Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

失投 - Mortal Stakes - (1975) 19章その2

2009-11-06 | 海外ミステリ紹介
画像は、アンゴスチュラ・ビターとテネシー・ウィスキー(自宅にバーボンの在庫がなかったので)
ま、似たようなものとも言えますが、個人的には、ビターを入れて飲むジャックは今ひとつです。


19章その2
スペンサーは、リンダ・ラブのアパートメントから出て、公衆電話からボストン市警のクワーク警部補に電話をします。クワークは機嫌が良いらしく、「スペンサー、いいタイミングだ、密室での殺人事件があって、署長が解決できるのは一人しかいないと言っているんだ」と言います。スペンサーは、「ふざけていられないんんだ。ジョークが聞きたかったら、ダイアル・ア・ジョークに電話するよ、ランチか1杯おごりたい」と言います。

■■ <ダイアル・ア・ジョーク Dial-A-Joke>
ユーザが電話をして、前もって記録されているジョークを聞くことができる電話サービスです。・ユーザはいろんなタイプのジョークを選ぶことが出来ます。ほとんどは録音されたものですが、たまにはライブで呼び出しに出ることもあり、アップル・コンピュータの共同設立者、スティーブ・ウォズニアックは、実際に彼の最初の妻に会ったのはこれがきっかけだったのだそうです。
例えば『ジョク・オブ・ザ・デイ 本日のジョーク』とか『ノック・ノック Knock-knock』とか、あるいはランダムに。ノック・ノック・ジョークというのは、スタンダードなフォーマットが5行で完成する、つまり、5行目ににしゃれや、ひっかけがある言葉遊び的なジョークで、例をあげてみます。
  Knock knock
  Who's there?
  Annie
  Annie who?
  Annie body home? → Annie body を anybody とかけています
まぁ、あまり面白いたくいのものではありませんね。子供向きです。

17章で、消火栓の近くに停めたスペンサーの車は、案の定パーキング・バイオレーションになっていて、違反チケットを近くの屑篭に捨ててしまいます。
スペンサーとクワークは、ステインホープ・ストリートの『レッド・コーチ・グリル』で会うことにし、スペンサーは、プルデンシャル・センターからパブリック。ライブラリ、そしてコープリー・スクエアの噴水のそばを抜け、トリニティ・チャーチからクラレンドン・ストリート、右折してステインホープ・ストリートのローディング・ゾーン(荷物積み下ろし専用のゾーン)に駐車。またしても切符を切られそうな場所です。

クワークの身なりはいつも完璧で、スペンサーが警察官はこうあるべきだという服装です。ライト・グレイのスリーピースにはやわらかい赤の格子が入っていて、シャツは白、幅広のシルクのネクタイは赤、そして靴はパテント・レザー(エナメル革のことです)のローファーに金色のトリムという具合。スペンサーは、その服装を、たった今サミット会議から出てきたようだと思います。
ふーむ、エナメルのローファーに金のトリムというのは、わたしのイメージするクワークの印象に合いませんねぇ。ここはコードヴァンのプレイン・トゥかウィング・チップ、あるいはエンボス加工のローファーあたりにしてほしいものです。

バーのカウンターにいたクワークと、ブースの席に移動します。スペンサーはバーボン・オン・ザ・ロックスにビターを少々とレモン・トウィスト。クワークが飲んでいたのはスコッチ・アンド・ソーダで、クワークの分もお代わりを頼みます。and another for my date. デート相手にももう1杯、ということです。

スペンサーはクワークに、フランク・ドゥアについて、どんな人物かを聞きます。理由を問われると、自分のクライアントを締め付けようとしている男の借用書をドゥアが持っているからだと答えます。
フランク・ドゥアはフリーランスで、自分の縄張りを持っている。以前はラスベガスやリノやキューバで稼いでいた賭博師で、高利貸しもやっている。物事がうまくいかないとやたらめったら撃ちはじめるというクレイジーなやつだと聞いている、とクワークは話します。

スペンサーが、ドゥアをどこで見つけられるか聞くと、クワークはお前さんが探しているとわかったら、向こうから会いに来るよ、というのですが、チャールズタウンのどこかで葬儀屋をやっていると教えてくれます。
スペンサーはさらに、ドゥアの好きなものは何かと訊ねます。それを、ドゥアに近づく手がかりにしようと思っているのです。女? 酒? 曲芸をするアシカとか? クワークが、ドゥアが好きなのは金だけだ、他には好きなものはないと答えます。

今度はクワークがドゥアに会ったことはあるのかと訊ね、スペンサーがドゥアとウォリー・ホッグに会ったと言うと、クワークは手を引いたほうがいい、お前さんが関わっている連中は、暑い日にアイスキャンディが溶けてしまうように、殺してしまう(You’re in with people that will waste you like a popsicle on a warm day.),
しかもウォリー・ホッグは、ドゥアに命令されれば好き嫌い構わず撃って来る、と忠告します。

スペンサーは、ウォリー・ホッグをウォリー・ソーセージにしてやると言います。ウォリー・ホッグha,
Wally Hoggと書くのですが、hog は豚という意味なので、ウォリー・ホッグを挽き肉にしてソーセージにしてくれるわ、ということです。
クワークは、お前さんは自分で思っているほど腕が立つわけではない、その点はキャプテン・マーヴェルも同じだが、と言います。

■■ キャプテン・マーヴェル(Captain Marvel)は、アメリカのコミックで、スーパーマンにクリソツなキャラクター。初期の時代に、ニトロ(悪役)との闘いで毒性の強い神経ガスにさらされたため、手術が不可能なガンに侵されて死んでしまうというのが、初代のキャプテン・マーヴェルの最後だったようです。

クワークも認めるほどのビール党のスペンサーが、ビールではなくバーボン・オン・ザ・ロックスを飲んでいることからも、このことは相当にスペサーを苦しめているのだとわかります。

クワークは、ともかく気をつけろ、お前さんがいなくなると寂しく思うやつがいるはずだから、と言いながら『レッド・コーチ・グリル』を後にし、スペンサーは、昔のR.A.F.(The Royal Air Force イギリス空軍のこと)の映画に出てくるように、親指を立てる仕草をクワークに向けるのでした。There’ll always be an England. イギリスよ、永遠なれ。


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