単結晶からモノづくりを創造するAKTサイエンスブログ

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機械加工の技術を活かしてユーザーフレンドリーシステムの開発

2016年08月21日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスブログを書いています 株式会社アドバンスト・キー・テクノロジー研究所の阿久津です。

昨日はユーザーフレンドリーなシステム開発のために、東京都昭島市の機械加工メーカー、「株式会社システムプラス」さんにお邪魔してきました。




先日公開した動画をご覧になった方々から、「軸がブレているのが気になるね」とのご指摘を多数いただきました。
実験段階ということもあり、あまり微調整をしなかったのですが、この軸の調整、実に厄介です。
研究用に小型の装置で小型の結晶をちょっと作ってみよう、と思ってFZ法の装置で実験をしようとしても、軸調整が極めて難しいなんていうこともあります。少しでもズレてしまえば、融液が垂れ落ちて結晶はできなくなりますから。

AKT-labのAP法の良いところの一つには、軸が多少ブレていてもキレイな単結晶ができるということもあります。
ご指摘を多数いただいた軸のブレがあっても、小さい単結晶はできました。
実験時間の都合やまだまだ開発段階ということもあるので、デバイスを多数製造できるような結晶の長さにまではできませんでしたが、いずれにしても多少の軸ブレは許容範囲内です。

とはいえ、その許容範囲の中に収めることも、やはりなかなか難しく時間のかかる作業です。
なれなければ1時間くらいかかってしまうかもしれません。

そこで、「軸出しといえば旋盤」と思い立ち、システムプラスさんに伺うことにしたのです。

原材料ホルダーは金属(ステンレス)ですが、原材料の融点は約2000℃ほど。ホルダーにい直接原材料を取り付ける訳にはいきません。そこでアルミナチューブを間に入れるのですが、これは焼結品なので、規格品を使っても機械加工品のような精度はでません。
有効部分のブレを許容範囲に収めつつ、ホルダーに取り付けるのに旋盤を使おうと思ったわけです。



せっかくの土曜日に社長の福井さんを引っ張り出して、二人でああでもないこうでもないと意見を出し合いながら取り付けに無事成功しました。



こんなこともやりながら、AKT-labは材料製造装置を造るだけでなく、材料を開発、製造するトータルシステムメーカーとして、そしてゆくゆくは材料開発、製造スキームのスタンダードとなるべく、日々成長を続けています。


単結晶製造装置 株式会社アドバンスト・キー・テクノロジー研究所
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AKT-AP法による結晶製造動画公開

2016年08月07日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスブログを書いています AKT技術研究所の阿久津です。

AKT-アドバンスト・ペデスタル(AP)法による結晶製造動画を触りだけ公開します。





種結晶や原料の回転がぶれてますね・・・。
いまひとつ詰めが甘いところですが、ベンチャーのサガとも言えるところです。
細かい部品や治具、セッテイング方法など、アイディアはあるのですが、開発が追いつきません。

実は光学的な不具合がまだちょっと残っていて、最適な結晶製造環境ではありません。これらも開発要素ですが、確実に進歩しています。

ところで、「製造している結晶が細すぎるのでは?」という質問をよく受けます。
AKTには大型の無坩堝結晶製造技術である「アドバンスド・プローティング・ゾーン(AFZ)法」もありますし、AP法で長い結晶を作るという選択肢もあります。

それはともかく、

逆に、太ければ良いのでしょうか?
一見、量産性が高いようには思えます。 しかし、これまでにこのブログで紹介してきた通り、従来の結晶製造方法では高品質の結晶を均質に作ることは不可能です。
それに、大量生産はすぐに価格競争に巻き込まれてしまいますね。
考え方をガラりと変えた方が良いのではないかと思われます。

トリリオンセンサーという言葉が最近囁かれています
我々の周りを1兆個のセンサーが取り囲むというのです。

この1兆個のセンサーの多くは、大量生産品でしょう。
しかし、センサーという、場所や環境と直結するデバイスは、必ず最適化されたものが望まれることになると確信しています
つまり、超少量超多品種センサー時代がやってくるというのが、トリリオンセンサー時代の本質と考えます。
半導体の世界では、最近、インテルARMの企業価値の伸び率の違いが話題になりましたね。
時代は確実に変化しています。

さて、このようなセンサーは、どうやって開発するのでしょう?
3Dプリンテクングなどの新技術の適用の可能性が示唆されていますが、そもそものセンサー材料の開発はどうするのでしょう。

