小学3年生の冬坊は、朝から悩んでいた。
図工で使う材料を、今日、持っていくか否か?
月初めに配られる通達によると、材料の締切日は今日になっている。
でも、きのう先生は、持ってきなさいとは特に言っていなかった。
さあ、どうしよう。 持っていく? いかない?
どうしようも何も、用意してあるんだから持っていけばいいじゃないかと思うのは、大人の考えですかね?
使わなければ、おいておけばいいんだし、近いうちに必ず使う物なんだから。
何を悩むことがあるんだか・・・。
材料を入れた袋をぶらさげながらも、悩み続けながら学校へ向かう冬坊。
途中で、別のクラスのお友達に会ったので、今日持ってきたかどうか聞くと、みんな持ってきていないと言う。
「じゃあ、持ってくのやめる?」(通学路の途中までくっついてきた母)
「ううん、やっぱり持っていく」(お友達の意見は参考にならなかったらしい)
ようやく決意し、母と別れて歩き出す冬坊。
ところが、しばらくすると、袋をこちらに向かって振りながら引き返してくるではないか。
「どうしたの?」
「やっぱり持っていかない」
「そう。じゃあ、ママが持って帰るね。でも、もし今日必要だったら、きのう先生が何も言わなかったから持ってきませんでしたって、先生にちゃんと言うんだよ」
ついつい余計な忠告をすると、冬坊の心は再び揺らいだ。
「やっぱり持っていく・・・」
ようやく決意し、母と別れて歩き出す冬坊。
ところが、しばらくすると、またもやこちらに引き返してくるではないか。遅刻しちゃうぞ。
「どうしたの!?」
母があきれて声を強めると、冬坊、答えていわく・・・。
「理科の教科書、忘れた」
ちゃん、ちゃん。
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