雨の日曜日

お芝居の感想などを

新国劇百年(新橋演舞場)

2017年09月27日 | その他舞台
 仕事を早退して、劇団若獅子結成三十周年記念公演に行って参りましたー。

 前回若獅子公演を浅草公会堂で拝見したときは、お客さん年配の男性ばかりという印象でしたが、今回は女性客も沢山みえてました。それでも歌舞伎座に比べたら、だいぶ男性客の割合が多いですけども。

 「国定忠治」
 実は私、初国定忠治でありました。いい年して恥ずかしいのですけど「赤城の山も今宵限り」というセリフというかフレーズしか知らなくて、こんなお話だったのね!と新鮮な気持ちで見てました。
 とにかく主演の笠原章さんが格好良かった。結構なお歳だと思うのですけど、渋いのではなく、あくまで男前なのですよ。
 ゲストの伊吹吾郎さんが、コミカルな悪役。あと澤五郎さんが忠治に助けられるおやじ役で目立ってました。刀の差し出し方が後見っぽかったような(笑

 「月形半平太」
 こちらも初めて拝見するお芝居。猿之助さんの染八が!可愛いのですよー! 勿論色っぽいし勝気でもあるのだけど、でもやっぱり可愛いの。持ち味なのか役作りなのかは分からないのですけど。そしてオーラというか華がすごい。ワンピースの前にがっつり綺麗な女方が見られて良かったです。
 笠原さんは、月さまでも良い男でした。ただね、二演目やるのだから片方は若手に任せられたら良かったと思うのですよね。後進を育てるのってどこでも重要だし大変なんだなーって思ったのでした。

ビリー・エリオット~リトル・ダンサー(赤坂ACTシアター)

2017年09月18日 | その他舞台
 久しぶりにミュージカルを見て参りました。秋のために節約しようと思ってたのですけど、評判が良いので急遽チケット取っちゃいましたよ~。

 最初のうちは何となく舞台と自分の距離を感じてましたが、個人レッスンのあたりから引き込まれて、一幕ラストではもう泣くのを我慢するので大変。その状態のまま二幕に突入。みたいな。こんなにダイレクトに感情を揺さぶられるとは思ってなかったから、びっくりしました。オーディションの場面ではすっかりお父さん目線で見てしまって、ほらほらうちの子すごいでしょ!ね!っていうかうちの子すごいー!(泣)って。

 暗い現実の前には個人の、それも子供の夢なんて無力で、でも最後にはその現実を形作っている大人達がビリーの夢に希望を託す。っていうのが切ない。誰か一人のではなく、みんなの夢が実現できる世界なら良いのにね。

 大人キャストでは柚希さんがさすがにスターオーラが凄くて、ショー部分は宝塚みたいでしたよん。


ビリー           木村咲哉
お父さん          益岡 徹
ウィルキンソン先生    柚希礼音    
おばあちゃん        久野綾希子
トニー            藤岡正明
オールダー・ビリー    大貫勇輔
マイケル          城野立樹



秀山祭九月大歌舞伎 夜の部(歌舞伎座)

2017年09月03日 | 歌舞伎
 秀山祭、初日明けてすぐに行ってまいりました。

 「逆櫓」
 今月夜の部を見に行ったは、このお芝居のためなのですよー。以前も吉右衛門さんと歌六さんで拝見してすごく良かったので。
 でもねでもね、これこんなに泣ける話でしたっけ!? 孫や子の帰りを待ちわびる権四郎とおよしがもう不憫で不憫で。これね、死んだ槌松は勿論登場しないのですけど、同じ年ごろの若君を観客に見せるのが、ずるいというか上手いですよねー。権四郎の膝にちょこんと座ったりするのがとっても可愛いんですもん。槌松も同じくらい可愛かったはずなのにって。
 吉右衛門さんは前半の世話な船頭も、後半の時代な樋口もどちらも大きくてとても素敵でした。キャストのバランスも良いし、これ後世に残すお手本みたいな舞台だったんじゃないかな。
 あと遠見の子役初めて見ました。みんな達者だね~。

