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オルタモンドは、「もうひとつの世界」、希望と公正のグローバリゼーションを求めて、さまざまな活動や研究に取り組んでいます。

国際シンポジウム「2008年G8サミットに向けて日本の市民社会ができること」報告

2007-10-17 | イベント・セミナーの案内・報告
 10月14日東京港区の女性と仕事の未来館において、2008年G8サミットNGOフォーラム/(特活)国際協力NGOセンター共催による国際会議&シンポジウム「2008年G8サミットに向けて日本の市民社会ができること」 が開催され、会場がほぼ満員の250人近い市民が参加しました(詳しい報告はフォーラムからされると思います。ここではシンポジウムの一部を紹介したものです)。

●どんなシンポジウムだったの?


 このシンポジウムは、第二期に入るにあたっての2008年G8サミットNGOフォーラムのキックオフです。フォーラムは今年1月に結成され、この9月いっぱいかけてポジション・ペーパー(G8への提言書)づくりを行ってきました。当日、貧困・開発ユニットからA4版48ページ建て(字体細かい)、人権・開発ユニットからA4版12ページ建て、環境ユニットからA4版6ページ建て、のペーパーがそれぞれ出されました。環境ユニットの本格的ペーパーは本年12月のインドネシア・バリでの気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)終了以降出される予定のようです。

 話は前後しますが、ポジション・ペーパーの論議や日本の市民社会が何をすべきかについては、午後のセッションの分科会や全体総括で行われました。午前のセッションは、アジアとアフリカ、つまり「南」のNGO・市民社会から貧困、環境、人権などの諸問題に関して意見が出されました。

●「南」のNGO・市民社会からどんな意見が?


 スピーカーは次の4人でした。国連環境計画(UNEP)アフリカ地域事務所 技術・経済・産業課 エネルギープログラムオフィサーのンジェリ・ワムコンヤ氏。第三世界環境・開発アクション(ENDA) 政策提言担当プログラム・オフィサーのパパ・ンジャイエ氏(アフリカ)。財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)気候政策プロジェクト上席研究員/マネージャーのアンチャ・スリニヴァサン氏。社会と農業開発のための南アジアネットワーク(SANSAD)事務局長のアニル・シン氏。
主な発言をひろってみます。

・(アフリカの貧困と気候変動)アフリカは債務、疾病、紛争、政府の腐敗などにより繁栄できない大陸となってしまった。とくにサブサハラの国々はGDPが未だ30年前より低い。そういう中で現在気候変動が押し寄せつつある。とくにアフリカの多くの国が内陸にある関係で干ばつが問題で、年々ひどくなりつつある。マラリア患者の増大、農業の収穫量の低下など、このままでは最大で経済成長が10%低下するようになる。

・(アジアでの貧困と気候変動)アジアでは開発優先、市場メカニズム優先となっているが、ここに気候変動もくい込ませ開発アジェンダの主流にしなければならない。アジアでは島嶼や沿岸地方が海面上昇や洪水で被害が甚大になる。気候変動適応資金の問題について、その主軸のCDM(クリーン開発メカニズム)だが、最貧国にはほとんど受益しない。最貧国の利益となる仕組みを考えないと意味がない。適応資金だが、世界銀行は毎年90億ドルから410億ドル必要と言い、オックスファムは500億ドル必要と言っている。現在まだ2億ドルしか集まっていない。

・(南アジアの貧困)南アジアの貧困状況は次の通りである。【編集者注:国名(1日当たり1ドル以下の所得者が全国民に占める割合、同じく2ドル以下の割合)と見る】 バングラディッシュ(36.0%、82.8%)、インド(34.7%、79.9%)、パキスタン(13.4%、65.8%)。ところで、米国の家畜は一頭あたり2ドルの補助金がついている。南アジアの人々は家畜以下なのだろうか! 南アジアの産業の主力は農業であり、国民の6割から7割が農業に依存している。問題は、生産性は下っていないが投資が減っていることである。GDPの2%しか投資されていない。インドでは農民の自殺率が高く大きな社会問題となっている。

