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オルタモンドは、「もうひとつの世界」、希望と公正のグローバリゼーションを求めて、さまざまな活動や研究に取り組んでいます。

食糧危機やや小康、しかし価格高騰のメカニズムは変わらず

2008-08-18 | altermondeについて
食糧危機やや小康、しかし価格高騰のメカニズムは変わらず
--国際社会の圧力によって投機マネーを規制しよう!

                             田中徹二(オルタモンド事務局長)

■投機マネーの先物市場と為替市場での規制を政府に強く求めよう!


 今春貧しい国々を襲った食糧危機と暴動という事態から半年近くが経過しました。価格高騰はここに来て急反落してきましたし、一方で08-09年の世界穀物生産高も史上最高が予想され、食糧危機は当面去ったように見えます。しかし、価格高騰のメカニズムは変わらず、引き続き価格高騰の主要因である投機マネーの規制が求められています。

 原油・穀物先物市場に流入する投機マネーを規制するには、先物市場の段階と為替取引の段階での2段階の規制が必要です。前者では、すでに米議会等で議論されている次の2つの取り組みが有効です。まず投機筋(非実需筋)の証拠金上積みと建玉(持ち高)制限、です。これには前提がつきます。投機マネーの主力となっているコモディティ・インデックスファンド(商品指数投資)をヘッジファンドと同じ投機筋へと分類することです。つまり、同ファンドは実需筋に分類され抜け穴(ループフォール)状況となっているからです。この抜け穴の存在を知らないいわゆる識者・アナリストが、価格高騰は投機によってもたらさたものではないと主張してきたのです。

 為替取引の段階での規制ですが、通貨取引税が有効です。つまり、先物市場は各国にあり、投資資金も国境を超えて集まってきますが、国境を超えるには必ず通貨取引を伴うことから、ここに取引税を課すことは可能です。「為替取引に国際連帯税を課税してマネーゲームを縛る」(寺島実郎日本総合研究所会長)という言い方が日本では随分ポピュラーになってきました。通貨取引税を国際連帯税として提唱していくことの方が分かりやすいかもしれません。

 以上の2つの規制につき、どう具体化すべきでしょうか。ひとつは、日本政府に対して「原油・穀物先物市場の(直接)規制」と「国際連帯税(通貨取引税)による投資マネーの規制」を政策化するよう強力なロビー活動を行うことです。具体的には、重要な国連会議(9月国連MDGsハイレベル会合、11月国連開発資金フォローアップ会合)やG7財務相・中央銀行総裁会合等の節目のたびに行動を起こしていくことです。

 もうひとつは、投機マネー規制の世論をいっそう高めるために、市民サイドでの専門家・研究者や国会議員等とも協力関係を結んでの運動体づくりです。10年前のアジア通貨危機・経済危機の折には、世界規模でトービン税(通貨取引税)を要求する運動が起きましたが、今日そのエネルギーは小さくなっています。そういう中で、日本では国際連帯税というキーコンセプトを軸に、エコノミスト・研究者レベルでも、国会議員のレベルでも金融問題・投機マネー問題に対する関心が相当程度高まってきています。今が運動体づくりによい機会ではないでしょうか。

■食糧危機・暴動という事態から半年、現状はどうなっているか?

 
 今春アフリカやアジアなど貧しい国々を襲った食糧危機と暴動という事態から半年近くが経過しました。この間、2007年から一本調子で続いた穀物価格の高騰(暴騰と言った方がよい)もようやく鈍化し、ここにきて急落してきています。

 すなわち、トウモロコシは6月27日の最高値から33.5%、大豆は7月3日の最高値から26.6%、小麦は2月27日の最高値から40.8%、それぞれ下落しています(8月14日付日本経済新聞)。他の主要国際商品である原油は7月11日の最高値から23.3%、金は3月17日の最高値から20.3%、銅は7月2日の最高値から20.0%、それぞれ下落しています。このことからも穀物と原油等の他の商品価格が連動していることが分かります。

 一方、米農務省による08-09年の世界穀物生産高予想によれば、大豆は昨年度より8.8%、小麦と小麦粉は同じく9.9%、粗粒穀物(トウモロコシ、コウリャンなどの飼料用穀物)は同じく1.2%の増加が予想されています。このままでいくと史上最高の穀物生産量であった昨年の2,162百万トンを超える可能でもでてきました。こちらの面からもさらに価格軟調がもたらされるものと思われます。

