琵琶湖にある竹生島(ちくぶしま)は、奈良時代から神が棲む島として信奉を集めてきたパワースポットです。琵琶湖の北端に位置し、長浜や今津から船で30分ほどかかりますが、江戸時代以前の神仏習合が色濃く残る非日常空間を体験できます。
湖北地方を治めてきた浅井・羽柴・井伊家にゆかりの宝物も多く残されており、中でも竹生島神社の本殿は安土桃山時代を代表する優美な建築です。
琵琶湖の湖面から見る湖北の山々は、とても豊かな表情を見せてくれます。見とれていると30分ほどの船旅もあっという間に終わってしまいます。
この絶景から鳥居めがけてかわらけ投げ
竹生島は現在、竹生島神社と宝厳寺(ほうごんじ)に神仏が分離されています。明治の廃仏毀釈では数少ないケースですが、寺が廃されることなくのこったものです。江戸時代までは日本全国で見られたように、寺の本尊と神社の祭神が同一視される典型的な神仏習合の信仰の島でした。
天照大神のお告げを聞いた奈良時代の聖武天皇が、724(神亀元)年に行基に命じて島に弁財天を祀らせたのが、信仰の島としての始まりとされています。巨大の琵琶湖の真ん中に絶海の孤島のように浮かぶ姿に、古来より多くの人々が神秘性を感じたのでしょう。平家物語や能など、多くの古典芸能にも登場し、パワースポットとしての地位を確立していきます。
明治の神仏分離では、平安時代の神社一覧である延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)に記載されていた都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)と名乗るようになりました。現在では竹生島神社の方を一般的には用いているようです。両名称の漢字の読みからして、島名に由来するものであることは同じでしょう。
竹生島の桟橋
【琵琶湖汽船公式サイト】 竹生島マップ
竹生島の桟橋に着いて船を下りると、土産物店と飲食店が数件立ち並び、拝観受付があります。拝観料は竹生島神社と宝厳寺共通で、現在も密接な関係が続いていることが確認できます。受付の先の宝厳寺の観音堂と竹生島神社の本殿を結ぶ渡廊である舟廊下(ふなろうか)が寺と神社の境界になりますが、誰も境界を気にする人はいません。
舟廊下は秀吉の御座船の部材を用いて作ったとの伝説があるようですが定かではありません。しかし急斜面に張り付くように造られており、連子窓から琵琶湖の絶景を眺めることができます。内部は舟底天井の三角形が空間にゆとりを持たせており、とても歩きやすい構造になっています。重要文化財の優美な廊下です。
本殿
本殿は、伏見城もしくは豊国廟から移築説のある、安土桃山時代の優美なデザインが美しい国宝建築です。内陣が常時公開されていないのは残念ですが、狩野永徳・光信親子の作とされる天井絵などに極彩色がのこされています。江戸時代まではこの本殿に、現在の宝厳寺の本尊・弁財天が安置されていました。
屋根の下部が写真のように幕で覆われていることがあるようですが、屋根の優美の曲線がより強調されて見えます。
竹生島神社の最大の人気スポットは「かわらけ投げ」です。願い事を書いた素焼きの皿を投げて、眼下に見える鳥居の間をくぐれば願い事がかなうというものです。かわらけ投げは京都の神護寺など絶景が美しい寺や公園でよく見かけますが、かわらけを投げる背景には琵琶湖の絶景が広がります。水面に向かって投げるのは実に爽快です。
非日常空間・竹生島の続編、次回は宝厳寺をお伝えします。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
竹生島、沖ノ島、厳島。神々の宿る島の秘密に迫る
竹生島神社(都久夫須麻神社)
【公式サイト】http://www.chikubusima.or.jp/
原則休館日:なし
拝観時間:始発観光船の着時間~終発観光船の発時間
※終発観光船出発以降の夜間島内滞在は不可
※修復工事や災害復旧工事の影響で建物の内外観や参拝ルートが通常と異なる場合があります。
おすすめ交通機関:
【竹生島神社 公式サイト】 アクセス案内
JR北陸線長浜駅下車、西口から徒歩10分の長浜港から観光船で30分、竹生島港から徒歩5分
運行本数は、夏季は毎日5往復+多客期増便、冬季は毎日2往復
※観光船は便数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※長浜港には無料の駐車場があります。
【公式サイト】 琵琶湖汽船 竹生島クルーズ
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間
京都駅→JR琵琶湖線新快速長浜行→長浜駅→長浜港→竹生島港
他の竹生島への観光船
※琵琶湖汽船、JR湖西線近江今津駅から徒歩5分の今津港から
※オーミマリン、JR琵琶湖線彦根駅から送迎バスで8分の彦根港発から
【公式サイト】 オーミマリン 竹生島めぐり
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