昭和から平成に年号が変わる頃
中古車における走行距離戻し、いわゆるメーター改ざんは
ディーラー系中古車センターにおいてもごく日常的に行われていたことを知っています。
当時、新車ディーラーの営業部から中古車部に配属された私は
初老の前任者から「メーター巻戻しは(社内)工場に頼めばよい」と引き継ぎを受けましたし
工場が忙しい時は取引先の板金工場でもやってくれると言われたものです。
その後、細いマイナスドライバーを使って、当時当たり前だった
アナログメーターの巻戻しの仕方を教わり自分でできるようにさえなりました。
この悪事が最初に警察の摘発(詐欺罪)を受けたのは
確か日本海地方の都市にあるマツダ系ディーラーで
工場の現場に何の整備をするかを伝える作業指示書に
メーター巻き戻しの記載があったことが証拠になったと聞き及ぶにつけ
それ以降、文章による作業依頼はなくすとともに
少なくても売ったお客様に発見されないように、今まで以上に
車内の整備記録簿、オイル交換シールなどを注意深く破棄するようになりました。
つまりは、悪いから止めようではなく
発見されないよう、より注意を払うようになっただけだったのは
当時、7万㌔を超える距離ではとても売りづらく、一方、4万㌔以内はとてもよく売れ
売上数字を上げるには、3万〇千㌔にする必要があったからです。
この悪しき習慣を変えたのは、私が知る限り
業者オークションの普及によるところが大きかったはずです。
これは、出品される車の走行距離の記録を保存することによって
少なくてもオークションを経由するたびの距離の積算を把握するもので
「走行距離管理システム」と呼ばれました。
その後、車検証の備考欄にも
車検時の整備記録簿の走行距離が記載されるようになり
オークションを経由しない車の距離の積算推移も把握できるようになりました。
個人的にはデジタルメーターの採用が進むと
こうした行為そのものができなくなるかもしれないと思っていたのですが
なんのことはない、もしかした今でもヤフーオークションには
「走行距離の設定いたします」の出品がされていて
注意書きにある「新品メーターに交換する際に現在のメーター表示に設定します」ではなく
距離の改ざんに利用されているのかもしれません。
その後、従来のアナログメーターはマイナスドライバーが入れ難くなったとはいえ
リサイクル部品の入手が容易になったことにより
距離の少ない中古メーターに交換するという手口が加わって
今でも、特にヤフオクに出品されている「距離不明」車の全部、またはほとんどが
未だに間違いなく距離が戻されていると信じて疑いません。
事実、こうしたクルマを購入しての被害の相談は
ここ2、3年の間でも1人2人ではありませんでした。
こうしたメーター改ざんによる巻戻しの旨味を知って
シコタマ儲けている輩が捕まったのならいざ知らず、またはディーラー勤務などのサラリーマンで
そうした危険をおかしたところで自分のふところと無関係ならいざ知らず
簡単にぼろ儲けできる道からたやすく足を洗えるはずもないのです。
もちろん、私自身はもう何年も前にこの悪事から足を洗っていたのは
消費者保護の時流が強まる中、かつてはお互いが話し合ってお詫び+若干の金銭で解決できたものが
お客様がまず相談に駆け込むことが多くなったせいもあるのでしょう
なんらかの行政機関が絡んで解決がややこしくなったためであると同時に
なによりも、それをやった事実がその車が現役であるうちはずっと尾を引いて
何年か後に発覚することがあることを認識したためで、皮肉にも今回の事件はまさに
恐れていた通りのことが現実になってしまったのです。
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