単結晶からモノづくりを創造するAKTサイエンスブログ

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AP法のもう一つの形 その2

2015年07月19日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。
前々回の「AP法のもう一つの形」で酸化ガリウムという結晶の紹介をしました。

4.7~4.9eVという大きなバンドギャップを持つ透明な結晶で、なおかつ導電性を持つ極めて特徴的な物質で、巨大な電力を制御する半導体素子や紫外線LED、紫外線センサーやガスセンサーなどの用途に使われるものとして期待されています。

実用化されると、電気自動車の航続距離が伸びます。電車の省エネルギー化が進みます。野菜工場などで紫外線を使った殺菌が簡単にできるようになり、無農薬野菜をたくさん作れるようになります。LED照明が今よりも明るくなります。 そのほかにも多くの利点があると言われています。

今はまだ研究段階ですが、将来が楽しみな材料です。

現在、酸化ガリウムの結晶はFZ法とEFG法という方法で造られています。
なぜCZ法で造らないかというと、ものすごく蒸発しやすい材料だからです。

CZ法は原料融液の上面が空いていますから、坩堝の中の融液は蒸発してどんどん拡散していきます。これを防ぐには酸素ガスを流してやる必要があるのですが、そうすると坩堝が酸化して使い物にならなくなります。

FZ法ならば酸素を流すことができるので、融液を蒸発させることなく結晶を造ることができます。FZ法で造られた酸化ガリウム結晶の品質はなかなかのもので、半導体素子としての試作研究に使われています。

しかし、FZ法で造られる結晶はとても細すぎるので、半導体デバイスを量産するのに向きません。研究段階ですから結晶を製造する技術が難しいというのは大して問題にならないとしても、直径1cmくらいの結晶で半導体デバイスを量産するというのは製造技術として厳しいと考えられています。

そこで、最近ではEFG法という技術での結晶製造が試みられています。

EFG法はCZ法に良く似ていますが、融液の上にダイという蓋のようなものを被せているのが特徴的です。

ダイには坩堝の底にまで届くスリットがあります。

原料を溶かすと毛細管現象で融液がスリットを登っていきます。ダイの頭頂部に融液溜まりができます。 そこに種結晶を接続させてゆっくり引き上げると結晶ができます。


断面図ではスリットは細いチューブ状ですが、実際には板状のものが多く、この形にあわせて板状の結晶を造る事ができます。

LEDに使われるGaNの結晶を作るためのサファイヤ基板はこの方法で作られます。

板状の結晶を造るので、大きなウェーハーと呼ばれる円盤を造る事ができます。板状の結晶を横から見て円状に切り抜くわけです。

しかし、このEFG法はあまり良い結晶ができません。
結局は坩堝やダイといった金属が原料融液に触れているわけですし、ダイから融液溜まり、結晶にかけての温度変化が激しく、結晶が綺麗に整列する前に固まってしまうのです。
また、融液が溜まっているダイの直上部と結晶との関係だけを見てみるとAP法に似ていますが、ダイの金属を保護するために高濃度の酸素を流すことはできません。
酸化ガリウムは融液溜まりから激しく蒸発します。蒸発が激しいということは、融液の分子の移動エネルギーが大きいということですから、ここから結晶を作るためには急激にエネルギーを小さくしてやらなければならず、結晶が綺麗に整列するまえに固まってしまう原因にもなります。

原理的に良い結晶を造り出すことが極めて困難な方法です。 それなのになぜこの方法で研究が続けられているのかと言えば、半導体製造用=大きな結晶が必要という常識の影響ではないかと思います。

日本のものづくり、特に材料系はとても優秀で、これまでに様々な困難を乗り越えてきました。その自信もあるのかもしれません。

しかし、考えても見てください。努力の積み重ねの中に、人の力ではどうにもならない自然の摂理のために困難な要素があって、なおそれを乗り越えて実現したという努力はあったでしょうか?

偉大な発明や進歩も、基本的にはシンプルの積み重ねです。自然を自然として受け入れ、その積み重ねから次を切り開いていく、日本の強いものづくりの源泉はそこにあったような気がします。それを、いつの日からか技術に溺れ、技術のための技術、誰のためか分からない不自然な技術の道を歩み始めたのがガラパゴス化への道になったような気がしてなりません。

EFG法ほどの大きなウェーハーを造ることは難しくても、半導体用基板として良い結晶を送り出すことが、AP法を応用した技術で可能になります。自然の摂理に則った方法です。

申し訳ありませんが、詳細については企業秘密です。
しかし、AKT技術研究所の技術は自然との対話を可能とする技術であること。
それが可能にした、AP法の新たな一面です。




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