高品質センサーは結晶材料が使われるでしょうし、新たなセンサー材料(結晶に限らず)を次々と開発することが要望されます。
この時に力を発揮するのが、AKT-AP法です。


セラミックス系のセンサー材料の基礎物性開発を行うのにも、結晶系のセンサー材料を少量多品種製造するのにも、適した技術です。

開発要素の多い技術ではありますが、確実に実用化への道を突き進んでいます。

本当に未来の世界を変えるのは材料から。

どうぞ、ご期待ください。




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AP法のもう一つの形 その2

2015年07月19日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。
前々回の「AP法のもう一つの形」で酸化ガリウムという結晶の紹介をしました。

4.7~4.9eVという大きなバンドギャップを持つ透明な結晶で、なおかつ導電性を持つ極めて特徴的な物質で、巨大な電力を制御する半導体素子や紫外線LED、紫外線センサーやガスセンサーなどの用途に使われるものとして期待されています。

実用化されると、電気自動車の航続距離が伸びます。電車の省エネルギー化が進みます。野菜工場などで紫外線を使った殺菌が簡単にできるようになり、無農薬野菜をたくさん作れるようになります。LED照明が今よりも明るくなります。 そのほかにも多くの利点があると言われています。

今はまだ研究段階ですが、将来が楽しみな材料です。

現在、酸化ガリウムの結晶はFZ法とEFG法という方法で造られています。
なぜCZ法で造らないかというと、ものすごく蒸発しやすい材料だからです。

CZ法は原料融液の上面が空いていますから、坩堝の中の融液は蒸発してどんどん拡散していきます。これを防ぐには酸素ガスを流してやる必要があるのですが、そうすると坩堝が酸化して使い物にならなくなります。

FZ法ならば酸素を流すことができるので、融液を蒸発させることなく結晶を造ることができます。FZ法で造られた酸化ガリウム結晶の品質はなかなかのもので、半導体素子としての試作研究に使われています。

しかし、FZ法で造られる結晶はとても細すぎるので、半導体デバイスを量産するのに向きません。研究段階ですから結晶を製造する技術が難しいというのは大して問題にならないとしても、直径1cmくらいの結晶で半導体デバイスを量産するというのは製造技術として厳しいと考えられています。

そこで、最近ではEFG法という技術での結晶製造が試みられています。

EFG法はCZ法に良く似ていますが、融液の上にダイという蓋のようなものを被せているのが特徴的です。

ダイには坩堝の底にまで届くスリットがあります。

原料を溶かすと毛細管現象で融液がスリットを登っていきます。ダイの頭頂部に融液溜まりができます。 そこに種結晶を接続させてゆっくり引き上げると結晶ができます。


断面図ではスリットは細いチューブ状ですが、実際には板状のものが多く、この形にあわせて板状の結晶を造る事ができます。

LEDに使われるGaNの結晶を作るためのサファイヤ基板はこの方法で作られます。

板状の結晶を造るので、大きなウェーハーと呼ばれる円盤を造る事ができます。板状の結晶を横から見て円状に切り抜くわけです。

しかし、このEFG法はあまり良い結晶ができません。
結局は坩堝やダイといった金属が原料融液に触れているわけですし、ダイから融液溜まり、結晶にかけての温度変化が激しく、結晶が綺麗に整列する前に固まってしまうのです。
また、融液が溜まっているダイの直上部と結晶との関係だけを見てみるとAP法に似ていますが、ダイの金属を保護するために高濃度の酸素を流すことはできません。
酸化ガリウムは融液溜まりから激しく蒸発します。蒸発が激しいということは、融液の分子の移動エネルギーが大きいということですから、ここから結晶を作るためには急激にエネルギーを小さくしてやらなければならず、結晶が綺麗に整列するまえに固まってしまう原因にもなります。

原理的に良い結晶を造り出すことが極めて困難な方法です。 それなのになぜこの方法で研究が続けられているのかと言えば、半導体製造用=大きな結晶が必要という常識の影響ではないかと思います。

日本のものづくり、特に材料系はとても優秀で、これまでに様々な困難を乗り越えてきました。その自信もあるのかもしれません。

しかし、考えても見てください。努力の積み重ねの中に、人の力ではどうにもならない自然の摂理のために困難な要素があって、なおそれを乗り越えて実現したという努力はあったでしょうか?

