「あきらめる」は本来悪い意味ではない。元は仏教用語。「あきらかにする」「あきらかに見る」と言うこと。
物事をあきらかに見、本質をあきらかにし、それが本当に今、自分に必要かどうか、見分ける。
あきらめる のも あきらめない のも どちらも大切。
あきらめたから、生きられた 武智 三繁
37日間、俺はずっと、何かをあきらめ続けた
エンジンをあきらめた
救助されることをあきらめた
食べ物をあきらめた
そして、水をあきらめた
どんどん、どんどん、自分に必要なものをあきらめていかなくちゃならなかった
図書館のHPで棚に在庫有りを確認して行ったのに、目的の本は誰かの手にあったのでしょう。
仕方ないとあきらめて、その同じ棚を眺めていると、この本のタイトルが目に止まりました。
頁を繰り、目を通してみると、
あぁ!これ、何年前だろう?ニュースになってた。漁船にたしか1人で漂流してたのがあったっけ?
折角だから、借りてみよう。
読み始めたらノンストップでした。
まるで近所に散歩にでも出掛けるようなノリで港を出た船は、沿岸の穏やかな海で漁をするような小さな船。
GPSも無線も付いていない、1人で一本釣りをし、中の生簀に釣った魚を入れるくらいの小さな船。
早朝に出港したあと、お昼ごろにはエンジンが不具合で停止してしまいます。。。
最善を尽くしてみるが、エンジンは調子を取り戻さず。
まぁ、仕方ない。明日またすればいいか!これ以上焦って何かするより、ずっといい。
そんな日を4日過ごし、5日目に携帯電話から造船所の人にエンジンを修理する方法を尋ねます。
生還した後、この時に、どうして救助の要請をしなかったのか、海上保安庁の方から小言を頂いたそうです。
その後、連絡が取れなくなったため、造船所の職員が漁協に連絡を入れ、海上保安庁に連絡が入ります。
シーアンカーと言うパラシュートのようなものを海中に広げて、船体の安定確保、
それで、ある程度流されないようにすることは可能ですが、錨ではないので全く流されないわけではない。
バッテリーはあがり、セルも回らなくなりお手上げ状態。
GPSもない、無線もない、携帯電話はあっても海上は圏外。
長崎の小さな島を出港したのが7月20日、午前4時ごろ。
助かった後に調べると、一度だけ造船所にかけた時の発信の電波の基地局は鹿児島だったそうです。
5日間で、かなり流されていたのですね。
東シナ海を南下して鹿児島の沖、そこから黒潮に乗って、宮崎沖、高知沖、和歌山沖と流されていきます。
真夏の広大な太平洋上に流された小さな漁船を探すのは砂浜で米粒一つを探すような作業です。
結局、造船所の方がした通報で、繁栄丸を見つけることは出来なかったのです。
遠洋漁業を想定してる船ではありません。
食糧、水、全くないわけではありませんが、そんなに載せているわけでもありません。
ただ、親戚の方に常々言われていた…
海の上では何があるかわからない、邪魔になると思っても水だけは積んでおけ。
いざというとき生死を決めるのは水
…この言葉を守っていて、水は、20リットルのポリタンクを2つ積んでいた。
数日分の缶詰やせんべい、インスタント食品は買ってきたまま積んであった。
とは言っても、当たり前ですが、次第に尽きていくのです。
億万長者になった状態を想像しろと言われてもピンときません。
また、絶望しそうな状況下を想像しろと言われても、未体験のことを想像するのは難しい…。
茫漠とした海が360度、延々と広がり、その上には大きく開けた空。
ウミガメやアホウドリとは遭遇できても見渡す限り1人っきり。真夏の炎天下。台風にも襲われます。
もう想像を超えて過酷で大変だったはず。。。
けれど、発想の転換と言うか、アイデアと言うか、過酷な状況を僅かでも楽しもうとする感覚と言えばいいのか、、、
夢中で読みました。
助かったところでは、うれし泣きをしてしまいました。
救助機が飛び、発見現場から病院へ向かう途中、武智さんは同乗して来ていた岩瀬医師に問いかけます。
「先生、人間は死ぬときに苦しむのものなんですか。
水を飲めなくて死ぬときは、やっぱり苦しいものなんだろうか」
この言葉に岩瀬医師は、武智さんの37日間を覗き込まされたような気がした。とありました。
武智さんが何と向き合って、洋上の日々を過ごしていたのかを。
岩瀬医師はこう答えました。
「大丈夫だよ、武智さん。そういうときはまず意識がなくなるはずだから。
すーっと眠るように死んでいったと思うよ。」
37日間、俺はずっと、何かをあきらめ続けた
エンジンをあきらめた
救助されることをあきらめた
食べ物をあきらめた
そして、水をあきらめた
どんどん、どんどん、自分に必要なものをあきらめていかなくちゃならなかった
…中略…
俺は頑張って生き延びたわけじゃないんだ。…頑張り続けるのはしんどいもの。
頑張り続けていたら、きっとどこかで、息切れしちゃってたと思う。…
…
だから俺は、辛い目にあってる人に言ってやりたい。
この後に続く言葉がなんとも優しい。。。
けれど、その言葉は、ここに書くのはやめておきます。
なぜなら、読んでほしいので…
よろしければ、ご一読ください。
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武智さんを発見したのは、マグロ延縄漁船の末広丸。
奇跡が起きたとしか言いようがありません!
以前読んだ本、「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ 」で、読んでいて、ちょっとだけ知識があったのですが、
漁場を見つけていて、そこへ急いで向かっていく最中、GPSのない武智さんの船の位置を発信し続けるために、
4、5時間そこにい続けることがどれだけの負担になるか。
もちろん、武智さん自身もそれをわかっている。だから、漁に行ってもらわないと申し訳ないって思っていた。
だけど、離れてしまえば、何の目印もない海の上、繁栄丸の位置を発信し続けないと、またこの船は流される。
海の怖さを十分に知っているからこそ、放っておけない。
末広丸船長はじめ乗組員の人たちの心意気も感じられてよかったです。