心が満ちる山歩き

美しい自然と、健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山と、時にはクラシック音楽や旅行のことも。

山と風景印 北海道の山々(7) トムラウシ

2024年03月10日 | 風景印いろいろ


 (つづき) 北海道上川郡新得町、屈足(くったり)郵便局の風景印。山はトムラウシで、ナキウサギも描かれています。


 大雪の奥座敷と称されるトムラウシは、一大交響楽なスケールの大きい山ですが、そこで見た小さなナキウサギのことも忘れることができません。登山道で食事をしているところに出くわしました。食べ終わるとこちらの存在に気付き、すぐ岩陰に隠れていきました。野生であることを、一瞬忘れてしまう出来事でした。
 麓のトムラウシ温泉に一軒宿の「東大雪荘」があります。登山の前泊・後泊でお世話になったところで、とてもいい温泉でした。温泉に入るためだけに行きたいと思っていましたが、6年後に実現しました。長靴とスノーシューを貸してもらって、小さな橋を渡って登山口まで歩いて行くことができ感慨無量でした。近くには、先端が小さなピラミッドのようになった「噴泉塔」があり、一帯は蒸気が湧き出ていて、そこだけ積雪がとても少ないです。冬でも泉温が高く、機械で冷却した後に沢水で調整をしているとのことでした。
 トムラウシ温泉は山深い場所で、新得駅から送迎車で1時間以上かかります。最後の数kmは舗装されていない道路ですが、雪が積もれば舗装されているかどうか分からなくなります。冬の方が走りやすいそうです。車から見つけられる動物の足跡について、たくさんのお話を聞かせてもらえました。
 沿線にはダムがありますが、中でも最大のものが1973年に着工された十勝ダムで、道路はダム湖の東大雪湖上を2回渡るようにつけられています。その車窓は圧巻で、雪の積もった巨大な湖が広がっています。ものすごく急な斜面が真っ白になっているところがあって雪崩が起きやすい場所であること、湖は一面雪だが氷はそんなに厚いわけではなくて、野生動物が対岸を行き来するのはできないだろうということなどを教えてもらいました。


 新得郵便局の風景印。狩勝峠が描かれています。
 狩勝峠は石狩と十勝を結ぶ峠です。当時の線路は、5,648mの長い新狩勝トンネルを抜けるように変えられましたが、それでも北海道の車窓のハイライトのひとつです。線路はS字形に進むことで標高を稼ぎます。

 「~ それまでの線路はここより四キロほど北にある標高七二六メートルの狩勝峠のすぐ下を一キロたらずのトンネルで抜けていた。だから石狩側から根室本線に乗ってくるとトンネルを出たとたんに高い位置で視界がパッと開け、乗客は思わず窓に吸いつけられる仕掛になっていた。戦前の中等国語読本にもその場面が載っていて、
    「落合を発車した列車は無人の原始林を縫い……」「山中の寂寞境狩勝信号場に達し……」「トンネルを抜けると、乗客は『あっ』と声を あげ……」「佐幌岳の裾を長く引いた十勝平野の……が雲烟の彼方に連なり……」
    という部分はいまでも覚えている。 ~」(宮脇俊三『最長片道切符の旅』(新潮文庫)





 (つづく)



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