 「再桜遇清水」
 吉右衛門さん脚本・監修の作品。
 清水法師清玄の転げ落ちっぷりを楽しむ作品、かな? 澤瀉屋のお芝居を見慣れてしまっているので、ちょっともたついてるように感じました。刈り込んで20分位短くして、最後に大喜利所作事付けて欲しいよう。
 染五郎さんは前半のおっとり可愛い清玄も、後半の堕落した破戒僧もどちらも良かったし、多分初演の吉右衛門さんよりニンだろうとも思うのですけど、雀右衛門さんや錦之助さん、魁春さんなんかに囲まれると、どうしても若く物足りなく思えてしまうのですよね。もっと染さん用の布陣で、いつかまた見てみたいです。
 歌昇君の良い奴と種之助君の悪い奴、両方とも溌溂として良かったな。米吉君と児太郎君のお小姓コンビも、大変可愛らしくて目の保養♪

 
一、ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
逆櫓

  船頭松右衛門実は樋口次郎兼光     吉右衛門
              漁師権四郎     歌 六
                  お筆     雀右衛門     
            船頭明神丸富蔵     又五郎
            同 灘吉九郎作     錦之助
            同 日吉丸又六     松 江
          松右衛門女房およし     東 蔵
                畠山重忠     左團次

「遇曽我中村」より
松貫四 作
中村吉右衛門 監修
戸部和久 補綴

二、再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)
桜にまよふ破戒清玄

新清水花見の場
雪の下桂庵宿の場
六浦庵室の場

     清水法師清玄/奴浪平     染五郎
               桜姫     雀右衛門
             奴磯平     歌 昇
             奴灘平     種之助
               妙寿     米 吉
               妙喜     児太郎
          大藤内成景     吉之丞
          石塚団兵衛     橘三郎
           按摩多門     宗之助
         荏柄平太胤長     桂 三
         千葉之助清玄     錦之助
               山路     魁 春

八月納涼歌舞伎 第一部(歌舞伎座)

2017年08月26日 | 歌舞伎
 今年も納涼歌舞伎に行ってまいりました~。

 一部は2回観劇。1階後方と、2列目センターで。

 「刺青奇偶」
 中車さんは、ゆっくりうたうような台詞はまだぎこちないですけど、それ以外は良かったように思います。個人的には牡丹灯篭が今までではベストなので、玉三郎さんの演出と相性が良いのかもしれないですね。
 七之助さんは、台詞回しが玉三郎さんそっくり。結構中車さんと良いコンビな気がするな。いつかもし中車さんが宅悦を務められることがあるならお岩さんはよだいめかなーと思ってましたが、七之助さんというのもありですね。
 政五郎親分の染五郎さんがめっちゃ格好良かった! 低めに抑えた声とか、落ち着いた物腰とか、目線とか。猿弥さんは何をやっても上手いですわ~。そして亀鶴さん今月これだけ? もっと拝見したいのですけど!

 「玉兎」
 生勘太郎君は初めて、かな? お母さんそっくりの綺麗なお顔立ちですよね~。手足も長くて、10年後が楽しみ。小学一年生が歌舞伎座の舞台で一か月間一人で踊るって大変なことですよね。本人は勿論、周りも。全然関係ない私でも、見ていて涙出そうになりましたもん。

 「団子売り」
 私的には第一部の目玉。勘九郎さんと猿之助さんの明るい舞踊。夫婦のラブラブっぷりが素敵なのですよ~。猿之助さんのお化粧、いつもと違うような? ちょっとたれ目っぽくて、米吉君みたいだなーって思ったのですけど、どうでしょう? お面をつけてからのキレッキレなお二人も格好良い! あっという間に終わってしまうので、続けて3回くらい見たいですよん。このコンビの舞踊が、歌舞伎座の定番になりますように! 

