アンクロボーグの世界

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ショートショート 『交渉人 枝川裕樹』

2009年02月22日 20時57分13秒 | ショートショート
《 自動創作プログラムが作製したショートショート作品です 》

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『交渉人 枝川裕樹』

枝川裕樹は、大事な交渉に向かっていた。政府専用の高性能の小型飛行機に乗り高度6,000メートル上空にいる。
2週間前の台風20号の担当者は、交渉を失敗させて、最悪な結果になった。台風通過進路の1都7県で16名もの死亡者を出した。

11年前のこと。気象庁の自然研究機関がガイア理論の実存を発見し証明したのだ。
ある一定以上の規模の自然現象には、人類とは、かなり異質だが、何らかの知性が存在していることを…
現在、存在が確定し、コンタクトに成功しているのは、台風(ハリケーンを含む)と内陸部、直下型の地震の二つ。
政府は、これらの知性体と交渉をし、少しでも被害を減らせないものかと考えた。そこで枝川のような自然生命交渉士制度が作られたのである。

枝川は、日本国内でもわずかにしか、いない気象交渉士の資格を持った人物。
特に枝川は、さらに貴重な地震交渉士の資格をも有する人物で、現在、日本では、6名の中の1人だった。

台風21号の雲の中にすでに浮かべてある《反応浮き》66基は、正常に作動していた。
大きく深呼吸した枝川は、装置を目覚めさせ、脳へ直結させた電極弁を少しずつ開きながら交渉を開始した。
「大きく…素晴らしい…美しい…」枝川は、そうゆっくり、3度繰り返し、話しかける。
相手の返事を待つ。しばらくして枝川の脳を震わせる波動が送られてきた。
「私は…大きく…素晴らしい…美しい…」よし。台風の返事が来た。
何回かやり取りを成功させ、本題に入る。今回の使命の一つは、人柱《ひとばしら》を1名にしてもらえるように交渉すること。
精神を研ぎすまし、ピュアにし、対話を交わしてゆく。
21号の規模から言えば最低、2名の犠牲が必要なのだが何とか交渉がまとまった。

台風生命の一生は短い。
赤道付近で生まれたとき、意識が芽生え、大気に運ばれ移動を続け、温帯低気圧になり小さくなってゆきやがてその命が終わる。
10日後、台風21号は、人柱の確認を終え、人の命の絶命と共に、約束通り、大きくならずに、規模を弱めながら気圧を分散させ日本列島を縦断。
やがて、オホーツク海へ出たあたりで寿命を迎えてくれた。

装置の接続をすべてほどき、枝川は、解放された。いつものことだが、かなり危険な状態だ。
すぐに専用の処置がほどこされた病院へ向かう。同じ機内には、各テレビ局の取材班がこの交渉のもようを全国へ伝えていた。
力をふり絞り、レポーターのマイクとカメラに向かい枝川は、最後の任務を果す。
「交渉は成功です。超大型の21号は、これ以上の規模に成長しない事を約束してくれました」
「皆さん、尊い1名の殉職者の冥福を共に祈りましょう」

これで台風の被害は軽度なものと成り、程よい雨のめぐみを日本に与える事だろう。

枝川にとっては、2ヵ月後に更なる重大な大仕事が控えていた。南関東にいずれ発生する大規模地震との交渉だ。
この計画は、国家プロジェクトで進行している。地震交渉士も枝川を含め6人が参加することが決まっている。

失敗は許されない。
地震生命体は台風生命体よりも交渉が難しい。人柱の人数もかなりの数が必要なのだ。

2ヵ月後、6名の交渉人が地下600メートルの特殊地下空間に集まっていた。
「人柱の用意は、出来たのか」枝川は、再度、政府機関の責任者に問う。
「はい。最終チェックを済ませ準備が完了しました。厳重に個別カプセルにて起動させました。さとられてはいません」
枝川は、目を閉じ、これまで殉職した人柱143名が眠る慰霊碑のある方角に向かい祈る。
今回の南関東規模の地震だと人柱の殉職者の数は、100名以上に昇る。
何百倍もの人を助けるとは言え、決して許されない数だ。

全世界も注目している。これまでも人柱には、人権問題で猛烈な国際的避難を受けていた。
これを受け、気象庁は、今回からは、違う対処法に出た。
人間の人柱を使わない方法を開発したのだ。クローン人間を使う方法だ。
特殊培養法で育てられた極力、意識や人格を持たないとされる半人類と言うべきもの。
はたしてこの模造人間、ニセモノ人間で地震生命体をごまかす事が出きるのだろうか。

私、を含め6名は、装置を目覚めさせ、脳へ直結させた電極弁を少しずつ開きながら交渉を開始した。

「強く…大きく…美しい…」

   《 お わ り 》