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胸毛ネットワークス

格闘家に関する余計なお世話なコラム

選手考察:マイケル・ペイジ編

2016-11-30 19:35:05 | 選手考察


ヒョロっとした体、相手を食ったような態度、派手な見せ技のようで実は緻密に計算された動き、そしてデビュー以来衝撃のフィニッシュシーンを目の当たりにする度に多くの人間がそれを感じたに違いない。“それ”とは第三のブラック――― つまりアンデウソン・シウバ、ジョン・ジョーンズに続く、三人目の天才黒人ファイターなのではないかと。二人に比べるとやや粗暴で田舎臭さは残るものの、余裕をかますスタイリッシュな試合内容は黒人種が一般的に抱く美的感覚に共通していると言える。

半身の構えから、殴りかかってきた相手よりひとつ早く踏み込んでの右ストレート、相手のタックルに合わせるために時に真上に飛び上がる膝蹴りなどお馴染みのカウンター能力は抜群で、それでいて寝技ではジェレミー・ホロウェイ戦で何気に難しい形から足首固めを極めており、それらの動きを見る限り天才と言っても過言ではない。しかしエヴァンゲリスタ・サイボーグにテイクダウンを奪われたシーン、フェルナンド・ゴンザレスにカウンター待ちを察しまれ攻めあぐむシーン、技を空振りした時に尻もちをつくシーン、立ちレスでややケージに押し込まれがちになったりといった場面がちらほら見られるのも事実で、未知数な部分も多い。

そして何より現時点においてビッグネームとの対戦がない。今後は組まれるであろうベラトールに移籍したローリー・マクドナルドとの戦いも含めて、果たして第三のブラックとして認知されるのか、正念場を迎えそうだ。

選手考察:ベン・アスクレン編

2012-08-14 22:05:16 | 選手考察


“ふてぶてしい”。アスクレンのMMAは日進月歩の現代MMAにおいて語られる技術論、そして彼の輝かしいレスリング゛の実績をこんな言葉で片付けてしまえそうなほど無骨である。ラウンド終了時には当然の如く上のポジションにいるわけだが、相手選手の“早くどけよ”という心の声が見ているこちらに聞こえてきそうなほどゆっくりと立ち上がり、だらだらと歩きながらコーナーに戻るそのさまは、休日に寝癖をつけたままのオッサンが時間を持て余してブラーッと部屋を移動するそれと変わらない。

だがそのふてぶてしさ、そして痛点が存在しないかのような驚異的な打たれ強さが、彼のレスラーとしての強さをMMAで十二分に発揮させ連勝街道を突っ走らせている。試合内容といえばスタンドでの動きはとても現代MMAで一団体のチャンピオン選手とは思えず、かといってグラウンドでも柔術的な動きは多少見せるものの試合の8割方は力ないパンチを打ち続けるのみ(本人は本気で殴っているのだろうが)。だがその度に毎回起こるブーイングの嵐の中、そしてUFCのディナ社長から『睡眠薬より効く』と揶揄されたほどのいわゆる“つまらない試合”を延々とやってのけ、おまけに試合後には観客への投げキッス。並大抵の神経ではない。だがそんな彼の勝ち続ける姿はまるで『プロとは魅せるもの』という一定数存在する巷の意見をあざ笑っているかのようである意味痛快にも見える。

大方の観客にとってアスクレンはもはやヒール中のヒールである。強すぎるがゆえに“どうやって彼を倒すのか”と対戦相手に期待を込めた視点で試合を見てしまうのだ。そうなると世界最高峰と呼ばれる選手達との絡みの期待が俄然湧いてくるのだが、ディナ社長との関係や2人の性格を考えると夢のまた夢で終わりそうな気配もある。だがこのままマイナー団体で勝ち星を積み重ね、いずれ伝説となるのがアスクレンらしいとも思うのである。


