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格闘家に関する余計なお世話なコラム

土佐の男:vs ドリー伊藤

2017-09-08 08:08:54 | 土佐の男
馬場 「おう、クボッチ! 久しぶりだな。どうよブツの方は。上手くいってる?」

クボッチ 「ヤーマン、馬場先輩お久しぶりッス。ジャー・ラスタファーライ。ガンジャの出来は上々ッス。今日はいきなりアパートに呼び出して申し訳ないッス。ちょっと隣の部屋の人と騒音で揉めちゃって。ほら、見ての通りッス」























土佐犬民 「出って行け! ハイ出って行け!」























馬場 「なるほどとっさんと揉めたってか。どんな状況で?」

クボッチ 「いや、俺がナイヤビンギ聴きながらガンジャ焚いてバイブス最高潮の時に、このバティマンが怒鳴り込んで来たんスよ」

土佐犬民 「じゃかましい! 何をゴチャゴチャ言いゆうがぞおまんは! あんにゃあ、こんな小さいアパートで大音量で音楽聴くなっちゅうがぜよアホンダラ! どんな寸法しちゅうがぞホンッマにおぉん? おらはいごっそうじゃけんあんまりことしよったらこじゃんとやられるぞ! こりゃぁん!? このわりことしが!」

クボッチ 「ほら、こんな感じで何言ってるか分かんなくて会話にならないから先輩に来て頂いたんです。俺って基本ラブ&ピースじゃないッスか。だから音が大きいですよって言ってきてくれたらポジティブチューニングしたんスけど、なのにこんなディスる感じで来られたらこっちもバッドマインドになっちゃうじゃないッスか」

土佐犬民 「さっきから何を意味の分からんことを言いゆうがぞおまんは! おまんに何言いゆうか分からんとか言われとうないぜよ!」

クボッチ 「いや、あんたの方が分かんない」

馬場 「まあまあ、君ら二人は一生分かり合うことはないだろうな。とっさんの言うようにここは小さなアパートだから、とりあえず今回はクボッチが音量下げとこうな」

土佐犬民 「ほりゃ見れ! ざまぁみれ大麻野郎!」

クボッチ 「けっ、そんなお前もピースだこのやろう(バタン)」

馬場 「とっさん、彼はクボッチと言ってな、趣味はスカイダイビング。実はクボッチはブツを安定供給してくれてる俺たちの大切な仲間の一人で、広い意味で言うとその金が回り回ってとっさんの家賃も賄ってるってわけだ。だから今後はな、多少うるさくても出て行けとか言わずに大目に見てやってくれや」

土佐犬民 「ぐぬぬ・・・。隣も下もロクな奴がおらん」

馬場 「ところでさ、今日はクボッチに呼ばれたついでにとっさんに次の仕事の話をしとこうと思って来たんだけど、とっさん芸能界に興味ある?」

土佐犬民 「なぬ!? 芸能界つか!? ・・・・むむ、華々しい世界じゃとは思うけんどのう・・・。情けない話じゃが田舎者根性じゃろうかのう、どっかに恥ずかしい気持ちんあるっちゅうか、進んで興味を持っちゅうわけでもないのう、ううむ。何ぞ、おらにスカウトの目が留まったとでも言うがかよ?」

馬場 「いやまだ決定したわけじゃないけど、ウチの芸能部門で売り出せないかなと思ってな。ほら、この前とっさんに履歴書書いてもらおうとしたけど本名は嫌だっつって結局書かなかったじゃん? じゃあどうせなら芸名で仕事ができたらいいんじゃないかって単純に思ったの」

土佐犬民 「いや芸名いうたちおまん、、、今日日ネットで調べたらすぐバレるろうが?」

馬場 「その点は大丈夫だ。先にこっちがネットにあらゆる偽情報を流すんだよ。土佐犬民として卒業アルバムの写真とか作ってアップしてな。ウチの持ってるノウハウならまだある程度は隠し通せる。」

土佐犬民 「うぬぬ、ホンマかよ?」

馬場 「それに、あんたと長年付き合ってる俺としてはあんたがコツコツと何かやるよりも変化の激しい舞台の方が向いてるのは分かってるから、あんたのキャラクターをこのまま狭い世界で埋もれさせとくのはもったいないなと思ったのよ。いや、お世辞じゃないよ」

土佐犬民 「むむむ」

馬場 「嫌なら断っていいよ。でも今ってさぁ、部屋に閉じこもって変な動画見まくってる毎日だろ? こっちとしても心配なのよ。あんたが引きこもってると気持ち悪いし・・・。実際今日クボッチと揉めたわけじゃん。だから気分転換っていうか、軽い気持ちで行ってみればと思ってさ。とっさん自身も別に芸能人になりたくて仕方ないって訳じゃないんだし、今後とっさんの話のネタにでもなればいいかなと思った程度なんだよ。どうする?」

土佐犬民 「けんどおまん、オーディションとか受けにゃいかんがじゃろ? そんでプロデューサーかなんか知らんけんどそいつに偉そうにダメ出しされるがじゃろ? おらテレビで見たことあるもん、俳優を目指しゆう兄ちゃんがけちょんけちょんに言われるがを。しかも見知らぬおっさんに言われちぞ? そんなもん我慢できるかぁ」

