Xデーの夜をどう過ごしたか、全然覚えていません。
すぐに続いて、今後同居する義母宅へ私達夫婦の引っ越しが待っていますし、それが終わったら
親戚に売却した私の自宅への二女夫婦の引っ越しも手伝わなければなりません。
まさに“ところてん式”に2つの引っ越しを、それも、経費節約のために
業者を頼まず全部自分たちで、ほぼ1カ月以内に終わらせないと
ゆっくりと年が越せなくなってしまうのです。
こうして、何かに追いかけられるような急いた気持ちではあっても、店舗の閉店もこれらの引っ越しも
所詮、倒産から自己破産に至る行程の最初の一歩に付随する周辺作業に過ぎないのですから
過去の思い出や感慨に浸る余裕などなかったのでしょう。
閉店の翌日の月曜日、朝一で電気を止める作業に立ち会い
同時に、地主立ち会いの下で店舗の返却と、立ち退きに伴う残り20万円の現金を受け取って
これで完全に商売の幕を下ろす作業は終わりました。
この日まで猶予をお願いした銀行を初めとしたいくつかの踏み倒し先から電話が入れば
「お掛けになった電話は先方の都合により繋がりません」と聞くことになるはずで
そんな方々が様子を見に来るといけないので早々と退散したことはもちろんのことです。
特に銀行は、僅か100mほどしか離れていなかったのですから。
帰宅途中でS先生の事務所に寄ってこの20万円を預けましたが
後日、これが管財事件としての予納金に充てられることになりました。
振り返ると、実行する前は散々悩んだり苦しんだりしても、イザ、一歩を踏み出すと
肩透かしを食ったように呆気ないものだったことは以前から聞いていた話そのものでした。