単結晶からモノづくりを創造するAKTサイエンスブログ

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ガレージスミダ交流会のベンチャーピッチで登壇しました

2015年07月30日 | AKT事業情報
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスブログを書いています AKT技術研究所の阿久津です。

7月29日に株式会社浜野製作所様が運営されているガレージスミダの交流会に参加してきました。
ベンチャーピッチでは登壇もさせていただきました。

このベンチャーピッチ、最近お話をさせていただく機会が少しずつ増えてきましたが、どのようにお話をさせていただこうか、毎回すごく迷います。
わかりやすいプロダクトがあり、それを皆様にお届けすることで暮らしを良くしていきたい! そういうプロダクトであれば、まずは何をおいてもプロダクトの紹介となるでしょう。
しかし、当社のプロダクトは一家に一台という性質のものではありませんし、B to B にしてもかなりニッチなところから切り込んで行って世界に浸透させていきたいという性質のものですから、ある意味世界観ビジネスでもあるわけです。
ピッチの聴衆にお買い上げ頂くことをベースとしたお話をしても仕方ありません。

そこで、自分なりに最もガレージスミダ的なピッチ構成を考えてみました。

私なりに考えた、ガレージスミダ的とは
1.こんなベンチャーでもやってきてしまうんだという意外感と、それを受け入れてしまうガレージスミダの懐の深さ。
2.基本は科学とか技術。
3.世界を変えていきたいというビジョン
このようなことです。
ガレージスミダにこんなのが来たんだ、という印象だけでも持って頂ければいいかな、と考えました。

ところで、最近よく世界を変える新ビジネスという事を言われますが、本当に世界を変えているでしょうか。
そもそも、概念の時点でそれが世界を変えることになるのか? 疑問を感じること、ありませんか?

他社さんのプロダクトの話で申し訳ありませんが、提案していたご当人たちも期間限定的なことをおっしゃっていたプロダクトが、走り始めたらいろいろな相乗効果もあったのか、本当に世界を変えそうなプロダクトになっていました。
世界を変えるかどうかは可能性の世界です。だから入口を絞られるのがいちばん辛い。
特になかなか一般の人には馴染みのない科学や技術の世界でそれを成し遂げようとすると、間口をあけてもらうしかない。
だから、ガレージスミダのような取り組みがあるかないか、それは可能性の芽を摘むのかとりあえず育てるのか、ものすごく大きなことなんですね。

世の中の動きはだいたい逆に行っています。
特徴を活かす、強みを活かす、スピーディーさが大事というビジネスの「常識」の上で、新事業の可能性は摘まれていくものなんです。
そもそも、言って簡単に理解されるもの、誰かの強みで簡単に実現できるもの、すぐにできるもの、これらの組み合わせはベンチャーのやるべきことでしょうか?
誰か、既存のプレイヤーがやることですよね。

ガレージスミダの取り組みは本当に極めて特異と言えます。

さて、当のピッチでは、常日頃の材料科学の基盤というお話から、ついには物質世界での存在の話にまで行ってしまいました。(後ろのスライドの絵、バンド理論です)

我ながらここまでやるかと言った感じですが、こんなベンチャーがあってもいいじゃないですか。

でも、意外と反応がよかったです。


単結晶製造装置 AKT技術研究所
〒207-8515 · 東京都東大和市桜が丘2-137-5
 中小企業大学校東京校東大和寮3階BusiNest A537
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経済産業省の中小ものづくり高度化法に基づく特定研究開発等計画(第32回)の認定を受けました。

2015年07月25日 | AKT事業情報
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスブログを書いています AKT技術研究所の阿久津です。

経済産業省の中小ものづくり高度化法に基づく特定研究開発等計画(第32回)の認定を受けました。
いわゆる法認定というやつです。

この認定を受けると、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択を受ける資格が得られます。
もっとも、弊社では今回サポイン事業への開発計画の提案をしていませんので関係ありません。
なかなか魅力的な補助金なので、是非来年度はチャレンジしてみたいと思っています。
どうです? 一緒にチャレンジしようって方、いらしたら是非声をかけてください。

