仕手筋、フィクサー、新興中国人経営者…。日経平均株価が2万円を超すなど好調さを見せる日本経済の背後でうごめく“闇の紳士たち”の一部が、白日の下にさらされた。東証マザーズ上場のインターネット通販業「ストリーム」(東京)をめぐる相場操縦事件。この事件では既に「最後のフィクサー」と呼ばれる人物の関係者ら6人の男が警視庁に逮捕されたが、通常は“食い物にされた側”となる同社元会長の中国人の男らの逮捕状も出るなど、単純な株価操縦事件とは異なる深い闇もうかがわせる。相場操縦で得られた資金が闇社会に流れた可能性も指摘されており、警視庁は全容解明を急ぐ方針だ。
株式市場を食い物に
平成26年2月、それまで100円前後で推移していたストリームの株価が突如上昇を始め、8月には500円を突破した。しかし、年末に向けて下落を続け、27年半ばには200円も割り込んだ。証券関係者は「どう見ても怪しい値動きだった」と明かす。
警視庁捜査2課と組織犯罪対策部が株価を不正につり上げたとする金融商品取引法違反容疑で逮捕したのは、松浦正親(45)▽四方啓二(46)▽佐戸康高(58)▽高橋利典(69)▽笹尾明孝(64)▽本多俊郎(51)-の6容疑者。6容疑者はつり上げた株を高値で売り抜け、利益を上げていたとみられるという。
捜査2課によると、6容疑者は、直前の株価を上回る価格で連続して注文を出し、株価が上昇しているように見せかける「買い上がり」や、同じ人物が売りと買いの注文を繰り返し、活発な取引が行われているように装う「仮装売買」と呼ばれる手口を使っていたという。
6容疑者は、他人名義の口座でこうした取引を繰り返すことで発覚を免れようとしたとみられる。
「やり方知らない」
「相場操縦のやり方もわからないのに、どうやってやるのか」
逮捕前、東京都内で産経新聞の取材に応じた松浦容疑者は、すらっとした長身でベンチャー企業のやり手経営者といった風貌。ストリーム株の売買や他人名義の口座を使ったことは認めたものの、株価操縦疑惑への関与は否定した。
松浦容疑者は「ある金融ブローカー(昨年末に死亡)の言った通りに買ったら、株価がバカバカ上がり、売ったらもうかった。それだけだ」と説明。「株を買って何が悪いのか。証券会社に勧められて買うのと何が違うのか」と話した。
関係者によると、このブローカーの指示で、「仕手筋」とされる高橋・笹尾・本多の3容疑者が実際の売買を担当していたとみられる。
一方、四方容疑者は逮捕前の産経新聞の取材に、死亡した金融ブローカーが四方容疑者に「1億円を貸してほしい」と依頼し、「担保に不動産やストリーム株を持ってきた」と明かす。四方容疑者は「誰か貸せるか探したら、(逮捕された)佐戸さんが『いいよ』と言ったので、カネを振り込んで貸した」と説明した。
「2月ごろからストリームの株価が上がってきたから売った。それを(金融ブローカーらのグループが)たまたま買ったというだけだ」と関与を否定した。
「最後のフィクサー」
今回、仕手筋とされる3容疑者に続いて逮捕された松浦容疑者には「上司」とも呼べる人物がいる。
警察当局が「特殊知能暴力集団」に指定し、「最後のフィクサー」ともいわれる人物の息子で、会社役員を務める男性だ。この男性はクラブ経営などさまざまな事業を手がけ、株価が不審な値動きを示す企業との関係が情報誌などで取り沙汰されるが、役員や株主には名前が登場しない。
この男性について、松浦容疑者は産経新聞のこれまでの取材に「節約家だし、人柄がいいし、信義は守る。今まであれほどまともな人は見たことがない」と“信奉”ぶりを語っていた。
ある捜査関係者は「この男性がストリーム株操縦に関連するカネを受け取っていたのかなど、資金の流れの解明は困難だ」と明かした。
中国人創業者も関与か
信用調査会社などによると、ストリームは、平成元年に来日した中国籍の元会長(48)が11年に創業。インターネット通販などを手がけ、激しい競争にさらされながらも、堅実な経営を続けてきた。
家電販売「ラオックス」の中国資本による買収劇でも見られたように、経済成長著しい中国企業は10年ほど前から日本市場への進出を激化させ、特に東証マザーズでは中国企業の上場も相次いでいる。
ストリームもその先駆けとして19年にマザーズに上場。ラオックスとの関係も良好で、中国の3大新興財閥である「北大明天グループ」とも密接な関係を持つとされるなど、中国企業による日本進出の“先兵”と位置付けられてきた。
「通常の相場操縦であれば、ターゲットにされた企業は『自分の会社を食い物にしやがって』と悔しがるものだが、今回はそういう構図ではない」。逮捕された6容疑者の1人は、産経新聞の取材にこう明かす。
捜査2課などは6容疑者のほか、この元会長についても同じ金融商品取引法違反容疑で逮捕状を取り、行方を追っているが、既に国外にいるとの情報もある。企業買収や日本での上場といった「表」の活動で日本経済で食い込むだけでなく、非合法な形で日本市場を食い物にしていたとすれば、事件は新たな展開を見せる。
ある関係者は「(今回逮捕されたグループとは)別に、元会長らのグループも(株価操縦に)関わっていた。両グループのつながりははっきりしないが、経営者が自分の会社で株価を操縦すればインサイダー取引になるのでは」との見方も示した。“深い闇”を感じさせる株価操縦事件の全容解明は、まだ始まったばかりだ。
