萬徳寺(まんとくじ)は、小浜の山あいにある静かな古刹です。木目の肌が美しい阿弥陀如来と共に小浜随一の庭園でも知られています。とても不思議な魅力に包まれた庭園です。小浜を代表する仏教美術の宝庫の一つです。
書院から本堂を見上げる
萬徳寺は室町時代に、以前からあった天台宗の極楽寺の寺号を改め、現在の真言宗の寺としてはじまります。戦国時代から江戸時代まで時の領主大名の庇護を受け、寺勢を保ってきました。
前進の極楽寺の頃の様子はよくわかっていませんが、現在の本尊の重文・阿弥陀如来は極楽寺時代からの本尊で、平安時代後期の作です。この寺も鯖街道を通じた京都とのつながりはあったと考えられます。素材のヒノキの木目の美しさを活かそうとしたのか、彩色されておらず、900年ほど経過した現在でもその美しさは見とれるほどです。完成した時にはどんなに美しかったかと想像が膨らみます。
【若狭おばま観光協会サイトの画像】 阿弥陀如来
伏し目がちでふっくらした頬は、平安後期に流行した浄土信仰のもとで造られた阿弥陀如来の特徴がよく表れています。下からお顔を見上げるととても包容力があるように見えます。木目の肌は表情をとても穏やかに見せています。
幽玄な庭園
国・名勝に指定されている庭園は、江戸時代1677(延宝5)年に小浜藩主・酒井氏の命で寺が移築された時に作庭されました。書院に南面する白砂の奥の山すそに作られており、幽玄な雰囲気を醸し出しています。江戸時代は藩主の休憩所として使われていました。
【若狭おばま観光協会サイトの画像】 萬徳寺 庭園(南向)
金剛界曼荼羅を表現した庭園の中央には3mの巨石が置かれ、真言密教本尊の大日如来を表しています。周囲の4個の庭石と合わせ、五智如来(大日・阿閦・宝生・阿弥陀・不空成就)を表現しています。萬徳寺の中央石のように、庭園の中心にランドマーク的な仕掛けがされている庭はあまり見かけません。また曼荼羅や五智如来を表現した庭もあまり見かけません。そんなせいか萬徳寺の庭はとても不思議な魅力を感じさせます。書院と庭園の間の白砂の面積がかなり大きいことも、不思議な魅力をさらに増幅しています。
春の庭園は新緑を借景に、椿・ツツジ・サツキが庭にとてもよく映えます。不思議な庭をぜひ一度体験してみてください。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
鯖街道を自転車で行く
萬徳寺(若狭おばま観光協会サイト)
http://wakasa-obama.jp/TouristAttract/TouristAttractDetail.php?4
原則休館日:なし
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。
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