その他にも、NEDOの研究テーマによっては委託対象になれたりとか、いろいろな恩恵があるようです。

そのほか、経済産業省関東経済産業局のWebを読むと、「日本政策金融公庫の低利融資、特許料等の特例等の支援措置を受けることが可能となります。」と書かれています。
中小ものづくり企業にはもちろん、スタートアップにとっても魅力的ですね。
特に低利融資は死活問題です。
民間の金融機関が融資審査をする際に考慮してくれるかどうかは分かりませんが、まずは公庫から低利で貸してもらえると、我が社のような時間のかかる会社には非常に嬉しい制度になります。

もちろん他にも意義のあることはたくさんあります。
なにしろ、政府公認の研究開発テーマになったわけですから(笑)

申請書類は細かな記入フォーマットが決められていて、その通りに書かなければなりませんでした。
普通に書類を書いていくと、細かい項目には上から1,2…と番号を振りますけど、国から求められている書式に沿って書くので、1,2に当てはまらなければ3から書くような、究極的な読み手のための申請書になります。
説明を聞いて最初に感じたことは、「これじゃあ書きたいことを書けないじゃん!」だったのですが、うまくできているもので、けっこうキチンと書けたりします。
一番効率の高い意思疎通手段かもしれないですね。

経済産業省関東経済産業局の担当者の方も、お役所的ではなく丁寧に教えてくれました。
「ここはこう書いてください。決まりだから」というステレオタイプをイメージしていましたが、「この項目ではこういう事が求められているので、こう書いてください」と言った感じに聞く側の目線で対応してくれました。
お役所の方はイメージで損しちゃってるのかもしれないですね。 逆に参考になりました。

それはそうと、どうも行政機関のほうがいまのところ相性がいいですね。
補助金とか支援とか、手厚いです。
即マネタイズできる体制でもないのにお金を出したり支援をしたりって、決して無責任にできることではないと思います。
なんか、将来に夢のある事業っていう感じがしてきていますよ。

どうです?
体系化していきそうなスタートアップの態勢をもうちょっと見直してみて、民間の人たちも夢を見てみません?


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創業補助金の確定検査個別相談に行ってきました

2015年07月22日 | AKT事業情報
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

創業補助金の確定検査個別相談に行ってきました。
平成25年補正予算分の補助事業対象者向けに東京都事務局がやってくれています。

さて、創業補助金はテック系ベンチャーには使いにくという話をよく聞かれるのではないでしょうか。
事実、確かに使い易くはないです。
研究段階、試作段階は使えません。知財の取得には使えますが、他の助成制度があるので、実質使いません。
人を雇ったり、工場や事務所を構えたりするのには使えますが、テック系は試作前にこれらを整えたりは・・・しないですよね。
マーケティングには使えますが、それは試作がある程度進んでからになりますし。

うちでは、幸いベースとなる技術の検証や要素技術の知財化を進めていたので、事業化に向けて最も重要な独自技術のサンプル品の作製に全力を回しました。
独自の新技術を以てして製造業界に打って出るテック系ベンチャーとして一番重要なサンプルに全力を投入し、周知させようという考えです。
昨年の採択決定後の交付申請の際に事務局といろいろ相談して最終的に決めました。

そして、現時点。

「補助金が認められない可能性もある。」

もちろん、確定検査で認められるかどうか初めて決まる事なので、現時点では誰もが「認められない可能性がある」わけです。
うちの案件だけが特別な訳ではありません。

認められるには、計上した「サンプル」として十分な効力を発揮するか否かが重要で、そのためにはとにかくたくさんの人に周知させなければなりません。
数ヶ月の周知期間を計画してサンプルとして十分な周知を図る予定でしたが、新技術のスタートアップにとっての計画とはそうそう簡単に進むものではありません。
紆余曲折、いろいろあってかなり遅れました。
そして、事業期間終了前にようやく出来上がる。。。はず。といったところです。

限られた日数で限られたリソースの中で最大限に周知活動をするための段取りはしてはいます。
サンプルだけにいきなりのフル稼働に耐えられるかわかりませんし、デモ稼働にもお金がかかる。
効率よく短期間で一気にデモ稼働をしないといけない。
実はデモ稼働というのも一筋縄ではいかないものです。

それによって得られた知見が、うちの新事業にかけがえのない収穫になったとしても、創業補助金の確定検査にパスするかは分かりません。
今までの事例に無いとのことで、事務局の担当してくださった方も困っていました。
なので、「補助金が認められない可能性もある。」とは、決して一般論では済まない、可能性が低くない話です。
念のため書いておきますが、ものづくり補助金とは補助対象が異なります。ものづくり補助金はどこをどうとっても補助対象なので「前例が無い」なんてことにはなりません。安心してください。