馬場 「いやいや見知らぬおっさんじゃないぜ。知ってるだろ、80年代に視聴率70%取った伝説の番組『組長だよ全員集合』。途中から乱闘が始まって、視聴者からもの凄い苦情が殺到して1回で終了したんだけど、あのプロデューサーだったドリー伊藤だよ。今も有名だろ?」

土佐犬民 「なぬっ!? ドリー伊藤いうたら今もテレビによう出ゆう、歯に衣着せぬ発言で有名なあのドリー伊藤かよ!? ・・・ほうか、ドリー伊藤つか。まぁ特に好きでも嫌いでもない男じゃけんど直で話をするっちゅうがは面白いかもしれんのう。うーむ、確かに受かる必要はないがじゃき自然体で構わんわけやしのう。ほんなら行っちみろうかの」

馬場 「そうか、でもドリーさんは駆け引きが上手いぜ。持ってかれるなよ~(笑)」



後日、某事務所内―――



ドリー 「初めまして! ドリー伊藤です。今日はよろしくお願いします」

土佐犬民 「これはこれは! ドリー伊藤さん、土佐犬民と申します! 好きなタイプは色白ポッチャリ、ちなみに前科一犯です! よろしゅうたのんます!」

ドリー 「ウハハ! 土佐さん面白いね! よろしくお願いします。じゃあ早速だけど今の気持ちをパントマイムで表してくれる?」

土佐犬民 「な?・・・・・・・いや、できるかぁ!!」

ドリー 「ウハハ! 冗談です冗談! でもいいね! その執着してない感じ。がっついてる奴らほどくだらないパントマイムをやってしまうんですよ。だからどう断るのかを見ていたんですよ」

土佐犬民 「ふむ、それは分かったけんどちょっと待ったドリーさん。最初に断っちょく! おらは別に芸能界に入りとうてここへ来たがじゃない。芸能界に憧れはないけんど無職やし、今の部屋に引きこもった状態もどうかのうと思いよっち、そんなところへ今回の話が舞い込んだもんじゃきの、気張ることなく自然体でドリーさんと話をしち、運がよかったら使うてもらおうっちゅう、棚から牡丹餅的な魂胆でここへ来たが。おらは正直者じゃき、それを最初に言うちょかんとどうも気持ちが悪いきに!」

ドリー 「うん、いいっ。 正直なのがまたいいよあなた。ところで前科一犯って何したの?」

土佐犬民 「食い逃げです!」

ドリー 「食い逃げ(笑)! ライトな感じでいい!」

土佐犬民 「あれは50歳の7月じゃった。ツクツクボウシの鳴き声ん響き渡る真夏の日・・・・ありゃ待てよ、ツクツクボウシが鳴くっちゅうことは夏の終わりっちゅうことになるけんど7月にツクツクボウシが泣くことんあるかいの? ・・・ありゃ? ヒグラシじゃったろか?」

ドリー 「セミの話はいいよ」

土佐犬民 「失敬! ほんで話はというたら、とあるレストランでお子様ランチがどうしたち食いとうなったき頼んだがやけんど、ウエイターが“小学生までしか注文できません”とか言うち受け付けんが! しょんないきしぶしぶラーメン食うたがじゃけんどそれがマズイというたらホンッマに! ほんでますます腹ん立っちきちの、それプラス、ふと見たらさっきの店員がウエイトレスと楽しそうに談笑しゆうがを目にしちもうち、何を笑いよらあ思うち、そらもう怒りがマックスんなっちたまるかよおまん! こんな店に金払えるかと思うたその瞬間、店員の隙を見てつい店を飛び出てしもうちの、“いかん!”思うち立ち止まった瞬間にウエイターに取り押さえられたっちゅう無様な話よ! それん原因で当時の上司にみこすり半も突き付けられてリストラされるわで最悪じゃったぜよ!」

ドリー 「ウハハ! 三行半でしょ! ところで変わったお名前だよね土佐犬民って・・・あ、芸名なのかな? いちおう本名聞かせてもらっていい?」

土佐犬民 「郷ひろむ」

ドリー 「えっ? 違う違う、好きな芸能人じゃなくて、あなたの本名」

土佐犬民 「じゃき郷ひろ

ドリー 「あっ、“み”じゃなくて“む”か。郷ひろむ・・・」

土佐犬民 「ほうよ! 同年代じゃき、あれがデビューしちからずっと人生を共に歩きゆうようなもんよ。おらがどれだけてがわれる人生を歩んで来たか分かるかよドリーさん? 環境が変わるたんびにみんなにてがわれち笑われるとか当たり前の人生よ! けんどおらは負けんかった! 強いわけじゃないけんど自分を守るためにケンカもした! 落ち込んでニートしよった事もあったけんど諦めんと勉強しち、地元の大手パソコンメーカーに就職する事んできた! 結局にゃドリーさん、人生ちゅうがは強い人間にはそれなりの壁が立ちはだかるっちゅう事! おらのこの話を聞いたら納得できるじゃろう」

ドリー 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

土佐犬民 「おぉん? ドリーさんどうかしたかよ? うつむいち。かすかに震えゆうにも見えるが・・・・。ひょっとしておらの話に感動して泣きゆうがかよ?」



























ドリー伊藤 「あーーっひゃっひゃっ!! 郷ひろむ!! 嘘でしょ!? イーッヒッヒッヒ!! おしっこ漏れる!!(机バンバン)」



























土佐犬民 「オイーーッ!! ドリー伊藤!! 許さんぞオイッ!! オイーーーーッ!!

