心が満ちる山歩き

美しい自然と、山に登れる健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山・街歩き・温泉・クラシック音楽‥‥

北アルプス 鹿島槍ヶ岳・爺ヶ岳(1)

2019年08月17日 | 北アルプス


鹿島槍ヶ岳(2,889m)・爺ヶ岳(2,670m)


「~ 一口に美しいと言っても、笠ヶ岳のように端正でもなく、薬師のように雄大でもなく、剣岳のように峻烈でもない。そういう有り合わせの形容の見つからない、非通俗的な美しさである。粋という言葉が適当しようか。粋でありながら決して軽薄ではない。大ざっぱに山を見る人には見落とされがちな謙遜な存在であるが、一たんその良さがわかると、もう好きで堪らなくなる、そういう魅力を持った美しい姿である。 ~」
(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))

 深田久弥は『日本百名山』で、鹿島槍ヶ岳の美しさそのものに多くの紙幅を割いています。確かに、端正でもなく、雄大でもなく、峻烈でもないかもしれませんが、逆に鹿島槍には、端正・雄大・峻烈のすべてが含まれているとも思えます。
 鹿島槍ヶ岳のことは、登山を始めるよりも前に、大糸線の車窓から見たので知っていました。
 鹿島槍に登るより1年前に、初めて南アルプスの山(仙丈ヶ岳)に登った時、山頂から鹿島槍が見えました。仙丈からはとても離れた山ですが、北アルプスの(遠くの)山を見つけるには、ピークの2つある鹿島槍をまず見つけると他の山も分かりやすいと、仙丈小屋で朝食の最中に教えてもらいました。
 自分にとって、鹿島槍は生まれて初めて登った北アルプスの山です。台風は来ていませんでしたが、天気はよくなく、山そのものが見えた時間は30分もありませんでした。ほとんどの時間は雲か霧に覆われていました。そのたった30分だけでも、山の姿を間近で見られてとても感動しました。
 登ったことのある北アルプスの山で、どうしてももう1回、天気のよい時に登ってみたいと思っていた山が鹿島槍でした。


 前日は麓の大町温泉に宿泊し、朝6時28分のバスで扇沢を目指しました。夜の大町温泉郷は、夕食の賑やかな声やカラオケの歌声が聞こえてくる旅館もあったものの、旅館の外の道路にはほとんど人通りがありませんでした。
 扇沢は立山黒部アルペンルートの出発地点でもあります。朝早くから関電トンネルの電気バスの乗車券を求める人で長蛇の列ができていました。
 登山口には停留所がないので、バスで通ったばかりの道を15分ほど後戻りしなければなりません。
 大きな鉄橋を渡った先に登山口があります。ここから種池山荘まで登る「柏原新道」は、種池山荘のオーナー柏原正泰氏によって1966年に開通した登山道です。最初は急登から始まりますが、全体的には緩やかなところが多く、歩きやすい道です。
 アップダウンがほとんどないのもいいです。標高差で10mもないような下り返しが、数えるほどしかありません。
 しかし、この日は朝から猛烈な暑さでした。前日の予報に反して空は曇っていましたが、かえって助かりました。ものすごい量の汗をかき、なかなか先に進みません。
 登山道の樹林は立派で、最初はアカマツが主役でした。根の形状が複雑に絡み合った豪快な樹も多く見ました。気温のせいもあって、まるで熱帯雨林を歩いている気分になりましたが、標高が上がるにつれて端正な樹林、トドマツやダケカンバへと変わっていきました。
 霧が濃く、遠くの見通しはなかなか利きませんでしたが、出発地点の扇沢駅を見下ろせるポイントがありました。大量の車がびっしり止まっている駐車場を見下ろすのは壮観でした。


 名前は分かりませんが、洋服の生地のようなキノコを見つけました。




 (登頂:2019年8月中旬) (つづく)



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