何かしらの創業支援や資金を得たり、コンテストに出る、クラウドファンディングにかけるなど、自己の技術をデモする必要に迫られることがテック系ベンチャーにはよくあります。
創業補助金の300万円中200万円の補助というのはなかなか魅力的な金額です。
テックベンチャーのデモ機は世の中に夢を配るものです。補助金のシステム上使える費目ですから、チャレンジして事例をどんどん増やして、国の管轄している創業シーンにおいてもテック系ベンチャーの勢いは凄い!と言われるように、是非なってもらいたいものです。そういうのも想定していただけると良いのではと考えたりもしています。

起業の段階で独自技術を周知させるというのは、かなりの大きなハードルです。
デモ機を設計して作って稼働して・・・ 実はものすごいお金がかかります。お金だけでは済まないこともあります。
しかし、それが無ければ誰もテックベンチャーの存在に気づいてはくれません。 堂々巡りになりかねないところなんですね。
しかも、資金だけでなく時間的な制約もある。

しかし、ベンチャーの試みは必ず世の中に貢献するものでもあります。 新しい視点、新しい概念を世の中に提示する。この流れは絶対に止めません。
そのためには、もちろんベンチャーがとにかく頑張るわけですが、みなさんのご理解、これが一番の助けになります。

可能性としての話ですが、創業補助金の補助金額200万円をロストする可能性は一定程度あります。
繰り返しますが、ものづくり補助金は弊社事業ど真ん中の補助金なので、前例がなくて困るというようなことにはなりませんから当然のことながら話は違います。

今の段階でもしこれが現実のものになると相当なダメージですが、絶対に倒れません。
たくさんの人たちが今までに握手してくれました。
その方々の掌の温度が私の手にしっかりと染み込んでいます。 この温もりを忘れない限り、絶対に倒れませんし、諦めません。

必ず成功させて、材料科学からものづくりの基盤から変えていきます。


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AP法のもう一つの形 その2

2015年07月19日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。
前々回の「AP法のもう一つの形」で酸化ガリウムという結晶の紹介をしました。

4.7~4.9eVという大きなバンドギャップを持つ透明な結晶で、なおかつ導電性を持つ極めて特徴的な物質で、巨大な電力を制御する半導体素子や紫外線LED、紫外線センサーやガスセンサーなどの用途に使われるものとして期待されています。

実用化されると、電気自動車の航続距離が伸びます。電車の省エネルギー化が進みます。野菜工場などで紫外線を使った殺菌が簡単にできるようになり、無農薬野菜をたくさん作れるようになります。LED照明が今よりも明るくなります。 そのほかにも多くの利点があると言われています。

今はまだ研究段階ですが、将来が楽しみな材料です。

現在、酸化ガリウムの結晶はFZ法とEFG法という方法で造られています。
なぜCZ法で造らないかというと、ものすごく蒸発しやすい材料だからです。

CZ法は原料融液の上面が空いていますから、坩堝の中の融液は蒸発してどんどん拡散していきます。これを防ぐには酸素ガスを流してやる必要があるのですが、そうすると坩堝が酸化して使い物にならなくなります。

FZ法ならば酸素を流すことができるので、融液を蒸発させることなく結晶を造ることができます。FZ法で造られた酸化ガリウム結晶の品質はなかなかのもので、半導体素子としての試作研究に使われています。

しかし、FZ法で造られる結晶はとても細すぎるので、半導体デバイスを量産するのに向きません。研究段階ですから結晶を製造する技術が難しいというのは大して問題にならないとしても、直径1cmくらいの結晶で半導体デバイスを量産するというのは製造技術として厳しいと考えられています。

