妙楽寺(みょうらくじ)は、美しく“珍しい”千手観音で知られる小浜の古刹です。仏教美術の宝庫・小浜を代表する美仏です。
本堂
妙楽寺は、行基や空海が開創に関わった言い伝えもありますが、実際のところは定かではありません。本尊の千手観音が平安時代中期の作で、本堂が鎌倉時代中期の建立です。少なくとも鎌倉時代中期からあったことだけは確実でしょう。
重文の本堂は1296(永仁4)年の建立で、若狭の最古の建造物です。コンパクトな大きさですが、檜皮葺きの屋根が建物をとても清楚に見せています。
【若狭おばま観光協会サイトサイトの画像】 千手観音
本堂の中に重文の千手観音がいらっしゃいます。この千手観音はなぜ“珍しい”のか? その理由は手と顔にあります。まず手ですが、左右21本ずつの手の間に1,000本の小さい手があります。小さい手は短いため、この像を正面から見ると存在に気付かないほどの長さです。斜めから見ないとわかりません。
千手観音は左右21本ずつの手で「千手」を表すのが通常で、中には本当に手が1,000本ある大阪・葛井寺のような例もあります。左右21本ずつの手以外に数多くの小さい手がある千手観音は、正面から見ても小さい手の存在がはっきりわかります。
【葛井寺公式サイトの画像】 十一面千手観音
千手には、それだけ多くの手で願い事を漏らさず救い上げて叶えようという意味があります。そのため通常は正面から見ても手の数が目立つような大きさで造ります。妙楽寺の千手観音は、こうした千手観音の通常例から少し離れているところに面白さがあります。
なぜ側面から見ないと小さい手が見えないようになっているのか、そのヒントはもう一つの“珍しい”理由である「顔」にあるような気がしてなりません。
再び通常の千手観音の話をしなければなりませんが、正面を向いた顔の上の頭部に周囲を見渡すように小さい10面の顔がのっかる「十一面」になっているのが通常です。妙楽寺の千手観音は、興福寺の阿修羅像のように左右の側面にも顔があります。
この左右の顔も正面からは見えにくくなっています。側面にもある顔を見るよう参拝者にうながすと、手が千本あることにも気付くというサプライズ効果を狙ったのでは? と私なりの推理を働かせています。
頭部にも21面がのっかり、合計二十四面になります。こちらも“特別な”千手観音であることを強調するための演出でしょうか。見れば見るほど奥が深い作りになっていることを印象づけられます。近年まで33年に1回だけの公開を守ってきたようで、驚くほどに金箔がよく残っています。黄金色に輝くボディがこの仏様の奥深い魅力をさらに強調しています。
小浜で見逃してはいけない仏様です。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
海から遠いからこそできた京都の魚料理の秘密
妙楽寺(若狭おばま観光協会サイト)
http://wakasa-obama.jp/TouristAttract/TouristAttractDetail.php?27
原則休館日:なし
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。
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