理乃美

ソフトとハードと論理の覚え書き

トランスリニアバイアスとB級PPとを比較する

2019-09-22 11:12:31 | 電子工作

B級プッシュプルの適切なバイアス電圧のあたりはついたので、トランスリニアバイアス回路と比較してみる。

1KHz 28Vp-p の正弦波の出力をFFTして基本波に対して高調波の割合を読み取った。トランジスタはデフォルトモデル。

バイアス電圧

最大の歪成分

2番目の歪成分

3番目の歪成分

4番目の歪成分

BPP 0.95V

5-74.86dB

7-75.30dB

9-76.36dB

11-77.62dB

トランスリニアバイアス

3-64.53dB

5-72.20dB

7-77.86dB

9-82.50dB

APP 1.9V

3-79.8dB

5-95.1dB

7-109dBdB

省略

 トランスリニアバイアスよりB級の方が低歪という結果. 

そこで歪電圧の波形を見てみる。このシミュレーション回路では、ソース電圧が V(n004)である。負荷を出力インピーダンス でドライブしたなら、出力電圧は (8.0/(8.0 + X))*V(n004) である。それと実際の出力との差が歪波形。ここで、出力インピーダンスは歪波形を見ながら手探りで決めた。

結果としては、BPPとトランスリニアバイアスではどっこいどっこいに見える。ただトランスリニアバイアスの場合、ぜんたいにうねうねと歪むのに対しBPPだと0Vを跨ぐ所で急峻な歪があるという点が異なる。

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プッシュプル出力段のひずみをFFTで見る

2019-09-22 10:46:26 | 電子工作

前回はB級PP出力段でのバイアス電圧とクロスオーバー歪を歪率としてどうなのかFFTで見た。B級だけではなくAB級やA級にまで広げてみよう。

28.28Vp-p 1KHzの正弦波に対する出力をフーリエ変換し、基本波に対する高調波の比を調べる。成分の大きい順に並べたので通常は3次、5次、7次の順となる。なお、トランジスタはLTspiceのデフォルトモデル。

 

 トランジスタ当たりのバイアス電圧

 最も大きい成分

通常は3次高調波

 2番目に大きい成分

通常は5次高調波

 3番目に大きい成分

通常は7次高調波

0.9V 黄緑 (B)

-64.1dB

-72.0dB

-78.1dB

0.95V (B)

5-74.9dB

7-75.3dB

9-76.4dB

1.0V (B)

-61.6dB

-64.8dB

-67.6dB

1.15V 青緑 (AB)

-51.5dB

-57.8dB

-64.4dB

1.3V (AB)

-48.9dB

-60.3dB

9-71.1dB

1.9V (A)

-79.8dB

-95.1dB

-109dB

2.0V 深緑 (A)

-84.0dB

-102dB

-119dB

3.0V (4Ω 160W A)

-105dB

-139dB

-167dB

 おいおい、AB級よりB級の方が良いのかよ...というのは、大振幅で見ているから。

 

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B級アンプの最適バイアス - FFTで見る

2019-09-20 23:48:24 | 電子工作

前回、B級PP出力段ではバイアス電圧によって0V付近の振る舞いが非線形になっていることを示した。このクロスオーバー歪を歪率としてどうなのかFFTで見てみる。

28.28Vp-p 1KHzの正弦波に対する出力をフーリエ変換し、基本波に対する高調波の比を調べる。成分の大きい順に並べたので通常は3次、5次、7次の順となる。なお、トランジスタはLTspiceのデフォルトモデル。

 バイアス電圧

 3次高調波

 5次高調波

 7次高調波

0.75 (黄緑

-50.78dB

-55.90dB

-59.29dB

0.8

-53.41dB

-58.77dB

-62.34dB

0.85

-57.20dB

-63.09dB

-67.08dB

0.9 深緑

-64.05dB

-71.95dB

-78.06dB

0.95

5-74.79dB

7-75.23dB

9-76.29dB

1

-61.51dB

-64.71dB

-67.45dB

 このように、0.95V (よりちょっと低いあたり) で歪率が最良になっているのが見てとれる。

 

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B級アンプの最適バイアスを調べる

2019-09-18 23:36:34 | 電子工作

B級アンプは最適値があり不足しても過大でも不適当ということが、黒田氏のテキストに書かれている。(トランジスタ・アンプ設計法 p279)

これをLTspiceで実験的に視覚化してみる。これは、B級出力段で8Ω負荷をドライブした場合の振る舞いで、横軸に入力電圧、縦軸に入力と出力の差をとっている。線が直線であれば入力と出力は比例していて歪がないということになり、線が曲がっていると非線形なので歪が生じることになる。線の傾きは出力インピーダンスともとらえることができるだろう。

ここでは、トランジスタあたりのバイアス電圧を0.75V(緑)から1.0V(灰色)まで0.5Vステップで変えて実験した。

バイアス電圧が不足していると、0V付近で急に出力インピーダンスが高くなりS字にうねっている。逆にバイアス電圧が高いと0V付近では全体に比べて出力インピーダンスが低く逆S字にうねることになる。次の図は0V付近を拡大したものだが、バイアス電圧が0.9V付近だとほぼ直線になっていて、最適のバイアス電圧ということになりそうだ。

 

 

[1] 黒田 徹  基礎トランジスタ・アンプ設計法 ラジオ技術社  ISBN4-8443-0200-0

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トランスリニア・バイアス電力増幅回路をつついてみる (3)

2019-09-03 23:11:18 | 電子工作

トランジスタ技術の黒田氏の記事によると、二代目アンプでは、3段ダーリントン・エミッタ・フォロアにすることで等価的にhfeが10^6位のトランジスタを実現し基準電流を5mAに抑えたとのこと。

そこで、段階を踏んで、まず前回の回路のQ1, Q6を2段ダーリントンに変更して試してみる。シミュレート結果の最大駆動電流から2N3055/MJ2955でのhfeが44と見積もって、基準電流を 150mAの 1/44 である3.4mAで試してみよう。そう考えてシミュレートした結果がこちら。ありゃ、基準電流が3.4mAの時、しっかりと発振している。

さて何が悪いのだろう。ちなみに、基準電流が150mAの場合は発振していない。

基準電流が小さいと想定外になるところと考えると、Q3とQ4があやしい。アンペア単位の電流を扱うパワートランジスタにmA程度の電流では不都合な部分が多そうだ。

そこで、Q3とQ4を汎用の小型トランジスタに変えてみた結果がこのとおり。基準電流を3.4mAにしても発振ししていない。読み通りの結果となった。

というか、記事のp182の「基準電流が5mAとわずかなのに...は、Tr3とTr6にチップ面積が小さいトランジスタを使っているからです」の部分の話がここで起きている事なのかな。

 

[1]:  黒田 徹、「ひずみ率0.0005%! 40W高効率パワー・アンプの製作」、トランジスタ技術 2019年5月号、p179-189.

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