そこで、最近ではEFG法という技術での結晶製造が試みられています。

EFG法はCZ法に良く似ていますが、融液の上にダイという蓋のようなものを被せているのが特徴的です。

ダイには坩堝の底にまで届くスリットがあります。

原料を溶かすと毛細管現象で融液がスリットを登っていきます。ダイの頭頂部に融液溜まりができます。 そこに種結晶を接続させてゆっくり引き上げると結晶ができます。


断面図ではスリットは細いチューブ状ですが、実際には板状のものが多く、この形にあわせて板状の結晶を造る事ができます。

LEDに使われるGaNの結晶を作るためのサファイヤ基板はこの方法で作られます。

板状の結晶を造るので、大きなウェーハーと呼ばれる円盤を造る事ができます。板状の結晶を横から見て円状に切り抜くわけです。

しかし、このEFG法はあまり良い結晶ができません。
結局は坩堝やダイといった金属が原料融液に触れているわけですし、ダイから融液溜まり、結晶にかけての温度変化が激しく、結晶が綺麗に整列する前に固まってしまうのです。
また、融液が溜まっているダイの直上部と結晶との関係だけを見てみるとAP法に似ていますが、ダイの金属を保護するために高濃度の酸素を流すことはできません。
酸化ガリウムは融液溜まりから激しく蒸発します。蒸発が激しいということは、融液の分子の移動エネルギーが大きいということですから、ここから結晶を作るためには急激にエネルギーを小さくしてやらなければならず、結晶が綺麗に整列するまえに固まってしまう原因にもなります。

原理的に良い結晶を造り出すことが極めて困難な方法です。 それなのになぜこの方法で研究が続けられているのかと言えば、半導体製造用=大きな結晶が必要という常識の影響ではないかと思います。

日本のものづくり、特に材料系はとても優秀で、これまでに様々な困難を乗り越えてきました。その自信もあるのかもしれません。

しかし、考えても見てください。努力の積み重ねの中に、人の力ではどうにもならない自然の摂理のために困難な要素があって、なおそれを乗り越えて実現したという努力はあったでしょうか?

偉大な発明や進歩も、基本的にはシンプルの積み重ねです。自然を自然として受け入れ、その積み重ねから次を切り開いていく、日本の強いものづくりの源泉はそこにあったような気がします。それを、いつの日からか技術に溺れ、技術のための技術、誰のためか分からない不自然な技術の道を歩み始めたのがガラパゴス化への道になったような気がしてなりません。

EFG法ほどの大きなウェーハーを造ることは難しくても、半導体用基板として良い結晶を送り出すことが、AP法を応用した技術で可能になります。自然の摂理に則った方法です。

申し訳ありませんが、詳細については企業秘密です。
しかし、AKT技術研究所の技術は自然との対話を可能とする技術であること。
それが可能にした、AP法の新たな一面です。




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ビジネスト 3金会

2015年07月18日 | AKT事業情報
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

AKT技術研究所がオフィスを構えているビジネストでは、毎月第3金曜日に「3金会」という懇親会を開催しています。
7月17日には株式会社浜野製作所の浜野社長をお招きしての講演会が企画され、大勢の方が参加されました。

私が最初に浜野社長とお話をさせて頂いたのが平成26年9月に開催された株式会社リバネス主催の第2回テックプラングランプリの時です。
既にお察しの事と思いますが、コンテスト会場ではなく、終了後の懇親会の席でのことです。

私は飲みニュケーション至上主義者ではありません。
会社員時代の飲み会での会社へのグチや情事の話にゴルフの話、好きか嫌いかは別にして生産性の向上につながると思ったことは一度もありません。

しかし、人との出会いの場、繋がりの場としてはどうでしょう。
やはり他では無いかけがえのない場になるのではないでしょうか。

3金会での浜野様はほぼ絶え間なく参加者のどなたかと歓談されていました。非常に有名な方ですし、ご講演もすばらしく心を打つものでしたので、これは当然のことと思います。
ここでまた新しい人の繋がりができれば、素晴らしいことになっていくと思います。

ビジネスト会員になる際にスタッフから聞いた説明の一つに「おせっかい型のインキュベーション施設」というのがあります。
我々起業家にどんどんおせっかいをして、起業の芽を広げてくれるという、とても有難いシステムです。
そして、3金会はまさにその集大成だと思います。
分野は関係ありません。
人と人とが出会い、想いが繋がっていくところに、新しいものができていくと思います。

(有名なポーズをしてみたかったのでお願いしました。 ・・・が、修行が足りませんでした)

