木・うんちく

木材と人間の関わりを考えて思うままに・・・

269.割れている木材の方が割れていない木材よりも強度がある(花博・政府館の破壊試験)

2024-04-15 21:17:03 | ウッドデッキ
今から35年前、大阪で開催された花博の時に政府間の構造物を金属と間伐材の混合材で作ることになり、
その間伐材を弊社が納入したことがあります。


当時の建設省の担当の方が何人か来られて打ち合わせをしましたが、
曰く「材料にひび割れがあってはいけない。」
「芯のある間伐材は乾燥すれば必ず割れます。割れない材料を納入するのは不可能です。」
と説明をしても納得されませんでした。
「それでは私の言っていることが間違いなければ政府館を作るのはあきらめるのですか。」
と質問しましたが、私の説明は信用されず、
京都大学の木材担当教授に確認されて、同じ答えが返ってきたらしく。次のようになりました

「割れるとどれぐらいの強度が落ちるのか確認する」



かくて、ひび割れはないが乾燥していない材料とひび割れはあるが乾燥している材料、
それぞれのサンプルを作って工業試験場で破壊試験をしたところ・・・・・。結果は

★★乾燥してひび割れの入った材料の方が、ひび割れがない未乾燥の木材よりも強度がある★★
(木は乾燥すると強度がアップしますので)
と言うことが判明し、納入される間伐材はひび割れがいくらあってもかまわない(その方が強度が上がる)。
となり、これほど検査が楽な材料納材はありませんでした。



当時、このように実際に破壊試験をして本当かどうか確認すると言うことを判断される建設省の担当官の判断に驚くとともに、
木材以外の建築材は、このようにしてシェアを伸ばしてきたんだろうなと感じたことを思い出します。
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268.人工木材の最大の欠点がJISの規格にない理由(生成AIの回答)

2024-02-15 09:22:48 | ウッドデッキ
人工木材のJIS規格には最大の欠点である熱膨張率が記載されていないのが不思議でした。
それをどこを調べても明確に分かるものがなかったので、生成AIに聞いてみました。
すると何とも適格な答えが返ってきました。

曰く

一般的に、人工木材の熱膨張率は、温度変化に伴ってどれだけ膨張するかを示す重要な指標です。
しかし、規格策定時には以下のような理由から熱膨張率の具体的な値を規定しなかった可能性があります。
1. 材料の多様性: 人工木材はさまざまな材料の組み合わせで作られており、
木質材料とプラスチックの種類や比率が異なります。そのため、
一律の熱膨張率を規定するのは難しい場合があります。

2. 応用範囲の広さ: 人工木材は建築材料や家具、床材など幅広い用途で使用されます。
異なる用途に合わせて熱膨張率を規定することは複雑であり、
規格策定者は一般的な指針を示すことに重点を置いた可能性があります。

3. 技術の進歩: 規格策定時点では最新の技術や材料の研究成果が反映されていないことがあります。
熱膨張率の詳細な研究が進む中で、将来的に規格が改訂される可能性があります。
したがって、人工木材の熱膨張率については、製造業者や設計者が具体的なプロジェクトに合わせて適切な材料を選定する際に考慮すべき要因として、個別に評価されることが一般的です。

驚きました。こんな立派な答えが出てくるとは思いませんでした。
しかし、この内容はまとめると「人工木材の熱膨張率はひどくて、さらにメーカーによってもその差が大きくてJISで規程すると、とんでもないクレームになる可能性が高いので、規程するのはやめた。また将来改善される可能性があるので、それに期待する。」と言うことになります。
なるほど人工木材は、今は不完全な商品であるが、将来良くなるかもしれないと言うことなんだと言うことが良く分かります。

凄い。ここまでの回答ができる生成AIに驚きました。
こんなことは、調べてもどこにも書いていなかったのに、推測して、ここまで書けるとは。
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267.人工木材のJIS規格

2023-12-28 15:31:55 | ウッドデッキ
人工木材にJISの規格があります。
その規格自体は、人工木材のメーカーが集まってその規格を作ったようなのですが、
内容を見て驚きました。
人工木材の最大の欠点「熱で膨張する」と言うことを数字で表した熱膨張率がJIS規格のどこを見ても記載がないのです。
・・・と言うことは、例えば、4mの床板を取り付けた時に、となりの床板とどれぐらいの隙間をあける必要があるのかが分かりません。

どうも推測するに、
■熱膨張率を入れるとあまりにひどい数値なのが分かってしまうのであえて入れない。
■メーカーによって熱膨張率の差が大きく、下手に入れるとJISの規格に通らないと言うメーカーが続出する。
と言うことかもしれません。しかしこれは私の推測なので、JIS規格からあえて一番重要な熱膨張率を外した理由をご存じの方はお教え下さい。




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266.全く腐っていない43年前の木製フェンス

2023-09-15 09:54:45 | ウッドデッキ


これは43年前に弊社が施工した住宅のフェンス部材です。
この材を下200mmは地面に埋めてフェンスにしていたのですが、一部壊れたので外してきました。
木自体は地面に埋まっていた部分も含めてどこも全く腐っていません。
壊れた理由は一緒に写っているメッキボルトが腐食してちぎれてしまったからです。



