明鏡   

鏡のごとく

杉岡製材所さんの「斎」

2020-09-21 00:24:29 | 詩小説
杉岡製材所さんの「斎」の杉皮葺の屋根を作る。
上村さんと独立したことで見えてきたこと。
自分たちのできることを、したいことを、思う存分できるということ。

安藤先生の設計で、杉岡さんの想う「方丈庵」の究極の世界、宇宙を、今この時に再現することが、道楽である前に、粋であるということ。

研ぎ澄まされた技の織り成す空間となりうるように、変幻自在に、その場の思いつきがすぐさま形になっていく過程を共有できる喜びは格別であり、そこに居られることによって、その姿勢を自分たちが学べる幸いに満たされていた。

製材所の方々が丁寧に剝いだ杉皮を、五十八センチ、五十五センチ、五十センチ、四十センチ、それ以下の長さで、細かく鉈で切り、それを重ねつつ、桟とそれを覆う半割りの竹で抑えて銅線で固定しシュロ縄で男結びをしていくことを、片面において8回繰り返した。

そうして、棟作りにおいて、大工の池上さんとの共同作業によって、今まで手がけた棟で最高のものができたと思われた。

通りを何度も確認しながら、杉皮の上に黒く焼いた板を敷き、その上に棟竹が収まった時を、皆の想いと技が一つの美しい形になった瞬間を、共有できた喜びは何物にも変えられないと思われた。

これほど、茅葺、杉皮葺をして、嬉しい時はなかったのだ。

皆が自分の持っているものをすべて注ぎ込むことで満たされた瞬間。

皆が満たされた瞬間であった。

雨の流れが、桟と割竹が思いの外遮っていたので、暗渠のように、穴をところどころ開けて、その流れをある程度確保できるようになったことも、勉強にもなった。

何年後かに、屋根の補修をする場合、桟にあらかじめ水の流れの確保と杉皮の抑えのバランスをとる為に、どのような形にするか考えることもまた勉強になり、屋根にとっての最善を探っていきたい。


斎の正面に備え付けられた階段も、木の凄みを一段一段積み上げていた。

あとは、池上さんたちの大工衆の技の積み上げられた建築の粋を見られる完成の日を待ちわびている。