偉大な発明や進歩も、基本的にはシンプルの積み重ねです。自然を自然として受け入れ、その積み重ねから次を切り開いていく、日本の強いものづくりの源泉はそこにあったような気がします。それを、いつの日からか技術に溺れ、技術のための技術、誰のためか分からない不自然な技術の道を歩み始めたのがガラパゴス化への道になったような気がしてなりません。

EFG法ほどの大きなウェーハーを造ることは難しくても、半導体用基板として良い結晶を送り出すことが、AP法を応用した技術で可能になります。自然の摂理に則った方法です。

申し訳ありませんが、詳細については企業秘密です。
しかし、AKT技術研究所の技術は自然との対話を可能とする技術であること。
それが可能にした、AP法の新たな一面です。




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AP法のもう一つの形 その1

2015年07月13日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

酸化ガリウムという物質を聞いたことはあるでしょうか。
検索をかけると、最近注目を浴び始めている材料であることがお分かりかと思います。

無色透明な酸化物結晶です。
無色透明ということは、普通は電気を流しません。

金属を例に取りましょう。
金属に光を当てると、光電効果で電子が表面から飛び出します。そして、金属結晶内の自由電子は励起され(エネルギーが高い状態になること)、その後すぐに安定状態に戻ります。励起した自由電子が安定状態に戻るときには高くなった状態のエネルギーを解き放ってやらなければなりません。 

このとき解き放たれたエネルギーは、高くなった状態から元々の状態の間の分だけです。結晶では、エネルギーの高い位置も下の位置も決まっています。あたかもマンションの一階と二階のようなものですね。どれだけ高くジャンプして二階の床を飛び越えても、いったんは二階の床に着地します。これがエネルギーの高い状態。そしてすぐに元に戻るので、一回の床に飛び降ります。この、一階と二階の高さの差にあたるのが、安定状態に戻る時のエネルギーです。 

さて、ここでエネルギーが解き放たれました。どのような形で解き放たれるかというと、光としてです。金属は、似たようなギラギラした色をしていながら、金属ごとに色が違いますね。これは、それぞれの材料ごとにこの一階と二階の高さが違った値で決めれれているからです。自由電子なのに一階や二階というのも変な話ですが、結晶によってエネルギー状態は決められているのです。これをエネルギー順位といいます。

このエネルギーの状態を詳細に調べるためには、物質を結晶化してやらなければいけません。微量な不純物を混ぜて、人間にとって都合の良いエネルギー状態を作り出された材料を機能性材料と呼びますが、このような材料の詳細な性質を調べるためにも、結晶化は重要なのです。
それは今回置いておきます。

電気の流れる金属は自由電子を多く含んでいるので、光があたるとそれぞれの材料ごとの色を放ちます。つまり、透明ではないということです。
光は電磁波ですから、自由電子のような電荷とはよく干渉するのです。

電気を流さない物質ではどうでしょう。
電子の居られる場所は、先ほどの金属中の一階や二階よりも遥かに大きな差を持つエネルギーバンドの間での電子のやりとりになります。

光を当てるとその光のエネルギーを受けた電子が上のエネルギーバンドに移り、そして安定しようと下のエネルギーバンドに戻ります。この時に光を放ちますが、この光の色、つまり波長はエネルギーバンドの差によって決まります。エネルギーバンドの差のことをバンドギャップと呼びますが、このバンドギャップの大きさが放たれる色を決めるということです。

バンドギャップがさらに大きくなると、エネルギーの大きな光を当てても電子が上のエネルギーバンドに飛び移れなくなります。
つまり、電子が光のエネルギーを受け取れなくなったということです。光はどうなるのか、エネルギーを電子に渡せなかったので、光は光のまま通り過ぎます。この状態を透明といいます。

透明な物質というのは、電子が動きにくい物質です。透明でなおかつ電気を流すというのはなかなか難しいということがお分かりいただけるかと思います。
タッチパネルなどは、薄く金属を膜にして表面につけていたりします。最近ではITOというインジウムとスズの酸化物が使われています。厳密には色の付いた物質ですが、薄くすると透明になります。


金属にはこのバンドギャップがありません。 光を当てたら片っ端から自由電子が飛び出します。 酸化物の多くはバンドギャップが大きく、光を当てても電子は飛び跳ねて行けません。川の向こうにジャンプしたくても、川幅が大きくてジャンプできないようなものです。