そして、あらたなメンバーを加えて着実に拡大していくチームTAMA


【告知】
7月29日(水)開催のガレージスミダイベントで登壇させていただきます。
もちろん懇親会もありますよ。
ご興味のある方はこちらからお願いします。




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AP法のもう一つの形 その1

2015年07月13日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

酸化ガリウムという物質を聞いたことはあるでしょうか。
検索をかけると、最近注目を浴び始めている材料であることがお分かりかと思います。

無色透明な酸化物結晶です。
無色透明ということは、普通は電気を流しません。

金属を例に取りましょう。
金属に光を当てると、光電効果で電子が表面から飛び出します。そして、金属結晶内の自由電子は励起され(エネルギーが高い状態になること)、その後すぐに安定状態に戻ります。励起した自由電子が安定状態に戻るときには高くなった状態のエネルギーを解き放ってやらなければなりません。 

このとき解き放たれたエネルギーは、高くなった状態から元々の状態の間の分だけです。結晶では、エネルギーの高い位置も下の位置も決まっています。あたかもマンションの一階と二階のようなものですね。どれだけ高くジャンプして二階の床を飛び越えても、いったんは二階の床に着地します。これがエネルギーの高い状態。そしてすぐに元に戻るので、一回の床に飛び降ります。この、一階と二階の高さの差にあたるのが、安定状態に戻る時のエネルギーです。 

さて、ここでエネルギーが解き放たれました。どのような形で解き放たれるかというと、光としてです。金属は、似たようなギラギラした色をしていながら、金属ごとに色が違いますね。これは、それぞれの材料ごとにこの一階と二階の高さが違った値で決めれれているからです。自由電子なのに一階や二階というのも変な話ですが、結晶によってエネルギー状態は決められているのです。これをエネルギー順位といいます。

このエネルギーの状態を詳細に調べるためには、物質を結晶化してやらなければいけません。微量な不純物を混ぜて、人間にとって都合の良いエネルギー状態を作り出された材料を機能性材料と呼びますが、このような材料の詳細な性質を調べるためにも、結晶化は重要なのです。
それは今回置いておきます。

電気の流れる金属は自由電子を多く含んでいるので、光があたるとそれぞれの材料ごとの色を放ちます。つまり、透明ではないということです。
光は電磁波ですから、自由電子のような電荷とはよく干渉するのです。

電気を流さない物質ではどうでしょう。
電子の居られる場所は、先ほどの金属中の一階や二階よりも遥かに大きな差を持つエネルギーバンドの間での電子のやりとりになります。

光を当てるとその光のエネルギーを受けた電子が上のエネルギーバンドに移り、そして安定しようと下のエネルギーバンドに戻ります。この時に光を放ちますが、この光の色、つまり波長はエネルギーバンドの差によって決まります。エネルギーバンドの差のことをバンドギャップと呼びますが、このバンドギャップの大きさが放たれる色を決めるということです。

バンドギャップがさらに大きくなると、エネルギーの大きな光を当てても電子が上のエネルギーバンドに飛び移れなくなります。
つまり、電子が光のエネルギーを受け取れなくなったということです。光はどうなるのか、エネルギーを電子に渡せなかったので、光は光のまま通り過ぎます。この状態を透明といいます。

透明な物質というのは、電子が動きにくい物質です。透明でなおかつ電気を流すというのはなかなか難しいということがお分かりいただけるかと思います。
タッチパネルなどは、薄く金属を膜にして表面につけていたりします。最近ではITOというインジウムとスズの酸化物が使われています。厳密には色の付いた物質ですが、薄くすると透明になります。


金属にはこのバンドギャップがありません。 光を当てたら片っ端から自由電子が飛び出します。 酸化物の多くはバンドギャップが大きく、光を当てても電子は飛び跳ねて行けません。川の向こうにジャンプしたくても、川幅が大きくてジャンプできないようなものです。

光のエネルギーを大きくすればジャンプできます。光のエネルギーは波長が短かくなるほど大きくなりますから、赤外線よりも赤、赤よりも青、青よりも紫、紫よりも紫外線のエネルギーは大きくなります。 紫外線よりもX線はさらに大きくなります。
ここで、赤から紫までの光を可視光線といいます。
透明とは、可視光線を当てても電子が励起してジャンプできないくらい、バンドギャップが大きいということです。ですから、基本的には電気は流れないんですね。

この、大きなバンドギャップを持ちながら、電気を流す物質として注目されているのが、酸化ガリウムです。

続きはまた後日



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特許登録のお知らせ

2015年07月12日 | AKT事業情報
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

AKT技術研究所 独自技術である単結晶製造AKT-アドバンスドペデスタル法の特許が登録されました。


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ベンチャー支援・イノベーター支援というもの

2015年07月03日 | ベンチャー
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンスの阿久津です。

