お盆の奈良の夜は燈籠の温かい灯りに包まれます。春日大社でも中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)が行われ、平安時代から脈々と寄進が続いてきた燈篭3,000基に一斉に火が灯されます。本殿や若宮に至る参道に延々と灯りがともる姿は幻想的で、商売繁盛・武運長久・鎮魂など燈篭を寄進した人々の思いがこの世に現れています。
毎年8/14と8/15の奈良の夜は、夏の終わりを告げる風物詩が随所で見られます。いつもと違うお盆の夜を体験してみてください。
日本の古都・奈良と京都では、夏と冬は観光イベントが少ない時代が長らく続いていました。「非観光シーズンだから観光客は来ない」という固定観念的なムードから、集客を仕掛ける側、観光に出かける側、双方で足が鈍っていたことは全国的な傾向です。
しかし平成になってバブル経済が崩壊した頃から、こうした固定観念は崩れていきます。観光シーズンの集客だけに頼っていては持続的な経営が難しくなることに、多くの人が気付き始めたためです。
スキー場ではピーク時とは真逆の夏の集客に力を入れます。高原リゾートや川遊びの魅力を訴求した北海道のニセコや長野の白馬が、通年楽しめるリゾート地として外国人観光客を引きつけていることはよく知られています。
奈良でも観光シーズンとして見向きもされていなかった頃から、夏の宗教行事は細々と行われていました。春日大社の中元万燈籠は1929(昭和4)年、高円山(たかまどやま)の奈良大文字送り火は1960(昭和35)年、東大寺の万灯供養会(まんとうくようえ)は1985(昭和60)年から、それぞれ始まっています。この3つの宗教行事は、現在では奈良のお盆の三大風物詩としてすっかり定着しています。
奈良公園一帯で夜にろうそくを灯すイベント・なら燈花会(とうかえ)が1999年から行われるようになると、お盆の三大風物詩と相まって奈良の8月の夜がとても賑わうようになります。奈良公園周辺で夜に営業する飲食店が増えたのは、なら燈花会の成功が大きなきっかけになっています。
【公式サイト】 なら燈花会
なら燈花会は例年、8/5頃~8/14の日程で行われており、8/14-15に行われる春日大社の中元万燈籠は、いわば奈良の夏を締めくくるイベントになっています。
夕方、日が傾き始める頃から人出は徐々に増えていきます。暗くなって火が灯るイベントが始まるまでは、鹿たちが観光客を楽しませています。
仏教美術資料研究センター
春日大社に向かう参道の奈良国立博物館の裏では、重文の仏教美術資料研究センター(旧奈良県物産陳列所)のライトアップが、陽が沈みゆく空にとても映えています。1902(明治35)年の和洋折衷の建築のデザインには、一等国になることが悲願だった明治の人々の意気込みが込められています。
本殿が近づくにつれ、参道の人波は増していきます。春日大社は参道や境内が広いため、窮屈感は感じさせません。ほとんどすべての人が燈篭の写真を撮っていますが、一脚・三脚にデジカメを固定して撮影しないとなかなか手ぶれは解消できません。本殿回廊内など混雑のため一脚・三脚使用禁止以外のエリアで楽しんでください。
春日大社には、若宮などの摂末社がたくさんあります。いろんなご利益がありますので、ぜひ順に参拝してください。本殿より奥にあることもあって比較的すいています。
春日大社の万燈籠は、真冬の節分にも行われます。張り詰めた低温の空気を通じてみる灯りの姿は、夏とは異なりとても鮮明に見えます。夏冬両方を見ると、季節の違いが味わえてとてもよい思い出になります。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
川瀬巴水は春日社を版画でこう表現した
春日大社 「中元万燈籠」
http://www.kasugataisha.or.jp/calendar/summer08.html#1
開催日:毎年8月14・15日(日付で固定)
開催(拝観)受付時間:19:00頃~21:30
※有料の回廊内特別参拝以外は、無料で拝観できます。
※雨天中止の場合があります。
※スタート時間は当日の法要・神事の進行や天候に左右される場合があります。
春日大社 本殿回廊・夫婦大国社・国宝殿・萬葉植物園の参拝可能日時
http://www.kasugataisha.or.jp/about/basic.html
※上記以外の境内の拝観・見学に条件はありません。いつでも無料で拝観・見学できます。
おすすめ交通機関:
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札C出口から徒歩25分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間25分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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