Harry Potter
シリウス・ブラックはハリーのシリーズの中で一番好きなキャラクター。
ハリーの父・ジェイムズ・ポッターの一番の親友でハリーの名付け親だ。

今回の5作目「不死鳥の騎士団」でシリウスはハリーの心の葛藤や成長に関わる大切な人物だ。
シリウスなしではこの5作目は成り立たない。
両親をヴォルデモートに殺されたハリーにとって、シリウスはたったひとりの大切な、心を許せる
「父親」であり「兄」であり、たったひとり素直な自分に戻れる無二の存在なのだ。

映画の最初の方のシーンで、はじめてグリモールド・プレイスに到着したハリーを迎える不死鳥の
騎士たち。
一瞬奥のキッチンにいるシリウスとハリーの視線が会う・・・しかしそれはロンのママ、ウィーズリー
夫人の抱擁にかき消される。
心憎い演出だね。だからこそその後の二人の再会に胸を打たれるのだ。
再びキッチンに入ろうとするハリーをみつけて両腕を広げるシリウスの胸に飛び込むハリー。
最高さ・・・というハリーの表情が切ない。

そう、今回のシリウスは躊躇なく思い切りハリーを抱きしめる。ここは原作とちょっとちがう。
映画のシリウスの方が「大人」の感じがする。
誰にも抱きしめられずに育ったハリー。
ハーマイオニーや友人たち、ロンのパパ・ママの抱擁もあたたかく愛情がこもっているけれど、ハリーにとって一番甘えられる無二の「家族」はシリウスだけなのだ。
ハリーにとってシリウスは父と母につながる大切な人物で親代わりだし、シリウスにとってもハリーは大切な親友の唯一の忘れ形見。
ハリーの中にジェイムズの面影やスピリットを探しているのだ。
もちろんハリーがジェイムズでないことは百も承知のはずなのに、思わずハリーに向かってジェイムズ!と叫んでしまうのが哀しい。

クリスマスが終わってホグワーツに戻る朝、ブラック家の家系図の前で誰にも言えない心の中の恐怖をシリウスに語るハリー。
「僕はヴォルデモートに心を支配され、悪に染まってしまうのではないか。」
シリウスにだけは打ち明けられる。怯えていることをさらけ出すことができる。
「君は良い人間だ。人の心の中には善と悪があって、そのどちらを選ぶかは自分自身なのだ。」と
ハリーにやさしく語りかけるシリウス。
「この闘いが終わったら家族として一緒に暮らそう。」とハリーを抱きしめるシリウス。
でもこの約束が果たされないのを知っている。
だからこそふたりの姿がとっても切ない。



ヴォルデモートの罠にはめられ魔法省の神秘部で絶体絶命のハリーを命がけで救いに行くシリウス。
字幕では「その子に手をだすな!」だったけれど吹き替えでは「私の息子に手を出すな!」と言っていた。ここは英語でもMy sonと言っているようなので吹き替えの方が正解でしょう。私はこっちの台詞の方が好き。
でもその後でシリウスはとっさの場面でハリーをジェイムズと呼んでしまう。
シリウスにとってハリーはすべてだから。
亡き親友であり、親友の息子であり、唯一の希望なのだから。
シリウスにとっては長いアズカバンでの月日は、逆にいうと時が止まっていたのだから。
シリウスがハリーの中に親友を見つけようとしていても、同時にちゃんとハリーは息子だと認識している冷静な部分もあるのだと思う。

もうフクロウはシリウスの手紙を運んでは来ない。
悲しみを乗り越えるには、悲しみと真正面から向き合って精一杯悲しむしかない。
ハリーはシリウスを失った悲しみに耐え、喪失感に耐え、それをバネに、強く成長していく。そんな姿が好きだ。
だからこそハリーを命がけで守って黒いヴェールの後ろへ没していったシリウスが切ない。

ファンタジーという姿を借りて、人が生きていく中で出会う場面と想いをちりばめたこの作品は、とても人間らしく、そんなところが魅力なんだと思う。



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4 Comments

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2回目。 (junio)
2007-07-31 13:31:26
予定より早く、昨日2回目を字幕で観てきました!

ルーナとハリーだけが見えるセストラル。
二人だけが聞こえる、ベールの向こうの声。
世界中の子供たちの心を捉えた、ファンタジー作品
でありつつ、
わくわく楽しいだけじゃない、
生きていること、人生であることを意識させ、
心にズキンと来る展開が、
老若男女関係なく、人々の心を捉え続けるのでしょうか。そんなことを改めて考えました!

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もし余裕があったら・・・ (Angelita)
2007-07-31 18:53:07
junioちゃん
2回目を観てきたのね!
1回目と比べて印象は変わりましたか?
あの黒いヴェールの向こう側がとっても気になりますが・・。
7巻できっと謎が解けるのでしょうね。
(ああ~~待ち遠しい!)
ハリーのSAGAの根底に流れるのは人間の普遍のテーマ、愛・死・憎しみ・友情・・・。
魔法界という壮大なスケールでそれらを描こうとしたローリングさんのイマジネーションの豊かさには脱帽です。

もしも余裕があったら吹き替え版も一度みてみて。
台詞がちがうところがあって面白いよ。
でもやっぱり本物の俳優たちの声の演技や迫力にはかないませんね。
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ご無沙汰しました。 (音去)
2007-08-06 18:21:34
こんにちは。
あれやこれや忙しくて、今日やっと、らら横で観てきました。
私も、全部描くのが無理なのは承知の上で、それでもやはり
消化不良な気持ちが否めませんでした。
どれもこれも中途半端な気がしましたねえ。
中でも、スネイプ先生の心の中を見てしまったハリーが
期せずして父親の若い頃の嫌な部分をも見てしまった時の動揺が
何も描かれていないというのは致命的だと思いました。
「人には完善・完悪はない。すべて両面を持っている。」
という大きなテーマがある以上、ここは結構、重要なんじゃ
ないのかなあ・・・と思うのですが。
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お久しぶりです! (Angelita)
2007-08-06 22:57:18
音去さん
こんばんは!コメントありがとうございます。
お忙しそうですね。私もなかなか遠征まではできませんが、近場で観ています。
本当に今回の5作目は、なぜもっとひとつひとつのエピソードを丁寧に描けなかったのか残念に思います。
あと30分長くしても、ちゃんと描いて欲しかったですよね。
音去さんのおっしゃるようにスネイプ先生のエピソードこそシリウスの台詞が活きる大切なエピソードなんですよね。
原作では動揺したハリーが危険をおかしてでもシリウスに確かめに行く場面がありましたっけ。
ラストのシリウスを失ったハリーもあっさり終わってしまって、せっかく盛り上がったラストがあっけない幕切れになってしまったようですね。
原作も好きだけど、映画のハリーも好きなので、せっかくよい場面もあるのにもったいないと思いました。
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