光のエネルギーを大きくすればジャンプできます。光のエネルギーは波長が短かくなるほど大きくなりますから、赤外線よりも赤、赤よりも青、青よりも紫、紫よりも紫外線のエネルギーは大きくなります。 紫外線よりもX線はさらに大きくなります。
ここで、赤から紫までの光を可視光線といいます。
透明とは、可視光線を当てても電子が励起してジャンプできないくらい、バンドギャップが大きいということです。ですから、基本的には電気は流れないんですね。

この、大きなバンドギャップを持ちながら、電気を流す物質として注目されているのが、酸化ガリウムです。

続きはまた後日



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結晶を作る技術3 結晶製造の新技術 AKT-AP法

2015年07月01日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンス阿久津です。

前々回「結晶を作る技術1 CZ法」と前回「結晶を作る技術2 FZ法」とでで結晶を作る従来技術について解説してきました。

結晶というのは、高性能デバイスを構成する重要な材料であると同時に、素材の基礎試料として研究開発に欠かせない形態でありながら、結晶技術そのものに課題がありました。

その課題を解決するのが、AKT技術研究所の独自の新技術、AKT-アドバンスドペデスタル(AP)法です。

その構成は、丁度チョクラルスキー(CZ)法とフローティングゾーン(FZ)法の折衷、良いところ取りをしたような形になっています。
まず上下の配置として、下に原材料を焼き固めて作ったペレット、上に種結晶を置きます。上下一直線上で、FZ法を上下逆にしたような形です。

原材料ペレットの上端を赤外線加熱して溶かします。
金属の坩堝を使っていないので、坩堝を保護する必要がないので急速加熱が可能です。融点2000℃程度の材料ならば、1時間もかけてやれば溶かせます。
融液はドーム状の形になりますが、重力に逆らわず原材料ペレットの上に乗っているので、とても安定しています。

ここに種結晶を接触させます。
赤外線の照射範囲をエッジを効かせて絞り込みます。こうして融液の形状を制御すれば、融液が表面超力で維持しきれなくなって垂れ下がってしまうこともありません。 そして、FZ法で問題になった、原料に発生する不安定な溶融も防げます。

種結晶と融液とを十分になじませたら、種結晶を引き上げます。
すると、種結晶に引き続いて結晶が成長して析出してきます。
CZ法に近い工程ですね。

結晶を長く作っていっても、長さ方向の組成は均質なままです。FZ法の概念と同じですね。偏析する結晶であっても、一定の組成の原材料が供給され続けるわけですから、CZ法のように組成がかわり続けてしまうことにはなりません。

さて、まとめてみるとどうでしょう。
CZ法やFZ法で課題とされていたことがまとめて解決できていることがお分かりかと思います。

材料科学の未来を創り出す、そんな技術がAKT-AP法です。
皆様にお見せするためのデモ機がまもなく完成します。
材料科学の新時代の幕開けをどうぞ楽しみにお待ち下さい!


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結晶を作る技術2 FZ法

2015年06月27日 | 結晶技術
Nd:YVO4というレーザーデバイス用結晶を例に挙げて、結晶製造についての従来技術の課題をご説明しました。
では、現在の技術で高品質結晶は作れないかというと、必ずしもそうではありません。
フローティングゾーン(FZ)法という方法を使えば、高品質な結晶をつくる事ができます。

FZ法は、原材料を細長い棒状に焼き固めてぶら下げたものと種結晶との間に原材料融液の帯をつくり、その融液から結晶を析出させる技術です。



坩堝を使いませんから、CZ法で酸素欠損不純物や坩堝の酸化物が結晶中に異物として入り込んでしまうような、結晶純度に係る問題は発生しません。
付け加えると、イリジウム(Ir)のような超高価な金属でできている坩堝を使いませんので、ランニングコストはとても低く抑えられます。

さらに付け加えると、CZ法では大問題となる偏析の問題も、FZ法では大きな問題になりません。

ちょっと詳しく説明しましょう。
Nd:YVO4結晶で、YVO4結晶にちょっと加えてYと置き換えるNdを、ドーパントといいます。原材料のドーパント濃度がa%のとき、結晶中に入り込むドーパント濃度がa×0.6%だとします。このとき偏析係数0.6といいます。