長谷川 伸 作
坂東玉三郎 演出
石川耕士 演出

一、刺青奇偶(いれずみちょうはん)

       半太郎     中 車
        お仲     七之助
   赤っぱの猪太郎     亀 鶴
     従弟太郎吉     萬太郎 
   半太郎母おさく     梅 花
   半太郎父喜兵衛     錦 吾
    荒木田の熊介     猿 弥 
     鮫の政五郎     染五郎

二、 上 玉兎(たまうさぎ)
   下 団子売(だんごうり)

〈玉兎〉
        玉兎     勘太郎

〈団子売〉
        お福     猿之助
        杵造     勘九郎



髑髏城の七人season鳥(IHIステージアラウンド東京)

2017年08月18日 | その他舞台
 豊洲の回る劇場に初めて行ってまいりました! アオ・アカ・ワカとゲキ×シネは見てますが、生髑髏自体も初めて。

 ゆりかもめ市場前駅の周りは何もなくて、荒涼とした場所にポツンと劇場が立っているのが不思議な感じでした。

 阿部サダヲさんの捨之介は可愛くて、少年漫画の主人公みたいでしたねー。カーテンコールで28歳で演じてるとおっしゃってましたが、もっと若く見えました。声もかなり高めでしたよね。
 森山未來君の天魔王は、道化のような色気と恐ろしさと薄っぺらさがあってとても好み。なんと言っても動きが美しいのですよね。マントさばきも格好良い!
 動きが美しいのは早乙女太一君の蘭兵衛も。やっぱり殺陣が華麗なのですよ。ビジュアルも、見たことないけど2.5次元舞台ってこんな感じかな?って思いました。
 池田成志さんの贋鉄斎は、阿部捨之介専用に用意された感じ(笑)。 渡京(粟根まこと)が最初北条方として登場したことと、兵庫(福田転球)が子持ちのおっさんだったのにはびっくり。


第3回双蝶会(国立劇場小劇場)

2017年08月06日 | 歌舞伎
 三回目にして、初めて双蝶会を拝見することが出来ました。

 あくまで勉強会ということで、物販もカーテンコールも無いのがかえって新鮮。若いお二人の真摯さが感じられる、気持ちの良い会でした。

 「一條大蔵譚」
 壱之助君は、こういう位の高い女性役、合いますね~。歌昇君の鬼次郎も、将来は持ち役になりそう。種之助君は大蔵卿にはまだ若過ぎるのですよね。全体的にメリハリが足りない気がして、やっぱり難しいお役なのだなと。奥殿だけだと作り阿呆っぷりが堪能できないので、檜垣か曲舞も見てみたかったです。

「吃又」
 歌昇君の真っ直ぐな持ち味と又平の一所懸命さがマッチして、とても良かったです。このお役がここまで合うとは思ってなかったのでびっくり。びっくりと言えば種之助君のおとく。可愛らしい少年のイメージが強かったのですけど、女房役すごく良いですねえ。人妻らしいしっとりさもあって。これから女方増えるかな。



中村吉右衛門監修
第三回 中村歌昇 中村種之助 勉強会

「双蝶会」

一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)

 奥殿

一條大蔵長成:中村種之助
吉岡鬼次郎:中村歌昇
お京:中村米吉
八剱勘解由:中村蝶十郎
鳴瀬:中村蝶紫
常盤御前:中村壱太郎




近松門左衛門 作
傾城反魂香(けいせいはんごんこう)

 土佐将監閑居の場

浮世又平後に土佐又平光起:中村歌昇
女房おとく:中村種之助
土佐将監:中村又之助
将監北の方:中村梅乃
狩野雅楽之助:中村蝶三郎
土佐修理之助:中村米吉

子午線の祀り(世田谷パブリックシアター)

2017年07月14日 | その他舞台
 私でもタイトルだけは聞いたことのある作品だから名作なのだろう、程度の動機で行ってまいりました。

 が、これは行ってよかった! 一生に一度は絶対見ないとダメなやつですこれ! 夜の部だったので終演が22時過ぎてましたけども!