これが現場で実際に設置されている状況です(木材にとってはかなり過酷な環境と言えます)。


これを製作した43年前はCCAと言う安全で強力な加圧注入防腐処理薬剤があったので、
この薬剤で処理すると信じられないぐらい耐久性がありました。
色が緑色なのは薬剤の主成分の銅の発色ですが、これが43年経過しても色を保っていると言うことは
薬剤が流脱していないと言うことになり、薬剤が流脱しないので耐久性が保たれると言うことになります。

この薬剤はJASの規格にありますし使用するのは全く問題はないものの、今は防腐処理工場では使ってはいません。
理由はこの薬剤は木に定着している間は世界で一番安全と言われているのですが、
燃やすと六価クロムとヒ素が出ますので、廃棄時は燃やさずに埋める必要があるから・・・だと言われていますが、
実際の理由は、工場処理する時に薬剤を外部に流していはいけないと言う法律ができたので(当たり前ですが)、
そのコストのアップを嫌って、この薬剤の使用をやめたのだと処理工場の担当者から聞いたことがあります。

アメリカやカナダであれば、発注者も施工者も設計者も木材知識があるので、場所に応じて、
この薬剤は今でも使われているのですが、日本の場合は、アメリカやカナダでは当たり前の木材知識は誰も持っておらず、
木材や木材の代りに使う人工木材も間違えた使い方をよくされています。

日本とアメリカ・カナダを比較した時に、木材に対する知識の差がかなり大きく、その根本の原因は
大学の工学部建築学科には、木材の講座がなく、
設計士の方も施工の方も正しい木材知識を得る機会がないからではないかと思います。
結果、木材の使い方を間違えて失敗されたり、その反動で、木材は使わない方向に行く傾向があります。
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265.川崎市の小学校プールの水締め忘れ事件と我が社のトラブル報告

2023-09-11 16:13:41 | ウッドデッキ
川崎市の小学校のプールで水の栓を締め忘れたために190万円の損害が出て、
それを校長と締め忘れた先生の二人で半額の95万円を自腹で負担すると言うことが話題になっています。

弊社もメーカーで、さらに別注も多く手掛けるので、注意はしていても、間違いの発生は皆無ではありません。
間違いが発生した時には関係者が社員と役員全員にクレーム報告のメールを流すルールになっています。
これはトラブルの金額の大小は関係なく、お客様からのクレームなり、間違いの指摘があれば、必ず全員に同時にメールを送るようになっています。
記載するルールは、事実をそのまま記載することと、トラブルに関係した者の名前は上司であろうと役員であろうと遠慮せずに実名で書くことが基本となっています(そうしないと本当の原因が分かりません)。
また、トラブルの発生の直接的な原因と、それを引き起こした根本的な原因の二つを書くようになっています。
しかし、若い社員が書いたメールでは、直接的な原因は書けますが、根本的な原因は分からないことが多いので、原因分析が間違えていると思う場合は、その報告メールを見た社員が、補足の説明メールを流すようにしています。

さて、話は戻って、今回のプールの栓を締め忘れたことについて、ネットの情報を元に弊社の中でトラブル報告が廻るとすると次のようになります。

■発生日時:2023/05/17
■トラブル内容:A教諭がプールに注水して、その後、注水を止めたつもりが、電源スイッチが切られていたため注水が止まらなくなって、5日後にB用務員が気づくまで水が垂れ流し状態になった。
A教諭がプールに注水のスイッチを入れた時に、ろ過装置のスイッチも間違えて入れてしまい。そのために非常ベルが鳴った。その非常ベルを止めるために電源スイッチをオフにした。注水が完了してから、注水のスイッチをオフにしたが、この時に電源スイッチがオフになっていたため注水スイッチそのものが有効になっておらず、注水が解除されないままになってしまった。
■損害金額予想:約190万円
■直接的な原因:A教諭が水を止めた時に、電源スイッチを切っていたら、注水を止めることができないと言う知識がなかったこと。
■根本的な原因:注水時のマニュアルがないこと。ブール管理者に対する作業教育がされていないこと。電源スイッチが切れていると、注水はされるのに、水を止めることはできないと言う装置設計そのものに問題があること。
注水を始める・止めると言う作業について、他の者が確認する2重チェックのシステムが作られていないこと。
■今後の対策:作業マニュアルを教育委員会が中心になって作成すること。川崎市建設部は電源スイッチがオフになっていると、止水ができないと言うシステムの変更を検討すること。
注水・止水について、別の者が正しく作動しているかを確認する2重チェックシステムを各校長が指導して構築すること。

これが弊社の場合に同じことが発生した場合のトラブル報告書になります。
我が社の場合、トラブルやクレームが起きた時に一番重要視されるのは直接的な原因ではなく、根本的な原因です(そうでないと同じ間違いが何度も発生することになります)。
そうすると、今回の場合、最も責任があると判断するのは、マニュアルや2重チェック体制を何ら指導していなかった教育委員会と、この電源スイッチが切られると止水が効かなくて水が出したままになると言う欠陥システムの設計を承認した川崎市建設部と言うことになります。

私が不思議なのは、今回のように直接的な原因も根本的な原因も明確になっていることについて、すべての責任を現場に押し付けて、根本的な原因も究明せず、またその解決策も考えようとしないことです。
まともな民間の会社であれば考えられないことです。
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