AKT技術研究所が入居しているインキュベーション施設、BusiNestでは、7月17日(金)の定例交流会(3金会)で墨田区の株式会社浜野製作所の代表取締役、浜野慶一様のご講演があります。

今回は、入居者の身でありながら、私が勝手に浜野様に相談してご了承をいただき、BusiNestのスタッフに招聘の依頼をしました。
まず、関係各位へのお礼を申し上げます。

個人的には浜野様のご講演を何度か拝聴しています。
とても興味深く、引き込まれるお話を伺い、浜野様への敬意を深めるとともに、イノベーターとして同じ時を過ごしている“仲間”たちと共有したい感動の時間であることを、常々思っていました。
そこで、それを実現させたいと思い、浜野様のビジネストでのご講演を実現させたくお願いをした、というのが経緯です。

最初に浜野様にお目にかかったのは、江東区にあるコワーキングスペース、MONOで開かれた創業塾のときでした。

ゲストスピーカーに来られていて、墨田区でのお取り組みについてお話をされていました。
第一印象は、『これがウワサに聞く下町の町工場のオヤジか!』といった感じでしたが(失礼!!)、お話の中身が非常に興味深く、正直な感想が「墨田区羨ましい!」でした。
私の住む多摩地域には同じようなパッションのイノベーター支援が無かったから、墨田区はずいぶん遠い世界に感じました。

同じイベントでゲストスピーカーにこられていたのが、株式会社リバネスの高橋COOでした。

研究畑出身の私としては、まずは近いのはリバネスということで、ゲストとの交流の時間のほとんどを、高橋COOを捕まえて話をするのみでした。
それが数ヶ月の後、リバネス主催のテックプラングランプリへの出場、審査委員としての浜野様のご列席という形で、しかもグランプリで入賞という、両社にずいぶん近づけた形でのセカンドコンタクトができました。
その後は主にリバネスのイベントを介して墨田区に度々お邪魔することになり、顔や名前を覚えて頂けるようになった、という具合でした。

ですから、浜野様とお話をさせて頂くときには、事業計画書もプロダクトの企画書や設計書も持ったことがありません。ビールか、先日のガレージスミダイベントではワインもでしたか、あとはおつまみも、な具合です。
浜野様は常に「うんうん。まずは話しましょうよ。」から始まります。そして、「うちでできない事でも、この周りにはいっぱい仲間がいるから」
できない、やらない という話はまず出てきません。 できるのが最初の答えなんです。

ビジネスとしてはどうなんでしょう。 ガレージスミダがペイしているかどうかは置いといて、来る人を全員受け入れていたらとても仕事は回りません。
では、やるべきでない仕事はどうやって回避されているのか。
ここからは想像です。
まず、やる気のない人は浜野様の門を叩かないのではないでしょうか。 そして、仮に門を叩いたとしても、工場やガレージスミダに置いてあるプロダクトを目の当たりにしてシッポを巻いて逃げ出すのではないか。
と、勝手に想像しています。
決して、浜野様の目が怖いとか(実際やさしい目をしていらっしゃる)、浜野製作所のプロダクトのハードルが高くて気圧されるとか、そういうことではありません。
現場の社員さんの想いとか意気込みとか、ガレージに並んでいるベンチャーのプロダクトから滲む想いとか、そういうものに圧倒されるのではないかと思っています。

ものづくりイノベーターにとって重要なことはなんでしょう。
世界にひとつしかない技術ですか?
それは確実に違います。
世界的なイノベーターの作品は理論的あるいは技術的には他の誰かに作る事ができます。
逆の見方をします。
ベンチャー起業家ごときが、世界一のプロダクトを見分ける審美眼を持っているか、ベンチャーの新技術ごときが、世界一の技術の粋を集めたプロダクトであるわけがない。
ベンチャーやイノベーションとはそういうものです。

だから、自社の強みを活かしたというのはイノベーションにはそれほど響きません。シナジー効果などと言うのが流行っていますが、先行企業がイノベーターにそんなものを求めて、仮にうまくいったように見えても、
一時しのぎにすらなりません。
よほどエッジの効いた事業だって、20年もしないで廃れる時代です。
ベンチャーの助けを借りた本業の亜流が成功すると考えるのは、かなりご都合主義でしょう。
ベンチャーの立場から見てみれば、自社の事業に必要な技術を、得意分野として喜んで手伝ってくれる会社から、いったい何を学ぶことになるのか? ということです。

