
ヒョロっとした体、相手を食ったような態度、派手な見せ技のようで実は緻密に計算された動き、そしてデビュー以来衝撃のフィニッシュシーンを目の当たりにする度に多くの人間がそれを感じたに違いない。“それ”とは第三のブラック――― つまりアンデウソン・シウバ、ジョン・ジョーンズに続く、三人目の天才黒人ファイターなのではないかと。二人に比べるとやや粗暴で田舎臭さは残るものの、余裕をかますスタイリッシュな試合内容は黒人種が一般的に抱く美的感覚に共通していると言える。
半身の構えから、殴りかかってきた相手よりひとつ早く踏み込んでの右ストレート、相手のタックルに合わせるために時に真上に飛び上がる膝蹴りなどお馴染みのカウンター能力は抜群で、それでいて寝技ではジェレミー・ホロウェイ戦で何気に難しい形から足首固めを極めており、それらの動きを見る限り天才と言っても過言ではない。しかしエヴァンゲリスタ・サイボーグにテイクダウンを奪われたシーン、フェルナンド・ゴンザレスにカウンター待ちを察しまれ攻めあぐむシーン、技を空振りした時に尻もちをつくシーン、立ちレスでややケージに押し込まれがちになったりといった場面がちらほら見られるのも事実で、未知数な部分も多い。
そして何より現時点においてビッグネームとの対戦がない。今後は組まれるであろうベラトールに移籍したローリー・マクドナルドとの戦いも含めて、果たして第三のブラックとして認知されるのか、正念場を迎えそうだ。