県庁あたりからは近いので迫力満点
奈良の冬の風物詩、若草山焼きが今年2018年は1月27日に行われます。打ち上げ花火と真っ赤に燃える山が、夜空のキャンバスにとても美しく映えます。どこから見るかでその表情が大きく変わるため、年ごとに場所を変えて楽しむ人も少なくありません。近年は移り映えの見事さから全国からカメラファンも集まってきます。そんな冬の奈良の一大イベントの魅力を探ってみたいと思います。
若草山の山頂付近
若草山は、東大寺の奥にそびえる標高342mの山で、芝生に覆われていることがよく知られています。春秋の季節の良い頃には、ピクニック気分で弁当を広げる人たちも大勢います。鹿が芝生を食べるため、常に一定の高さに刈り揃えられていて美しいのです。
山焼きはこの芝生に点火して、若草山全体を焼きます。幕末にはすでに行われていたようですが、起源については諸説あります。山頂にある鶯塚古墳の霊魂を鎮める祭礼、若草山を焼かなければよくないことが起こるという迷信に対し放火が相次いだことへの対応、春の芽生えをよくするための原始的な野焼き、等々です。
若草山の麓から打ち上げられる花火
山焼き点火前の打ち上げ花火も大きなお楽しみです。点火前の露払いといった趣を感じさせ、花火の音が点火に向けたカウントダウンのように聞こえます。
真っ赤に燃えた山と打ち上げられた花火が同時に写っている写真を見たことがある人も多いと思いますが、実際は同時には見えません。花火は点火後に打ち上げられることはないためです。
撮影テクニックとして、数十分間シャッターを開けたままにしておくことで、長時間の映像を一枚の写真に集約することができます。しかし場所取り、どの花火を狙うか、カメラぶれ対策など、高度なテクニックが必要で、きれいな写真を撮るのはとても難しいそうです。
【奈良県観光公式サイトの画像】 山焼と打ち上げ花火の写真
山焼きは総勢300人の消防団員が参加して行われます。最初の点火から完全に消化するまでは、その時の天候や芝の状態に左右されますが、おおむね30分以上かかります。しかし最も美しく見える山全体が燃えている状態は、ほんの数分しかありません。風向きによっては立ち込めた煙で炎が見えにくい場合もあります。美しく見える状態が続くかは本当に運次第です。
リスクは大きいですが、山全体が赤く染まる姿は本当に迫力があって、かつ幻想的です。またその状態が数分間しか続かないことから、はかなくもあります。山へ点火することでは同じ京都の五山送り火とは対照的に、炎のモチーフがとても大きいことが、大きな空を借景にできる奈良の魅力を活かしていると言えます。
鑑賞スポットとして近いところでは、障害物のない奈良県庁の屋上がベストです。しかし250名限定のプラチナ・チケットです。興福寺や県庁前の登大路からが一般的ですが、距離が近いため数メートルの違いで信号が邪魔になって見えにくいといったことも起こりえます。しかし地響きするほどの花火の音や、延焼を心配するほどの炎の迫力が味わえます。
少し離れたところでは、平城宮跡と西ノ京駅西側の大池付近が著名です。距離があるので炎や煙が漠然としか見えず、赤く染まった山全体が綺麗に見えます。山火事を心配してハラハラするようなことはありません。また朱雀門や薬師寺の塔の奥に山焼きが見えることも、奈良らしさを一層感じさせます。初めての場合は失敗することがないこともあり、少し離れた方がおすすめです。
【奈良県庁】 若草山焼き当日の県庁舎屋上開放について
山焼きと同じ日に、春日大社の境内で「大とんど」が行われます。正月のしめ縄や古いお守り・お札を焼くことで一年の無病息災を祈ります。奈良の街にとって、この日はとても大切な祈りの日なのです。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
奈良公園の鹿を保護・管理する愛護会が鹿のエピソードを存分に披露
若草山(奈良県サイト)
http://www.pref.nara.jp/6553.htm
有料エリア営業期間:3月第3土曜日~12月第2日曜日
若草山焼き(奈良県観光公式サイト)
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/02nature/01mountain/01north_area/wakakusayama/event/qmtofgu2qk/
会期:2018年1月27日(毎年1月第4土曜日開催)
※雨天・強風など点火不可能な場合は1週間後に順延
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