●次はキャンペーン!!&北海道からの報告


 午後のセッションは、3つの分科会(環境、貧困・開発、人権・平和)に別れてポジション・ペーパーや日本の市民ができることなどを討論しました。貧困・開発分科会では、作成したポジション・ペーパーの論点をオックスファム・ジャパンの山田太雲さんが報告。「このペーパーの前文のタイトルが『求められているのは社会的公正』とあるように、私たちは“人権問題としての貧困”を確認し、それを出発点においている。これは世界人権宣言や国連ミレニアム宣言の立場でもある」とし、ペーパー全体を説明しました。その後、リソースパーソンのパパ・ンジャイエ氏から、とくに①途上国政府のガバナンス、②公正な貿易について問題提起がありました。

 人権・平和の分科会では、①アイヌなど先住民族の政策的見直しを、②G8の軍事費を削限させ平和省をつくらせる、③途上国の人たちをたくさん招いてG8プロセスを監視させる、などの意見が出されました。環境分科会では、気候変動と途上国との課題を結びつけることの必要性、原子力発電を途上国への適応策として行おうとしていることへの警戒、等々の意見が出されました。

 最後は全体総括でしたが、次の2つの意見が印象的でして。ひとつは、ポジション・ペーパー(G8への提言書)ができたのだから今後はキャンペーンに打って出ることではないか、というもの。フォーラムの主張や活動を日本市民の間に広めていくことは非常に大事なことだ、と。もうひとつは、これだけの活動を推進していくためにはどうしてもそれなりの資金が必要となるが、その手当てがどうなっているか心配している、というもの。これには様々な資金繰りを行っているがぜんぜん足りないのも事実、しかし活動をやめる訳にはいかないので活動しながら打開していくしかない、というのが事務局からの答弁でした。

 最後の最後に、北海道の状況ということでG8サミット市民フォーラム北海道の小野有五さん(北海道大学)が次のように発言しました。「(来年)7月5日、7日、8日と800人~1000人規模の会場を押さえている。海外とくに途上国から多くのNGOを招きたい。5日には数千人、いや数万人規模のパレードを行いたい。北海道の市民フォーラムにはロックグループも参加しているし、大きく盛り上げていきたい。アイヌモシリでの初のサミットということでもあるので、先住民サミットをぜひ開きたい。東京以上に北海道の我々にはお金がないけれど、みなさんと一緒にがんばっていきたい」。

<付記:第二期200年G8サミットNGOフォーラムの活動と役員について>

 2008年G8サミットNGOフォーラムは第一期の活動から第二期へと移行するに当り、9月18日総会を開催し、次のことを決めました。活動についてですが、大きく変わるのは、これまでのユニット中心のあり方からプロジェクト中心のあり方へと移行し、機動化と効率化を図るようにしたことです。ポジション・ペーパー作成プロジェクト(既設)、Civil G8プロジェクト、オルターナティブサミットプロジェクト(北海道プロジェクト)がこれからつくられ、<シェルパとの定期協議など政府渉外>や<イベントチーム、キャンペーンチーム、広報チーム>が検討されています。

 また、運営規定もプロジェクト化に合わせて変更し、同時に「除名」規定を入れてフォーラムの組織防衛を図りました。意思決定機関ですが、フォーラムの執行部と言える世話人会をこれまでの代表・副代表と各ユニット代表に加えて、各プロジェクト代表を入れるということで増強を図りました。

こうした第二期の方針を受けて、代表、副代表の選挙を9月いっぱいかけて行い、次の人たちがその任を務めることになりました(第一期に続いて再選、ご苦労さまです)。

★代 表(1名) 星野昌子(日本国際ボランティアセンター(JVC)、特別代表)
★副代表(2名) 大橋正明((特活)国際協力NGOセンター(JANIC)、理事長)
           鮎川ゆりか((財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)、気候変動特別 顧問)

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