 源平を題材にした芝居、ということだけは観劇前にチェックして行ったのですけど、それを宇宙の視点から描いている壮大な作品でした。群読も効果的で、古典劇を見ているよう。萬斎さんの演出は、凝りすぎに感じた部分もありましたけど、格調高くて好みだなあ。

 役者さんも巧い方ばかりで、特に成河さんは初めて拝見しましたが、強烈なインパクトがありました。役自体が強烈っていうのもありますが。義経君さー、不憫だけどそりゃお兄ちゃんに嫌がられるわ…。

 

【作】木下順二

【演出】野村萬斎

【音楽】武満徹

【出演】

 野村萬斎    … 新中納言知盛

 成河      … 九郎判官義経
 
 河原崎國太郎  … 大臣殿宗盛

 今井朋彦    … 梶原平三景時

 村田雄浩    … 阿波民部重能

 若村麻由美   … 影身の内侍


 

六月大歌舞伎 夜の部(歌舞伎座)

2017年06月25日 | 歌舞伎
 6月歌舞伎座夜の部は、まず「一本刀土俵入」を月初めに幕見して、その後楽近くに1階席で観劇しました。

 「鎌倉三代記」
 松也君の三浦之助が、若々しくて憂いもあって素敵でした。このお芝居を去年襲名興行で拝見した時は、なんて冷たい男なの!って思ったのですけど、松也君だと、ああ彼も死の瀬戸際でいっぱいいっぱいなんだなーって思えるのですよね。もっと平和な時代なら、仲の良い夫婦になれたろうにね。
 私が台詞をちゃんと聞き取れてないからかもですけど、佐々木高綱が危ない人に見えてしまって、こんな人が幹部やってる京方は勝てないだろうなーと(笑)。門之助さんのおくるがとても良かったです。秀太郎さんの長門は出番が短くて残念。

 「御所五郎蔵」
 始めて見る五郎蔵が仁左衛門さんで良かったです。すっきりと絵になる男前。五郎蔵って結構しょーも無い男なので、これくらい格好良くないと主役として成立しないのかも。
 雀右衛門さんは今月はどのお役も素敵なのですけど、やっぱり美しさで言えば皐月かなあ。花魁の豪華なお衣裳がお似合いでした。でも恋人の為の心遣いが報われなくて辛い…。
 米吉君の逢州が大きなお役で、こちらもとても美しかったです。

 「一本刀土俵入」
 すっごく良かった! 何度も拝見しているお芝居ですが、今月のが一番良かった気がする。何と言っても幸四郎さんの茂兵衛が素晴らしかったのですよ。見巧者じゃないですけど芝居の巧さに唸るってこういうことなのかなーって分かったような。気がしただけかもですけど。取的時代の作り過ぎない可愛さとか、10年後の変わりよう、変わってないところとか。「馬鹿野郎」っていう台詞回しとかね。
 猿之助さんのお蔦は何度か拝見してますが、今回は大先輩の胸を借りてのびのびと演じてたような気がします。安孫子屋ではふわふわとした酔っ払いっぷりがとても可愛い。でもふと見せる真顔に彼女の辛い境遇を思い出したり。だから十年後に娘と二人でつつましくも仲良く暮らしているのが嬉しいし、辰三郎と再会できて本当に良かったと思うのよ。その辰三郎役は松緑さん。つい悪事に手を染めてしまったけれど、彼ならこの先ちゃんと妻子を守っていくだろう、という安心感がありました。猿之助さんとのお芝居での絡みをちゃんと拝見するのはもしかして竜馬以来? 結構お似合いと思うので、また組んでいただきたいなあ。右近君のお君ちゃんは元気が良くて可愛かったけれど、猿君でも見たかったわ。
 猿弥さんの弥八の、愛嬌がある小悪党なんだけどめんどくさいから関わり合いになりたくない感じがすっごく良いなって。儀十は、何となく今まで人格者なイメージ(ヤー公に比べて)だったのですけど、今回はちゃんとこいつもちゃちな小悪党だなって分かりました。あと松也くんの根吉、色気があって素敵よねー。



一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場

      佐々木高綱     幸四郎
         時姫     雀右衛門
     三浦之助義村     松 也
       阿波の局     吉 弥
       讃岐の局     宗之助
       富田六郎     桂 三
        おくる     門之助  
         長門     秀太郎


