理乃美

ソフトとハードと論理の覚え書き

Joule thiefの仕組み

2020-02-11 10:28:02 | 電子工作

ジュールシーフ回路の発振の原理を考える。

どういう仕組みでトランジスタがターンオフするのか、しばらく考えて次のような仕組みだと気づいた。

次の図は、LTspiceでトランジスタのコレクタ電流(赤)とベース電流(50倍 水色)、ベース電圧(青)とコレクタ電圧(緑)を表示したもの。

まずは、L2に電流はたいして流れていないが、ベース電流 Ib は流れ始めたところから始める。ベース電流が流れたのでコレクタ-エミッタ間は導通し、コレクタ電圧は0V付近だ。だがコイルに急には電流が流れない。そこから徐々にコイルに電流が流れ始め、コレクタ電流Icとしてトランジスタに流れ込む。Ic < Ib * hfe の間はトランジスタが電流を全部流せるのでコレクタ電圧は0V付近にとどまる。ところが、Ic = ib *hfe を超えると、それ以上電流をコレクタに吸い込めないので、コレクタ電圧は急上昇する。L2へかかる電圧の変化はL1に反映され、ベース電圧が下がりベース電流が減少し、ということでコレクタ電流が流れなくなる。が、コイルは電流を流し続けようとするのでコレクタ電圧は電源電圧を超えて跳ね上がりLEDが点灯する。コイルに蓄えられたエネルギーがLEDで消費されるにつれコイルに流れる電流は減りコレクタ電圧は下がると共にベース電圧は上昇し、やがてベース電流が流れ始める。で最初にもどった。

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Joule thiefの実験

2020-02-08 23:20:28 | 電子工作

トラ技のバックナンバーを読んでいたら、ジュールシーフ回路[1]というのが目に付いた。中途半端に使いかけの電池がいくつかあって、もったいないなぁと思っていたので試してみることにした。Wikipedia にもJoule thiefの記載がある。[2] 

まずはコイル。手持ちのジャンクに、5ターンの巻き線付きのトロイダルコアで、DE-5000で測ると97.39μH @100kHz. (Q=25.3) というのがあった。トラ技の記事よりインダクタンスが一桁大きいが、まあ試してみよう。トランジスタは、定番の2SC1815 (秋月電子通商で購入したもの)。LEDは、手持ちの赤色LEDを2個直列にした。赤色LEDは順方向電圧が低いので乾電池に直結でも光ってまうので、2直にして乾電池の電圧では光らないようにした。

で、ブレッドボードに組んだ結果がこちら。見事に動作してくれた。

トランジスタのコレクタ電圧をオシロで見たのがこちら。

LTspiceでシミュレートしてみたのがこちら

シミュレーションでは、実験回路より周期が長いが 使っているLEDの特性がシミュレーションで使ったものとはだいぶ違うだろうから、まあこんなものだろう。

シミュレーションでLEDに流れる電流(青)とトランジスタに流れる電流(緑=コレクタ電流)を見るとこうなる。これだけ見ると、LEDよりトランジスタにたくさん電流が流れいて無駄使いしているように見える。が、電力で見ると別。その次の図で、赤はトランジスタの(コレクタ電流による)消費電力、緑はLEDの消費電力で、青はトランジスタのベース電流による消費電力。ざっと見て、緑の囲む面積は赤の囲む面積の10倍はありそうなので、電力効率は90%ということだろう。

[1] 小川 敦, "バーチャル・スタジオ26 もったいない!使い古しの乾電池でもLEDを明るく点灯する回路", CQ出版, トランジスタ技術 2016年 4月号  92-93, 

[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Joule_thief

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クリスタルラダーフィルタの記事の机上追試 その2

2020-02-02 15:50:22 | RF

QRP Power誌のWes Hayward氏の記事[1]の机上追試の続き。

クリスタルにLを抱かせる効果をLTspiceで実験。QRP POWER誌の記事にあるようにインダクターに自由度はないので、コイルといっしょにトリマを抱かせてトリマで調整することを想定した回路が以下のとおり。

グリーンの線がもとのクリスタル。適当だけど、0.06mHのコイルと3pFのコンデンサを並列に接続すると、赤の線になる。で、クリスタルの並列容量をいじって合わせこんだのが青の線で、その時の並列容量は0.38pF。並列容量をもとの15%に減らせたと言えそうだ。

並列容量を2.5pFから0.38pFに減らすご利益を設計ソフトのDishal2052.exe [2]で見たのがこちらの2枚。0.38pFに減らせると40db落ちのところで明らかな対称性の向上が見られる。

で、この計算結果をLTspiceで試したのがこちら。上から、並列容量が2.5pFのクリスタルで組んだフィルタ(緑)、並列容量が0.38pFのクリスタルで組んだフィルタ(青)、クリスタルの並列容量をLCでキャンセルして等価的に0.38pFにして組んだフィルタ(赤)。理屈ではうまく働きそうだと分かった。

[1] Wes Hayward, Refinements in Crystal Ladder Filter Design, QRP POWER (The American Radio Relay League, Inc. 1996 ISBN: 0-87259-561-7) 5-8~5-13

[2] http://warc.org.uk/?page_id=387

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クリスタルラダーフィルタの記事の机上追試 その1

2020-02-02 09:07:51 | RF

QRP POWERのWes Hayard氏の記事[1]にある、通過帯域幅の広いクリスタルフィルタを作るのに邪魔なクリスタルの並列容量をLでキャンセルしてしまえ、というのに興味をもった。

まずは、クリスタルフィルタの設計ソフト、Dishal2052 [3]で調べてみる。

9MHzくらいのSSB用クリスタルラダーフィルタを想定。

Xtalのパラメータは、JA9TTTさんのサイト[2]にあったXtalの実測値を参考に、Lm=40.8mH, Cm=7.68fF, ESR=15Ω, Cp=2.5p, 直列共振周波数 8991 kHz とする。

通過帯域幅を2.7KHzとし、違いが分かりやすいように4素子とした。リプル1dbのチェビシェフ特性で構成した結果は以下のとおり。フィルタの特性の非対称性があきらかにでている。

ここで、並列容量Cpを、1p, 0.5p, 0.1p と変えてみるとこの通り。

たしかに、並列容量によってフィルタの特性の対称性が損なわれているのが見て取れる

SSGジェネレータ用途ならこの非対称性を逆に有効利用できるだろうけれど。

 

[1] Wes Hayward, Refinements in Crystal Ladder Filter Design, QRP POWER 5-8~5-13

[2] https://ja9ttt.blogspot.com/

[3] http://warc.org.uk/?page_id=387

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