FZ法でNd濃度a%の原材料からNd:YVO4結晶をつくることを考えます。
初期にできた結晶は、Nd濃度がa×0.6%です。結晶に入れなかったNdは原材料融液中に留まりますから、原材料融液のドーパント濃度はa%よりも高くなります。結晶や融液の体積がわからないので具体的な数字にはしにくいですので、a+b%になります。
原材料融液の濃度が高くなるので結晶中に入り込むドーパントの濃度もだんだん高くなりますが、融液にはドーパント濃度a%の原材料が随時継ぎ足されているので、融液側のドーパント濃度の上昇は激しくはありません。
だんだん融液のドーパント濃度がたかくなっていき、1.666...×a%になったとき、析出する結晶中のドーパント濃度は1.666...×a×0.6=a%になります。
融液に供給される原材料のドーパント濃度はa%ですから、これ以上融液のドーパント濃度は高くなりません。結晶として出て行った分だけ原材料から入ってくる。バランスされるわけです。



ここから先は、ドーパント濃度が一定の結晶が出来続けてくれます。

このように、FZ法では高純度で均質な結晶を作る事ができます。

では、なぜ結晶製造方法といえばCZ法で、FZ法はあまり使われていないのでしょうか。
(これは初めて書きましたね。 結晶製造にFZ法は殆ど使われていません)

一言で言えば、結晶が細すぎてデバイスの取れ数が少なすぎるためです。

結晶の作りやすさは材料ごとにまるで違います。
例えば例に挙げているNd:YVO4結晶の場合、CZ法だと直径4センチ、長さ7センチくらいの結晶を1週間くらいかけて作ります。
FZ法では、直径8mm、長さ7センチくらいの結晶を1日で、と言ったところでしょうか。
直径が5分の1なので、長さが同じでも体積は25分の1です。
デバイスの取れ数は25分の1以下ですね。
(切断時の切りしろを考慮すると、かなり少なくなります。)
かかる日数は7分の1なので、その分フル回転するとして、一つの結晶製造装置から作られるデバイスの数は4分の1。装置への材料等のセッティング工数を考えると、デバイス一つあたりの結晶製造コストは10倍くらいになってしまうわけです。

CZ法で作られた結晶の品質では使えないような高性能や組成の均質性が求められる用途で、ようやく比較ができるようになる、と言った感じでしょう。

高品質な結晶が求められる場面。例えば、ものすごく高度なデバイスを作るとか、あるいは素材の基礎研究をするとか、そういう場面ではFZ法が使われているようです。
ようです、と言うのは、やはりそうは簡単な問題ではない、という事です。

FZ法は難しいです。

細い結晶と細い原材料焼結棒との間に融液が表面張力だけで保持されているのです。原料棒がちょっとでも揺れたりしたら融液は垂れ下がってしまいます。




原料棒は、原材料を高温で焼き固めて焼結体にしたものです。
混ぜ合わせた物質それぞれが残っていたり、一部反応したりしたものの混合体です。焼結体なので、一つ一つの粒子の内部と表面とで組成が違ったりもします。
均質に焼結するには、セラミックスの高度な技術が必要になります。
結晶を作るためにセラミックスの高度な技術が必要・・・なんだか訳のわからない話になりますね。
いずれにしろ、原料棒はセラミックスなので、密度は100%ではありません。組成のムラもあります。原料棒が融液と接している部分の表面超力が融液を支えていると言いましたが、この界面では融液が原料棒の空孔に吸い込まれたり、一部溶けやすい部分から先に溶けたりします。 酸化物は溶けると光を吸収しやすくなるので、一部溶けた部分はどんどん高温になり、周囲の原料を溶かします。こうして、原料の溶けやすい部分が一気に溶けて、界面の形状が不均質になります。 こうなると融液を維持するのが難しくなり、融液はたれてしまいます。



FZ法には、少なくとも一般的な自動制御アルゴリズムはありません。
仮に全てがうまくいっていたとしても、そのままうまく結晶ができるかは、神のみぞ知る、そして匠の技が神の声に少し近づく。そんな感じです。

材料の研究を進めたい研究者や、論文を書きたい大学院生、高度な試作的デバイスを製造するデバイスメーカーの開発よりの製造部にとって、これは大きな負担です。
材料研究のハードルを下げて地球と共生するモノづくりの世界を創りたくても、高品質な結晶デバイスで社会に貢献したくても、その方法が存在しないというのが実情なのです。