結局、ベンチャーが周囲との間にかけることができる橋というのは、想いだけなんです。
想いがつながったとき、初めて実現するための努力が行われ、そこから得られるものはベンチャーにとっても、ベンチャー支援にとっても、おそらくかけがえのないものになるのではないでしょうか。
その橋を自然とかけようとしているのが浜野様、橋をかけたくてベンチャーが集まる先なのが、ガレージスミダなのではないかと思うのです。
これ、浜野さんの技術とどう結びつくんだろう?と思わず首をかしげるようなベンチャーもガレージスミダには集まってきています。
みんな想いの橋をかけに来ている。
そんな気がしています。
この橋から、何か新しい、世界を変えるようなイノベーションが起きるのではないか。
イノベーションとは、そういう明日を作ろうとしている人たちのつながりの中から沸き立ってくるものではないのでしょうか。

もちろん、結局プロダクトを実現してしまう浜野製作所の技術力には疑いの余地もありません。

さて、想いを繋ぐ橋といっても、その橋にかかる道が無ければ、我々は行き着くことができません。
それが、株式会社リバネスの活躍です。
聞くところによると、リバネスの若い人たちが、自転車に乗って墨田区中の工場を回ったそうです。
そして墨田区の工場の想いを吸い上げ、ベンチャーの想いと結びつけたのが、ガレージスミダなんだそうです。

技術でもものづくりでも、一番の核はそれぞれの想いの重なり合い。そのためには出会い。出会いは一期一会です。
こうやって浜野様のご講演を中心に“仲間”たちが集まり、共感することから、新たな出会いに結びつくことが起こるかもしれません。
それが、このBusiNesut3金会の会場から始まれば、それは素晴らしいことです。

今から楽しみです。


結晶を作る技術3 結晶製造の新技術 AKT-AP法

2015年07月01日 | 結晶技術
こんにちは、単結晶からものづくりを創造するAKTサイエンス阿久津です。

前々回「結晶を作る技術1 CZ法」と前回「結晶を作る技術2 FZ法」とでで結晶を作る従来技術について解説してきました。

結晶というのは、高性能デバイスを構成する重要な材料であると同時に、素材の基礎試料として研究開発に欠かせない形態でありながら、結晶技術そのものに課題がありました。

その課題を解決するのが、AKT技術研究所の独自の新技術、AKT-アドバンスドペデスタル(AP)法です。

その構成は、丁度チョクラルスキー(CZ)法とフローティングゾーン(FZ)法の折衷、良いところ取りをしたような形になっています。
まず上下の配置として、下に原材料を焼き固めて作ったペレット、上に種結晶を置きます。上下一直線上で、FZ法を上下逆にしたような形です。

原材料ペレットの上端を赤外線加熱して溶かします。
金属の坩堝を使っていないので、坩堝を保護する必要がないので急速加熱が可能です。融点2000℃程度の材料ならば、1時間もかけてやれば溶かせます。
融液はドーム状の形になりますが、重力に逆らわず原材料ペレットの上に乗っているので、とても安定しています。

ここに種結晶を接触させます。
赤外線の照射範囲をエッジを効かせて絞り込みます。こうして融液の形状を制御すれば、融液が表面超力で維持しきれなくなって垂れ下がってしまうこともありません。 そして、FZ法で問題になった、原料に発生する不安定な溶融も防げます。

種結晶と融液とを十分になじませたら、種結晶を引き上げます。
すると、種結晶に引き続いて結晶が成長して析出してきます。
CZ法に近い工程ですね。

結晶を長く作っていっても、長さ方向の組成は均質なままです。FZ法の概念と同じですね。偏析する結晶であっても、一定の組成の原材料が供給され続けるわけですから、CZ法のように組成がかわり続けてしまうことにはなりません。

さて、まとめてみるとどうでしょう。
CZ法やFZ法で課題とされていたことがまとめて解決できていることがお分かりかと思います。

材料科学の未来を創り出す、そんな技術がAKT-AP法です。
皆様にお見せするためのデモ機がまもなく完成します。
材料科学の新時代の幕開けをどうぞ楽しみにお待ち下さい!


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