輝きつづけて

あなたの勇気で救える命があります。
一人でも多くの方に「AED」を知っていただきたいと願っています。

救命の現場で学んだ事

2010-03-30 22:23:47 | 救える命(AED)

昨年の2月に主人が義父をAEDで救命しました。
その時の様子を、大阪ライフサポート協会の会報に寄稿しました。
読んで頂けると嬉しいです。


               救命の現場で学んだ事

「心臓突然死は救える命です。そしてそれは決して他人事ではありません」と伝え続けながら、まさか私自信がAEDのボタンを押し救命の現場に立ち会うことになろうとは思ってもいませんでした。
 今年の、2月23日、数日前から体調のすぐれなかった91歳の私の父は、かかりつけのクリニックで診察を受けた後、クリニックの前で家族の車に乗り込んだところで心停止となりました。急を聞いて駆け付けた医師の指示で私の姉が胸骨圧迫をはじめ、医師がマスクを使って酸素を送り始めました。
 会社で仕事中だった私達夫婦も、父が急変したという知らせを聞いてクリニックの前へ駆けつけ(会社からクリニックまでは約200mの距離です)私が姉と交代して胸骨圧迫を行い、間もなくして到着したAEDで除細動を行いました。1回目のショックの後、数回の胸骨圧迫で心拍が戻った事を医師が確認しました。しかし、父の意識は回復せず、その後到着した救急車で急性期病院へ搬送されました。
 後日私は、クリニックの医師や看護師に会い、その時の時間の流れをまとめてみました。

AM 11:03 父の急変を感じ呼びかけるが反応なし。
        医師を呼びにクリニックへ戻る。     

   11:04 クリニックの医師が意識の確認を行う
        119番通報を指示
  
   11:05 気道確保、胸骨圧迫を始める、AEDを取りに行く(クリニック事務員)
        胸骨圧迫を交代・BVMで酸素を送り始める

   11:06 私が現場へ到着、胸骨圧迫を交代

   11:07 AED到着
        一回目の除細動 直ちに胸骨圧迫を行う

   11:08
        医師により心拍が戻った事を確認

   11:09

   11:10 救急車到着
 

時系列を作成しながら、同時に私自身の行動を振り返ってみました。
◦ AEDが到着し蓋をあけた後、日本光電のAEDにもかかわらず、電源ボタンを探した。
◦ 自分がAEDのパッドを装着している間、胸骨圧迫の交代を頼まなかった。
   胸骨圧迫が止まってしまった。
◦ 通電ボタンを押すタイミングを逃した。
   離れて下さいと声をかけた後も体に触れている人がいたので、一度目の音声でショックボタンを押すことができなかった。すぐに二回目の音声が流れ、ショックボタンを押す。
   周りにいる人達に離れてもらうことを徹底することはとても大切なことだと実感した。講習のように一度声をかけただけで、皆が離れてくれるとは限らない。
◦ AEDパッドの粘着力の強さに驚いた。
体にパッドを貼った後も「パッドを装着して下さい」という音声が流れたのでパッドをもう一度押さえ直す。

現場では落ち着いて対処したつもりでした。しかし、上のような反省点もあり、実際の救命の現場と、講習とは違うものだということを実感しました。そうであるからこそ、誰もが一度は救命講習を受講しておかなくてはいけないと思いました。そして、そこで学ばないといけない、救命の現場で最も必要な事は「胸を強く押す」事と「落ちついてAEDのボタンを押すこと」だと思いました。