河竹黙阿弥 作
二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵

      御所五郎蔵     仁左衛門
       傾城皐月     雀右衛門
    子分 梶原平平     男女蔵
    同  新貝荒蔵     歌 昇
    同  秩父重助     巳之助
    同 二宮太郎次     種之助
    同 畠山次郎三     吉之丞
      花形屋吾助     松之助
       傾城逢州     米 吉
      甲屋与五郎     歌 六
     星影土右衛門     左團次


長谷川 伸 作
村上元三 演出
三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)

      駒形茂兵衛     幸四郎
         お蔦     猿之助
       堀下根吉     松 也
        若船頭     巳之助
      船戸の弥八     猿 弥
       酌婦お松     笑三郎
         お君     市川右近
         庄屋     寿 猿
        老船頭     錦 吾
     河岸山鬼一郎     桂 三
        清大工     由次郎
    船印彫師辰三郎     松 緑
      波一里儀十     歌 六

六月大歌舞伎 昼の部(歌舞伎座)

2017年06月18日 | 歌舞伎
 6月歌舞伎座、昼の部は2回観劇出来ました。

 「名月八幡祭」
 以前吉右衛門さんで拝見して、とても印象深かった作品ですが、松緑さんもとても良い! 真面目で律義で、でもどことなく見る人を不安にさせるような、そんな新助さんでした。粋な江戸っ子が似合いそうな松緑さんですけど、こういう朴訥な田舎の人役も合うなあ。彼の誠意がないがしろにされるの、本当に辛くて胸が痛い。美代吉宅を出て号泣し、その後顔を上げた表情が凄かったの。吉右衛門さんの新助はラストが非常に強烈だったのですけど、松緑さんにはそういう爆発的な狂気は感じなくて、むしろ彼はこれからもずっと美代吉を恨み続けるし、もういない彼女を殺そうとし続けるのかな、みたいな切なさやりきれなさが残りました。もしも彼が魚惣の誘いを断って故郷に帰っていたら、もしも美代吉に恋しなかったら、田舎で彼に釣り合う娘と所帯を持って幸せになっていたのかな。そこらへん、よく分からないのですけど。
 美代吉役は笑也さん。初日近くに見た時はあまりにも台詞が入ってなくて、プロでもこんなことあるんだ?!もしかして御病気とか?と心配してしまったほど。2度目の観劇では落ち着いて見ることが出来ましたが、笑也さんのおっとりした口調はあまり深川芸者には合わないかも。ビジュアルは良かったので残念。
 猿之助さんの三次は、錦之助さんのようなクズ感は薄くて、普通に恰好良い江戸っ子でした。でも美代吉に金をたかる時は、年下らしく甘えて可愛かったなあ。あんな調子であちこちでお小遣い貰ってるのかしらねーふふふ。周りには多少「困った人」と思われているけれど、遊び好きで女性にもてて、特別悪人というわけでもない、江戸には沢山いるような男達の一人。ただ新助とは全く価値観が違った、という悲劇。
 魚惣役の猿弥さんも良かったなー。人情に篤くて新助さんを気遣ってはいるけれど、彼も江戸っ子だから、新助さんの気持ちを理解することはできないんだよね。亀蔵さんは、藤岡様にはまだ若すぎる気がしました。

 「浮世風呂」
 以前こんぴらでかかった時に見られなかったので、今月歌舞伎座で拝見できてとてもうれしかったです! ただひたすら猿之助さんの所作と身体の美しさを堪能しましたよー。うっとり。この前の奴道成寺とかもそうですけど、猿之助さんの舞踊が歌舞伎座の「売り」として定着してきたように思います。
 なんといっても幕開きが良いのですよね。朝日が差し込む風呂屋に、三助の後ろ姿、という絵が美しいです。なめくじ女子とのやりとりも可愛いですけど、そのあとのまぜこぜ節が本当に楽しくて。私に知識があればもっと深く味わえたのになーという歯痒さはありましたけど、でも何も分からなくてもとても楽しかったの。三助さんかなり薄着だから、女方の踊りの時だと色っぽ過ぎて結構目の毒(笑
 ラストは所作立てになって、華やかな幕切れ。なんで大勢の若い者が乱入してきて立ち回りになるのか、何かしら理由があるのかと思ったのですけど、筋書には特に何も書いてないのですよね。
 なめくじは種之助君。可愛いし、猿之助さんとの背丈のバランスも良かったです。ぬめぬめした感じが本当になめくじっぽくて面白い。

