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(実録)会社倒産&自己破産のススメ

コトの顛末と関連する法律・理論をお伝えすることで、この道をお考えの方々の心の負担が軽くなるよう願っています。

自転車操業も免責不許可事由に当てはまる。

2011-10-14 | 【倒産、破産に関する一般的な話】

個人破産の目的はただひとつ、法律に則り
裁判所による免責を獲得して借金をチャラにしてもらうことです。

 多額の借金が0になり、その上で人生を再スタートすることができるのですが
破産という烙印が押されるのですから7~10年間は借金をすることができません。

つまり、借金をせずにやり直しなさい、ということです。

ところが、裁判所が誰にでも無条件で免責を許可してくれるわけではなく
もし免責不許可事由があると、破産状態は認められたのに免責が認められない
つまり借金がチャラにならないという不幸な事態に陥ります。

「借りて返す」または「返して借りる」状態をペダルをこぎ続けなければ倒れてしまう
自転車の操作に例えて自転車操業と呼びますが、これは“すでに返済不能の状態”と言われ
借金をチャラにする免責の許可を受ける際の免責不許可事由の一つに該当すると言われています。

『すでに返済不能の状態なのに、そうでないように偽り、債権者を信用させて
さらに金銭を借り入れたり、クレジットを利用して商品を購入したとき』

確かに、会社が倒産したり個人が多重債務に陥るパターンではありますが
なぜ返すのに借りたり、返したのにまた借りなくてはならないのでしょうか?

それは日常生活における1ヶ月のお金の流れを考えてみれば簡単です。

お給料が入り、まず何にも先に生きていくために必要な生活費を確保します。

そして、その残りで返済をしなくてはならない訳ですが、生活費の除いた残りのお金だけでは
返済額に足らないから借り入れをしなければならないのです。

つまり、ご自分のお給料ではもう返済はできないという証拠であるとともに
借金の額は増えて行くことになります。

これを「返済不能の状態」と言いますが
借りて返してということを繰り返して見た目では返済が遅れていないので
「返済不能」だと認識できていない方も少なくありません。

このことに気づかずズルズルと同じことを繰り返していることが大問題なのです。

忘れてならないのは高い金利でなければ借りられない信用状況に
徐々に格下げされていくことで、収入に対して借金総額が多くなるほど
返済不能の危険率が上がることを貸金業者は知っているのですから
同じことを繰り返すうちに高利になり、返済の総額は膨大な額になっていくのです。

この「自転車操業」という状態は上記の免責不許可事由に当てはまります。

「借りて返す」もしくは「返してまた借りる」訳ですから
『すでに返済不能の状態』とされているのに『さらに金銭を借り入れた』のですから。

また、保証人がついているなどの理由から一部の会社だけに返していたら
『破産の原因があるのに、特定の債権者に弁済期前に債務を弁済したとき』に
該当しますので、同時に二つの免責不許可事由に該当することにもなります。

おそらくこのようなことをしてしまう方のほとんどが
「何とかして遅れないように必死だった」だけだと思います。

何とか返済をしなければという責任感から行ってしまったのだと思います。

しかし、それが免責不許可事由に該当してしまうのですから
まだしていない方はしなくても済むように早期に対策を考える必要がありますし
してしまった方もこれ以上繰り返すことだけは止めなくてはなりません、と
弁護士などの専門家は言いますが…。

 

 

 

 


借りたものを返さなくてよくなる免責制度に対する学者の理屈

2011-10-10 | 【倒産、破産に関する一般的な話】

免責を申し立てている私が不思議に思うのもヘンですが
借りたものを返さなくてよくなる理屈とは何なのでしょう。

元になる破産法を研究する学者さんの理屈、じゃなく理論を以下に紹介します。

一般的に、借りたお金を借りた者(債務者)は
現在の財産だけでなく将来取得する財産をもってでも弁済しなければならないはずです。

ただし、どちらの財産がなくても、債務者を奴隷として売ったり
強制労働に服させるようなこと(人的執行)は現在ではまったく認められていません。

また、財産があるか否かにかかわらず
貸した側(債権者)は借りた側(債務者)に対して弁済を要求することができます。

債務者はそれに誠実に対応しなければならず、労働により収入を得ることができる限り
それによって弁済しなければなりません。

やや誇張した表現で言えば
「債務者は死ぬまで働いて債務の弁済に務めなければならない」と言い換えることができます。

にも拘らず、なぜ免責制度があるのでしょうか。

債務者がなんらかの事情で多額の債務を負った場合
つまり、一生働いても弁済できないほどの多額の債務を負った場合
この考え方を厳格に適用すれば債務者はどんなに働いても一生貧しい生活を送ることになってしまいます。