ドリー 「いや、ごめんなさい! バカにしたつもりじゃないんです! あなた最高なの! 面白過ぎる! だから合格! 合格です!」

土佐犬民 「な、なんじゃと!? ちょっと待てい! 気持ちの整理がつかん! ぬぎぎぎ」

ドリー 「あ、そうか! なるほど、笑われるのが嫌だから本名は世に出さずに土佐犬民で行きたいって事なんだね。そうかそうか、なら仕方ない。もったいないけど土佐犬民でいいでしょう。そこはバックアップしますよ」

土佐犬民 「本当じゃろうにゃ!? たった今を持って“郷ひろむ”っち二度と言わん事を誓えるかよ!?」

ドリー 「いいでしょう! やりますよ。よし、じゃあ早速だけどこんな売り込み方はどう? 僕と郷・・・いや、土佐さんがバトルになるっていう。僕コメンテーターとかやってるんで、事あるごとに僕の発言に喧嘩を売って下さい。で“ドリーの発言にあの土佐犬民が噛みついた!”っていう見出しの記事を作るんで、それに僕も反論してバトルを大きくして、結果土佐さんが有名になると。要は世間にプロレスを仕掛けるんです」

土佐犬民 「いやいや、ちょっと待てや“あの土佐犬民”言うたっち世間は誰ぞそれ?っちなるじゃろうが」

ドリー 「それをゴリ押しって言うんです。芸能界で成功するには誰もが通る道ですよ」

土佐犬民 「いかんいかん、今時ゴリ押しっち悪印象になる原因じゃろうが」

ドリー 「うーん、じゃあ具体的に肩書を作っておくとかどう? そうだなぁ、一番無難なコラムニストとかエッセイストとか足のつきにくい業種ならデビューしやすいと思いますよ」

土佐犬民 「売れない物書きかよ、、、。妙にパッとせんにゃあ。そんながにマスコミが集まるかよ?」

ドリー 「じゃあ万が一マスコミが食いつかなかった時用に架空の媒体も用意しますよ。そこまでやれば十分でしょ?」

土佐犬民 「いや何ちゅうかにゃあ、おらの思い描く芸能活動とかけ離れちゅうがぜよ・・・・。もっとこう歌手とか、華々しいデビューの仕方があるろうが? なんでそんなワイドショータレントみたいなゲスい事をやらにゃいかんがぜよ?」

ドリー 「・・・・・・・・・・・・土佐さん」

土佐犬民 「おぉん?」

ドリー 「帰って」

土佐犬民 「・・・な、なぬ?」

ドリー 「あのさぁ、華々しくデビューしたいなんてプライドが高すぎる。 何かを得るには何かを犠牲にしなきゃ」

土佐犬民 「ぐぎぎぎ・・・。 ん? いや、ちょい待て! 一瞬論破されそうになったけんど、そこはおらの裁量で決めても構わんとこじゃろうが! 芸能界にどうしても入りたいわけじゃないっち最初に言うたろうが! おぉん!?」

ドリー 「あのね、ハッキリ言うけど根性が無い! 帰れ!」

土佐犬民 「な、何ぞその言い方は腹ん立つ!! ついさっきまで最高じゃとか抜かしよったクセにおまん、情緒不安定かよ!? あ、分かったぜよ。馬場ちゃんが言いよったがはこれやにゃ。おいドリー伊藤! おまん奇抜な事して自分を演出しゆうがじゃろ。その手には乗らんぞ! おぉん!?」

ドリー 「うるさいんだよ!! お前みたいな根性なしは何やっても通用しないんだよ! お前の代わりなんていくらでもいるんだよ! ゴタゴタ言ってないでさっさと帰れつってんのが分かんねえのかこの野郎ぉ!(机をひっくり返す)」

土佐犬民 「ぬおっ!! な、何しゆうがぞ、キチガイかおまん! まさか演技じゃないつか!? おおしゃ、ほんならやっちゃろうじゃいか! 誰が根性なしぞ! おぉん!? 出ちゃらあや! 出ちゃる! けんどどうなっても知らんきにゃ! おらは壊れたダンプカーじゃき、番組ブチ壊しちゃるぞ!」

ドリー 「(ニヤリ)じゃあ今度収録やってもらうよ! 逃げるなよ!」

土佐犬民 「だだ、誰が逃げるつか! ・・・許さんぞドリー! お蔵入りにしちゃる!」


こうしてドリーの手法にまんまとハマった土佐犬民は芸能人としてデビューすることとなる。

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