選手考察:ヨアキム・ハンセン編

2005-10-03 15:04:12 | 選手考察
一撃必殺の膝蹴り、強烈なパウンド。そんな対戦相手に恐怖感を覚えさせるような思い切りの良い攻撃に定評のあるハンセン。しかしその思い切りの良さの裏には単発になりがちで連携に乏しい動きも垣間見える。それは良く言えば正直、悪く言えばしたたかさがない。しかも、それは皮肉なことに自らのベースである寝技での攻防に見受けられる。

打撃やレスリング以上に技と技との連携による騙し合いが重要なポイントとなる寝技において、後先を考えるよりも一発のひらめきを重視するハンセンの動きはやや相手の罠にはまりやすい傾向がある。現時点で3敗、うち寝技での一本負けが2つという事実よりも最もそれを象徴する一戦がメティン・ヤクート戦である。キックボクサーのヤクートにあわや肩固めで一本取られそうになった場面はトップクラスの選手としてはいただけない。技術的に習得した寝技の動きに問題はないとしても先天的な意味で寝技に向いた選手というよりは手足の長さ、当て勘の良さ、思い切りの良さから、むしろ打撃向きのスキルを備えた選手であろうことは何よりも結果が証明している。

それらの動きに加え「作戦はあまり考えない」という本人のコメント通り、格下の選手にも動きを読まれて苦戦するような危なっかしい面も多々ある。しかしそんな大雑把な部分が思い切りの良さを呼び武器となり怖さとなり、このクラスで強豪と呼ばれるほどの結果を残してきた所以でもあるのだが。


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選手考察:ケビン・ランデルマン編

2005-06-30 18:22:16 | 選手考察
ミルコを倒した飛込み気味の左フックは決してラッキーパンチではない。あの左フックはニンジャをTKOに、桜庭もほぼダウンに追い込んでいるのである。奇しくも自身がリデルにKOされた同じ技なのだが、そのフックを研究したのか、抜群の身体能力もあいまって驚異的な技に仕立て上げてしまった。

スタミナに難があるので序盤だけの話とすれば、テイクダウンの攻防に関してはMMA界でトップに位置すると言っても過言ではない。しかしスタミナが切れることと下からの攻めを恐れてややパウンドに消極的な面や、上から極める技術も持っていない為にせっかくのレスリング能力を生かしきれていない。そして一旦下になってしまうと黒人選手によく見られる急激な気力の萎え(なえ)も隠せない。

それにしても前述のフックは並外れたスピードのタックルがあるからこそパンチだかタックルだか分からない怖さがある。そのように速いタックルを生かした打撃を考えていけば、ミルコを倒したようにまた打撃系選手をKOすることも不可能ではない。

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選手考察:ミルコ・クロコップ編

2005-06-22 14:59:29 | 選手考察
絵に描いたような神経質男である。試合中思うようにいかなかったり、挑発されるとイライラを隠せず大振りになりがちないただけない点もあるが、逆に徹底して自分の距離を保つ動きには抜群の勘の鋭さと時計のような正確さがあり、神経質ならではの鋭く過敏な反応が良い方にも悪い方にも表れている。

腰の強さや打撃スキルの高さは言うまでもなく、先手を取る頭の良さも申し分ないし寝技についても大きな穴だとは思わない。1つ他のトップクラスの選手と比較して問題があるとするなら“慢心癖”である。K-1に出ていた頃から勝ち続けると慢心してしまい最後の最後で足元をすくわれるという、そんな精神的に幼い部分がよく見られていた。PRIDEでのノゲイラ戦も慢心以外の何物でもない。勝てると踏んで完全に気を緩める悪い癖が出てしまった。

この選手は仮にトップに立ったとしても長期政権を築くのは難しいタイプではないか。頭が良いだけに強い刺激がないとやりがいを感じない筈だ。おそらくトップに立った時点で緊張の糸が切れてしまい他の分野で新たな目標を探す、そんな展開が目に浮かんでくるし、またそれが似合っている。


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