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結晶を作る技術1 CZ法

2015年06月24日 | 結晶技術
結晶はモノづくりの基本中の基本というお話を、昨日書かせていただきました

従来の結晶製造技術は、この基本中の基本という命題を果たすのに十分の能力を持っていたのでしょうか。ちょっと検証してみます。

半導体用のシリコン単結晶などを製造する「チョクラルスキー(CZ)法」という技術が有名です。



例えば、シリコンの単結晶を造るとき、SiO2の坩堝を使います。
1400℃くらいの高温でシリコンを溶かしますが、このくらいの高温になると、坩堝からSiO2が原材料の中に混入します。SiO2のうちSiはシリコンですからいいとして、O2つまり酸素も混入しているんです。
ITの核となるプロセッサやメモリデバイスに使われるシリコン単結晶は、実はけっこう酸素が混入していたんです。

大電力を制御するパワー半導体用のシリコン単結晶は、大きな電圧がかかっても確実にオン-オフできるように、酸素混入量の少ないものを使います。これは坩堝を使うことができないため、「フローティングゾーン(FZ)法」という別の技術を使って作られています。

さて、シリコン以外の単結晶の事も考えてみましょう。
高出力のレーザーを発生させるNd:YVO4という単結晶があります。
YVO4という結晶のY(イットリウム)の一部をNd(ネオジム)に置き換えた結晶で、Ndが励起した後に基底状態に戻る時にレーザーを発振します、が、長くなるのでこのお話はまだ今度。

Nd:YVO4は酸化物ですから、原料が溶けるときに酸素が離れやすくなります。ですから、原料を溶かして固める結晶製造プロセスでは、酸素雰囲気で行いたいです。

Nd:YVO4の融点は2000℃くらい。この温度で溶けている原料を入れられる坩堝はIr(イリジウム)という金属くらいです。 恐竜を絶滅させたと言われる隕石に含まれていたという金属ですね。 このIrで坩堝を作って、その中でNd:YVO4を溶かして結晶を造るわけですが、Irは金属です。酸素中で高温にすると酸化(要するに錆びる)します。酸化したらボロボロになって坩堝の役目を果たさなくなるので、殆ど酸素を入れられません。
結晶を作るときにネッキングという工程がありますが、リアルネッキング、首を絞めて窒息させながら結晶を作っているようなものです。
酸素が足りない(酸素欠損)結晶ができてしまいます。 せっかく酸欠の結晶を作っても、原料から分離した酸素が坩堝を錆びさせて、Irの酸化物ができて、これが原料中に入り込みます。



結晶の中には、酸素が足りない組成となった不純物や、Irの酸化物などの不純物が混ざり込んでいるわけです。

このため、結晶デバイスの性能はなかなか安定しません。

さらには、このNd、YVO4の中に上手に入ってくれません。
原料中、Yのうち1%がNdに置き換えられていたとします。
結晶になるときには、Ndが0.6%くらいに減ってしまいます。 これを編析といいます。
結晶中に入れなかったNdはどうなるか、原料中に残ります。そうすると、原料のNd成分は少し濃くなります。原料のNdがだんだん濃くなって2%になったら、その時に結晶になった部分のNdは1.2%。 このように、結晶の組成も、実は結晶の中で不均質です。

このように、CZ法で作られた結晶というのは、デバイスとしてあまり良い材料とは言えません。材料の本質を知るための標準試料としては、それこそ大問題です。

このように、結晶は大事な物質なのですが、それを正しく作るのは実はとても難しいことなのです。

当社では、この問題を解決する独自の新技術を開発しました。
いずれ詳しくこのブログで紹介しますが、まずはWebページを見ていただけると嬉しいです。




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出願中の特許について、特許査定が出ました!

2015年05月29日 | 結晶技術
出願中の特許、特開2015-081217 単結晶製造装置および単結晶製造方法 について、特許庁より特許査定をいただきました。


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出願中の特許が公開されました

2015年05月01日 | 結晶技術
出願中の特許が公開されました。
特開2015-081217 単結晶製造装置および単結晶製造方法 pdfを取得する
特開2015-081218 単結晶製造装置および単結晶製造方法 pdfを取得する
ともに出願人名は代表である阿久津伸です。


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AKT技術研究所の知財情報

2013年08月28日 | 結晶技術
知財情報
独自技術 AKT-AP法の基本特許出願は、平成25年度の日本弁理士会の出願助成事業に採択されました。
出願費用と審査請求費用の助成を受けています。



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