法律上、勤労収入の3/4は差押禁止財産となりますがその上限は33万円で
それを越える金額はすべて債権者により差し押さえが可能ですので、
債務者は33万円以内で生活しなければならないことになります。

もし、その状態が死ぬまで続くとなると、働くことにより生活が向上するという希望を失い
働く意欲も失うことになってしまうでしょう。

そこで、不誠実でない債務者を債務の重圧から解放して
「人間に値する生活」を営む機会を与えるために破産手続において破産財団(残った財産)では
弁済できなかった債務については破産者の弁済責任を免除することとされ
これが破産における免責制度です。

免責制度は、次の理由により、社会にとっても必要なこととされています。
 
● 憲法13条により国家は個人の幸福を保障するために存在するとされています。
免責制度は、その理念に基づく個人の救済のための制度であると理解すべきです。

● 債務の返済に追われた貧困状態にある者の生産性は低くならざるを得ません。
 社会にとっては、労働生産性の低下自体がすでに損失であって
 誘惑に負けて多重債務者になっても
債務から解放されて生産性の高い労働により社会に貢献してもらわなければなりません。
 
● 債務者の子供が貧困のために教育の機会を失うことは
社会全体の垂直移動を阻害し、ひいては社会の硬直化を招くことに繋がります。

また他方では、次のようなことも述べられています。

● もし免責を認めないとすれば、債務者は概して資産状態の悪化を隠し
最悪の事態にまで持ちこむ結果となって却って債権者を害する場合が少なくないため
免責は債権者にとっても最悪の事態を避けることになります。

● 免責によって侵害される債権は債務者が無資力であるから
少くともその当時においては実質的に価値の乏しいものであるということができ
債権者の犠牲はさほど大きいものとは言えません。

そして、多重債務者については

ローンやクレジットという消費者信用制度は今や経済制度の不可欠な要素になりました。

同時に、利用する一定割合の人間が弁済能力を超えて消費者信用を受けることは
不可避的な状況となっています。

もちろん、多重債務者を責め、貧乏に耐えて債務を弁済することを要求することはできます。

しかし、通常であれば冷静な判断力を有する者も
困窮すればそれを失いやすいことは経験が教えてくれています。

のみならず、我々の社会に誘惑に負けやすい人間が一定の割合でいることも
認めなければなりません。

多重債務に陥った者も社会の一員であり
明日は暮らしがよくなるという希望をもって働くことができるようにすべきです。

こうしたことを考慮すれば
破産免責制度は消費者信用制度から生ずる毒素の解毒剤であると言えます。

それはまた、消費者信用機関の過剰融資を抑制する機能も有するので
消費者信用制度がもたらす病弊の予防剤としての役目も併せ持ちます。

こうしたことから、免責制度は
消費信用制度が発達した経済社会にとって有益で必要な制度と言えます。

そして、誠実性が重要な要素になるようです。

人間相互の協力と信頼は、われわれの社会の基本原則であり
経済社会は債務が履行されることを大前提に運営されていて
この大前提が崩れると経済は混乱します。

免責制度は、この大前提の例外をなすものであり
債権者の犠牲の上に債務者を更生させるものであるという側面は
現行破産法が免責制度を定めていることを前提にしても否定できません。

その意味で、免責は誠実な債務者に与えられる特典であり安易な免責は認めるべきではありません。

一方、免責不許可事由は、債務者の不誠実性を示すものということができます。

したがって、免責を得ることは不誠実でない債務者に認められた更生のための権利といえ
免責不許可事由に該当する場合を限定し、債務者の更生のために積極的に免責を認めるべきです。

難しい話はともあれ、法律として存在するのですから
このありがたい制度を利用しない手はないのですが
私が卑屈になっているためでしょう、部分的に上から目線を感じてなりません。

とは言え、我慢我慢の日を続けながら、私が誠実か不誠実かの判断を待ちます。