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矢田地蔵「かぼちゃ供養」 ~京都の年末を感じさせるホクホクの味

2017年12月18日 | 祭・行事・季節の花

カボチャをなでると無病息災に

 

 

京都は四季を通じて風物詩が多い。矢田(やた)地蔵のかぼちゃ供養は年末の恒例行事だ。冷え込む中を少し行列しなければならないが、出汁の効いたほくほくの味で体は温まり、年末気分をとても楽しめる。しかも無料だ。境内の巨大なカボチャをなでると“無病息災”というご利益もついてくる。大根やカボチャなどお寺で野菜の煮物がふるまわれる行事は京都に多いが、その中でも特に記憶に残る行事としておすすめしたい。

 

矢田地蔵は正式には矢田寺(やたでら)と言い、奈良・郡山の矢田寺の別院として開かれたと寺伝が伝えている。東海道の起終点・三条大橋近くで江戸時代から続く繁華街である寺町三条にあり、寺町通と三条通のアーケードが途切れてちょうどぽっかり穴が開いたところに位置する。間口・奥行きともにとてもコンパクトな境内だが、多くの参拝者で賑わいが絶えない。

 

 

 

温かみのある境内

 

 

矢田地蔵は、年に2度のビッグイベントが京都人にはよく知られている。1つは年末のかぼちゃ供養、もう一つはお盆の「送り鐘(おくりがね)」だ。「送り鐘」とは毎年8月16日に行われ、当日は大勢の参拝客が鐘をつく行列に並ぶ。お盆に迎えた先祖の霊をあの世に“送る”ためにつく、という意味がある。著名な「五山送り火(京都以外で一般的な別称:大文字焼)」も、同じ意味を持つ宗教行事だ。

 

「送り鐘」は矢田地蔵だけで行われるわけではないが、京都では矢田地蔵のものが何といってもよく知られている。なお先祖を“迎える”際の鐘は「迎え鐘」と呼ばれ、清水寺近くの六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)が最もよく知られている。

 

かぼちゃ供養は、冬至にカボチャを食べると中風にならないという言い伝えから、毎年12月23日に無病息災を祈願して行われる。朝10時からだが、例年開始時間には数百人が行列を作る。先着1,000人分が用意されているので、午前中に行けばまず間に合う。

 

驚いたことにこの接待は無料である。運営予算はわからないが、継続させるために有料化を考えてもよいと思う。京都の寺によるこうした飲食の接待も、近年は有料の場合が多い。

 

 

 

ここでお茶とカボチャをいただく、感謝。

 

年末だけに行列はさすがに寒い。しかし順番が近づいてくると体に元気が出てくる。立ち上る湯気と出汁の香りが的確に脳を刺激してくれる。お皿に盛られたカボチャの見た目はシンプルだが、出汁の効いた味がしっかりしている。カボチャ特有のホクホク感もたまらない。冷えたボディは一気にヒートアップする。

 

 

 

シンプルだが行列する価値のある出汁が効いた味

 

 

カボチャをいただく前には、巨大なカボチャをなでて「無病息災」と「よいお正月」を祈る。カボチャは多くの参拝者に撫でられているのであろう、スベスベだ。錦市場も近く、寺の周りは買い物客や観光客でごった返している。このイベントを知らずに歩いていてカボチャの絶妙の香りに引き寄せられてやってくる人も多い。とても年末を感じさせる京都らしいイベントである。

 

 

 

「よいお正月」を

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

移住してきた夫婦の視点で日常の京都を紹介

 

 

矢田寺 かぼちゃ供養(京都市観光協会サイト)

https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=2&ManageCode=1000327

毎年12月23日 午前10時から

※無料、先着1,000名(例年のペースでは午後早い時間になくなる)

 

矢田寺(矢田地蔵尊)(京都市観光協会サイト)

https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=10&ManageCode=205

原則休館日:なし

 

 

 


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