私は以前から、実際の救命の場面では、家族はもちろん救助者や現場に居合わせた人にも、何らかのストレスが生じるのではないかと考えておりました。実際、父の胸を押し続けている時の恐怖にも似た不安な気持ちは、言葉にすることができません。病院に運ばれた時点では「もう意識は戻らないと思って下さい」と言われ、たくさんの管と機械に囲まれ、胸が大きく波打つ父の姿を見た時には、「本当にあの時AEDをかけて良かったのだろうか・・・」と重い気持ちになりました。元気になって「生きていてよかったよ」と笑ってくれる日が来なければ、私はずっと後悔をするのではないかと思いました。
その後、3月4日のセミナーで「救助者の精神的ストレス」について講演された、明石Drの「心肺蘇生の成功とはその人の生死のみで評価されることではない。救助者にとって心肺蘇生の成功とは、行動を起こして努力した対応をしたということが成功である。」という言葉が強く心に残りました。「命を繋げたい」と思う気持ちで行う救命行為には、成功や失敗という言葉はないのです。
それでも救助者は、気持ちが沈んだり、眠れなくなったり、罪の意識を感じたりするかもしれません。そのことを考えずに「バイスタンダーになって命を救って下さい」とだけ伝えるのではいけないのだと思いました。今はまだ、救命のほとんどが成功しないことを伝えれば、みんな一歩引いてしまうかもしれません。しかし、それでも命を明日につなげるためには、「勇気を持って一歩踏み出してほしい」ということを話し続けようと思っています。
心停止から5か月半がたった現在、父は退院し社会復帰をいたしました。脳へのダメージも後遺症も全くなく、倒れる前以上に元気になっております。
急性期病院の医師も、父の奇跡的な回復に「早い時期からのCPRが功を奏したのでしょう」と言って下さいました。それは私たち家族にとっては、とても嬉しい言葉でした。
そして、私にとって何より嬉しかったのは、「生きていて良かったよ」と言ってくれた父の言葉でした。たくさんの方々のそんな言葉が聞けることを願い、今後も活動を続けていきたいと思っております。

京大チームの研究

2010-03-19 22:07:08 | 救える命(AED)

PUSHプロジェクトの石見先生たちのチームの研究がアメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」に掲載されました。

こちら

この研究のまとめ

●国家規模での公共AEDの普及が、早期の電気ショック、社会復帰増加に寄与していることを明らかにした。

●多くの地域では、AEDの普及は不十分であり、更なる普及、トレーニングの普及が必要

きちんとした内容を、もう少し解りやすくして、大阪ライフサポート協会のHPにアップして下さるようです。(準備中とのことです)


もう一つ

「子供に対するバイスタンダーCPRの効果」の研究が医学誌ランセットに掲載されました。

こちら

つまり(下記は石見先生からのメールの抜粋です)

=PUSHでは胸骨圧迫のみでもいいので覚えてほしいがメインメッセージですが、子
供の心臓以外が原因の心停止では、人工呼吸が重要と言うことが分かったので、
1.まずは、胸骨圧迫のみを覚えて、救命処置に参加してほしい。
2.子供の心停止に遭遇する可能性の高い医療者、学校の先生、ライフセーバーなど
は人工呼吸もしっかり勉強してほしい。これも会わせて伝えていく必要があると思っ
ています。
論文中では、2段階戦略が必要というようなことを主張中です。=

とのことです。

京大の研究チームのこの研究は全国ウツタイン統計(病院外心停止に関する記録統計)があっての成果です。
(下記も石見先生からのメールの抜粋です。)

=毎日、苦労をして、データを集めてくれている救急隊員のみなさま、ありがとうござ
います!!北村氏等まとめた側の努力はもちろんですが、一番の功労者は日々救急活
動を去れ、そのデータを入力してくれている皆さんだと思っています。=


救急隊員の皆さんの地道な活動の成果がこうしてかたちになり、日本のみならず、世界に通じる情報として発信されていく事は、素晴らしい事ですね。
そして、救命されている人が増えている事も実証されています。


この研究の記事を読んで、AEDの必要性や心肺蘇生法の大切さを改めて認識しました。
記事を読んで下さった沢山の方々が同じように思って下されば嬉しいです。



命にまつわるエトセトラ

2010-03-01 21:28:46 | 命を思う心(命の教育)
今年も、関大一中のカフェテリア授業「命にまつわるエトセトラ」に参加させていただきました。

クラス委員さんの「この時間を有意義な時間にしたいと思います。よろしくお願いします」との挨拶の後、講師の先生の体験談やなぜ心肺蘇生法を学ぶことが必要かというお話を聞きました。その後はしっかり体を使って、心肺蘇生法を学びました。

毎年感じる事なのですが、この「愛と勇気と心肺蘇生」の授業を第一志望に選んでくれるだけあって、みんな真剣で一生懸命です

一般の方向けの講習会の時には、自発的ではなくて職場からの業務命令で参加されている方も多くいます。
ですから、ヤル気のないテンションが低~い講習という事も良くあるそうです。

何が違う?

やっぱり、気持ちですよね。
やっぱり、「救命の心」があるかどうかですよね。

テンションの低~い大人にならないように、子供達にはちゃんと「心」を伝えないといけないなぁ・・・と改めて思いました。