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名古屋城・本丸御殿の復元が全面完成 ~将軍の御殿が現代によみがえる

2018年07月27日 | 城・屋敷・歴史遺産

2009年から復元工事が行われ、完成部分から順に公開されてきた名古屋城の本丸御殿が全面完成し、江戸初期の完成時のまばゆいばかりの姿が現代によみがえっています。

京都の二条城と同じく将軍上洛時の専用宿舎として用いられており、江戸城にあった徳川将軍家の御殿の姿を彷彿とさせる建築です。江戸初期建築の本物は第二次大戦の空襲で焼失しましたが、それまではもちろん国宝(旧制度)でした。

歴史的建造物の復元は、往時の姿を実感できることに大きな価値があります。奈良の薬師寺がその代表例です。復元された本丸御殿の内部は白木の凛とした香りが漂い、贅の限りを尽くした意匠がとても上品に配されています。


表書院の廊下

名古屋城本丸御殿は、御三家筆頭で61万石の尾張徳川家藩主の住居兼オフィスとして1615(慶長20)年に完成しました。1620(元和6)年以降は将軍の上洛時専用の宿舎となります。

秀忠・家光の二度の上洛以降、天下泰平が続いたこともあり、幕末の14代・家茂の上洛まで約230年間まったく使用されていませんでした。この空白期間は京都の二条城と同じで、結果的に建物の傷みを少なくし、障壁画も良好な状態で保存されました。

明治維新で数多くの城が解体される中、名古屋城は生き残ります。歴史に“もし”はNGですが、第二次大戦で焼失せず現存していれば、間違いなく世界遺産に指定されていたと思われます。本丸御殿は京都の二条城の二の丸御殿とほぼ同様のたたずまいです。天守閣は姫路城より一回り大きく、江戸城と大坂城に次ぐ規模です。

【公式サイトの画像】 玄関
【公式サイトの画像】 竹林豹虎図

御殿の中は新築特有の輝きにあふれています。各部屋で見ものとなる襖絵は、第二次大戦の空襲前に疎開して無事だった江戸時代の本物を忠実に復元模写したものです。

玄関は、登場した家臣が藩主との謁見を待つ部屋で、古くは遠侍(とおざむらい)とも呼ばれていました。遠侍には虎の絵が描かれることが多く、京都・二条城・二の丸御殿も虎の絵です。虎の親子が仲睦まじく過ごしている様子が描かれています。

【公式サイトの画像】 上洛殿

上洛殿(じょうらくでん)はその字の通り、1634年(寛永11年)に三代将軍・家光が京都へ上洛する際の宿舎として、新築されたものです。将軍が座る上段の間の天井は、将軍や藩主の座所にしか見られない二重折り上げ格天井(にじゅうおりあげごうてんじょう)です。天井絵の縁を蒔絵(まきえ)で装飾しており、きらびやかさがあります。

本丸御殿内で尾張藩主の座所だった対面所の上段の間も二重折り上げ格天井ですが、小組で天井絵はなく、漆による装飾だけです。こちらはとてもシックで落ち着きがあります。天井のすぐ下にある部屋の壁の欄間の彫刻も見ものです。本丸御殿は襖絵のある側面だけでなく、上も見ましょう。

上洛殿の襖絵は、狩野探幽による「帝鑑図」と「雪中梅竹鳥図」です。京都・二条城と同じく、将軍の座所は狩野探幽が手掛けています。


こけら葺きの屋根

本丸御殿は室内だけでなく、屋根も注目に値します。杮(こけら)葺きの屋根が実になまめかしいカーブを描いており、この御殿の優美さを外観としてもきちんと表現しています。


天守閣(左)は間もなく解体される

本丸御殿全面完成の直前2018年5月に、1959(昭和34)年に再建された天守閣の公開が終了しています。耐震基準を満たさず、建て替えられるためです。本丸御殿と同じく木造による建て替えを目指していますが、どのような姿になるものか大いに期待しています。


最寄りの地下鉄・市役所駅出口で目につく案内板

本丸御殿完成の前には、名古屋メシを中心としたレストランやカフェが集まる「金シャチ横丁」もオープンしています。名古屋城周辺は官庁街で飲食休憩施設がほぼなかったこともあり、“やっと”と言わざるを得ませんが、観光客にフレンドリーな施設が整備されました。しかしコンビニを設けなかったことには、観光客ニーズをふまえると疑問が残ります。

同様に飲食休憩施設がなかった大阪城でも新設が相次いでいますが、インバウンド客の急増を背景に全国で見られる傾向です。ほぼすべての日本の城郭は地元自治体によって運営されていますが、飲食休憩ニーズに応えてかつ副収入も得るというビジネスモデルの構築に、多くのお役所仕事はまだまだ対応できていません。

歴史的遺産の素晴らしさを支えるには、サービス面での基本的な環境整備も欠かせません。「見ればわかる」という価値観は「昭和」に役割を終えています。来年2019年には「平成」も終わります。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



とても多い徳川さん・松平さんの関係がこれですっきり


名古屋城 本丸御殿 完成公開
http://honmarugoten.jp/

名古屋城 本丸御殿 観覧時のお願い
http://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/honmarugoten/18_topics/2013/1306/index.html

原則休館日:12/29~1/1
入館(拝観)受付時間:9:00~16:00
※公開期間が限られている部屋があります。



おすすめ交通機関:
地下鉄名城線「市役所」駅下車、北改札口7番出口より徒歩5分
JR名古屋駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
名古屋駅→地下鉄東山線→栄駅→地下鉄名城線→市役所駅
【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。


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