 やや不安定なのがコメで、世界第2位の輸出国であるベトナムが6月中旬から輸出を再開したことにより国際価格も下りはじめましたが、7月25日に輸出税引き上げを決定したため、下落傾向が止まるかもしれません。が、ベトナムの2008年1~3月期のコメは大豊作ということで、どうして政府がこのような決定をしたのか分かりません。コメに関しては引き続きモニターが必要です。

 このように最高値から各穀物は価格を急落させていますが、価格上昇が顕著となりはじめた2007年初頭に比べるといぜんとして高価格です。現在の価格は、コメで2.5倍、小麦で52%高、トウモロコシで43%高です(農業情報研究所の各種図表より)。原油は2007年平均価格(72.4ドル)と比べると、現在115ドル前後ですから1.6倍ということになります。

 いうまでもなく穀物価格の高止まりは、日常の食料品の高物価をもたらし、それは私たちの生活を直撃し続けると同時に、貧しい国の人々にはいぜんとして深刻な影響を与え続けています。また、原油はあらゆる生活品の原材料であり、かつ交通を含むエネルギーの元ですから、その高止まりは二重の生活難をもたらします。

 穀物・原油高騰の主要因は「需給要因(逼迫)」にあるのではなく金融的要素にあること、すなわち投機マネーの先物市場への流入にあることは明らかです。原油に関して、例えば経済産業省の資源エネルギー庁による『エネルギー白書2008』によれば、1バレル約90ドルの時の価格構成は「実需要因で50~60ドル、金融要因他で30~40ドル」(2007年第3、4半期)と指摘しています。さらに、『丸紅ワシントン報告』(2008年6月20日)によれば、原油価格130ドル台の時は「実需要因で60ドル前後、金融要因で70ドル」と指摘しています(よく原油関係では地政学的要因も挙げられますが、この報告では「この4カ月に限れば特筆すべき<地政学的要因の>変化は起きていない」と述べ、70ドルは丸ごと金融的要因と言っている)。つまり、原油の実際のファンダメンタルズ(実需)価格は1バレル当り60ドルというのが正解のようです。

■穀物・原油高騰の原因と対策についての混同と混乱

 
 先月31日、私は「(特活)アフリカ日本協議会(AJF)、(特活)ハンガー・フリー・ワールド(HFW)、(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)」共催の連続公開セミナー「食料価格高騰がアフリカ諸国に及ぼす影響」の第3回で、「投機マネーと食料価格 今、必要な取り組みは何か?」と題してお話をしました(添付のPDF参照)。そこで私は食糧危機とその対策についての混乱と混同にについて注意を促しました。ひとつは短期的対策と中長期的対策の混同について、もうひとつは穀物高騰を原油等他の国際商品の動向と切り離して論ずる傾向について、です。

 前者の危機対策は、同時に穀物高騰をもたらしている原因をどう見るかによって違ってきます。例えば、ブッシュ米国大統領は6月の食糧サミット前に「インド人の食料需要の拡大が(食料価格高騰の)原因だ」と述べ、需給(逼迫)要因説を述べました。しかし、インドを含む新興経済国の需要は確かに増大しているものの、なぜ2007年から価格が高騰するようになったのかを説明できませんし、まして2007年の世界の穀物生産量は史上最大の21億6千万トンだったのでなおのことです。

 需給要因説は、我が国の国際商品問題の第一人者と言われる柴田明夫氏(丸紅経済研究所所長)も取っています。氏は「穀物や原油といった国際商品市況の価格高騰は…(中略)…投機マネーに引っ張られているとの指摘もあるが、需要の旺盛さを反映した結果で、今後も進む。あらゆる資源の価格上昇は、新しい価格の居所を模索する動きに入っている」(5月24日付中日新聞)と述べていました。そして氏は7月の段階で原油につき今後150ドルから200ドルへの上昇を予想していたのです(週刊「ダイヤモンド」7月19日)。しかし、原油先物価格は7月11日の147ドルをピークにして急落し、今や115ドル前後へと落ちています。これをどう説明するのでしょうか。ぜひ聞いてみたいと思います。

 この種の議論からは供給を増やすこと、とくに途上国での供給量を増やすことが最大の対策となります。そのためには、例えば緑の革命の必要性であるとか、遺伝子組み換え穀物の推奨とかが提起され、まず増産増収のための農業が提唱されます。しかし、このような対策が100歩譲って必要だとしても、これは中長期的課題であり、いま現に価格が高騰しつつある状況をどうするかという短期的課題に答えることにはなりません。つまり、ブッシュ氏や柴田氏の需給要因説では、食糧危機にある国への緊急支援以外短期的には取り組むべき課題はないと言っているに等しいのです。