 「弁慶上使」
 そう言えば吉右衛門さんは「競伊勢物語」でも実の娘を主君の身代わりにしてたなあ、と思って調べたら、紀有常の娘の名前も「信夫」なのですね。もしかして歌舞伎では不運な女性の定番の名前なの?? 信夫には父だと名乗って、しのぶには顔も見せずに殺してしまうけれど、どちらが辛いんだろう…なんて花道を引っ込む吉右衛門さんを見ながら思ったり。まあ私は女親に肩入れしちゃいますけども。だって今日初めて会った娘と、十何年も大切に育ててきた娘とじゃ、絶対失った時のダメージの大きさが違うと思うんですもん。
 おわさは雀右衛門さん。娘を失った悲しみと恋人に再会できた喜びを行き来するのが、可愛くておかしくて悲しいです。その娘米吉君も可憐でした。又五郎さんも、微かな違和感がラストにつながるのがさすがだなーと。これは夜の部の門之助さんもなのですけど。見事な忠臣っぷりでした。


池田大伍 作
池田弥三郎 演出
大場正昭 演出
一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

      縮屋新助     松 緑
     芸者美代吉     笑 也
     藤岡慶十郎     坂東亀蔵
         魚惣     猿 弥
    魚惣女房お竹     竹三郎
      船頭三次     猿之助

木村富子 作
二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)

      三助政吉     猿之助
       なめくじ     種之助

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使

     武蔵坊弁慶     吉右衛門
      侍従太郎     又五郎
 卿の君/腰元しのぶ     米 吉
        花の井     高麗蔵
         おわさ     雀右衛門

花戦さ(TOHOシネマズ日本橋)

2017年06月14日 | 映画
 仕事を定時で上がって萬斎さん主演の映画「花戦さ」に行って参りましたよー。1100円で見られるTOHOシネマズデイだったせいか、結構お客さん入ってました。

 で、見る前は専好と利休の友情物語かと思ってたのですが、これはあれだ、利休と秀吉のがっつり大悲恋モノでした。び、びっくりしたー。

 佐藤浩市さんも猿之助さんも色気のある役者さんなので、茶室の場面の密度と言うか濃度と言うか、もうすごかったですよ…。秀吉は利休にめっちゃ甘えてるし、きっと甘えられる相手は利休だけだし、利休もそれを分かってる。あまりにも距離が近すぎて、お互い相手しか見えなくてにっちもさっちも行かなくなってる感じが、大変不健全で宜しかったですわー。うふふ。

 猿之助さんは、風林火山でもそうでしたけど、年上の男性に懐いて自分を丸ごと預けちゃうような、危なっかしい雰囲気ありますよね。今回メインキャストで彼だけ若くて(実年齢もですけどビジュアルが)バランス悪くない?って思ってましたが、ヒロイン枠なら納得。岐阜城で控えてるだけなのに佇まいが美しくて見とれちゃいましたよん。

 利休は池坊との対話で自分の傲慢さに気づいて死を選ぶのだけど、秀吉の方はずっと拒絶されたって思い続けてたんだろうなあ。そんな秀吉に「彼はちゃんとあなたのこと尊重してましたよ」って専好が伝えて孤独な天下人の心を救う、というラスト。最後の秀吉の笑いね、泣いてるようでしたもんね。やっと利休の死を素直に悼んで泣くことが出来たってことだよね。

 
 【出演】
 野村萬斎   池坊専好 
 市川猿之助  豊臣秀吉
 中井貴一   織田信長
 佐々木蔵之介 前田利家
 佐藤浩市   千利休
 森川葵    蓮

 【脚本】
 森下佳子

 【原作】
 鬼塚 忠「花戦さ」(角川文庫刊)

 【音楽】
 久石 譲

 【監督】
 篠原哲雄