■ストリーム
ホームページによると設立は平成11年。インターネット通販の運営、ネット通販支援、化粧品開発・販売、オンラインゲームなどを主な事業にしている。本社は東京都港区。
株式市場を食い物に
平成26年2月、それまで100円前後で推移していたストリームの株価が突如上昇を始め、8月には500円を突破した。しかし、年末に向けて下落を続け、27年半ばには200円も割り込んだ。証券関係者は「どう見ても怪しい値動きだった」と明かす。
警視庁捜査2課と組織犯罪対策部が株価を不正につり上げたとする金融商品取引法違反容疑で逮捕したのは、松浦正親(45)▽四方啓二(46)▽佐戸康高(58)▽高橋利典(69)▽笹尾明孝(64)▽本多俊郎(51)-の6容疑者。6容疑者はつり上げた株を高値で売り抜け、利益を上げていたとみられるという。
捜査2課によると、6容疑者は、直前の株価を上回る価格で連続して注文を出し、株価が上昇しているように見せかける「買い上がり」や、同じ人物が売りと買いの注文を繰り返し、活発な取引が行われているように装う「仮装売買」と呼ばれる手口を使っていたという。
6容疑者は、他人名義の口座でこうした取引を繰り返すことで発覚を免れようとしたとみられる。
「やり方知らない」
「相場操縦のやり方もわからないのに、どうやってやるのか」
逮捕前、東京都内で産経新聞の取材に応じた松浦容疑者は、すらっとした長身でベンチャー企業のやり手経営者といった風貌。ストリーム株の売買や他人名義の口座を使ったことは認めたものの、株価操縦疑惑への関与は否定した。
松浦容疑者は「ある金融ブローカー(昨年末に死亡)の言った通りに買ったら、株価がバカバカ上がり、売ったらもうかった。それだけだ」と説明。「株を買って何が悪いのか。証券会社に勧められて買うのと何が違うのか」と話した。
関係者によると、このブローカーの指示で、「仕手筋」とされる高橋・笹尾・本多の3容疑者が実際の売買を担当していたとみられる。
一方、四方容疑者は逮捕前の産経新聞の取材に、死亡した金融ブローカーが四方容疑者に「1億円を貸してほしい」と依頼し、「担保に不動産やストリーム株を持ってきた」と明かす。四方容疑者は「誰か貸せるか探したら、(逮捕された)佐戸さんが『いいよ』と言ったので、カネを振り込んで貸した」と説明した。
「2月ごろからストリームの株価が上がってきたから売った。それを(金融ブローカーらのグループが)たまたま買ったというだけだ」と関与を否定した。
「最後のフィクサー」
今回、仕手筋とされる3容疑者に続いて逮捕された松浦容疑者には「上司」とも呼べる人物がいる。
警察当局が「特殊知能暴力集団」に指定し、「最後のフィクサー」ともいわれる人物の息子で、会社役員を務める男性だ。この男性はクラブ経営などさまざまな事業を手がけ、株価が不審な値動きを示す企業との関係が情報誌などで取り沙汰されるが、役員や株主には名前が登場しない。
この男性について、松浦容疑者は産経新聞のこれまでの取材に「節約家だし、人柄がいいし、信義は守る。今まであれほどまともな人は見たことがない」と“信奉”ぶりを語っていた。
ある捜査関係者は「この男性がストリーム株操縦に関連するカネを受け取っていたのかなど、資金の流れの解明は困難だ」と明かした。
中国人創業者も関与か
信用調査会社などによると、ストリームは、平成元年に来日した中国籍の元会長(48)が11年に創業。インターネット通販などを手がけ、激しい競争にさらされながらも、堅実な経営を続けてきた。
家電販売「ラオックス」の中国資本による買収劇でも見られたように、経済成長著しい中国企業は10年ほど前から日本市場への進出を激化させ、特に東証マザーズでは中国企業の上場も相次いでいる。
ストリームもその先駆けとして19年にマザーズに上場。ラオックスとの関係も良好で、中国の3大新興財閥である「北大明天グループ」とも密接な関係を持つとされるなど、中国企業による日本進出の“先兵”と位置付けられてきた。
「通常の相場操縦であれば、ターゲットにされた企業は『自分の会社を食い物にしやがって』と悔しがるものだが、今回はそういう構図ではない」。逮捕された6容疑者の1人は、産経新聞の取材にこう明かす。
捜査2課などは6容疑者のほか、この元会長についても同じ金融商品取引法違反容疑で逮捕状を取り、行方を追っているが、既に国外にいるとの情報もある。企業買収や日本での上場といった「表」の活動で日本経済で食い込むだけでなく、非合法な形で日本市場を食い物にしていたとすれば、事件は新たな展開を見せる。
ある関係者は「(今回逮捕されたグループとは)別に、元会長らのグループも(株価操縦に)関わっていた。両グループのつながりははっきりしないが、経営者が自分の会社で株価を操縦すればインサイダー取引になるのでは」との見方も示した。“深い闇”を感じさせる株価操縦事件の全容解明は、まだ始まったばかりだ。
■ストリーム
ホームページによると設立は平成11年。インターネット通販の運営、ネット通販支援、化粧品開発・販売、オンラインゲームなどを主な事業にしている。本社は東京都港区。
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