■コモディティ・インデックスファンドの正体とその(国際的)規制について


 さて、穀物価格と原油価格高騰を別々に論ずべきではないということについてですが、そうしないと価格高騰メカニズムのキーとなっているコモディティ・インデックスファンド(以下、インデックスファンド)の正体を見誤るからです。

 この間、とくに米議会での原油等先物市場への規制問題議論で、ずいぶん先物市場のシステムあるいはカラクリが分かってきました。結論から言うと、原油・穀物先物市場へ流入する投機マネーの正体はヘッジファンドというよりインデックスファンドであり、後者は投機マネー(投機筋)に分類されていないために、表面的には金融要因によって価格が上がっているようには見えないということです。

 もう一つ。代表的インデックスファンドは、スタンダードプアーズが運用するS&P GSCI やDow Jones AIG CI であり、この2つのインデックスファンドで米国のニューヨークやシカゴの先物市場での全インデックスファンドの3分の2以上を占めています。で、このファンドですが実は石油だけとかトウモロコシだけと単体のインデックス(指数)に投資しているのではなく、石油、天然ガス、穀物、畜産物等何種類もの国際商品のインデックスに投資しているのです。ですから、全体的にインデックスファンドへの投資が増加すれば、必ず石油も穀物も価格が上がるようになっています。実は、2000年から2006年のエネルギー価格と食料価格の関係を見ると明らかに逆の相関関係でしたが、2007年より両者が同時に上昇する正の相関関係になっています(08年5月3日日経新聞資料)。従って、今日の局面は両者同時下落というようになっています。このインデックスファンドの特徴から、穀物と原油価格を別々に論じても意味がないということが分かってくるだろうと思います。

 さて、話を戻しまして、インデックスファンドが投機筋に分類されていないのは次の理由によります。投機筋ではないということは実需筋ということになりますが、それは石油精製業者、航空会社、鉄道会社、農家等実際に石油を必要とする業者です。では、なぜ原油を必要としていない年金基金等のインデックスファンドが実需者なのでしょうか。それはインデックスファンドの資金を運用するゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなど大手金融機関が自前の石油貯蔵タンクを保有しているから(!)というものです。その結果、ヘッジファンド等に投機筋に課せられている「建玉(持ち高)制限」も免除されているということです(週刊「東洋経済」8月9日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「原油レポート」7月28日)。これは明らかに抜け穴です(穀物については6月より実需筋から分類されて報告されている)。

 米議会では「エネルギー市場における過剰な投棄を抑制する法律案」が7月に提出され、この抜け穴の規制のための実需筋要件の厳格化や投機筋の建玉(持ち高)制限の引上げ等を要求しています。が、共和党の抵抗もあり審議は難航しているとのことです。しかし、法案が成立しなくても、そのことが議論されるだけで原油や穀物価格が急落し始めました(このことだけからも価格高騰の主要因は投機マネーであることが分かります)。法案が成立するような国際的世論を高めることが必要です(もし米国で法案が成立してニューヨーク市場での規制が厳しくなれば、投機マネーはロンドン市場へ、ドバイ市場へと流れることも考えられる)。

 インデックスファンドの主力が年金基金であり、それはヘッジファンドとは違って短期的資金ではない、従って投機的資金という議論がありますが、すでに米議会では「インデックス投機」と呼ばれるほど投機マネーの一種として規定されています。また、本来年金基金は5年、10年という長期の資金運用をするものですが、商品インデックスは四半期とかせいぜい長くても1年という単位での運用となり、それだけリスクも背負うことになります。その意味からも本来の投資行為が限りなく投機行為に堕してしまっているのです。

 最後に、この原油・穀物価格の今後ですが、実は先物市場ではヘッジファンドは売りに転じていて(ですから価格が下がりはじめた)、買いに入っているのはインデックスファンドと言われています(ですから、まだ十分に価格が下がりきらない)。米議会での法案が陽の目を見れば、かなりのスピードで価格低下が予想されます。逆に、法案が通らなかったり、原油関係では中東などでの地政学的理由が起きたり、穀物関係では今秋の気候が激変したりということになれば、ヘッジファンドがものすごい勢いで先物市場に流入してくるでしょう。そうすれば再び原油・穀物価格の急騰が起こり、食糧危機を招くことになります。投機マネーの規制が急がれる理由です。

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