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金戒光明寺・京都 ~江戸時代には徳川の要塞だった

2018年01月17日 | お寺・神社・特別公開


150年後の現代でも掲げられている

金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)は、鴨川の東岸、岡崎の平安神宮の北側にある寺です。法然が開いた浄土宗の中でも重要な寺院であり、徳川幕府が知恩院と並んで京都の重要拠点と位置付けていました。そのため幕末に京都の治安維持のために派遣された会津藩が本拠地としたことでよく知られています。

高台にあることから京都市内の眺めは抜群です。寺というよりもまるで城のような石垣があります。そうした寺らしくない造りになったのも、江戸時代の京都の歴史と大きな関係があるのです。

京都では「くろだにさん」という通称の方が親しまれています。寺の公式サイトのURLも”kurodani”を使っています。「だに」と濁って発音する方が、京都のことをよく知っている人だと認識されます。関西の固有名詞は難読が多くて大変です。

寺は、浄土宗の開祖・法然が修行していた比叡山中の「黒谷」から都に向かって山を下りた際に、現在地に草案を結んだのが始まりとされています。この地で「光明」が照らしたことから、寺名に「光明」を取り入れました。当初は比叡山中と区別するために「新黒谷」と呼ばれていましたが、いつの日か「黒谷」とだけ呼ばれるようになりました。

この地は京都市内の東端の高台にあるため、西方の嵐山のあたりに沈む夕日がよく見えます。高台の三重塔は西向きに建てられており、「南無阿弥陀仏」と唱えると誰でも西方の極楽浄土に行けると教えた浄土宗の根本思想にあう理想的な土地でもあったのです。


京都タワーもよく見えます

そんな京都でも稀有な立地に徳川幕府が目を付けたのでしょう。金戒光明寺と知恩院は江戸初期に現在のような城のような造りに改修されました。知恩院は現在よりもはるかに小さい寺域でしたが、北隣の天台宗の青蓮院から土地を割譲させ、現在の巨大伽藍を営みました。

金戒光明寺・知恩院とも、高台にあるため建物が目立ちます。これは京都では根強い人気の豊臣の世は終わり、徳川の世になったことを示します。また高台から御所を見下ろすことで、天皇もコントロール下に置いたことをあわせて示します。地政学的な要所である東海道が京都市内に入る粟田口(現・蹴上駅付近)もすぐ近くです。

淀川を越えて大阪城まで見えたと言う文献も残されていますが、江戸時代には空気がきれいで人間の視力もよかったと考えられることからおそらく事実でしょう。まさに政治的・軍事的な要衝として徳川幕府から重要視されたのです。


城のような石垣は知恩院と金戒光明寺だけ

風雲急を告げる幕末の1862(文久2)年の夏、若き会津藩主・松平容保(まつだいらかたもり)は藩士1,000名を引き連れて、金戒光明寺に入ります。以降6年間京都守護職を務め、新選組を配下にして京都の治安維持に一定の効果を上げました。

その後に語り継がれる会津藩の悲劇は、塔頭の西雲院(さいうんいん)に残される京都で殉職した会津藩士352名の墓が物語っています。現在も毎年会津松平家の当主が出席して法要が行われています。

広大な墓地の中には、徳川二代将軍秀忠・正室で三代・家光の母でもある「お江(おごう)」と、家光の乳母で江戸城大奥の礎を築いた「春日局」の墓もあります。徳川幕府の京都の拠点として本当に重要視されていたことがわかります。

金戒光明寺は、春の桜、秋の紅葉とも穴場スポットとしておすすめで、広い境内にそれぞれゆったりと植えられています。高台にあるため山ではなく広い空を借景にした花見、すなわち京都では稀有な角度で花見が楽しめます。近隣の南禅寺や永観堂ほど人手が集中しないことも大きなポイントです。

桜も紅葉も、江戸時代の徳川幕府の激動がこの地であったことを物語るように、毎年可憐な彩りを見せてくれます。とても奥深い寺です。

【公式サイトの画像】 桜

【公式サイトの画像】 紅葉

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



戊辰戦争を戦った会津・桑名藩主と尾張藩主は実の兄弟だった


金戒光明寺
http://www.kurodani.jp/
原則休館日:なし
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。
※「大方丈」など主要堂宇は通常非公開です。


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